闇に沈んでいた意識が、どんどん浮上してくる。
────どのくらいの間、眠っていたのだろうか。多分、1ヶ月位は『
……時間については考えるだけ無駄か。元々、そうなる覚悟で『
それよりも、今は新しく進化した身体、そしてスキルについて調べたほうがいいだろう。
身体の方は……うん。
──いや、少しだけ変わっていた。私の背中にあった翼が、一対から二対に変化していた。
これは
戦いながらもギィの能力、エネルギー量を調べていたから、あっているはずだが……もしも、スキルによって隠されていた場合、これはあてにならないだろう。
まぁ、そこは新しく進化した
さて、私は進化したことによって手に入れた
『
『
『
の三つ。それぞれの能力を調べると、まず『
『再構成』はその名の通り、崩壊させたものを直す能力……というだけではない。崩壊したものを、まったく新しいものに組み換えることが出来る能力だ。
例で言うのなら、柔らかいものを固いものに再構成する、という使い方が出来る。
他にも色々とパワーアップしているところもあるが……そこは省かせてもらう。
次に『
最後に『
戦闘中でも問題なく変異し続けることが出来、エネルギーもさほど消費しない。むしろ『
まぁ、変異をし続けた場合、増加速度は普段の三割程度に落ちるのだが…そこで贅沢を言っても仕方ないだろう。
───これでスキルの確認も済んだ………のは良いのだが、
「……あ」
…そう、今更ながら思ったのだ。
ここに隠れて住めば良いのではないか、と。
「…盲点でした……なんで気付かなかったんでしょう」
別に、ギィと戦いたい訳ではない。むしろ、ギィをなんとかするために危険な進化に踏み込んだのだ。
バレるようならともかく、バレないであろう場所を見つけたのなら、別に進化する必要はなかった。
その点で言えば、海という場所は絶好の場所だ。悪魔、人間、魔物、魔人───その全てが、海に来ることは滅多にない。元々、海に住んでいた存在を除けば、誰にもバレる心配のない最高の場所だ。
……それを、なんで思い付かなかったのか…………
「……はぁ」
思わず嘆息をしてしまうくらいにはショックだった。
……いや、逆に考えよう。十年間に300回以上ギィと遭遇しているのだから、いずれは出会ってしまう可能性もあるのだから、強くなっておいても別に問題はない。
というか、進化途中に危険があるだけで、進化自体に損はないのだから、悔いることではないだろう。
「……そう考えれば、別に気にするようなことでもないですね」
ギィという問題がいる以上、いずれは強くならなくてはいけなかったのだから。
「では、ここを住みやすくしましょう」
うじうじ考えるのはやめて気分を一掃し、新しく私だけの住居及び新図書館を作ることにした。まぁ肝心の本がない状態なので、仮が付くのだが。
家は、外に出たら木材を集めて作るとして、とりあえずデコボコだった地面や壁を『
……
ただ、深く掘りすぎたので整地は近くの場所だけにした。正直、私の元住居どころか、約百年前に悪魔に滅ぼされた国がすっぽり入るくらいまで広げて、深くしたのはやりすぎだった。
だが、そのお陰で本が沢山入りそうなので、まぁ良しとしよう。
次は図書館に必要な木材及び本だが……本は、荒らされてたりしなければ、旧図書館にあるとは思うが……木材は一気に取ったら問題が起こるかもしれない。
海に住むので、問題はないのかもしれないが……一応警戒して、一気に取らないようにしよう。
そう考え、魔法で塞いでおいた穴から地上に向かっていくのだった。
▼▼▼▼
……そして、後悔した。
「よぉ、久しぶりだな」
目の前には、紅い悪魔───ギィがいた。
…なぜ、私が出てきたタイミングで出会ってしまうのか……何らかの因果関係があるとか、そういうことを言われても納得できるくらいだ。
「ええ。久しぶり…というべきなんてしょうね」
「一年も会ってなかったら、そりゃ久しぶりになるだろうよ」
一年……なるほど、それだけの間、眠っていたのか……やはり、
それを再確認し、改めてギィを向かい見る。
目の前のギィは、外見的には一年前と変わったところはない。悪魔なのだから、それも当然だ。
───だが、その内側は大きく変化している。
前のギィならば、ある程度の上限は知れたし、今の私の敵ではないと断言……は出来ないまでも、苦戦するようなことはないだろうとは考えていた。
…だが、今のギィは違う。
「…なるほど?一年も会わなかった間に
「はっ、やっぱりわかるか。そういうお前も、目覚めたみたいだな?」
「さぁ、それはどうでしょうね?」
「しらばっくれるか。まぁ、わざわざ手札を教えるわけねぇか」
───やはり、ギィも
その程度の差なら、十分に覆せるのだろう。普通なら。だが、ギィが相手なら、その油断は死を招くことになる。
だから、なのか。言葉が途切れた瞬間
───戦いは、唐突に始まった。
金属と金属がぶつかり合う音。それがした時には、私は槍を、ギィは剣を持って打ち合っていた。
私たちの戦闘とは、まず言葉から始まり、そして唐突にぶつかり合う。タイミングは自由だ。ギィが先手を取ることもあれば、私が取ることもあった。
その殆どが、私のパワー負けのせいで防戦になっていたので、まともに戦ったことは───打ち合ったことは、一度もなかった。
だが、今回は違う。
幾度も打ち合っているが、未だにパワー負けすることがない。ほぼ互角の戦いを行うことが出来ていた。
魔法も入ればどうなるのかは不明だが、予想では互角の戦いをすることが出来るだろう。
…しかし、今回は剣を使うとは。もし使わなければ、槍に纏わせた
たまたまなのか、それともわかったからこそ使ったのか……
いや、これは必然か。ギィは私が
「はっ!なんだよ、前よりも力増してるじゃねぇか!進化でもしたか?」
「しましたよ。だからこそ、私はあなたと拮抗出来てるんじゃないですか」
「そうだろうなぁ!」
ギィはさらに攻撃する速度を上げていく。もちろん、私も比例して上げていき、ついには全力で打ち合っていた。
今のところ、魔法は使っていないが、代わりに
私が崩壊の槍をギィに向けて振れば、ギィも剣を使って防ぎ、そして崩壊の剣を私に振るう。
───そう、どうやらギィの能力は能力のコピーであるようだった。早めに気づけたからよかったが、これで能力をむやみに見せることは出来なくなった。
ここぞ、という時にしか使ってはいけない。能力を見せれば見せるほど、ギィは強くなっていくのだから。
───だが、強くなる、という点では私も同じだ。
私は、ギィの崩壊が乗った攻撃を浅く、わざと受け、即座に
「あ?」
ギィは訝しみ、動きを止めた。ギィにとって、これは避けられるか防がれる攻撃だとわかっていたからだろう。私も、避けようと、防ごうと思えばどうとでも出来るものだった。
私の崩壊能力は、掠り傷でも致命傷だ。小さな傷から崩壊は侵食し、相手を絶命させるものなのだから、当然だ。これを食らった私も、当然ただではすまない。
掠り傷から侵食していた崩壊は、
「…それでは、ギィ。続きを始めましょうか」
「───く、はははは!おいおい、随分と荒っぽい治療じゃねぇか!おもしれぇ、いいぜ、ここからは本気で相手をしてやるよ!」
…何が面白いのか、ギィは笑いながら今まで抑えていたであろうエネルギーを放出した。本気で、というのは本当らしい……こちらとしては、良い迷惑でしかないのだが。
だが、そちらがその気なら、私も本気だ。ギィを倒すのなら、全力でいくしかないのだから。
私も負けじとエネルギーを放出し、ギィと対抗する。この感じだと、ギィと私のエネルギー総量はほぼ互角。今までは全力を出させることが出来なかったが、今はそれが出来る。
───あとは、私がどれだけ強くなったのかが問題だが……そこは、戦いながら知っていくしかないだろう。
私の得意分野である、奇策、智謀を使い、倒すのみだ。
そう考えながら、言葉を言い放った瞬間には、もう既に動き出していたギィと打ち合ったのだった。
▼▼▼▼
────戦闘は、三日も経ちながら、未だに続いていた。
魔法、スキル、武器を用いて、目の前の相手を殺そうと動いていた。
「これならどうだ!"
「"
ギィが放った崩壊の焔───
───戦闘は、膠着状態に陥っていた。
最初こそ様々な攻撃をして私を追い詰めに来たが、その全てを私は受け、一つ一つの攻撃に対する耐性を生み出し、吸収していった。
必ず、間を置かなくてはならないため、ギィはその隙をつくように魔法を使う。だが、そんなことは折り込み済みであるため、
ただ、同じ崩壊を使ってくるので、崩壊は相殺されても魔法が防げないことが何度かあった。
だが、その魔法も私の結界を越えることは出来ずに消滅した。私の崩壊によって威力が減少したからだろうか。
崩壊は、他の魔法と混ぜると効果が減少する。だが、威力は上がるので、単純な火力を求めるのなら、相性は抜群だ。
だが、私に対する攻撃は殆どが無効になっているが、私がギィに放つ攻撃も、効いてはいなかった。
だからこそ、膠着状態になってしまっているのだ。
だが────この戦闘の中で一番優位なのは、私だった。
どうやらギィは
だが、ギィは未だに本気の攻撃を行ってはいない。それは私も同じだが、どうであれ警戒していたほうが良いのは確かだ。
未だにエネルギーは残っている。油断も慢心もできない。
「はははは!これも防ぐか!」
「……これでは、埒があきませんね」
ギィは一撃でこちらを滅ぼしかねない攻撃もしてくるが、殆どが"
だが、それでも厄介だ。"
私は、そんな綱渡りをそう何度もするつもりはない───だから、次で決める。
そう決めた時には、二対あった翼の内一対が黒く染まっていた。自らの持つ
ギィは私の変化に気付き、そして笑みを浮かべた。
「は───いいぜ、望むところだ」
私が全力の一撃を繰り出そうとしていることに気づいたのだろう。ギィもまた、自らの持つ最強の攻撃を繰り出してくるつもりなのだろう。
ギィは、そういう悪魔なのだ。
「これで、終わりです────"
"
"
混沌の攻撃、というだけあって全ての属性を含んでおりながらも、その属性は含まれていない、という意味不明な矛盾を孕んだ私の最強の一撃だ。
あらゆる防御を貫いて相手に滅びを与えられる攻撃でもあり、ギィでも食らえばまず滅びるだろう。
───ギィがそのまま食らえば、だが。
「"
ギィも同じく、今放てる中で最強の攻撃をしてきたのだろう。その威力は、"
私の"
「……ごふ」
───血だ。私の口から、血が溢れだした。流石に長時間、変異し続けるのは危険過ぎた。
お陰でエネルギーもすっからかんで、身体もボロボロだ。だが……それだけ無茶をしたお陰か───
「──あっははは!俺をここまで追い詰めるなんて、お前が二人目だぜ?」
───目の前のギィも、私と同じかそれ以上にボロボロで、傷だらけだった。今もなんともないように振る舞ってはいるが、間違いなくダメージ量ではギィの方が大きい。無理をしている、ということだろう。
……なにやら、ギィが不穏なことを言っているが…流石に無視した。
「…今回は引き分け、ということで良いですね?」
「あぁ。いいぜ、そういうことにしてやるよ」
…どうやら、ギィは負けず嫌いでもあるらしい。なにやら不貞腐れた顔をしていた。
ふと周りが気になり、見てみれば───更地だった。いや、何もなかったのだ。恐らく、戦いの衝撃や余波で吹き飛んでしまったのだろう。木々があったところも、湖があったところも、全て。
「…………はぁ」
今度から、ちゃんと周りを気にして戦おう───そう誓った。
「それでは、私はこれで」
そう言い残し、私は今度こそ目的の場所である旧図書館に向かうのだった。
……最後にギィが何が言っていた気がするが────気にしないことにした。
最後には引き分けという形でおさまった主人公VSギィの対決。
ギィはこんな感じだったと思うのですが…違和感あったらすみません。