サーヴァント:ペニーワイズ   作:サブカルクソ野郎

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……あ?新しいアップデートの通知が来ている……。あはは、おっきーだ!宝具強化かな?いや、違う……違うな宝具強化はもっと、バァーって強くなるもんな使い辛いなぁ、ここうーん……早く宝具強化来ないかな?おーい、早く強化してくださいよ。ねぇ?

怒りの初投稿です。


おっきーは激怒した。必ず、かの邪智暴虐の運営を除かなければならぬと決意した。

刑部姫。

それは狐が三百年という長い年月を経て妖怪に変化し、姫路城の天守閣に住み着いた城化物の名である。

見た目は麗しい黒髪の乙女。その姿を見た者は祟られる。あるいは即死するなどと言われている。

しかしその本質は、陰気で卑屈な小悪党。マウント取れる相手にはドヤ顔でイキるコミュ障の引きこもりである。

勿論カルデアに召喚されたからには戦わざるを得ないのだが、いかんせん性能が微妙なので他のサーヴァントより出番が少ないのだ。(決して弱い訳ではない)

まあ、その事に関しては本人は気にしてなかったりする。むしろ、「これで遠慮なく引きこもれる」と、引きこもりライフを謳歌していた。

その筈なのだが、

 

「フフッ。フフフフ……フハハハハハッッ!!」

 

そんな彼女がイキっていた。

英雄王の如き笑声を上げ、イキり姫と化していた。

しかも、普段部屋から絶対に出ようとしない彼女が『部屋から出ていた』。

一体何故?

天変地異の前触れか?

はたまた新たな特異点の影響か?

彼女の真意はいかに__。

 

「祝!宝具強化!!ついに私の時代が来たああああぁぁぁぁーーーーっっ!!!!弱小サーヴァント共め、私の存在に震えて眠れッ!!」

 

宝具強化。

サーヴァントであれば誰もが一度は夢見る奇跡。

誰かが強化される度、『次は私が』『次は俺こそが』と、意気込み、日々切磋琢磨しているの

だが、残念ながらそんな彼らは今回選ばれることはなかった。

今回運命の女神(運営)が選んだのは刑部姫。

普段の彼女であれば、そんな物は必要ない、引きこもりライフの邪魔だと女神の寵愛を蹴り飛ばすのだが、その日は違った。

 

「……まーちゃん、喜んでくれるかな❤️」

 

ぼっちで引きこもりな彼女も、なんやかんやでマスターのことが大好きなのだ。

周回に呼ばれればブツブツと文句を言いながらもちゃんと着いていくし、逆に呼ばれなければ寂しくなり、後でマスターを意味もなく部屋に招いたりしているのだ。

そして今回、彼女は力を手に入れた。

故に、彼女はイキる。

 

「まあ、周回は面倒だけど、これもまーちゃんのため。フフフフ……まーちゃんを私なしでは生きられない体にし・て・あ・げ・る❤️」

 

そう呟きながら、懐から折り紙を取り出し、一枚一枚丁寧に折り始める。

そうやって蝙蝠、狐、蛇、と様々な生物を模して造られた折り紙は、彼女の手を離れ、マスターを探すために廊下の奥へと消えてゆく。

そんな彼らを彼女は笑顔で見送る。

 

 

「……っ!まーちゃん発見ッ!!」

 

北西の方向におっきーセンサーの反応ありっ!!

刑部姫は駆け出す。愛するマスターの元へ。

彼に合ったら何と言われるだろうか。

感謝して喜んでくれるだろうか。

それとも嬉しさのあまりに泣き出すだろうか?

あるいは頭を撫でて褒めてくれるだろうか?

彼との未来を夢想し、顔がふやける。俄然やる気が出てきた。

そうこうしている内に、例の人物がいる場所にたどり着いた。

すぐ目の前にマスターの背中が見えた。

 

「まーちゃん!まーちゃん!私ね、宝具が__」

 

マスターに好意を振り撒きながら駆けよる。

 

「ああ、おっきー。大丈夫、ちゃんと知っているから」

 

刑部姫の存在に気が付いたマスターは、こちらに振り返りそんなことを言う。

最近出番がなかった刑部姫は忘れ去られていたかと心配していたが、マスターはしっかりとこちらのことを把握していたらしい。

流石私の愛したマスターだ。

刑部姫は目を輝かせ、マスターに詰め寄る。

 

__私を褒めなさい。

__私を崇めなさい。

__私を愛しなさい。

 

さあ、さあっ!今こそ私だけのマスターに__

 

「安心して、出番については今までと同じだから今まで通り引きこもれるよ」

 

……え?

今、何と?出番は今まで通り?

 

「ひ、姫ちゃん、まーちゃんの言っていることがよくわからないなー……」

 

「それについては私から説明しよう」

 

背後から突如声を掛けられ、驚きながら目を後ろにやる。

そこにいたのは見馴れた人物。

スカサハが立っていた。

 

「……スカサハ?ドレスなんか着てどうしたの?イメチェン?__まさか!?」

 

違う!彼女はスカサハではない!

スカサハであり、スカサハではない存在。

彼女の名は__

 

「スカサハ=スカディッ!!」

 

神霊スカサハ=スカディ。

それはケルトの大英雄スカサハと山の女神スカディが混じり合って誕生したサーヴァントである。

Quick性能が高く、スターもNPも稼げる高性能鯖。おまけにNPチャージもできる。宝具も味方全体に回避、即死無効、クリティカル威力UPとかなり有能。

正直に言ってしまえば、刑部姫よりスカサハ=スカディの方が使い易いのだ。

そんな彼女が何故ここに?昨日まではいなかった筈だ。

マスターはついこの間、またガチャで盛大に爆死して金欠の筈。

思わぬ強敵が刑部姫の前に立ちはだかる。

 

「さっきログインボーナスの呼符を何となく使ったら彼女がやって来たんだ」

 

「ふむ、その反応を見るにどうやら私のことは知っているようだな。ならば説明は不要だな」

 

マスターは何を言っているのだ?

呼符で、星5?

あのマスターが?

あのガバ運で有名なマスターがッ!?

嘘でしょっ!?冗談でしょッ!?

 

「おっぱいタイツにまーちゃんを寝取られたあぁーーっ!?」

 

そんな捨て台詞と共におっきーは駆け出した。

深い悲しみによっておっきーの敏捷は通常ではあり得ない瞬間最高速力を叩き出し、マスターの静止を振り切って走り去って行った。

 

 

「う"わ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ん"ッッ!!グスッ!__びえ"え"え"え"ぇ"ぇ"ぇ"ぇ"ん"ッッ!!ヒック!__う"お"お"お"お"ぉ"ぉ"ぉ"ぉ……ゲホッ!ゲホッ!ウ"オ"ェッ!!」

 

おっきーは泣いた。

自分のアヴェロン(自室)で咽び泣いたのだ。

 

「……ぐすん。何だよ、スカサハばっかり……私とどう違うんだよ!おっぱいなら同じくらいあるじゃん!ルーン魔術か!?それとも槍か!?あるいは水着なのかっ!?」

 

おっきーは嘆いた。この世の無情さを。

おっきーは憎んだ。自身の非力さを。

おっきーは呪った。この運命(運営)を。

 

どうしてこんな仕打ちを受けなければならない。私が何か悪いことでもしたというのか。

顔から涙や鼻水を垂れ流し。

口から呪詛と罵倒を吐き出す。

絶望がおっきーの心を侵す。

心が反転し、おっきー・オルタが誕生しようとしたその時__、

 

「やあ!おっきー!」

 

ひどく楽しげな声が聞こえた。

反射的におっきーは声がした方向に目をやった。

ギィィ、とゆっくりと自室の扉が開き、そこからぬるりと例のピエロが現れた。

出会う者をオススメの沼に引き摺り込むアルターエゴ、ペニーワイズである。

 

「はい、調子良い?」

 

最早、様式美と化した軽妙な挨拶をするペニーワイズ。

そんなウキウキな彼と対照的に気が鎮んだおっきーは半目で彼を睨み付ける。

 

「ペニーは何しにここに?私を笑いに来たの」

 

スカサハ=スカディ(おっぱいタイツ)に打ちのめされ、かなり参ってしまっているおっきー。そのためか、ややトゲのある言葉を投げ掛ける。

そんな彼女にペニーワイズはとんでもないというように首を横に振る。

 

「断じて違うよ。おっきーを慰めに来たんだよ」

 

「本当にござるかー?」

 

あまり似てない黒髭の真似をしながらペニーワイズを訝しむ。

 

「これやるから元気出せって」

 

そう言いながらいつの間にか彼の手には赤い槍が握られていた。

この槍は__、

 

「……刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)?」

 

「その通り!さっきオススメした(殺した)クーフーリンの戦利品だ」

 

「いらんわ」

 

ランサーが死んだ!この人でなし!

こんな物をどうすればいいのだ。精々、物干し竿ぐらいしか使い道がない。

やはりこのピエロはバカにしにここに来たのでは。

 

「はー、世知辛いわー。クソだよ、クソ。こんなクソみたいな人理なんか滅んでしまえ」

 

さっきもらった刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)を孫の手代わりに背中を掻きながらそんなことをごちる。

人理修復に勤しむ善良なサーヴァントが聞けば

顔を真っ赤にし小一時間説教をするであろうその言葉を聞き、ペニーワイズが眉をひそめる。

 

「そんなこと言うなって。こんな世の中よりもクソなもんは腐る程あるさ。アサイラムやワスカバジの映画とか」

 

「アサイラム?ワスカバジ?何それ、何処の映画会社?」

 

おっきーは首をかしげた。

普段ネットサーフィンで様々な知識を蓄えているおっきーだがその映画会社名は初耳だ。

きっとかなりマイナーな映画会社なのだろう。

 

「おーぅ、マジで知らないって顔だね。とてつもない名作なのに。一度見ることをオススメするよ」

 

そんなことを言いながら懐からDVDを取り出す。

『恐怖!キノコ男!』

『メガ・シャーク』

『トランスモーファー』

『ゴースト・シャーク』

『メタルマン』

『ジャパン・ジョーズ』

『尻怪獣アスラ』

エトセトラ、エトセトラ……

色んなジャンルがあるが、圧倒的にナマモノ(サメ映画)の割合が多い。

 

「……見たことないタイトルばっかり。パッケージはごく普通の映画に見えるけど」

 

「いや、こいつはただの映画じゃあない。これは……Z級(クソ)映画さ」

 

B級映画という呼び方があることは知っているが、Z級なるものは聞いたことなどない。

はて、Z級映画とはいかに?

 

「?……B級映画とどう違うの」

 

そう聞くやいなやペニーワイズの白塗りの顔からいつもの笑みが消え、真剣な表情へと変貌した。まるで恐怖を圧し殺し、これから重大な事実を語り始めるとでもいうように。

 

「こいつは狂人の脳髄から抽出したサイケデリックな妄想とチープでフラットなCGを触媒にして生み出されたこの世の闇、深淵そのものさ。……見たら最後、死ぬぞ」

 

真剣味を帯びた語り口は、映画が人を殺すという荒唐無稽な話を紡いだ。

 

「またまた~さすがにそれは言い過ぎだって」

 

おっきーはそれを聞き冗談だと笑い飛ばした。

 

「さっきのクーフーリンの死因がコレ(クソ映画)だぞ」

 

「ええ……」

 

 

ペニーワイズは去って行った。

大量の産業廃棄物(クソ映画)を残して。

 

「うーん。どうしよ」

 

告白しよう。正直に言えば興味があった。

あのペニーワイズにここまで言わせたのだ。

この世の闇、深淵とはいかに。

彼は一体何を見てしまったのか。

おっきーの視線がクソの海を泳ぐ。

 

「日本の物なら、そこまで悪くなるはずはないよね」

 

そんな台詞と共に一本のDVDに手を伸ばす。

そのタイトルは『デビルマン』。

日本人であれば誰もが知っている程の知名度を誇る作品。このレベルの名作なら面白くならないはずがない、おっきーはそう踏んだ。

しかし彼女は知らなかった。それがメイドインジャパンの信頼を木端微塵に打ち砕く、日本が生み出したとてもおぞましき、最凶の悪魔だと言うことに。

 

__数十分後。

 

「__っ!無理っ!もうダメ!ギブアップ!……全然面白くない。おおよそ褒めるべき所が何一つないんだけど。あの名作をここまでつまんなくできるなんて、ある意味才能だよ。控えめに言ってクソだよクソ」

 

デビルマンには勝てなかったよ……。

デビルマンの視聴を打ち切り、脱力するおっきー。

ひどい、あまりにもひど過ぎる。現代美術並みの醜さだ。

だが__、

 

「こんなものに比べたら、私の悩みなんてちっぽけな物だよね」

 

世にも恐ろしい恐怖体験を終え、自身の胸の内に渦巻いていたもやもやはいつの間にか消え去っていた。

ペニーワイズは本当に慰めに来ただけかも知れない。クソ映画をオススメするのはどうかと思うが。

 

「……それにしても、どんな終わり方をするのかな」

 

ふと、気になってしまった。

クソなことには違いないが、果たしてどんな終わりを迎えるのか何となく気になった。

流石にもう一度見る気力は無い。

PCの電源を入れ、素早いタイピングで打ち込む。

すると、出るわ出るわデビルマンの悪名、酷評の嵐。デビルマンファンの怒りのレビューが画面を覆い尽くす。

そんな画面をスクロールすると妙におっきーの気を引くものがあった。

 

「……ゆっくりクソ映画レビュー?」

 

興味がそそられ、思わずクリックする。

 

「ハローワールド」

 

画面に現れたのは、ゆっくり霊夢と呼ばれる饅頭であった。通常の立ち絵と違い青白いホログラムのような姿であることを除けぱ、ネット上で何度も見た親しみのあるキャラだ。

ゆっくりの前置きが終わり、本編がスタートする。画面に先ほど見た地獄が映し出される。

その要所要所のクソな部分にゆっくりの鋭いツッコミが炸裂する。

語彙力のあるゆっくりの罵倒は聞いていてかなり心地よかった。

その度におっきーの笑いのドツボに嵌まった。

動画が終わると、今度はまた別のレビュー動画

見る。

それも終わると、また別の、また別のと__

 

 

いつの間にかクソ映画を楽しめていた。

 

楽しめるようになってしまった。

 

「あれ、案外クソ映画って面白いんじゃん」

 

 

次の日、ペニーワイズは再びおっきーの部屋を訪れた。

 

「はい、調子……クサッ!?何だよこの臭い!」

 

部屋に入ったとたん強烈な臭気が彼の鼻を襲う。

 

この臭いは、

 

__サメ特有の生臭さ。

__ゾンビが撒き散らす腐乱臭。

__ナチスのマッドサイエンスな科学臭。

__エイリアンが醸し出す未知の臭い。

 

知っている。

嗅ぎ覚えのある臭いだ。

どこか親しみのあるこの臭いは、自身が生まれるきっかけになった"あの御方"と同じ臭いだ。

間違いない。しかしどうしてその臭いがここでするのだろう?

臭いの元を辿ると、テレビのディスプレイに釘付けになっているおっきーの姿があった。

無機質な光源が、台風に乗って大暴れするサメの姿を映している。

この狂気的な映像美を彼女は身動ぎせず、ただ黙って見続けている。

果たしてどんな気持ちで見ているのか、その後ろ姿からは想像も付かない。

 

「……おっきー?」

 

ペニーワイズは恐る恐る声を掛けた。

その声に反応し、おっきーの首がゆっくりとこちらを向く。

 

「……ああ、ペニーか……クソ映画って、いいよね」

 

「えっうん」

 

第一声がクソ映画を称賛するという予想を遥かに越えた展開にペニーワイズは面を食らう。

一体どうしてそんな狂った結論に至ったのか。

たった一晩でおっきーに何があったのか。

困惑するペニーワイズをよそに、おっきーはクソ映画の良さを切々と説き始めた。

 

「冗長な会話で麻痺した脳髄へと支離滅裂な展開が不意に刺さってくるエキセントリックな物語に一種の倒錯的恍惚感を覚えて脳内麻薬がデロンデロンだがそこに手を抜いていない創意工夫の痕跡が窺えたときには味気ない凡作を凌ぐカタルシスと共に出来を度外視した愛情さえ生まれるそれと他にはプレミアの付いたサメ映画を相場の半額以下で落としたときとか__」

 

最早正気とは思えない。

おっきーの吐き出す言葉がおぞましい呪詛のようにさえ感じる。

これは不味い。とてつもなく嫌な予感するがする。

ペニーワイズは摺り足でゆっくりと逃げようとする。

 

「あー、すまない。急用を思い出した。帰るわ」

 

「待てや!」

 

逃げようとしたペニーワイズを突如物陰から現れた蛇型の折り紙が簀巻きにする

なんとか抜け出そうと必死にもがくがびくともしない。

そうしている間もおっきーは少しずつ近づいて来る。

 

「クソ映画は良いぞ、ペニー。……深いぞ」

 

死んだサメのような目がペニーワイズを捉える。

右手に『シャークネード』、左手に『ダブルヘッドシャーク』を持ち、佐々木小次郎に挑む宮本武蔵の如くこちらににじり寄って来る。

 

 

「私と一緒に地獄に付き合ってもらうよッ!!」

 

「ギャアアアアァァァァーーッッ!!」

 

 

 

 

 

ペニーワイズは死んだ。

クソ映画を見る錬度が足りなかったのだ。




今回はペニーワイズがオススメするシリーズを流行らせた偉大な先駆者である『知的風ハット』(メタルマンの人)さんを登場させてみました。

ちょっと展開が強引だったかな?
それとこのssを推薦していただいた成瀬草庵氏、閲覧及び評価をしてくださった皆様に感謝を申し上げます。
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