花の魔術師がベル君に憑依しました。   作:天道詩音

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花の魔術師がベル君に憑依しました。その1

 

 村を追い出された。

 

 そんな悪いことでも無いと思うんだけどね。

 村の女の子全員に手を出しただけで追い出すなんて酷いんじゃないかな?

 今はオラリオと呼ばれている迷宮都市に向かっている。なんでも、誰も底を見たことが無い深い迷宮を中心に都市が立ち並び、迷宮で魔石を採取して、資源として発展を遂げている都市らしい。

 迷宮にはモンスターが居るらしく、それを倒すことで魔石が手に入るらしい。迷宮を冒険してモンスターを倒してお金を稼ぐ、冒険者と呼ばれる仕事が人気らしい。

 確かに魔物退治でお金を稼げるなんて楽な仕事だよね。私も冒険者をやってみようと思っている。考えるより体を動かす事の方が実は得意なんだ。

 

 今はオラリオに向かう荷馬車の後ろに乗せてもらって、ゆっくりと目的地へ向かっていく。

 時間もあることだし隣に座っている可憐な君に、私の話をしよう。冗談だと思って聞いてくれたらいいよ。荒唐無稽な話だからね。

 

 私は昔、マーリンと呼ばれていた魔術師だったんだ。今のベル・クラネルって名前に変わる前は世界を救う手伝いをした事もあるんだよ。

 今は無くなってしまったけど、私には世界を見通す目があったんだ。その目であの子の旅路を眺めるだけじゃなくて、共に歩めたのは本当に美しい思い出だよ。あの子が世界を救って、私は塔に帰って、世界を眺めるだけの日々に戻ったんだけどね。気が付いた時には何故がこの身体に変わっていたんだ。

 その時の記憶が無いからなんとも言えないけど、世界から排他されたんだろうか?私に干渉できる存在なんてそう多くは無いと思うんだけどね。平行世界どころか別世界に転移させるなんて魔法の範疇も超えてそうだけど、私が知覚出来ない程の上位存在が干渉してきたとか?でも何故?まあ、元の世界には戻れないから、考えても仕方ない事を考えるのは止めようか。

 それでこの世界に飛ばされたのは魂か意識だけだったみたいで、別の身体に憑依してしまったみたいなんだ。その身体の持ち主がベル・クラネルって名前だったのさ。

 

 それからは、ベル・クラネルとして生きてきたんだ。小さな村にただの村人として生まれて、女の子に声を掛けたり、女の子と遊んだり、女の子と夜を共にしたりね。毎日が楽しかったさ。

 結局、村の男達の嫉妬で村を追い出されてしまったけど、楽しい日々だったよ。オラリオには美人が多いって聞いてね、今からすごい楽しみなんだ。世界を見通せないってのも悪くないね。私の目を通して、未知を知っていくのも良い物だよ。

 

 さて、あれがオラリオの門だろうか?長い間、私の話を聞いてくれてありがとう。君は聞き上手だね。それに美人だ。どうだい、この後一緒にお茶でもしないかい?

 止めておく?うん、残念だけどそれも君の選択だ。

 君の辿る道行きに花の祝福があらんことを。なんてね。

 

 それにしても広いな。先に見える塔は雲よりも高く伸びている。かつてのキャメロットよりも巨大な都市のようだ。門で荷馬車から降ろしてもらい、礼をしてから門をくぐると人でごった返した大通りに出た。随分賑わっているね。それに美人も多い。

 取りあえず可愛い子に声を掛けて、ギルドの場所でも聞こうか?近くに居る薄緑色のエルフ耳の女の子に声を掛けるとしよう。

 

「すまない。そこのお姉さんちょっと良いかな?」

「…………私ですか?……何でしょうか?」

「オラリオには初めて来たのだけど、ギルドって建物は何処にあるか教えてくれないかな?」

「……この道を真っ直ぐ進めば、白い大きな建物があります。それがギルドですよ」

「なるほど、簡単にたどり着きそうだね。感謝するよ美人のお姉さん。お礼にお茶でもどうかな?」

「…………仕事中ですので、失礼します。それでは」

「残念だねぇ。でもありがとう。助かったよ」

 冷たそうに見えて、意外と優しそうな女の子だったね。さて、真っ直ぐ進んで行くとしようか。

 

 あれがギルドかな?ギルドは冒険者の登録を行っているらしい。冒険者になるにはファミリアと呼ばれている、下界に降りた神達が人々を集めた組織に入らないといけないルールがある。神は人々に恩恵を与えて、それでモンスターと戦えるようになるらしい。

 この世界には神々が普通に存在しているらしい。すでに神威を感じる美人に何人も会っている。あれが神なんだろうね。いずれ声を掛けるとしよう。美人なら人でも神でも亜人でも誰でも構わないさ。

 

 白い建物に入って、建物内を見渡すと職員の居るカウンターには並んでいる列と空いているとこがある。ふむ、可愛い子の前には長い列。男の前は空いている。どうしようか?

 時間は有限だ。こんな所で時間を無駄にするのは勿体ないね。早く冒険者にならないとお金も尽きてしまうのだから、何処に並ぶかはなんてもう決まっているさ。

 

 もちろん一番長い列に並ぶしか無いでしょう。

 男と話すほど無駄な時間は無いだろう?美人と話して、私が入れるファミリアについて相談しよう。ついでに食事に誘えれば完璧だね。果たして、この一番長い列の先にはどんな美人が待っているのだろうか?先ほど話したお姉さんも中々の美人だったけど、この先の女の子はどうかな?聞こえてくる声から美人なのは分かる。それに年上だろうね。性格は真面目で仕事一筋になりそうなタイプだと予想する。さて、どんな美人かななんて予想していたら次は私の番だ。

 

 前の人が帰って行くと、目の前に現れたのはやはり美人だった。真面目で世話好きそうなお姉さんだろうね。眼鏡もよく似合っているよ。

 

「お待たせしました。ご用件は何でしょうか?」

「ギルドでファミリアの紹介をしていると聞いて来たのだけど、相談に乗ってくれないかな?」

「ファミリアの紹介ですね。冒険者の経験はありますか?」

「無いね。オラリオに来たのも今日が初めてさ」

「種族はパルゥムですか?」

「いいやヒューマンだよ」

「……ちなみに年齢はいくつかな?」

「今年で14歳になったね」

「……お名前を教えてくれる?」

「ベル・クラネルさ。ベルと呼んで欲しい。お姉さんの名前も教えてくれないかな?」

「エイナ・チュールよ。ねえ、ベル君。冒険者は危ない職業なのは知っているかな?」

「モンスターを倒して魔石を集めてお金を稼ぐのだろう?知っているさ」

 なんだか雲行きが怪しくなってきたかな?お姉さんの性格的に私の見た目で判断をされると冒険者にはさせたく無いだろうね。その優しさは私には不要なんだけど、どうやって説得しようか?

 

「命を失う危険があるのよ。まだ14歳のベル君がわざわざ危ないことをしなくていいのよ」

「いや、早くお金を稼がないと持ち金が尽きそうなんだ。住んでいた村から追い出されたからここで稼ぐしか無いんだよ」

「そう……でも冒険者以外にも働ける場所はあると思うの。それに少しならお金も貸してあげられるわ。だから冒険者は止めておきましょう?」

「心配してくれてありがとう。だが、これでも腕には自信があるんだ。冒険者でやっていける自信はあるよ」

「ならベル君。モンスターと戦ったことはあるの?倒したことはある?」

「…………ドラゴンくらいなら倒したことはある……よ?」

「ダンジョン以外にドラゴンなんて居ないわよ!まったく嘘ついちゃだめよ。やっぱり冒険者は止めましょう……少し待っていてくれるなら、一緒に働けそうな仕事を見つけに行きましょう?」

 この子はとても優しい子なんだろう。それに意思も固そうだ。一旦引いて、自分でファミリアを探した方が早そうだね。

 

「少し考えてみることにするよ。でも、もし冒険者になったらサポートはよろしく頼むよ」

「……分かったわ。もし冒険者になったら絶対私のところに来るのよ。厳しい指導してあげるから、覚悟しておきなさい」

「わかった。楽しみにしておくよ。ではまた、ありがとう」

「ええ、ベル君もがんばってね。何かあったら冒険者とか関係なく相談に来てもいいからね」

 お姉さんに礼をしてからギルドを出る。いつの間にか夕方になっていた。今から入団できるファミリアを何軒か探してみようか。適当にこっちの道を進んでみようか。

 入団するファミリアの神は可愛い子だと尚更いいね。それに美人の団員が多ければ更にいいと思う。主神はともかく、団員は美少女ばかりと噂のロキファミリアに入れればいいんだけれど、どうだろうか?とりあえずロキファミリアを探しながら道中のファミリアに入れるか聞いていこうかな。

 

 何軒かのファミリアに入団できるか聞いてみたけど、直ぐに断られてしまう。見た目が子供なのが問題か。幻術を使って、かつての姿に戻るのもいいけど、これからずっと幻術を掛け続けるのは面倒だからねぇ?このまま入れるところを探すとしようか。

 

 おっと、大通りから外れた所にもファミリアがあったね。ここも入団できるか一応聞いてみよう。ノックをすると少しして、大男が出てきた。まあ、とりあえず聞いてみようか。

 

「すまない。ファミリアに入団したいんだが、どうかな?」

「ここは子供の遊び場じゃねえ!帰れ!」

 おっと。勢いよく扉を閉められてしまった。まあ、中を見た限り男ばかりだったから、入団しなくて正解かもね。

 

「ねえ、君はファミリアを探しているのかい?」

 鈴の音のような可憐な声が聞こえ、振り向くと小柄でも、たわわな二つの果実が実っている、こんな裏路地には似つかわしくない可愛らしい女神がそこにいた。

 

「その通り。ファミリア大募集中さ!」

「なら僕のファミリアに入らないかい?」

「喜んで入らせて貰うよ」

 ノータイムで答える。美人の願いは断れないよね。特に好みの女性の願いなんて断れないだろ?

 

「ほんとうかい!?嘘じゃないよね?もうキャンセルは利かないぞ!」

 不安な予感がするけど、断らないよ……?それになんだか神らしい神よりは、こんな人間らしい神様の方が楽しそうだからね。

 

「ボクの名前はヘスティアさ。君の名前を教えてくれないかな?」

「私の名前はベル・クラネルだよ。ベルと呼んで欲しい」

「ベル君!いい名前じゃないか!これからよろしく頼むぜ!」

 

 こんな路地裏で女神と会うなんて運命的な出会いも悪くないね。

 

「よろしく。ヘスティア」




ダンメモのメンテが長かったので暇潰しに書きました!

今週中には次の話を投稿する予定です!
(21日の17時に予約投稿しました!)

一回見直したんですけど誤字が多かったですね。
もう一回見直したので誤字は減ったと思います!

Q.何故にマーリン異世界転生したの?
A.マーリンもよく分かって無いですが、ニャル様あたりが面白そうだからって転生させたのでは?そもそもアヴァロンに居るマーリンに干渉できる時点で上位の存在なのは確定ですね。


人物紹介
ベル・クラネル(マーリン)
何故が異世界転生させられたマーリンがベル君の体に宿りました。
身体はベル君。中身はマーリン。
FGO完結後のマーリンがこちらに来た感じです。FGO主人公の旅路を見届けた後なので、前の世界に未練はほとんどありません。
ベル君が生まれる前からマーリンが入っていたので、マーリンの身体のようなものです。
村では女の子に手を出しすぎて、追い出されました。マーリンだから仕方ないですね。

荷台の子
面白そうな物語として聞いていました。
お茶はノーサンキュー。名前も無いオリキャラです。でも美人な子。

薄緑の髪の女性
どこのリューさんでしょうか?
だんまちで大好きなキャラなので登場&道案内して貰いました。
このベル君は手を握ることが出来るんでしょうか?

エイナさん
世話焼きなお姉さん。
そこらの女神より女神してます。
マーリンならなんて呼ぶんでしょう?
普通にエイナさん?エイナ?
今回はお姉さんでした。
眼鏡姿がよく似合う、年上のお姉さんですね。好きです!

ヘスティア
もちろんヘスティアファミリアに入団ですね!
ロリ巨乳な女神様。
マーリンの好みはアルトリアだと思っていますが、ヘスティアのことも気に入ったようです。
マーリンベル君と一緒に住む処女神の貞操は護れるのだろうか?

ロキ
主神はともかくなんて噂されていて……ドンマイです。
好きなキャラではあるんですよ?
なんだかんだちゃんと神をやってる素晴らしい神さまです。


マーリン視点は難しかったです。マーリンらしくなっていればいいんですけどどうでしょう?
小説を書く練習中なのでコメントを頂けると助かります!
誤字や変な表現など見苦しい点があると思いますが、ご指導や感想などあればよろしくお願いします!
閲覧ありがとうございました!

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