─────二千年。
あれから、約二千年ほどの時が経過した。
ミリムの暴走を食い止め、被害を抑えることに成功してから、二千年。
数千年前とは違い、この世界の勢力図は大きく変化し、国家も多数作られていた。
武装国家ドワルゴン、神聖法王国ルベリオス、魔導王朝サリオン────大きい所を挙げると、この三つの国家が目立つ。
他にも国家は存在するし、この三つよりも大きい東の帝国が存在するが───ルベリオス、ドワルゴン、サリオン────この全てが、人間ではない者が支配する国だ。
東の帝国は人間だけしかいないので、他の三つの国家とは違う。
───まぁ、ルベリオスはそれ以前の問題として、魔王ヴァレンタインが統治しているのだが。
他の魔王が統治している国を挙げると、獣王国ユーラザニア、天翼国フルブロジア、傀儡国ジスターヴに───あとは、国とは違うが竜の都も存在する。
それぞれ、カリオン、フレイ、クレイマン、そしてミリムが統治する国だ。
……竜の都は、魔王ミリムを崇める者たちが住む場所なので、国家というのは違うのだが───
まぁ、それは置いておくとして。
この二千年の間で、勢力図は人間勢力から、魔王勢力へと大きく移り変わっている。
昔と違い、今では魔王の数も増えている。先ほど挙げた五人の魔王が、その例だ。
人間たちからは十大魔王として恐れられているが、その中にはもちろんギィも入っている。
そして、あとの四人は……ディーノ、ダグリュール、ラミリス、レオン────これに六人を合わせて、十大魔王だ。
といっても、魔王だからといって、全員がギィ並みに強いというわけではない。
特にラミリスが弱い。いや、大人になれば強いのだが……今のラミリスの姿は子供。とてもではないが、魔王とは言えないレベルに弱いのだ。
───まぁ、ラミリスの場合だと、戦闘力よりも固有スキルの方が目につくが。あれほど自由度が高いスキルは他にないだろう。
で、私の『目』で見た限り、この十人の中で
そして、その中で覚醒魔王になっているのはギィ、ミリムのみだ。
究極能力を持たない覚醒魔王なら、ヴァレンタインがいるが……究極能力を保有しているのと、していないのとではやはり格差がある。
二人と比べるのは酷だろう。
───さて、では大きく変化しているこの世界で、私は一体何をしているのか?
ギィとルドラの戦いは、未だに続いている。ルドラが東の帝国で戦力を集めているのが、その証拠だ。
私は、あまり変わったことはない。ただ、ギィとルドラの戦いを見続けているだけだ。
6人ほど配下が出来たりもしたが、私は配下自身に干渉したりはするが、その配下を使って、なにかをしたことは少ない。全て自由にやらせている。
半年に一度、実力確認のため模擬戦闘を行ったり、必要ならば精神的な成長を促すために、敢えて追い詰めたりする。
それ以外の時は、私が作った図書館の中で本を読んで暇を潰している。もちろん、監視もしているが。
まぁ、たまにギィが来たりするので飽きることはない。それに、ラミリスとは知り合いになれた。交友関係も、少しではあるが増えているのだ。
ただ、魔王レオンが来たときには戦闘になりかけたが。レオンの方は、求めるものがないと見るや、特に何もせず帰っていった。
───ただで返すのはどうかと思い、一つだけ、レオンが帰る前に『予言』した。
『このままいけば、お前の望む者に巡り会えるだろう。いや、もう既に呼び出されているぞ』と。
レオンもそれが気になったのか、どういうことだと聞いてきたが、生憎言えるのはこれだけだ。
ただ一つ言えるのは、もうこれ以上召喚を行っても無駄だ、ということ。
それだけを伝えた。レオンは無理矢理にでも聞き出そうとしていたが───その究極能力では、私を倒すことは出来ない。
すぐに無力化して、外に放り出した。私を倒したいのならギィ並みに強くなってからにしろ。
────さて、なぜ私はレオンの求める者を知っていたのか?それは簡単だ。
この二千年の間に、私のスキルが進化したからだ。
これによって、私はとある能力を獲得した。
それは未来視。私は、視界に映るものなら、どのような未来でも見通すことができるようになったのだ。
といっても、遠い未来が見れるのは稀で、確実に視れるのは最大一年先の未来のみ。何百年後の未来は、見ることは出来ないのだ。
それに、このスキルは未来の私が見たものでないと、映すことはない。
───つまり、私はレオンが求める者を見た、ということだ。それも、レオンと一緒にいる場面を────
あぁ、因みになんでレオンが召喚を行っているのを知っているのかと言えば、単純に、遠隔視によって見たからに他ならない。
視界を遮る結界でもないと、私の目を誤魔化す事はできない。しかも究極能力にまで至っているのだから、生半可な妨害は通用しない。
それに、室内にいたとしても透視も可能なので、中を見ることも出来る。
まぁつまり、私には筒抜けである、ということだ。
実際、それでラミリスの棲家を見つけて、その中まで見ることが出来た。
例え深くしたとしても、そこに空洞がある限り、何処までも深く視ることが出来るだろう。
───話が脱線したが、ともかく
レオンが来て以降は、特に変わったことはなかったのだが……それから少しして─────新たな魔王が誕生した。
その名は、魔王リムル・テンペスト。
今までに見たことがない、スライムの魔王だった。
▼▼▼▼
新しい魔王の誕生────別に、それだけなら私は気にしなかった。気にする程のことでもなかったからだ。
だが、誕生して数日以内に、その魔王が誕生した場所で、消滅したと思われていた四番目の竜────ヴェルドラが復活したのは気にするべきことだろう。
なにせ竜種だ。ヴェルドラは暴風竜と呼ばれるほど暴れん坊で、様々な場所を破壊し尽くしていたのだから、人間にとってはまさしく天災だろう。
────だが、ヴェルドラは未だに動きを見せない。ヴェルドラが復活してから、数日が経過しているのに、だ。
ヴェルドラの性格なら、すぐにでも暴れだしそうなものだが───なにか、変化でもあったのかもしれない。それも、誕生した魔王に関係する変化が────
ヴェルドラもそうだが、ミリムのことも気になる。今では、どういうわけかクレイマンに操られているフリをしているが……なにか、理由があるのだろう。
近頃のミリムは、魔王リムルが魔王になる前から、リムルの作った国に遊びにいっていた。
戦うことや、壊すこと以外に楽しいことを見つけたのかもしれない。それは、良い傾向だ。
……もしかしたら、ミリムはリムルのために動いているのかもしれない。
ミリムの行動は、今までのことを考えれば不可解だ。
だが、今までにないことがミリムの身に起きている場合、それは不可解ではなくなる。
ミリムは、リムルの何かしらの行動によって変わった、ということだろう。
ヴェルドラも、リムルによって変わったように見える。未だに暴れだしていないのが、その証拠だ。
魔王リムル────なるほど、興味深い存在だ。
数日前にギィから
魔王リムルのことを知る、良い機会だ。
▼▼▼▼
「なので、ちゃんと見て、その上で印象を聞かせてください」
「はい。わかりました、師匠」
『おいおい、あんな魔窟に放り込むかぁ?普通よぉ?』
「大丈夫ですよ。ギィの配下というだけで、愚かな輩が襲ってくることはありません。それに、下手な輩は追い返せるでしょう?」
『まぁ、そうなんだがよぉ?つーか、なんでアッシュを選んだんだよ、他にもいるだろうが。だいた───』
「レジー、ステイ」
『ちょ────ギャァァァ!』
「……ともかく。任せましたよ、アッシュ」
最後に出てくるアッシュとレジー……一体何者なのか───?
まぁ、元ネタは『ロードエルメロイⅡ世』を知ってる方なら知ってる、あのコンビです。