強化人間物語 -Boosted Man Story-   作:雑草弁士

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注意!今回は、出だしから著者の趣味丸出しで、ベタベタの甘々です。


ひとときの休息と

 レイラの元気がない。先日、俺が改造エルメスの実験で倒れてからだ。いや、倒れた事それ自体はなんら心身に影響なく、診断に問題無かったから、それは解決してるんだ。基本的に。まずは。いや、彼女はそれもやっぱり気にしてはいるっぽいけど。

 問題は、彼女が「もうこんな実験は駄目だ」と怒った事らしい。元々は、たしかにサイコミュの支援欲しさにエルメスを欲したのは俺だった。だけど、開発部が研究データを欲しがってるだろうから、そこを突いてはどうかと進言してきたのは彼女だった。レイラが気にしてるのは、それを置いといて、ついつい俺と研究員に怒ってしまった事だったりする。特に俺に。

 気にしてはいない、と言ってやったところで、これは彼女自身の心の問題であるから解決はせんだろうし……。実際に、あの件を進言しちまった事自体も気になってるのかな。あー、倒れたりする方法、採らなければよかったのにな。後悔先に立たず。

 とりあえず、俺は人工重力区画へ出向く。そしてそこで食パン2枚を適当な大きさにカット。でもって宇宙では貴重な生鮮食品である卵2個を割りほぐし、砂糖を加えて泡立て器でもって混ぜて、これまた宇宙では貴重な生乳100%の牛乳を加え、よ~く混ぜる。あと、茶こしで漉す。

 んでもって次に、耐熱容器2つに、カットした食パンならべて、そこにさっき作った卵液を流し込む。んで、食パンが卵液を吸い込むのを、じ~~~っと待つ。で、アルミホイルかぶせてオーブントースターへ放り込む。220度で20分程度。ちょっと焼き色を見て、うん、完成だ。

 ちなみに、ここまで半ば無意識。……俺は何をやっておるのだろう。まあいいや。せっかく作ったんだ。できあがった品を持って、俺はレイラの私室へと向かう。で、インターホンを鳴らした。

 

『……ゼロ?』

「ああ、開けてくれるか?」

『あ、ちょ、ちょっと待ってね。』

 

 さすがに、気配で俺だと読んだらしい。慌ててドアを開ける気配がした。……なんか、よく眠れてなかったのかも知れない。目の下に、隈ができている。

 

「……なあ、朝飯まだだろ?いっしょに食おう。」

「う、うん……。」

「これ、作って来た。」

「……えっ!?ゼロが!?」

「ああ。」

 

 自慢げに、俺は作って来た代物を披露する。

 

「わあ、パンプディング……。」

「熱いから、気を付けてな?」

「あ、うん。」

 

 俺たちは、できたてのパンプディングを食べ始める。

 

「熱っ!」

「おいおい。」

 

 熱いと言ったのに。だけどレイラは、再びスプーンを口に運んだ。

 

「美味しい……。」

「手前味噌だが、なかなかいい出来だったな。」

 

 2人であっという間に、パンプディングを食べ尽す。熱さも、ほとんど気にならなかった。まあ、ちょっと口の中を火傷はしたが。ふと見ると、レイラが口の中を痛そうにしていたので、キザな考えが浮かぶ。

 

「痛そうだな。」

「ええ、ちょっとね。うふふ。……!」

 

 その可憐な唇を、俺の唇で塞いでやった。いや、レイラも気づいてはいたんだ。ニュータイプ能力者だし。レイラが気付いていて、受け入れてくれた事を、俺も感じていた。

 

「……ふう。」

「……ふう。」

「なあ、少し眠ったらどうだ?ブランリヴァルに乗艦1時間前には、起こしてやるからさ。」

 

 レイラは、少し逡巡したが、頷く。

 

「うん。」

「んじゃ、ホレ。」

「うにゃ!?」

 

 レイラのベッドの上に座り、あぐらをかく。ああ、無重力だから身体をベッドに縛る固定帯も使った。

 

「ひ、ひざまくら?」

「ああ。」

「ちょ、ちょ……。」

「任せろ、完璧だ。」

 

 赤くなったレイラは、それでも頑張って気力を振り絞り、ベッドに固定帯で身体を固定し、俺の膝を枕に横になる。いや、俺が言い出したら聞かないって、わかってるからなんだけどな。俺はレイラの頭を、そっと撫でてやる。柔らかい金髪が、手に心地よい。

 やがて、いつの間にか彼女は寝入っていた。さすがに寝不足だったんだろう。このままだったら今日の実機演習、MS搭乗前の体調チェックで撥ねてやらんといけなかったところだな。俺は撫でる手を止めた。……なんかうなされてる。もう一度、撫でてみる。あ、うなされなくなった。

 結局俺は、レイラを起こすブランリヴァル乗艦1時間前まで、彼女を撫で続けた。ちなみに彼女はその後のルナ2近傍宙域での実機演習で、物凄く調子が良く、危うく俺が撃墜判定もらうところだった。いや、結局は勝ったけど。レイラは悔しそうにしていたが、それでも笑顔だった。元気が出た様で、一安心だった。

 

 

 

 まだ新しい任務はこない。なんか訓練漬けだった気もするので、今日はお休みだ。そう通達したら、部隊の面々は歓声を上げて喜んでいた。やはりストレス、溜まってたんだなあ。人工的ニュータイプ感覚で感じてはいたんだが、ちょっと機動に不安な点がある部隊員がいたんで、いつ出撃かかるかわからんからと思って……。

 満足いく出来になるまで特訓したんだが、やりすぎだったかもな。少し反省。けど、言い訳させてもらえれば、いざ出撃して、機動のアラが原因で死なれたら、後悔でたまったもんじゃないからなー。

 でも絞り過ぎた。反省。

 んで、子供たちと過ごそうかと思ってレイラを誘ったら、予想外の返事。

 

「え?ゼロ聞いてなかった?あの子たち、今日は育児センターでできた友達と、ルナ2基地の見学コース回るって……。コーリー軍曹が、アーヴィンと過ごせないってボヤいてたじゃない。」

 

 見学コース……この基地にあったのか、ンなもん。あ、俺の部屋の端末にメールがきてた。今日は出かけてて居ないって……。チェック漏れだったか……。

 気分的にしょんぼりしながら、どう休日を過ごそうかと悩む。……まずい。完全オフの休日って、何すればいいんだ?俺、もしかして社畜?いや、連邦軍は会社じゃない。……ワーカホリック?こ、これは当たっているんじゃ?

 そうだ!!

 

「あー、レイラ。よかったら今日、俺とちょっとした訓練に付き合ってくれないか?」

「訓練?いいけれど、今日は完全オフにするんじゃなかった?」

「ああ。だけど、普通の日じゃあちょっとやりづらいんでな……。」

「了解です、少佐殿。うふふ。」

 

 と言うわけで俺は、レイラを伴ってルナ2の地表に出た。ちゃんと届けを出してある。パイロット用ではなく一般用の重装のノーマルスーツと、ラウンドムーバーと言う宇宙遊泳用の機材を借りだし、宇宙遊泳の訓練と言う名目だ。いや宇宙遊泳はするがソレが目的じゃない。

 ラウンドムーバーのスラスターを噴射させ、ルナ2の地表から離れる。ある程度離れたら、そこで浮いたまま、のんびりと宇宙を眺めた。レイラがノーマルスーツ同士の接触通話で、話しかけて来る。

 

『もしかして、宇宙空間でのんびりしたかったの?』

「それもある。でも訓練てのも嘘じゃないんだ。……レイラ、意識を「宇宙」にゆだねるつもりで、そっと「広げて」行ってみてくれないか?」

『……あ。』

 

 以前も言った気がするが、宇宙だと四方に感覚が、フワァって広がる気がするんだよな。それが、こうやって直接宇宙に出てると、余計にはっきりと感じられる。俺は接触通話ではなく、念話でレイラと交信した。

 

(どうだ?)

(うん、感じるわ。ルナ2の人たちの存在。そして宇宙の……。なんと言ったらいいのかしら?宇宙の……。)

(わかる。言葉にはしづらいが、フワァっと感覚が広がる気がするだろ?)

(ええ……。)

(その感じに「乗せ」て、感覚をどこまでも、は無理だが……。可能な限り広げてみてくれるか?)

 

 レイラと俺は、いつしかサイコミュの支援なしで共振現象を起こしていた。負担もほとんどない。これならば、倒れる事はあるまい。なんだ、こうすれば良かったのかよ……。いや、俺とレイラみたく相性良くないと駄目かも知れんし、意識から切り離された頭痛はうるさいが。

 宇宙空間に投影された意識体の胸元に、レイラの意識体が頭を預けて来る。肉体も同様に、俺の胸元にレイラが頭を預けている状態だ。暖かい……。

 ルナ2基地の中で、見学コースを歩いているフラナガン機関救出組の子供たちが、こちらの気配に気づき笑いかけて来る。おいおい、お前らの隣の子たち、お前らが虚空に笑いかけるんでびっくりしてるぞ。あ、いや、何人か素質がある子もいるな。薄々だが、俺とレイラの気配を感じ取ってる。

 ユウとマリオン軍曹が、お茶してる。あ、マリオン軍曹がこちらに気付いた。さすがに気付くわな。子供らの能力レベルでも気付くんだし。ユウもマリオン軍曹から教えられて、こっちに敬礼してやがる。

 ブリジット伍長とウェンディ伍長、なんでいっしょに座禅なんか組んでるんだ?もしかして、ニュータイプ能力鍛えようとか、してないか?鍛えるなら、宇宙遊泳がいいぞって、あ、教えて無かった。2人とも、こちらに気付いて敬礼したけれど、そのまま座禅続けるみたいだな。

 他にもルナ2にいる、ニュータイプ能力に目覚めつつある者たちや、その素養のある者……。なんとなく、漠然と俺たちの気配に気づいたみたいで、でも気配に気づいただけで見つけられないみたいだ。

 

(そうなんだよな。ニュータイプ能力で相手の事探ってたりすると、それを相手側からも知られたりするけれど、あたりまえなんだよな。「分かり合う」ための、ニュータイプを補助するための、そんな能力なんだから。そんな能力であるはずなんだから。)

(一方的な、そんな能力じゃないって事ね。……でも、そんな能力を戦いのためにしか使ってない。悲しいし、哀しいわね。)

(そこまで悲観することも無いさ。少しずつでも、俺たちは前に進んでる。今、唐突にそう思った。そう感じた。安心や楽観はできないけれど……。繰り返して言うが、そこまで悲観する事じゃなさそうだ。)

 

 念話とかじゃなく、レイラの心が俺の心に触れる。その際俺が、「実験」により壊されてしまったこの世界本来の『ゼロ』と、それに呼び込まれた何処かの世界の魂の融合したモノである事を知られてしまったが、心配はしていなかった。いや、「もう」心配はしていなかった、と言おうか。

 レイラは驚いた様だが、動じはしなかった。彼女の意識が、そっと俺の意識を抱きしめる。彼女は、言わなくても伝わる事を、あえて言葉にして言ってくれた。

 

(好き……。)

(ああ、俺もお前が好きだ。愛してる。)

(わたしも、貴方を愛してる。)

 

 ここが宇宙空間で、肉体がノーマルスーツ着てるんでキスできないのが、たまらなくもどかしかった。意識体ですればいいとか言う奴がいるかも知れないが、俺たちはしょせんオールドタイプだ。肉体という枷、器、そういう物があってこそ、なのだよ。うん。

 

 

 

 あー、頭が痛い。がんがんする。ヘビが頭の中でうねってる。頭が割れるー。でも、レイラが看病してくれるんで、幸せかも。でも痛い。俺はベッドの上で、呻いていた。

 

「もう、無理するから……。」

「面目ない。」

 

 うん、俺は強化人間だし。でもさ、それでもニュータイプ能力による交感は意味があると思うんだ。たとえ人工的で、たとえ事後に強烈な頭痛が襲うとしても。だけど……。

 

「だけど、やっぱり治るんなら治ってほしいよな……。」

「……決めたわ。わたしが治る方法を見つけてあげる。必ずわたしが、貴方を治してみせる!約束する!!」

 

 俺は微笑んで頷く。レイラはその俺の笑みを見て、ちょっと赤面しながら自分も微笑んだ。

 

 

 

 レビル将軍から、第42独立戦隊および「オニマル・クニツナ」隊に、新たな任務が言い渡された。旧サイド5暗礁空域の外縁部に存在する、破壊されたコロニーに敷設され、その後放棄された小規模な連邦軍宇宙基地の調査と破壊である。

 これは前回、第42独立戦隊に本来所属していたMS隊が、致命的打撃を受けて再編成を余儀なくされた任務だ。ぶっちゃけた話この宇宙基地は、ジオン残党に占拠されてその拠点の1つとなっているのだ。そしてそのジオン残党は、仮称デラーズ・フリート……今はまだ仮称でしかないのだが、それと協力関係にあり、早晩合流すると見られている。

 まあ、仮称デラーズ・フリートと協力関係にあるのは一目瞭然だよな。だって前回第42独立戦隊を急襲したのは、その仮称デラーズ・フリートの哨戒艦隊だし。

 俺たちはブランリヴァルのブリッジで、会議を行う。

 

「ブライト艦長、前回はどうだったんだ?」

「MS隊を発艦させて、基地を包囲し攻撃しようとしたところで、待ち構えていたかの様にチベ級重巡1隻、ムサイ級軽巡2隻、ムサイ後期型軽巡1隻が出現した。既に艦載MSを発艦済みで、こちらを包囲下に置くオマケ付きだ。」

「それでも互角に戦ってはいたんです。MS隊の性能では、こちらが上でしたからね。ですが徐々に押されて行って……。前艦長がそのとき倒れて。」

 

 オペレーターの情け無さそうな声に、俺は眉を顰めた。

 

「それでボロ負けを、ブライト艦長の大活躍でなんとかしたわけか。……クサいな。敵艦が待ち構えていたかの様に……いや、待ち構えていたのが。」

「俺もそう思う、ゼロ少佐。」

「またも情報漏れ、じゃないのか?いや、レビル将軍派閥に潜り込ませる必要は無い。ルナ2基地にスパイがいればいい事だ。」

 

 情けないのは、そのスパイが敵のじゃなくて、味方の他派閥の者である可能性が高い事だな。困ったもんだ。その事は、ブライト艦長も言わずとも分かっている様である。

 

「つまり俺たちは、出撃と到着日時がバレている物として、行動しなければならんのだな。やれやれ。」

「だが、今回は俺たちにも秘密兵器がある。オペレーターの、ええと……パウラ伍長、頼む。」

「はい。」

 

 大型モニターに、1機のMSの姿が映し出される。

 

「RMS-119アイザック……。ハイザックがベースになって開発された、早期警戒機仕様機だ。ジオンが一年戦争で使用していたMS-06Eザク強行偵察型や、MS-06E-3ザクフリッパーの、事実上の上位機だと思って良い。俺の乗っているガンダムNT1アレックスに比肩する運動性とパイロットへの追随性、MSとしては化け物じみた航続距離、そして信じ難い高速性を持つ豪華版のMSだ。」

「いわゆる、『我に追いつくガンダムなし!』と言う奴か。」

「更にこれに装備されているカメラガンは、解像度も倍率も何もかも、艦載の望遠レンズを超越している。レドームも背負っているし、センサー系は化け物じみたどころじゃない、化け物そのものだ。

 しかもMSとしては珍しく、ミノフスキー粒子広域散布機能もあるから、発見されづらい。……これで武装がビームサーベルだけでなかったら、マリオン軍曹乗せてるところなんだがな。」

「上手くいかんものだな。」

 

 俺は頷いて言う。

 

「今度はこれが、2機この艦に配備されてる。部隊の予備機として配備されてた2機のハイザック・カスタムは、今回以降はネルソン級MS軽空母ネルソンに積んでもらう事になるな。

 アイザックの搬入は、極秘裏に行われた。これがばれているなら、レビル派そのものにスパイがいる可能性が高くなる。このアイザック小隊を先行させて敵の陣容を掴めれば……。」

「そうなれば、敵主力を逆に不意打ちで撃ち崩し、返す刃で元連邦軍宇宙基地であった現ジオン残党拠点を粉砕できるわけ、か。」

 

 その言葉に首肯し、俺は徐に目線を後ろにやる。そこには副官であるレイラの他に、2名の女性士官が立っていた。

 

「その通りだ。で、アイザック小隊のパイロットなんだが……。」

「その2人か。新たに乗艦してきた、6人のうち2人だな?」

「ああ。ツァリアーノ連隊第01独立中隊、通称「オニマル・クニツナ」隊第5小隊。小隊長のリディア・ターラント少尉と隊員のホリー・ヴィンセント少尉だ。ああ、ちなみに残りの4人は、アイザックの専門整備兵だ。特殊装備が多いもんでな。」

 

 2人は一斉にブライト艦長に敬礼をする。

 

「はっ!自分は、連邦宇宙軍よりレビル将軍直下に転属してまいりました、リディア・ターラント少尉であります!以後、お見知りおきを!」

「お、同じくホリー・ヴィンセント少尉であります!」

 

 必死に表情を引き締めようとして、失敗してニヤけているレイラが可愛い。この2人は、ベルファスト基地時代からのレイラの友人なのだ。今回なんとか引き抜くことができて、宇宙に上がって来てくれたのである。

 アイザックと言う、新たな……使いようにもよるが、強力な戦力を得た俺たちは、目的の宙域へとひたすら航行を続けていった。




と言うわけで、今回はベタベタの甘々がメインでした。オマケに次回の任務のサワリを少しだけ。
あと、以前出て来たレイラの友人2人を引き抜きました。まあ、彼女らの所属が地上軍(陸軍、空軍)じゃなかったのが、事を簡単にしたんですけれどね。
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