転生してから、約百年もの時が経過した。その間、私はこの世界のことを知っていった。
魔物、魔人、魔法、スキル───それと、悪魔。
私という天使がいる以上、悪魔がいるのは不思議でもなんでもなかったが、悪魔は好戦的な存在らしく、出会えばまず殺し合いだった。
正直、相手にするのは面倒だった。幸いだったのが、悪魔は冥界というところにいるらしいことと、召喚されない限りは出てくることもない、ということだろうか。
悪魔との戦闘は、良い経験にもなった。魔法とか、スキルとか、その他諸々。
魔法は使うこと自体は出来たのだが、悪魔相手には無効化されたりするのも珍しくない。その時はエネルギーを武器に纏わせて物理で倒したが。
因みに武器は適当に拾ったものを使っている。悪魔相手に普通の物理攻撃は効かないが、エネルギーを使えばダメージを与えることは可能だ。
それに、悪魔が放った魔法は
……まぁ、
……ところで、なぜ私が今そんな話をしているのかと言えば─────
「おいおい、そんなもんか!?」
───今、私が戦っている悪魔が私よりも強いからだ。というか、この悪魔は
そうでなければ、ここまで圧倒はされない。魔法も、物理も効いている様子はない。
というより、回避されているのだ。
私が魔法を放てば、同じ魔法を使って相殺するか、避けるか、そもそも結界による防御で防ぐかされてしまう。
私も結界を張っているが、
もちろん、
勝つのが不可能なのは、すぐにわかった。ならば逃げることも考えたが……その隙がなかった。生存は絶望的だろう。
───はて、なぜこんなことになったのだろうか?
それは、一時間前のことだった────
▲▲▲▲
私は、かつては人が住んでいたであろう廃墟を拠点として活動していた。
別に住む場所が必要かと言われればそうでもないのだが、精神的な疲れの回復、それとエネルギーの回復のために拠点が必要だと考えたのだ。
稀に人が治めている国が悪魔を召喚したりするため、召喚された悪魔が
あとは……エネルギーをコントロールして、人外であることがバレないように国に入り込んで、本を集めたりしていた。魔法はここから覚えたものが多い。
因みに本は廃墟を住めるようにして、図書館のようになった場所に保管している。
人の国に入り込むのはさほど難しくない。エネルギーを出さないようにしていれば、人間だと勘違いされ、バレることがないのだ。
……まぁ容姿の問題もあって、静かに、とはいかなかったが。それでも、問題はなかったのだ。悪魔を倒すときは姿を幻で欺いたり、もしくは遠距離から攻撃して誘い込んだり……などをしてたし、手段は多かったのだ。
────だから、なのか。どうやら嗅ぎ付けられたらしかった。
私は、あの
私の感知範囲を刹那の時間で突破し、元廃墟の周りに張ってあった結界を壊し、魔素を撒ちきらしながら。
紅い悪魔が、現れた。
「おう。お前が噂の天使か?」
傲慢に、そして自信に溢れたもの言いだった。住んでいた家も悪魔が来た衝撃で壊されたのに、意外なことに、私はそれを不快には思わなかった。
そう在ることが納得できるほどの力を有しているのだと、理解できた。そして、その力は私よりも強いものだということも───
だから素直に答えた。それに、この悪魔がここに来た理由も理解していた。
「噂の、というのは知りませんが……そうですね。恐らくそうなのでしょう」
「そうか。なら───」
何かを仕掛けてくることはわかった。だから槍───騎乗槍という分類のもの────を取り出し、構えた。
そして次の瞬間─────
「まずは小手調べだ」
目の前の紅い悪魔は右手をかざし、赤い光線を放った─────
▼▼▼▼
───以上が、私がこの
あの紅い悪魔が放った最初の一撃───悪魔は小手調べと言った────は、核撃魔法:
といっても、時を重ねた
なので、
───だが、それがいけなかったのか……あの紅い悪魔は接近戦をしながら至近距離で魔法攻撃を仕掛けてきたのだ。
そのせいで逃げる暇は失われてしまい、エネルギー喪失を行う前に魔法を食らってしまう事態に陥ってしまった。反射的に
だが、それでもかれこれ一時間も戦闘を続けていられるのは、
ただ、やはりエネルギーの差はどうしようもなく、そろそろ限界が近づいてきた。
────動くとすれば、そろそろだろう。
「っ!」
何度目かの武器の打ち合いの後、私は後ろに下がり魔法を放った。といっても、悪魔であればすぐに無効化……どころか、そもそも効かない程度のものでしかない。
「はっ!そんなもん効くかよ!」
故に、その攻撃を無視して突っ込んで来るのは必然なことだった。
だからこそ、わかりやすい。
放った魔法は目前の紅い悪魔に当たり───そして霧を出しながら弾けた。
「あぁ?」
もちろん、ただの霧ではない。端的に言うと感知を妨害する霧だ。それも100mにまで広がるほど範囲が広い。
その霧が広がった瞬間を見計らい、すぐさま悪魔が目視できる範囲から出て、姿を隠した。この霧の中でしか使えない方法だろう。
「なっ、手前───」
紅い悪魔も、逃げ出した私を追いかけるが───今の状態なら、逃げ出すことは可能だった。
悪魔はすぐに霧を広範囲魔法で払い、私のことを探しているが……もう遅い。その頃には、私はとある場所に隠れていた。
「チッ。逃げられたか」
悪魔は私が逃げたことを理解し、そのまま何処かへと飛び去っていった────
「…はぁー……どうにか、やり過ごせましたね……」
紅い悪魔が去っていったことを確認すると、私は
───そう、私は地中に隠れていたのだ。
あの紅い悪魔が通常通りの感知能力を持っていたら、バレていただろうが、あの霧のお陰でバレるようなことはなかった。
確かに一度は紅い悪魔に霧を払われはしたが、あれは粘着性を持っており、目には見えなくとも感知を阻害する性質は消えずに、あの紅い悪魔に張り付いていたのだ。
だから、土の中に隠れる、という賭けに移れた。まぁもしそれが効かなかったら、そのまま奇襲しただろう。
『確認しました。ユニークスキル『
どうやら、新しいユニークスキルを獲得したらしい。マジシャン……いや、まぁ確かに騙したけど。あの霧のことも含めて、なのだろうか?
ふむ……どうやら、このスキルはとにかく相手を騙す、自らを隠すなど、妨害や隠密に特化したスキルであるらしい。あの紅い悪魔には、あの霧が有効だったからよかったが……
次も効くとは限らない。いずれ、また会うことになるだろう。世界というのは、意外と狭いのだから。
……この家、どうしようか?今では完全に図書館になってしまい、移住スペースは殆どなかったとはいえ、放置しておくのは駄目な気がする。
けど、だからといってここに留まり続けることも出来ない。また、あの悪魔がここに来ないとは限らないのだから。せめて私が
たらればの話をしても仕方ない。とりあえず、ここは置いていくしかない。では、次は何処に行くのかなのだが………
宛もないし、東にいくか。
そう考え、今まで仕舞っていた翼を出し、東に向かって飛んでいった。
もちろん、姿を隠してだが。『
その時は、そう考えたのだが……
まさか、今日を皮切りにあの紅い悪魔と何度も遭遇して、戦うことになるとは────
今の私には、わからないことなのだった。
主人公は後に最強になります。
因みに主人公の位は上位魔将並みです。なので、まだ悪魔公には叶いません。
転スラでの天使の階級は熾天使(セラフ)と天使しか知らないので、詳しいことは省いています。
というか、転スラに天使の階級ってあるんですかね…?
それと、作中に出てきた霧には、まだ何も名前がありません。主人公オリジナルのものですが、名前を付ける必要性を感じていないからです。