P.D.323年、またの名をU.C.0998年。厄祭戦と呼ばれる人類を絶滅の危機に追いやった大戦から約300年の未来。
戦争の爪痕は未だ消えず、しかし世界は仮初めの平和を享受していた。
そんな中、民間軍事会社CGSは火星の自治独立を掲げる少女、クーデリア・藍那・バーンスタインを地球へ送り届ける任を請け負った。
しかし、独立を快く思わない武装組織ギャラルホルンは彼らを襲撃。CGSの大人達は、非正規の少年兵らを囮にして撤退してしまう。
勝ち目のない戦いに、少年兵のリーダーであるオルガ・イツカは基地の動力源として死蔵されてきた発掘兵器、ガンダムの投入を決意する。
部隊のエース、三日月・オーガスはガンダム・バルバトスへ。そしてオルガはガンダム・サタンへそれぞれ乗り込んだ。
そこでオルガは信じられないものを目にした。
ガンダム・サタンは高度なAIを搭載した、自我を持つモビルスーツだったのだ。
流暢に会話をこなし、自律戦闘さえしてみせる兵器にオルガは困惑するも、三日月の類まれな操縦センスとサタンの凄まじい性能に助けられ、CGSは辛くもギャラルホルンの撃退に成功する。
その後オルガは自身らを虐げてきた大人達に反旗を翻し、仲間とともにクーデターを起こす。
これが、彼等の物語の
CGSを手中に収め、クーデリアの護衛もバルバトスとサタンの力によって容易に完遂できると思われたが、あくまでギャラルホルンに所属するサタンは協力を拒否。
オルガとサタンとの間には、認識のすれ違いをきっかけに溝が生まれてしまったのだった。
これをきっかけに、サタンと同じ人格を備えたパイロット総合支援ユニット「ハロ」もまた、オルガの手によって廃棄されかかってしまう。
しかし、彼は偶然にも倉庫を訪れた雪之丞の手によってすんでのところで助けられた。
ハロは雪之丞に対し、地球への旅路にサタンと自身を連れて行くよう求める。
雪之丞はハロの密航を手伝う報酬としてバルバトスの整備マニュアルを、そして自身の知的好奇心を満たして余りある戦前の映像記録を与えられた。
彼は確かに、悪魔と契約を結んだのだった。
一方で、先の襲撃で間近に少年兵の死を目撃してしまったクーデリアはその覚悟を揺らがせていた。
ただのPMCが太陽系最大の軍事組織と戦って勝てるはずがない。地球へ向かえば必ず大勢が死ぬ。彼女にはそれが恐ろしかった。
そんな心境を知ってか知らずか、三日月は彼女へある提案をする。
ビスケット・グリフォンの祖母が経営するトウモロコシ農園へ、共に手伝いに行かないかと。
彼女はそこで火星の現実を知った。
農園の収穫物はバイオ燃料へ加工されるために買い叩かれるため、それだけでは生活ができないこと。
学のない子供ではまっとうな職に就けず、やむにやまれず兵士になること。
そして、彼女の依頼の報酬が、彼らの命を繋ぐこと。
もう、クーデリアの心に迷いは無かった。
革命の乙女クーデリア、謎のMSガンダム・サタン、そしてギャラルホルンを裏切った男クランク・ゼントを加えた新生CGSは、地球への裏航路の仲介業者であるオルクス商会に接触し、宇宙に上がった。
そこでも彼らは裏切られた。商会がギャラルホルンへ情報を売ったことで、またも奇襲を受けたのだ。
三日月のバルバトスが応戦する中、ギャラルホルン監査局のマクギリス・ファリドはあることに気づく。
CGSの強襲装甲艦ウィル・オー・ザ・ウィスプから、異常な強さのエイハブウェーブが観測されていたのだ。
固有周波数を照合した結果、その波形はかつて人類を滅ぼしかけた無差別破壊兵器の一機、熾天使級モビルアーマー「ルシファー」のものであることが判明する。
単機でも人類種の存続を脅かしかねない代物を搭載しているおそれがあるとあっては、マクギリスは自身の陰謀を捨て置いてでも正体を確かめねばならなかった。
彼はMSを駆り、たった一人で艦に吶喊。格納庫に侵入し、ガンダム・サタンのもとへたどり着く。
MAの信号を発するMSという奇妙な存在に驚きを隠せなかったマクギリスの眼前で、サタンは少年兵の一員であるユージン・セブンスタークを乗せて起動。
サタンはマクギリスを撃退するが、艦は資源採掘衛星にアンカーを突き刺し、急速にターンすることで追手を振り切るというリスキーな作戦の最中であった。
これが失敗すれば乗員の命はない。
この状況を受けたサタンはユージンを乗せたまま、人類の保護という自身に課せられた最上位指令に基づき、本来であれば禁じられている完全自律行動を実行。
格納庫を飛び出してアンカーを引き抜くもわずかに遅く、回頭しすぎた艦は衛星に衝突するコースをとってしまう。
誰もが諦めかけたその時、サタンが動いた。
墜落する船体へ取り付くと、リアクターの出力制限を開放し、全身のスラスターを全力稼動したのだ。
総重量五万トンの戦闘艦の軌道を強引に修正してみせたサタンはその代償として深く傷つき、自己修復のためにしばしの眠りにつくのだった。
ギャラルホルンを振り切ったCGSは、地球への新たな航路を求めて地球圏外圏のマフィア、テイワズへの接触を試みた。
彼らは木星圏一帯を牛耳る巨大複合企業であり、それほどの組織ならギャラルホルンも火星に残った仲間へ手を出せなくなると踏んでのことだった。
木星へ針路を変えると、ウィル・オー・ザ・ウィスプの背後に一隻の強襲装甲艦が現れた。
エイハブウェーブ反応を巧みに隠したそれは、名をハンマーヘッドといった。テイワズ傘下の企業、タービンズの旗艦である。
彼らはCGSの前社長であるマルバ・アーケイの依頼によって、社の資産を回収するべく追ってきたのだった。
タービンズのボス、名瀬・タービンは言う。
お前らには見込みがある。資産の受け渡しに応じさえすれば、テイワズの傘下でもっと真っ当な仕事をさせてやる。なにぶん大所帯だから、皆一緒というわけにはいかないが、と。
だが、オルガはその要求を跳ねのけた。彼には幼少期に路地裏で交わした三日月との約束があった。
いつかきっとたどり着く、俺達の居場所。オルガはそこへ皆を連れて行くのだと。
希望にあふれた約束は、いつしかオルガを縛る呪いに変じていたのだった。
交渉は決裂し、戦闘に発展した。
タービンズのMSを迎撃すべく三日月がバルバトスへ乗り込むと、コックピットにいたのは密航中のハロだった。
ラフタ・フランクランドの百里と激しい機動戦を繰り広げる中、OSに接続されたハロは戦闘データをもとに機体を調整。三日月とバルバトスの親和性を飛躍的に高めてゆく。
純粋な操縦技術の高さにものをいわせて怒涛の攻めを見せる三日月。
かたや確かな経験に裏打ちされた立ち回りと戦術眼により猛攻を巧みにかわすラフタ。
二人の戦いに決着がつくその間際、オルガ率いる歩兵隊がハンマーヘッドへの移乗作戦を成功させたことで、名瀬は交渉に応じる意志を見せた。
CGSは、無事に地球への足がかりを手にしたのだった。
同時刻、月の裏側にマクギリスの報告を聞く一人の男がいた。
月外縁軌道統制統合艦隊アリアンロッドの総司令にして、セブンスターズの一角たるエリオン家現当主、ラスタル・エリオン。
蛇の家紋を持つその男は、マクギリスから最悪のモビルアーマー、ルシファーの存在を聞き、悲願の成就に笑った。
300年前、世界を焼きつくしたカイエル財団。彼らが月に残した遺構を復活せしめる鍵となるはルシファー、またの名をガンダム・サタンという機体。
彼の、そしてラスタル家代々の望みは、サタンを用いて遺構の封印を解き、戦前の失われた技術を復活させること。
少年達の道のりを、さらなる試練が襲おうとしていた。
執筆に使用していたスマートフォンを破損してしまい、2019年9月から現在までハーメルンへアクセスできない状況にありました。
アカウントを復旧できましたので、ここにお知らせいたします。
これに伴い、「機械とヒトと。」の更新も再開させていただきます。お待たせしてしまい、大変申し訳ありません。
プロットが完全な状態で残っているわけではなく、また長いブランクもありますので、投稿には時間を要するかと思いますが、それでもどうにか完結させることができればと思います。
これからも七時間改め、千年眠をよろしくお願いいたします。