転生天使は視続ける   作:オルフェイス

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3/28 サブタイ変えました。


戦闘。理想の誕生 『前』

───ルベリオス。大聖堂のさらに奥に位置する玄室。

 

 

そこには2人の人間がいた。

 

 

一人は神楽坂優樹(ユウキ・カグラザカ)

 

 

中庸道化連のボスであり、冒険者組合のギルドマスターである男。

元勇者であるグランベルの情報から、曰く究極の決戦兵器である、玄室にて眠る『勇者』を手に入れようとしていた。

 

 

もう一人はアッシュ・グレイル。

 

 

アスティの配下であり、自らの復讐のために動く覚醒した勇者。

 

 

彼女は主であり師であるアスティに突然連れてこられ、混乱する頭に必要な情報を教えられていた。

 

 

(突然現れたけど、なんなのかな、こいつ?)

 

 

ユウキとしては、勇者を手に入れられる絶好のチャンスだったのに、突如現れた乱入者のせいで、そのチャンスを逃すことになった。

 

 

今も仲間が時間を稼いでいるが、いつルミナスが戻ってくるかもわからない状況。一刻も早く、勇者を手に入れる必要があった。

 

 

一方アッシュは、アスティに『思念伝達』で目の前のユウキの情報を与えられていた。

その情報は、アッシュを動かすのには十分なものだった。

 

 

(こいつは、戦争屋を知っている。なら、半殺しにして聞き出す)

 

 

目的は決まり、あとは行動するだけ。アッシュは、懐に潜ませていた鳥籠────相棒のレジーを、大鎌に変形させた。

 

 

「って、いきなりかよ!」

 

 

ユウキは戦う姿勢を見せることなく、勇者が眠る聖櫃に向けて走り出し、聖櫃を解除すると、すぐさま勇者を抱えて逃げ出した。

 

 

正体もわからない敵だが、ユウキはどのような者であろうと勝てる自信があった。だが、それは一対一での話だ。

 

 

(近くにルミナスもいるし、時間は掛けられないからね。さっさと逃げるに限る!)

 

 

流石に、正体もわからない敵に時間をかけ、ルミナスと戦う羽目になるのはごめんだった。故に逃走。場所を変えるために、移動する必要があった。

 

 

「逃がすか───!」

 

 

だが、それを許すアッシュではない。一気にユウキに近づき、大鎌を振りかぶった。

 

 

「うわ、危なっ!」

 

 

ユウキは一瞬早く身を屈み、すぐに背を向けて走り出した。

 

 

あの僅かな一瞬で、ユウキはこの正体不明(アンノウン)と戦うことを放棄した。出来れば攻撃を防ぎながらも移動したかったが、ユウキはそれが無理であることを理解した。

 

 

(能力殺封(アンチスキル)は、あくまで魔法とスキルを封じるだけ。ただ肉体が強いだけなら、能力殺封(アンチスキル)は意味を成さない───)

 

 

ユウキには能力殺封(アンチスキル)という超特異体質があるが、それは魔法とスキルが効かなくなるというもの。

 

 

この体質があるからこそ、ユウキは誰であろうとも勝てるという自信があったのだが……それにも例外がいる。

 

 

例えば、ただただ魔素(エネルギー)量が多すぎる相手。例えば、とてつもない身体能力を持つ相手────

 

 

つまり、力技で戦う相手に、ユウキの体質は無意味なのだ。

 

 

(まったく、面倒だな───)

 

 

だが、だからと言って戦えないわけでも、ましてや勝てないわけでもない。

 

 

ユウキには創造者(ツクルモノ)というスキルに、奪い取った強欲者(グリード)というスキルがある。

 

 

これを使えば勝てる───そうユウキは考えていた。だが、勇者を抱えながらの戦闘は、無理があるとも考えていた。

 

 

(今は逃げに徹してやるよ!)

 

 

絶対に勝てるという自信、それがあるからこそユウキは余裕な態度を崩さずにいられるのだ。

 

 

───普通の相手であれば、それでも問題なかったのだろう。

 

 

アッシュが大鎌を振るう────たったそれだけの動作だ。

 

 

「ぐぁ!?」

 

 

だが、ユウキはその攻撃を避けることが出来ず、肩に喰らう羽目になった。それは何故なのか、ユウキにはすぐにわかった。

 

 

(こいつ、わざと遅くして──!?)

 

 

そう、先ほどの攻撃は、勇者を抱えていても避けられる程度の速さだった。

だからこそ、アッシュを軽く見ていた。この程度でしかない、と。

 

 

だが、アッシュは最初の攻撃を当てるつもりはなかった。

 

 

むしろ、避けてもらい、油断させるためのものだった。確実に次の攻撃を当てるために────

 

 

ユウキは攻撃を喰らい体制を崩すが、すぐに立て直した。だが、その隙を見逃すアッシュではない。

 

 

一気にユウキとの距離を詰め、大鎌を下から掬い上げるようにして振りかぶった。

 

 

(流石にまずいかっ!)

 

 

ユウキは勇者を運ぶことを放棄し、武器を取り出してアッシュの攻撃を防ぐ。しかし───

 

 

「ぐっ」

 

 

アッシュの攻撃を防ぎきることが出来ず、ユウキは大きく吹き飛ばされることになる。

 

 

(これは、僕も本気を出したほうがいいかな───)

 

 

幸い、ある程度離れることは出来たし、とユウキは本気を出すことを決断する。このままでは勝てないと踏んだのだ。

 

 

ユウキは、今まで押さえていた力を全身に駆け巡らせ、自らの肉体を改造し始めた。

 

 

人間から仙人へ、仙人から聖人へと────

 

 

ユウキが変化を終える───その前に、アッシュは行動していた。

 

 

「聖槍、限定解放」

 

 

アッシュの持つ大鎌が、変化を遂げる。黒く染まっていた大鎌は槍へと変わり、純白に染まる。

 

 

その槍は、形だけなら騎乗槍と呼ばれる類いのものだった。だが、その槍の纏う雰囲気は神々しさを感じさせた。

 

 

アッシュが槍を振り抜くと同時に、槍は周りのエネルギーを集め、霊子に変換すると、槍の周囲を回り始めた。

 

 

ユウキは、この段階ではまだ余裕を保っていた。例えどのような攻撃が来ようとも、能力殺封(アンチスキル)を持つ自分に、傷をつけることは出来ない、と。

 

 

ユウキの自己改造は、そう時間が掛かるわけではない。むしろ、数秒で完了できるほどに早く終わるほとだ。

 

 

────だが、今回はその数秒が、ユウキの命運を分けることになる。

 

 

「───第一の牙」

 

 

そう言い、アッシュは槍を振り抜いた。そして発生したのは、白く細い光線────

 

 

(そんなもの、効かないな!)

 

 

ユウキは避けることなく佇む。スキルと魔法を組み合わせたのであればともかく、これはスキルだけのもの。ユウキに効く攻撃ではない────と。

 

 

光線がユウキに命中し、そこから痛みを感じるまではそう思っていた。

 

 

「──っ!?」

 

 

ユウキの能力殺封(アンチスキル)で消滅すると思われたそれは、ユウキの体質を貫通し、肉体にダメージを与えた。

 

 

それどころか、光線は未だにユウキに食らいついている(・・・・・・・・)

まるで、意思を持つ獣が、食らいついた敵に牙を食い込ませるように、さらに深くダメージを与えてきているのだ。

 

 

(そんなのありかよっ!?)

 

 

「くそっ」

 

 

ユウキは理解した。少なくとも、あの乱入者のスキルの正体がわからなければ、自分に勝ち目はない、と。

 

 

(身体能力まで負けているとは思わないけど───不気味だな。まるでリムルさんと戦っているみたいだよ)

 

 

ユウキはすぐさま腕を振り払い光線を消滅させると、勇者を回収しようと目を向け────その勇者が、起き上がろうとしているのが見えた。

 

 

(かなり厳重に封印が施されてたってのに、自力で封印を解いたっていうのか……?)

 

 

そして、次の瞬間、ユウキは理解した。グランベルに化かし合いで負けたことを────そして、ここにいては死ぬことを。

 

 

勇者を黒い粒子が覆い、黒い鎧衣────聖霊武装に変化すると、一振りの細剣を召喚し、それをアッシュに向けて振り抜いた。

 

 

「くっ───」

 

 

アッシュに向けて振り下ろされた黒い閃光。それをアッシュは、槍で打ち払うことで防ぐ。だが、完全には防ぎきれず、ダメージを負うことになった。

 

 

その隙を突き、ユウキはすぐさま逃走した。

 

 

(厄介事は、押し付けるに限るね!)

 

 

あの勇者は、制御がどうとか、そんなことが言える相手ではない。例え聖人にまで進化させたユウキでも、勝てる存在ではないとわからさせた。

 

 

「な、待っ───く、邪魔です──!」

 

 

アッシュは逃すまいとユウキを追おうとするが、再び放たれた閃光に足を止められる。

 

 

「───レジー!」

 

 

『そろそろ出番だとは思ったぜ!』

 

 

そしてアッシュは、ユウキを追うことを諦めた。目の前の存在は、自分が全力を尽くしても勝てるかわからない相手───いや、エネルギー量では負けているので、格上の存在。

 

 

そんな相手に、余所見をする暇などない。幸い、相手が究極能力を持ってなさそうなのが救いだが────やはり、アッシュの手に余るのは違いない。

 

 

「戦いながら、場所を移す」

 

 

こいつ(・・・)の制御は任せろ。アッシュ、お前は好きなように動け!』

 

 

「わかってる───!」

 

 

だから、大聖堂にいる魔王たちの協力が必要だ。アッシュが攻撃される危険性はあるが、それは後になってから考えたらいい。

 

 

アッシュはそう考えていた。ある程度、勇者の攻撃を防ぐことはできるが、それも全てではない。何処かで動かなければいけないことだ。

 

 

(師匠───手助けは、いりません)

 

 

何処かで見ているであろう師に、そう伝える。

 

 

アスティであれば、勇者を押さえ込むことなど容易いことだろう。

 

 

だが、それでは駄目だ。

 

 

今回、アスティがいきなりこの場所に転移させたことに不満はある。だが、未来を視ることが出来る彼女のことだ、急がなければいけない事情でもあったのだろうと、納得している。

 

 

アスティを信頼して、信用して、尊敬しているからこそ、納得している。できるのだ。

 

 

だからこそ、そんな師匠の無茶にも応える。復讐の機会を与えてくれるように計らってもくれて、弱かった自分を、ここまで育ててくれた。

 

 

だから、この恩を返したい。そして、証明したいのだ。

 

 

私は強くなったのだと────もう決して、大切な人を失うことはないのだ、と。

 

 

「だから、これは私が止める」

 

 

『アッシュ、わかってるとは思うが───』

 

 

「うん。今は誘導。なんとか出来るって言うのなら、任かせる」

 

 

魔王たちに、これを止める手段があるのであれば、任せる。出来ないのであれば、倒すのみだ。

 

 

こうして、アッシュの戦いが始まった。全ては、自分が大切な者を守れる力を持つことを証明するために──────

 

 

戦いの場は移り変わる。魔王たちのいる場所へ──────

 

 

 

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