強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士
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ズム・シティにて

 ユウ・カジマ少尉の第11独立機械化混成部隊が所属している艦、改ペガサス級強襲揚陸艦イカロスに、カジマ少尉をこちらで保護した事を連絡した。いや、連絡したのはレビル将軍の名前で、ペガサスの通信士がやったんだけれど。向こうはカジマ少尉が無事だった事に、喜んでいたそうだ。

 ちなみに医療班からの報告だが、カジマ少尉は自身が軽傷と診断された事を知ると、再出撃するから機体を貸せと交渉してきたらしい。あの無口男が交渉……どうやったんだ。まあ、こっちの艦には余っているMSは無い。それに診断が軽傷とは言え、精密検査したわけでは無いんだ。少しじっとしておけ。

 と言うわけで、補給も済んだのでレビル将軍直卒部隊の第1、第3小隊は再出撃だ。まず俺のアレックス3から出るのはいつも通りだ。と言うか、敵の大型MAに斬り込まれて第2小隊がヤバいらしい。急いで出なければ。

 

『ゼロ中尉、進路クリア!出撃願います!出撃後は、第2小隊を支援して敵大型MAを排除してください!』

「ゼロ・ムラサメ、アレックス3!出撃する!」

 

 既に慣れてしまった、カタパルトのGを感じて、俺とアレックス3は宇宙空間に躍り出る。そして全天モニターに大写しになった敵の大型MA……。ビグロの下に、パラソルの様な巨大スカートを取り付けた、真っ赤なMA……。MA-05Adビグ・ラング……。

 周囲にはモビルポッド、MP-02Aオッゴが多数飛んでいる。それに2機のEMS-10ヅダ……。正確には片方はヅダ指揮官用だが。まさかビグ・ラングに乗ってるの、オリヴァー・マイか!?第603技術試験隊まで投入してるのか、ジオンは!?

 あ。グレーに塗られた高機動型ゲルググまで来た。あれはヘルベルト・フォン・カスペン大佐か。間違いなく第603技術試験隊だわな。それはともかく……。

 ビグ・ラングはあちらこちらに思いっきりビーム撹乱幕をまき散らしてやがる。第2小隊は、G-3仕様の基本装備のガンダムだ。3機とも。当然主武装はビームライフル。ビーム撹乱幕のただ中で使える武装は、頭部に装備されたバルカンしか無い。でも白兵戦用の補助火器だから威力も残弾数も少ないんだコレが。

 そうして第2小隊の攻撃を封じ、実弾兵器のヅダやオッゴが攻撃をする。よく考えられたコンビネーションだ。第2小隊は機体にこそダメージは無いが、シールドは既にボコボコになっている。それでもビームサーベルなどで応戦し、数機のオッゴを沈めている様だ。……オッゴは、学徒兵だったか。だが……敵だ!

 俺のアレックス3は、シールドを背中に、ビームライフルを腰にマウントすると、両腕の90mmガトリングを展開した。

 

「アレン中尉!」

『はあっはあははは、ゼロ中尉殿か!ザザザッ!』

「あんたまで「殿」はやめてください!うおおおぉぉぉ!!」

 

 俺は2門の90mmガトリングで、ヅダ2機を連続して墜とすと、オッゴ数機を穴だらけにする。オリヴァー・マイ技術中尉がオープン回線で喚いた。

 

『や、やめろおザザッぉぉぉ!やめてくれっ!』

「……。」

 

 それには応えない。甘いんだ。そっちが攻撃して来たんだろうに。ビグ・ラングのガトリング砲とミサイルを見切って躱し、両手で二刀流にしてビームサーベルを抜く。抜いただけ。そのまま再度、両腕の90mmガトリングを展開、ビームナギナタで斬りかかって来たカスペン大佐の高機動型ゲルググに、至近距離から叩き込む。

 穴だらけになったが、高機動型ゲルググは力を失って漂流を始めた。致命的な場所にはあたらなかったのか、爆散はしない。断末魔の声も聞こえなかった。実はヅダ2機の時も、断末魔の声は響いて来なかったから、もしかしたら脱出には成功してるのかも知れなかった。オッゴは全機、パイロットが死んだことを確認済みだが。

 そして改めて、俺のアレックス3はビグ・ラングに斬りかかる。所詮は動きの鈍い大型MAであり、試作品と言うよりは実験機でしか無いため、死角も多い。何よりパイロットは慣れない技術士官だ。……ゲーム『アクシズの脅威V』だと、成長するとかなりのパイロットに変貌するのだが。

 ビグ・ラングの胴体スカート部分は、やがて爆散する。その際、頭部になっているビグロが吹き飛ぶ。だが外れたからと言って、それがビグロとして別個に使えるわけでは無い様だ。ビグロ部分もまた、漂流を始めた。と、ここで俺は近場の宇宙空間に浮いている、2人のパイロット用ノーマルスーツを発見する。ノーマルスーツはジオン軍の物だ。

 一方は意識が無い様で、動かない。もう一方はそれを背負っているため片方の手は使えないが、残るもう片方の手を高々と挙げ、敵意が無い事を示す。俺はそちらに機体の手を差し伸べた。やつらは右掌の上に乗ると、接触回線で通話してきた。

 

『降伏する。こちら、ジオン公国軍、第603技術試験隊所属、ヒデト・ワシヤ中尉。こちらは気絶しているが、モニク・キャデラック特務大尉。

 ……頼むよ、降伏するから、あの漂ってるMAの中にいるオリヴァー・マイ技術中尉を助けてやってくれ。お願いだ。あいつにも、ちゃんと降伏させるからさぁ……。頼む、頼むよ。お願いだ……。』

「……少し待て。」

 

 俺のアレックス3は、第2小隊の隊長機であるアレン中尉機の肩に左掌をのせて、接触回線で会話する。

 

「アレン中尉、降伏した敵パイロットから、敵兵の救助要請を受けました。あの巨大MAのビグロ部分に、コクピットがあるらしいです。それと、あのゲルググ乗りも、おそらくまだ生きてます。……補給に戻る前に、お願いできますか?」

『……いいぜ。最初の頃に、第2はお前さんの指示に従う約束してたからな。まだレビル将軍がここに居ない以上、指揮権の最上位はお前って事になるからな、ははは。

 まかせろ。だけどその時間をロスする分、お前さんが余計に働けよ?』

「……了解。ははは。

 ワシヤ中尉、だったな。そっちのガンダムの手に乗り移れ。そっちのアレン中尉が、助けてくれるからな。」

『……ありがとう。ありがとう……。』

 

 俺はワシヤ中尉たちをアレン中尉に任せると、ペガサスの前方の宙域に向かい、自機を飛翔させた。そして余計に働いた。

 

 

 

 俺がアレン中尉たちの分まで余計に働いて大量に殺しまくり、それにバージルと第1小隊が合流してきた頃合いに、それは起こった。周囲に広域レーザー通信で、大音量で、女の声が響き渡ったのである。レーザー通信なので、ノイズは無いに等しかった。

 

『あたしはジオン公国軍海兵隊司令官代理、シーマ・ガラハウ少佐。海兵隊は、地球連邦軍に降伏し、これよりレビル将軍の指揮下に入る!我々は現在、サイド3ムンゾの1バンチコロニー、ズム・シティの全宇宙港を制圧し、掌握している!地球連邦軍は、速やかに入港されたし!』

 

 全ジオン軍は浮足立った。そしてシーマ少佐は、自分が催眠ガスだと騙されてGGガスを使い、サイド2コロニー、アイランド・フィッシュの全住民を皆殺しにしてしまった事を証言する。そしてそれ以来、アサクラ大佐の命の元、様々な汚れ仕事を押し付けられて来た事を証拠映像付きで放送した。

 

『ジオン公国軍に告ぐ!あんたらが信じているジオンの大義なんてのは、こんなもんだ!上は自分の権力や栄達のためなら、同胞を使い捨てにする事すら厭わない!綺麗ごとで上っ面を塗り固めてねえ!結局、地球連邦と同じ、いや実際に殺してる分だけジオンの方が悪どいよ!

 あたしの故郷のスペースコロニー、ここの3バンチコロニー、マハルなんて……。強制疎開の上でコロニー・レーザーなんて役に立たなかったトンデモ兵器に改造されちまった!住人は財産を持ち出す事すらできず、ちょっとした手荷物程度だけで、着の身着のまま他のコロニーに分散させられたんだ!地球連邦がやった、宇宙市民の棄民政策と、何が違う!?』

 

 シーマ少佐の声は、最後の方は涙声だった。当初浮足立ったジオン軍は今は悄然とし、ある者は逃亡を選び、ある者はその場で降伏信号を打ち上げる。ジオン軍の士気は、完全に崩壊していた。

 

 

 

 俺たちは、非常に簡単に、とても楽にズム・シティの宇宙港に入港した。そこでは海兵隊のMS-14Fゲルググ・マリーネ、MS-14Fsゲルググ・マリーネ指揮官用の群れが、親衛隊のリック・ドムⅡと決死の戦いを繰り広げている。親衛隊はあの放送後も、未だに士気を保っており、意気軒高だ。

 

『シーマ少佐、ザザッくやってくれた。本当に……。辛かっただろうにザザッ。』

『レビル将軍、あたしらの処遇、よろしくお頼みしまザッよ。連邦市民としてザッ新しい戸籍と、新しい顔。そして連邦軍人としての立場ザザッ。』

『うむ、任せてザザッ。ワイアット中将、ゴップ大将の全面的協力ザザザッ取り付けてある。絶対に悪い様にはせん。何だったら今の言葉を記録しておいてザザッ良いとも。』

『無論、しておりますわ、将軍。ザザザッ。』

 

 後で聞いたところによると、この一連の流れの脚本は、シーマ少佐本人の手による物だそうだ。それを彼女は、連邦軍の諜報部を介してレビル将軍と接触した際に、将軍に提案したんだそうだ。

 女は怖い、かもしれない。でも、今もシーマ少佐の眼は赤い。少なくとも、本気で泣いてたのは確かだ。俺はアレックス3を操り、親衛隊のリック・ドムⅡを連続して撃墜する。海兵隊のゲルググ・マリーネの1機が、コロニー内部へ続く大扉に取り付いて、開放した。

 実は俺は、コロニーの中を見るのは初めてだ。天にも地にも、街並みがある。円筒状の人工の大地。だが、感動している暇は無い。扉を開放したゲルググ・マリーネが砲撃の直撃を受けて大破する。

 ……コロニー内で、あんな化け物使うのかよ!阿呆か!?遠目で確認できたのは、地上用MSのYMS-16Mザメルだった。今ゲルググ・マリーネを大破させたのは、その68センチ・カノン砲だ。俺はコロニーの中へとアレックス3を飛び込ませる。建物の陰に隠れている親衛隊のMSから、火線が次々に伸びて来る。無論ザメルからも、デカブツの大砲の弾が飛んでくる。

 俺はAMBAC機動で、サクサクとその攻撃を躱す。ザメルの砲弾が天井の街に被弾し、被害を与えているのは心が痛まなくも無いので、直系6km強の円筒形の空間を縦横に飛翔しつつザメルを狙撃し、3発のビームを叩き込んだ。ザメルは爆散する。

 よく勘違いされているのだが、スペースコロニーの内部は無重力だ。コロニーの人工重力は、コロニー外壁を回転させることによる遠心力で重力に見せかけているだけなので、外壁の動きに追随せずに内部を飛んでいれば、無重力のまま飛べるのである。もちろん回転している地面に着陸し、遠心力の影響を受ける様になれば、遠心重力が働く事になるが。

 アレックス3の真後ろに、レビル将軍のアレックス1が飛んでいる。そしてシーマ少佐の専用機であるゲルググマリーネ指揮官用が更にその後に続いていた。俺はレビル将軍に念話を送る。精神から例の頭痛は切り離しているのだが、身体の方は非常に頭痛が痛い。

 

(将軍、「視え」ますか!?ズム・シティ公王庁舎の前の広場です!)

(うむ。……ギレンだ。……済まぬが、奴は私に任せてくれるかね?)

(了解。周囲の露払いをしてます。)

 

 そして俺は、シーマ少佐に声をかける。

 

「シーマ少佐!将軍がギレンと戦っている間、周囲の奴らを近づけないでいただきたい!やれますか!?」

『誰に物をお言いだい!そっちこそ、足手まといになるんじゃないよ!』

 

 シーマ少佐機は、アレックス3の脚に触れて接触回線で声を届けて来る。そして俺たちは、互いに申し合わせたかの様に左右に分かれた。俺の方には第1小隊のツァリアーノ中佐、ラバン、そして第3小隊のバージルが、シーマ少佐の方には海兵隊のゲルググ・マリーネ数機が綺麗なフォーメーションを組んで追従する。

 俺は公王庁舎前広場に屹立している1機のMS……MS-18Eケンプファーの右側に隠れ潜んでいる、10機のMSを次々に狙撃した。気配がモロバレなんだよ!そのうち7機が爆散し、3機が小破から中破で隠れ場所から燻り出されて来る。それをツァリアーノ中佐、ラバン、バージルの3機のジムスナイパーⅢがそれぞれ1機ずつ破壊した。

 1テンポ遅れて、ケンプファーの左側に潜んでいた親衛隊機がわらわらと出現したところを、海兵隊のゲルググ・マリーネたちが次々に餌食にした。そして俺たちとシーマ少佐の海兵隊たちは、ケンプファーの周囲を十重二十重に取り囲む様に着陸する。

 レビル将軍は、オープン回線及び外部スピーカーでそのケンプファーに声をかけた。

 

『……ギレン、これが最後通牒だ。降伏しろ。』

『くくく、断る。既に返答は行っていたはずだが?』

『そうか。なら是非も無い。』

 

 そう、このケンプファーには、ギレン・ザビ当人が乗っていたのだ。俺は湧き出る悪意の焦点を探り、それを感知したのである。……やっぱり『ギレンの野望』系の世界だ。レビル将軍だけでなく、ギレンもMS乗れるのか。

 

『まて、レビル。何故この機体に乗っているのがわたしだと分かった。……貴様がニュータイプに覚醒したと言う噂、事実だった様だな。』

『……ふう。私はニュータイプでは無い。いや、本物のニュータイプが存在するのかすら、怪しいと思う。力だけでは、ニュータイプとは言えぬよ。

 だが私は諦めておらぬ。いつか本物のニュータイプが現れる事を。その礎とならん事を。そのためにも……。ギレン、貴様を倒す。』

『よかろう。相手をしてやろう。』

 

 そしてレビル将軍のアレックス1と、ギレン・ザビのケンプファーは激突する。だが、この戦いの結末は見えていた。MSに乗り、最前線で戦い抜いて来たレビル将軍と、公王庁舎の奥に隠れ潜み、陰謀にかまけていたギレン・ザビ。実力には天と地の開きがあった。

 わずか数合。それが限界だった。ギレンのケンプファーは、コクピットをビームサーベルで貫かれ、地に落ちる。その姿は、『機動戦士ガンダム』第1話の、アムロ・レイのガンダムと、デニム曹長のザクが戦った姿の、焼き直しであった。

 

(まさか……な。あれだけ失望、いや絶望していた父上と……。相手にしてすらいなかったドズル……。やつらに私の理想の実現を託す事になろうとは……。セシリア……。)

 

 !?……なんだ今の思念は!!ギレンの死に際の声だ!!父上……って、デギン公王と、そしてドズル・ザビ……。ドズルは……この戦いに一切合切出て来ていない!?あ!!デラーズも気配すら見えない!!まずいまずいまずい、かも知れない!?

 

(レビル将軍!デギン公王、ドズル・ザビとその一子ミネバ・ザビ、そしてギレンの腹心のセシリア・アイリーンと、エギーユ・デラーズ大佐!早急に見つけて捕らえてください!

 今気配を探ってみましたが、デギンやミネバ、セシリアが気配が薄くて感知できないのは仕方がないとして、ドズルやデラーズが、見つからないんです!まずい、です!)

(!!……うむ、早急に探させる!)

 

 レビル将軍はペガサスに連絡を取り、ペガサスを中継して全軍にドズル、デラーズ、デギン公王などの捜索を命じた。だがデラーズが指揮するギレン座乗艦のグワデン、ドズル座乗艦グワラン、そしてデギン公王のグレートデギンの、3隻のグワジン級戦艦は、既にその姿を消していた。

 いや、もしかしたらこの会戦にすら参加していなかったのかも知れない……。

 

 

 

 宇宙世紀0080、1月1日。一年戦争と呼ばれる凄惨な殺戮劇は、地球連邦軍の圧倒的な勝利で幕を閉じた。しかし、俺たちは知っている。俺たちが致命的なミスを犯した事を。この世界に、地球圏に後顧の憂いを残してしまった事を。




一年戦争編が、ようやく終わりました。あー、疲れた(笑)。
ですが、デギン公王とドズル一家、セシリア・アイリーン、デラーズ一党が何処かへ逃走いたしました。さて、今後どうなることやら。







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