職場体験。俺に指名が入ったのは微か二件。エンデヴァーとジーニアスの二つからきたのだ。そんなわけで、俺とルーミア、轟の三人で事務所にやってきた。
「いらっしゃい。焦凍。それにルーミアちゃんと踏陰君ね」
「よろしくー」
「よろしくお願いいたします」
俺達を迎え入れてくれたのは轟の母親である冷さんだ。
「なんでここにいるんだ?」
「ここで働くことにしたの。焦凍もくるって聞いたから……」
「まあ、いいや。それで親父は?」
「こっちよ」
案内されてエンデヴァーに会う。エンデヴァーはサイドキックの人達を呼んで待っていた。
「それで、お前達のヒーローネームはなんなんだ?」
「俺はショートにした」
「ツクヨミ」
「私はね~」
「ルーミアはヒーローじゃないから、必要ないな」
「確かに」
「ちぇ~」
「ルーミアちゃんはこっちでお茶にしましょ」
「わーい」
ルーミアは冷さんに任せ、俺はエンデヴァーから説明を受けていく。基本的には訓練して、一緒にパトロールといった感じだ。
「さて、これからすることは一通り話した。といっても、正直言ってお前達に教えることはパトロールぐらいだ。戦闘訓練はするがな。二人は前から鍛えさせているからな」
「確かに」
「そういえば、常闇達と親父は知り合いだったな」
「ああ。世話になった。最初、徹底的に鍛えてもらった」
「焦凍と同じだ。常闇もヒーローとなると言ったからな。それにコイツの場合はルーミアのこともある。戦闘能力は必須だ」
「なるほど」
「炎司さん、そろそろ時間ですよ」
「ああ、そうか。二人共、こっちにきてくれ。常闇には無駄になるかもしれんが……」
「かまわない」
連れていかれたのは訓練所だ。そこにサポートアイテム開発会社の人がいた。
「彼等は俺の会社が契約しているサポートチームだ。実はこれを開発してもらった」
「小型カメラか」
「そうだ。みていろ」
掌サイズの小さなカメラだ。それをエンデヴァーが火を放つ。その火が小さな鳥となって飛び上がる。その映像がスクリーンに映し出されている。どうやら、あのカメラが鳥の中にあるようだ。
「どうだ?」
「耐熱システム問題ありません」
「リンクシステム、問題ありません」
「では、温度をあげる」
どうやら、監視システムを作っているようだ。温度をあげたり、下げたりしているので、戦闘のことも考えているようだ。
「次、ナパーム搭載型をためしましょう」
「うむ」
「親父、ナパームはやばくないか?」
「人に使うのはやばいが、
「母さんが?」
「私の氷の"個性"でナパームごと凍らせるの。だから、ルーミアちゃん、私の"個性"、返してくれる?」
「いいの?」
「うん、もう大丈夫。この人の心の中も知れたから……可愛らしいところもあるのよ」
「へー聞きたい!」
「やめろ!」
エンデヴァーが必死に止めにかかると、二人してニヤニヤと笑っている。サイドキックの人も轟もやれやれといった感じだ。
「家でもこうなのか?」
「ああ、随分と仲良くなった。やはり、相手の心がわかるのが大きいらしい。ただ、"個性"が返した後も心配だ。まあ、交換日記をして互いに思う事を伝えあってるから大丈夫だと思うが……」
「エンデヴァーが交換日記……ぶっ」
思わず笑ってしまう。
「そうだな。焦凍と常闇。戦闘訓練をしようか。この鳥から逃げ切ってみせろ。コントロールをミスるかもしれないがな」
「ちょっ!」
「ちっ」
無数の鳥が襲ってくる。それを必死に避けていく。しばらく避けていると、色々とわかったことがある。
「轟」
「親父は動けていないな」
「ああ、おそらく操作に慣れていないのだろう」
「なら、いくぞ」
「うむ」
即座に接近して二人でエンデヴァーに挑む。その瞬間、目の前に巨大な火の鳥が出現した。その口に火が収束してブレスを吐く。轟が氷の壁を作って防ぐが、すぐに溶けてしまう。その時に火の中をマントを盾にして突入する。
火を超えて刃の潰した刀でエンデヴァーに狙う。しかし、真剣白刃取りで止められてしまった。
「思いっきりがいいのは認めるが、危険だぞ」
「多少の怪我ならば再生できるので」
「まあ、お前の場合、ルーミアがいるからな。最悪、融合すればいい」
「はい」
それから、轟の氷も炎もみてもらう。ルーミアも一緒に勉強している。教師はエンデヴァーと冷さんだ。俺はサイドキックの人達と模擬戦をしていく。
あちらは氷と火の動物園状態だ。特訓が終われば五人で外にでる。
俺は幼女モードのルーミアと手を繋ぐ。エンデヴァーと冷さんの間に轟が入って前を進んでいる。食事をしてから、パトロールしていく。パトロールの方法を教わり、注意事項などを聞いてそれを実戦していく。
そして、それは思ったよりもやばかった。
「ヒーロー殺しを捕まえにいく」
ヒーロー殺し、ステインのことを忘れていた。しかし、オール・フォー・ワンは倒した。残っているのは死柄木弔達だけだ。今回の件で大きくなるだろうか?
黒霧
「お待ちしておりました」
「ご苦労様です」
私が迎えに来たのは一人の少女。彼女はシスター服を着ている。金色の髪の毛に翡翠のような綺麗な碧眼。彼女は現在、我々が潜伏している教会のシスターだ。もっとも、その狂信っぷりから異教徒を監禁し、衰弱死させて破門されているのですが。
「それで、死柄木弔はどうしていますか?」
「ようやく落ち着きました。その間に戦力を集めてくれましたか?」
「ええ、もちろんです。私も先生にはとても世話になりましたから。主も仰っておられます。受けた恩義は返すようにと。ただし、わかっておりますね?」
「はい。我々は貴女と同じ神を信仰します。故にお助けくださいませ」
「ならばなんの問題もありません。あのルーミアなる悪魔はわたくしが滅ぼすお手伝いをさせていただきます。私の手にかかればかの者の不死性を消滅させられます」
「ええ、それさえしていただければ後はこちらでどうにかします」
「それなら結構です。私は戦闘能力はあまりありませんからね」
「しかし、こと防御に関しては貴女はトップクラスじゃないですか」
「ありがとうございます」
「おい、まだか?」
教会には複数の方々が入ってきました。彼等は様々な服装の方々がいらっしゃいます。中には軍服を着ている人もいます。どの方々も姿こそ若いが、歴戦の方々だ。なにせ、本物なのですから。
「彼等を連れ出してくれたのですか」
「ええ、苦労しましたよ。ですが、皆は先生の世話にもなった方々です」
「奴が日本で収まるならそれでいいのだが、その可能性わからぬ。ならば、狩れる時に狩るのみ」
「確かにそうですね。それではよろしくお願い致します。各国の
「くすくす、我等が勇者? 大量虐殺を行うのに?」
「ええ、そうです。大儀をなすのには犠牲が必要ですから」
「そうだ。俺達の目的は一つ。ルーミアをぶっ殺す。そのために日本という国を地獄に変える」
死柄木弔も立ち直ってくれたようです。ルーミアを殺す準備はしっかりとしないといけません。その手段は用意できました。シスターと私の力があれば勝てます。彼女の力はルーミアにとって天敵なのですから。いくら人の負の感情をもって無限に再生しようが、その素がなければ意味がありません。といっても、時間を与えれば確実に壊されるので、短時間で相手を殺し切る手は用意しないといけません。そのため、各国の指名手配
「……日本なら、私を怖がらない人……いるかな……」
ヒーローは魔王を殺せません。殺すのは