花の魔術師がベル君に憑依しました。   作:天道詩音

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※お待たせしてすみませんでした。


花の魔術師がベル君に憑依しました。その3

 

「行こうぜベル君!」

「それじゃあデートに行くとしようか!」

「で、で、デートだってぇ!? そんないきなり!? じゃなくて、ギルドに行くんだろ?」

「男女が二人で出かけるのがデート以外のなんだって言うんだい?」

「た……確かに! わっ、どうしよう……デートなんてしたこと無いよぅ……」

 

 チョロい。じゃなくてヘスティアは純粋でかわいいなぁ。顔を赤くしてチラチラと私を見てくるヘスティアと一緒に教会を出る。

 

「冗談さ。このままギルドに向かっても大丈夫かい?」

「冗談だよね! も、もちろん分かっていたさ! 先にバイト先に向かって店長に少し遅れるって言いたいんだけどいいかな?」

「もちろんさ。では案内を頼むよ」

「おっけー! バイト先はこっちにあるんだ」

 

 ヘスティアと一緒に朝のオラリオを歩く。細い路地裏を通り抜けて大通りにたどり着くと、鎧を着込んでいる冒険者達は私たちとは逆方向の街の中央へと向かっている。

 冒険者も朝からダンジョンに向かうんだね。確かにダンジョンでの滞在時間が長い方が稼ぎが増えるとは思うけどさ、私は朝はゆっくりしたいんだよねぇ。

 

 まあ、貧乏ファリミアに入ってしまった事だし、多少はお金稼ぎを真面目にしないといけないかな?

 

「店長おはよう! ちょっといいかな?」

「ヘスティアちゃんかい? おはよう。どうしたんだい?」

 

 大通りの屋台で立ち止まったヘスティアが挨拶をしている。くくっ、神様が屋台でバイトしてるのかい?でも神様っぽくないヘスティアには似合っているんじゃないかな?ヘスティアちゃん……くくっ!

 

「ボクにもついに眷属が出来たのさ! 紹介するよ。ベル君ー!」

「初めまして美しいマダム。私はベル・クラネル。ヘスティアちゃんの眷属になった冒険者さ!」

「なんでベル君までヘスティアちゃんって呼ぶの!?」

「かわいいヘスティアには似合っていると思ったんだけど、駄目かい? くくっ」

「今笑わなかったかい!? ボクは聞き逃さなかったぞ!」

 

「はははっ面白い眷属ができてよかったねぇヘスティアちゃん。ベル君、ヘスティアちゃんをよろしく頼むよ」

「面倒を見るのは任せて欲しい。問題児の扱い方は心得て居るんだ」

 

 主に円卓の君たちだよ?アルトリアに迷惑を掛けちゃダメだろ?

 『どの口が言うか!』なんて幻聴が聞こえた気がするけど気のせいだろうね。

 

「ボクって問題児なのかい!? ベル君ひどいぞ!」

「それは置いといてマダム。今から冒険者登録をしたいんだけど、ヘスティアが居た方が簡単に登録できそうなんだ。借りていってもいいかい?」

「仕込みはこっちでやっておくから連れて行っていいよ。ヘスティアちゃんは登録が終わったら戻っておいで」

「店長ありがとう! じゃあベル君行こうぜ!」

「ありがとうマダム。ヘスティア、君が迷子にならないように手を繋いであげよう」

 

 手を捕まえたら、ビクッとしてから固まったヘスティアを引っ張ってギルドへ向かって歩く。なんか驚いた顔から、にやけた顔に変わったけど、このヘスティアちゃんは何を考えているのかな?

 

「うへへ……ベル君と手を繋いでるよぅ……デートみたい……じゃなくて! 子供じゃないんだから迷子になんてならないぞ!」

「ヘスティアと離れたくないんだ。このままでいいかい?」

「う、うん……」

 

 チョロい。じゃなくてまた顔を赤くして、しずしずと隣を歩いてくれるヘスティアは可愛いじゃないか。こんなかわいいヘスティアに眷属が出来なかったのが不思議だよねぇ。やっぱり貧乏とボロ教会が原因……今後かわいい子をファミリアに入れるためにも、ちょっと頑張ろうかな?

 

「そういえば、バイトの制服はいつ着るんだい?」

「店長さんの家が屋台のすぐ近くにあるんだ。そこで着替えるのさ」

「ヘスティアは元がかわいいからどんな服でも似合うんだろうね。見れる日を楽しみにしているよ」

「……ベル君ってチャラくないかい? どんだけ女の子と遊んできたのさ!」

「たいして遊んでないさ。まあ村の女の子全員に手を出したら追い出されたけどね」

「それはたいした事だよ! えぇ……嘘ついてないし本当なんだよね……ボクの貞操守れるかな……」

「大丈夫さ。優しくするから」

「優しくされても、無くなっちゃうよね!?」

「…………ふむ、これは伝わると……」

「変な分析しないでくれるかな!? ほらギルドに着いたよ!」

 

 いつの間にか白い豪華な建物が目の前にあった。ギルドまであっという間だったねぇ。さて、冒険者になることをエイナに伝えるとしようか。

 

 前回はエイナに冒険者を諦めた方が……と言われて簡単に引いたのは、心象を悪くしない為だったのさ!美人を攻略するには引くことも重要なのだよ。

 

 ヘスティアと一緒にエイナの前の列に並ぶ。エイナの前には相変わらず結構並んでいるよね。

 

「ベル君、あっちの男の人の前は空いてるよ? ここでいいのかい?」

「当然さ! この列は美人と話すために並んでいる列なんだ。男として並ばない訳にはいかないだろう?」

「むー! ベル君ダメだぞ! ボクが後でたくさん話してあげるからあっちに並ぼうぜ!」

 

 腕をクイクイとヘスティアが引っ張ってくるけど、私は動かない!嫉妬するかわいいヘスティアも見れた事だし、そろそろ誤魔化しておこうか。

 

「ヘスティア。さっきの話も本当だけど、この先に居るエイナには昨日お世話になったんだ。だから冒険者になるならエイナに報告したいんだ。ダメかい……?」

 

 少し目を伏せて、悲しそうにするのがポイントさ!

 

「うっ……ごめんよベル君! そんな理由があったならここに並ぼうぜ! ボクもありがとうって言っておくよ!」

「ありがとうヘスティア。優しいヘスティアの眷属になれてうれしいよ」

 

 ……チョロいとは思って無いよ?まあ、騙されないかは心配になってきたけど。ヘスティアが騙されないように私が気をつけてあげるとしようか!

 

「次の方どうぞ……あっベル君ね。おはよう。何か困り事かな?」

「おはようエイナ。結局、私は冒険者になることにしたんだ。こちらが主神のヘスティアさ」

 

 隣に居るヘスティアの背中を押して、エイナの前に出したけど……背中の紐が目に止まる……ヘスティアの胸を支えている紐。この紐を解いたらどうなるんだろうか?これはいつか試すしかないね!

 

「昨日はベル君がお世話になったんだね。ありがとう!」

「……いえいえ。冒険者になるのはベル君が決めたのなら仕方ないわね……ところで、神ヘスティア。貴方の事は存じ上げないんですが、ベル君の他に眷属は居ますか?」

「ベル君が初の眷属さ! かわいいだろう?」

「…………可愛いのは認めますけど……ベル君! なんで他に眷属も居ないファミリアに入っちゃったの!? 一人で冒険するのは危険なのよ? ほとんどの場合はファミリア内でパーティーを組んで、ダンジョンを探索していくの。一応ギルドから紹介はできるけど、他のファミリアの冒険者を受け入れるパーティーなんて、ほとんどないのよ」

「私は小柄で非力に見えるから、どこのファミリアも受け入れてくれなかったのさ。それでも優しいヘスティアが手を差し伸べてくれたんだ。ヘスティアのためにも冒険者になろうと思うのは当然だろう?」

 

「うぅ……ベル君……そんなうれしい事を言ってくれるなんて……ボクはうれしいよ!」

 

 これはヘスティアも嘘だと言わないし、もちろん本心さ。まあ、かわいい子に出会うためって理由もあるけどさ!

 あの裏路地で出会ったヘスティアは本当に女神のように綺麗だったよ。その後に全て台無しになったとしても、親しみやすい人間味のある方が私は好きだからね。どちらにしてもヘスティアの事は気に入っているんだ。

 

「……神ヘスティアもベル君もファミリアを貶めるような事を言ってごめんなさい。よし、なら私がベル君が一人で冒険出来るようにサポートするわ! まずはダンジョンについて知っていきましょう。命を落とさない為にもしっかり勉強してもらうわよ?」

「わかった。でもお手柔らかに頼むよ?」

 

「ダメです。ベル君の為にも妥協は一切しないわ」

「なら私も真剣に勉強するとしようかな?」

 

 知らないことを知っていくのは結構好きなんだ。これは魔術師としての性かもね。

 

「ではベル君は別室に移動しましょう。私が一から教えていくわ」

「わかった。ヘスティアはバイトに戻るかい?」

「うん。エイナとやら、ボクのたった一人の大切な家族なんだ。ベル君をよろしく頼むよ!」

「ええ。私が出来ることは何でもしますから」

「ここまで付いてきてくれてありがとう。ヘスティアもバイトを頑張ってきてくれよ」

「うん! じゃあ行ってくるよ! また後でねベル君!」

 

 ヘスティアに手を振って、受付から出てきたエイナについて行く。

 

「……えっ? 神ヘスティアがバイトしているの? 神様なのに……?」

「はははっ、うちのファミリアは貧乏だからね!」

「笑い事じゃないと思うわよ……」

「まあ、私が冒険者になれば、少しは楽させられるからねぇ。明日くらいには冒険に行けるかい?」

「ダメよ! 最低一週間は勉強してもらわないと、覚えることはたくさんあるのよ?」

 

 エイナは結構スパルタなんだね。私は一応、アルトリアの剣の師匠だったから、英霊並みの強さのモンスターにでも遭遇しない限り死ぬことなんて無いんだろうから……実力を見せられればいいんだけどね。

 まあダンジョンの知識については、興味があるからね。実際に見に行くのは一週間後まで楽しみに待つとしようか。それまでにお金が尽きないといいけど……足りるのかな?まあ、ヘスティアがジャガ丸くんを持って帰ってくれるのを期待するしかないね!

 

 個室に入り、テーブルを挟んで、エイナの正面に座る。

 

「取りあえずベル君は冒険者登録の紙に記入しておいてね。私は本を持ってくるわ」

「ありがとう。書いておくよ」

 

 記入用紙の空白を埋めていく。ファミリア名はヘスティア・ファミリア。私の種族はヒューマン。年齢は14歳。レベルは1。その他情報を書き込んでいく。よし書き終わった。

 

「ベル君……お待たせ……はあ、重かったわ……」

「おかえり。多くないかい……?」

 

 両手で重たそうに、図鑑みたいな大きさの本を十冊くらい持ってきてくれた……これは一週間で覚えられるのかい?知るのは好きだけど、覚えるのは苦手なんだよねぇ。まあやるしかないよね。

 

「あと半分はこれを覚えてからね」

「まだ半分あるのかい!?」

 

 ダンジョンに行くことは可能なのか?

 取りあえず読ませて貰おうかな?興味はあるし勝手に覚えていくと思う。

 

「まずはこの『ダンジョンの歩き方』って本を読んでいきましょう。これ一冊でダンジョンに関する事は一通り勉強出来るわ。私がサポートしている冒険者には最低でもこの本は暗記して貰っているのよ」

「なら私もこの本を暗記したらダンジョンに行かせて貰おうかな」

 

「ダメだよベル君。神ヘスティアにも頼まれちゃったのだから、しっかり勉強して貰うわよ」

「あはは……精一杯頑張るよ」

 

 エイナはすごいにこやかにしてるけど、私の笑いは引きつってないかな……?まあ、エイナの笑顔も見れたことだし、もっと見れるように頑張ろうか。美人の笑顔は私の活力だからね。

 

 エイナに教わりながら『ダンジョンの歩き方』を読んでいく。

 モンスターの基本知識。ダンジョンの基本知識。冒険者の心得。それらをエイナが詳しく解説してくれて、覚えていく。

 エイナの説明は上手くて、綺麗な声をしているから、ずっと聞いていられるし、覚えやすくもなるからありがたいね。美人の教師だと勉強が捗るのは当然だろう?

 

「ベル君聞いてる?」

「もちろんさ。それで魔石を破壊すれば、モンスターは一撃で倒せるらしいけど、どうやって狙えばいいんだい?」

「モンスターの種類によって魔石の位置は決まっているの。だから次に覚えるのは『モンスター大全』って本よ。これを暗記できれば魔石の位置もモンスターの特徴も全て書かれているの。でも全部覚えたとしても、未知のモンスターはまだまだ居るから慢心しちゃダメよ?」

「気をつけるよ」

 

 そんな感じでエイナの補足に私が更に質問をしていくのを続けていって『ダンジョンの歩き方』を読み終わる頃には夜になっていた。

 

「ふう……ベル君って聞き上手だから、一冊読み終わっちゃったね。質問も的確だし、知識に関しては冒険者として十分やっていけそうよ」

「腕にも自信があるから、安心して欲しい!」

「安心できたらいいんだけどね。ベル君はまだ子供なんだから目を離したら……ましてやダンジョンなんかに行くなんて本当に心配なのよ」

 

 昔の容姿だったら問題ないんだろうけどね。今の私は小柄で白い髪に赤い瞳で白いウサギみたいだって、村の女の子たちには言われていたからねぇ。

 

 エイナみたいな子は、目を離したら心配になるような、私が居ないとダメだって思わせるような男がタイプとみた。まさに私がタイプだろう?

 

「まあエイナにせっかく勉強を教えて貰ったんだ。またエイナに会うためにも、ダンジョンに行ってもちゃんと戻ってくるさ!」

「う、うん……しっかり帰って来てね」

 

 エイナは少し顔を赤くしてるけど、口説かれ慣れて無いのかな?それとも意識をしてなかっただけかな。少しは私の事を意識してくれているみたいだね。もちろん私は大歓迎さ!

 

「よ、よし、今日は勉強は終わりだけど、また明日もギルドに来たら一緒に勉強しましょう。まだ覚えないといけない事はたくさんあるのよ」

「ああ、今日はありがとう。でも受付の仕事はしなくていいのかい?」

「大丈夫。新しい冒険者をサポートするのも大事な仕事なんだから。明日も私が教えるから安心してね」

「わかった。エイナは教え方が上手いから、助かるよ」

 

 一人で本を読み進めるのも悪くないけど、エイナみたいな美人が傍に居たら勉強も捗るものだよね。しばらくは退屈しないですみそうだ。

 

「じゃあ今日は帰ることにするよ。また明日もよろしく」

「ええ。気をつけて帰るのよ。路地裏とか夜は危ないから気をつけてね。それじゃあまた明日ね」

 

 エイナに手を振ってから、ギルドを出る。大通りは照明の灯りで照らされているけど、路地裏に入ると暗そうだね。

 大通りに面してる酒場では、楽しそうな笑い声がここまで聞こえてくる。酒場の中に見えるのは鎧を着ている冒険者たちで、楽しそうに酒を飲んでいる。

 

 昼にはダンジョンを探索して、夜には仲間と酒を交わす。うん。悪くないね。私も昼にはダンジョンで出会いを求め、夜には女の子たちと酒を交わす。家ではヘスティアが待っているし、冒険者になったら最高に楽しめそうだね。

 

 今もたぶん帰りを待っているヘスティアのためにも早く帰るとしようか。この道を曲がって、この先を真っ直ぐ行くと……ここだね。ボロい教会が見えればそこが我が家さ。残念ながらね!

 

「ただいまヘスティア」

「ベル君お帰りー! 遅いから心配したんだぞー!」

「これでも勉強が終わったらヘスティアに会うためにまっすぐ帰ってきたんだけど、心配させて悪いね」

 

 取りあえず走って駆け寄ってきた、このかわいいヘスティアの頭でも撫でておくとしようか。ヘスティアは小柄な私よりも更に小柄だから、撫でやすくていいね。黒く艶やかな髪は撫でるとさらさらとしていて何時までも撫でていられそうだ。この触り心地は癖になりそうだね。

 

「うぅ……ベル君恥ずかしいよ……!」

「私は恥ずかしくないから、気にしないでくれ」

「私が気にするよ! もう、おしまい! ほら今日もジャガ丸くんパーティーをしようぜ。店長さんがベル君のためにたくさんくれたんだぜ!」

「うれしいねぇ。今度ありがとうって言っておくよ。じゃあ食べようか」

「うん! 用意してくるから、ベル君は手洗いうがいだぞ!」

「わかったよ」

 

 オラリオに来てまだ二日目だけど、これからも楽しくやっていけそうだ。明日からも、ヘスティアをからかいつつ冒険者になるためにエイナと勉強していくとしようか?




お待たせしました。忘れ去られた頃にこっそりと投下させていただきます。

今回は前半ヘスティア、後半はエイナ回でした。
オラリオに来て二日目が終了しました。

原作はもう少し先ですね。


書いていて思いました。ヘスティアとこのベル君の口調が似ていて書き分けが難しいと。ヘルメスとこのベル君の書き分けってもっと難しい気が……。

読んでいただきありがとうございました。

評価や、お気に入り、感想を投稿していない間にも関わらず、たくさんいただきました。
本当にありがとうございます!
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