オリジナルゾイドバトルストーリー 青い猟犬   作:ロイ(ゾイダー)

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この物語は、犬型ゾイドを主役機にした短編の1つです。
今回は、ハウンドソルジャー編です。


前編

 

 

 

   ZAC2052年 8月 暗黒大陸 エントランス湾 ヘリック共和国軍基地

 

エントランス湾に橋頭堡を築いた共和国軍は、本土である中央大陸で編成したゾイド部隊を次々と暗黒軍(ガイロス帝国)本土の存在する暗黒大陸(ニクス大陸)に派遣した。

連日、中央大陸からサラマンダーやレイノスに護衛された浮遊輸送艦 タートルシップがエントランス湾に寄港し、多数のゾイドや兵員、補給物資を暗黒大陸に上陸した新生共和国軍の基地へと送り込んだ。

 

 

この共和国軍基地にも昨日飛来したタートルシップが着陸し、マッドサンダーを含む戦闘部隊を輸送していた。

 

対する暗黒軍もただ手を拱いていたわけではなく、共和国軍に対して小規模の襲撃部隊による遊撃戦を繰り広げていた。

今日も、暗黒軍は、共和国軍に襲撃部隊を差し向けていた。

 

 

一筋の青白い光線が地平線の彼方から発射されたゴジュラスmkⅡ量産型の胴体に突き刺さった。

胴体に被弾したゴジュラスが悲鳴を上げる。

 

「敵襲だ!」

 

青白い光の矢が次の獲物に突き刺さったのは、ある共和国兵が叫んだのと同時だった。

 

彼方の暗黒の大地から放たれた青白い光線は、次々と共和国軍基地に襲い掛かった。背部に直撃を受けたカノンフォートが大破し、頭部を撃ち抜かれたベアファイターが崩れ落ちた。逃げまどっていたアロザウラーがビームの直撃を受けて崩れ落ちる。

 

更に1発の荷電粒子ビームが集積されていた物資を満載したコンテナに命中。直後内部にあった弾薬が誘爆し、周囲にあった施設やゾイドを吹き飛ばした。次々と撃ち込まれる強力なビームに共和国軍は、混乱し、損害を積み重ねていく。

 

 

光線が放たれた方向には、鮮やかな黄色に塗装された機影が10機いた。それらのゾイドの正体は、暗黒軍の虎型高速ゾイド ガルタイガーである。

 

暗黒軍が開発した高速ゾイド ガルタイガーは、主兵装の超小型荷電粒子砲を始めとする数々の兵装により高い攻撃力を誇ると共に最高時速 260kmという高い機動性を両立したこの機体は、ヘリック共和国側にとっては高速ゾイドの常識を超えた攻撃力を持った恐るべき敵の1つであった。

 

 

背部に搭載した超小型荷電粒子砲は、最大出力で大型ゾイドにも打撃を与えられる威力を秘めている。この部隊は、超小型荷電粒子砲の火力と260kmの快速を組み合わせた一撃離脱戦法でエントランス湾に展開するヘリック共和国軍に対する攻撃を行っていた。

 

 

 

「海上のヘル・ディガンナー隊とブラキオスNEW隊が陽動になっている隙に離脱するか。」

 

 

指揮官のビクトル・ソコロフ大尉は、燃え盛る遥か向こう側の敵基地をモニター越しに満足げに見つめていた。

 

「全機帰還する。そろそろ追撃部隊が来るからな!」

 

「了解しました」

 

「了解!」

 

「了解」

 

「了解!」

 

「了解!」

 

部下の機体を引き連れ指揮官機のガルタイガーは、友軍勢力圏へと向けて走り去った。このまま一方的に攻撃して立ち去れると思えなかったからである。基地を攻撃されて混乱する共和国軍も追撃隊を組織しているに違いない。

 

指揮官機の背部のドップラーレーダーには、敵機と思われる反応が、少なくとも2つ確認できた。この電磁嵐の酷さでは、空軍を出撃させるのは、遭難のリスクがある。恐らく高速ゾイド部隊だと推測できた。

 

「ふん!シールドライガーやコマンドウルフが現れようと、このガルタイガーの敵ではない」

 

侮る様な口調でソコロフは、吐き捨てる。

 

現在共和国軍が配備しているシールドライガーは、mkⅡ仕様に改造されており、火力とパワーこそ強化されているが、重量増によって機動力が低下していた。その僚機のコマンドウルフは、装甲も火力も機動性もガルタイガーに劣っており、容易に蹴散らせる相手だった。

 

そして、2機種ともガルタイガーが全速力で離脱を図った場合、追いつくことは出来なかった。

 

最近、存在が暗黒軍側に確認されたキングライガーと呼ばれる新型機は、ガルタイガーと互角の機動力と格闘性能を有していた。だが、その配備数は少なく、脅威になりえなかった。

 

「ヨハンの機体が遅れているな……」

 

最後尾の機体が隊列から遅れ始めているのを見たソコロフは、もう少し速力を下げて脱落を防ぐべきか?と考えた。次の瞬間、最後尾の機体を示す光点がモニター上から消失した。同時に背後で爆発。

 

「!!」

 

「ヨハンがやられた!」

 

 

「追撃隊です!」

 

「何だと!」

 

ドップラーレーダーに捉えていた敵機か?そう思ったソコロフは、後方警戒センサーを確認する。後方警戒センサーが捉えた映像がモニターに表示される。そこには、見たこともない青い機影が別のガルタイガーに襲い掛かっているのが見えた。

 

青い機影に横切られたガルタイガーの左前脚と後脚が抉られ、絶叫と共にガルタイガーが崩れ落ちる。

 

 

更に少し後ろでは、先程撃破されたヨハンのガルタイガーが黒煙を上げて燃えていた。燃え盛る残骸は、脇腹に大穴を開けられていた。

 

 

更にもう1機のガルタイガーが黄色い閃光―――――高密度ビームの直撃を受けた、直撃を受けた機体は、眩い閃光と共にバラバラに吹き飛ぶ。ガルタイガー部隊は必死になって離脱を図ろうとする。

 

だが、青い機体は、更に速度を上げて追撃してくる。明らかに速力では、ガルタイガーが劣っていた。

 

 

「なんて速度だ!」

 

ソコロフは、思わず叫ぶ。青い機影は、ガルタイガー部隊を追い越すと、彼らの進路上に立ち塞がった。

 

 

「なんだこいつは?」

 

 

ソコロフは、目の前に立ち塞がった敵機を見て言った。その機体は、シールドライガーよりも小型でコマンドウルフにどこか似ていた。だが、形状はコマンドウルフよりも鋭角的で大型だった。鋭い歯が並んだ口と大きな2つの耳そして頭部の両側面からは青く光る槍が伸びていた。格闘性能に優れた機体であることは明らかであった。

 

 

胸部には三連装砲、背部には、白金色に輝くビーム砲が搭載され、火力も充実した機体である事が窺えた。その機体は、新生共和国軍が開発したシェパード型中型ゾイド ハウンドソルジャーであった。

 

 

機動性では、ゼネバス帝国が最後に開発した高速ゾイド ライジャーを上回る330kmを叩き出す事が出来た。

 

「……全機!敵は1機だ。集中攻撃で叩き潰すぞ!」

 

 

ソコロフは、交戦を決断した。目の前の新型機がガルタイガーよりも早い以上、撤退は困難である。それならまだ戦闘した方がまだ離脱出来る可能性はある。特に目の前にいる敵機はまだ1機。対する此方は3機が撃破されたものの7機いる。

 

全機で襲い掛かれば勝機はある。それが、彼と部下達の判断だった。7機のガルタイガーが一斉にハウンドソルジャーに襲い掛かる。3機が背部の超小型荷電粒子砲と連装ビーム砲を発射する。

 

ハウンドソルジャーは、それらの攻撃を回避し、ガルタイガー部隊に接近戦を挑んだ。

 

「逃がすか!」

 

指揮官機のガルタイガーが背部の連装ビーム砲を連射して突進した。ソコロフの部下のガルタイガー1機が飛び掛かる。

 

ハウンドソルジャーは、敵機の突進を回避する。間髪入れず、ソコロフの操縦する指揮官機が爪と牙を煌かせてハウンドソルジャーに突進してくる。

 

 

ソコロフのガルタイガーの尾部のパラライザーから雷光――――――マイクロ波ビームが放たれる。

 

パラライザーは、マイクロ波を敵ゾイドに照射する事で機体の電子機器を破壊、機能不全に陥らせる兵器である。

 

1秒の動きの差が命取りになる高速ゾイド同士の戦闘でもこの兵装は役立った。また尾部に装備されている為、敵に対する不意打ちにもなった。

 

 

ハウンドソルジャーは、その攻撃を回避すると、別のガルタイガーへと襲い掛かる。

ハウンドソルジャーは、クロスソーダーでそのガルタイガーの頭部を狙う。

 

 

「させるか!」

 

別のガルタイガーが横合いから連装ビーム砲を連射して突進する。ハウンドソルジャーは跳躍してその攻撃を回避し、着地と同時にダッシュ。

 

 

「なんて、跳躍力だ!?」

 

「落ちろ!」

 

背後からガルタイガーが飛び掛かる。ハウンドソルジャーは、背後に向けて腰部の3連装ミサイルポッドを発射した。

 

 

腰部の3連装ミサイルポッドが背後にいたガルタイガーに着弾した。その一撃は、ガルタイガーを撃破するには至らなかったが、その動きを一時的に止める事が出来た。

 

 

ハウンドソルジャーは、反転し、動きを止めた敵機に必殺の一撃を発射する。

 

ハウンドソルジャーの背部の砲――――――――ハインドバスターが閃光を放った。高出力ビームの矢がガルタイガーを撃ち抜いた。

 

 

「よくもヨハンを!」

 

「よせハルトマン!」

 

ソコロフの静止を振り切り、1機のガルタイガーが連装ビーム砲を乱射して突進する。

 

 

ハウンドソルジャーは、頭部両側面に装備した槍 クロスソーダーを正面に展開。右肩に突き刺し、そのまま右前脚を抉り取る。ガルタイガーが悲鳴を上げて崩れ落ちる。

 

止めとばかりにハウンドソルジャーが胸部の3連装ブレストボンバーを発砲。至近距離で高速弾を損傷個所に受けたガルタイガーが爆散する。

 

 

1機のガルタイガーは、超小型荷電粒子砲をチャージしていた。青白い光芒を放つ銃口の先には、ハウンドソルジャーの青い機影がある。

 

ハウンドソルジャーは、クロスソーダーを展開して、目の前の敵機に向けて全速力で突進した。超小型荷電粒子砲のチャージ中だったガルタイガーは、急に動き出すことが出来ず、ハウンドソルジャーの格闘攻撃を回避出来なかった。

 

クロスソーダーがガルタイガーの胴体を貫いた。3機のガルタイガーを撃破したハウンドソルジャーであったが、数の差から次第に防戦一方になりつつあった。

 

 

ガルタイガーが連装ビーム砲を連射する。ハウンドソルジャーは、その攻撃を回避するが、別のガルタイガーが2機掛かりで追撃し、反撃するチャンスを与えない。

 

ガルタイガー部隊の連携の取れた攻撃にハウンドソルジャーが追い詰められる番だった。

 

指揮官機のソコロフのガルタイガーともう1機のガルタイガーが背部の超小型荷電粒子砲をチャージしてそれぞれ別の方向からハウンドソルジャーを狙う。

 

 

「これで、止めを……」

 

ソコロフが共和国軍の新型高速ゾイドに照準を合わせたその時、超小型荷電粒子砲をチャージしていたもう1機のガルタイガーの腰部にビームが命中した。

 

背後からの攻撃を受けたガルタイガーが火球と化す。超小型荷電粒子砲を発射寸前だったことで機体にエネルギーが蓄積されていた事でその爆発も、それまで撃破された同型機よりも大規模だった。ソコロフのガルタイガーも爆風に巻き込まれて態勢を崩した。

 

 

「ソコロフ隊長!」

 

 

勝利を確信していたソコロフは、驚愕した。もう1機のハウンドソルジャーが出現したのである。「助かったぞ、ニーナ中尉!」

 

最初にガルタイガー部隊に襲い掛かったハウンドソルジャーのパイロット 第34遊撃小隊隊長 アレックス・ホーソン大尉は、不敵な笑みを浮かべ、右手の親指を立てて、追いついてきた僚機の援護に感謝した。

 

 

「アレックス大尉、先行しすぎです。1機で9機の敵に突っ込むなんて無謀ですよ。」

 

 

新たに戦闘加入したハウンドソルジャーのパイロット ニーナ・ベイカー中尉は、単機で敵部隊に突撃を仕掛けた上官の蛮勇に呆れていた。

 

栗毛色の髪をショートカットにした彼女は、アレックスの副官を務めていた。また、アレックスの部隊に2機だけ配備されているハウンドソルジャーを与えられているだけあって優秀なパイロットであった。

 

 

「お前らに合わせてたらこいつらを取り逃がしてしまうところだったんだ……ニーナ、文句はこいつらを全滅させてからだ。」

 

「……はい!」2機のハウンドソルジャーは、残り3機となったガルタイガー部隊に襲い掛かった。

 

2機のガルタイガーは、それぞれ撃破され、指揮官機のみが残された。

 

 

「こうなれば、1機だけでも道連れにしてやる!」

 

最後に残ったガルタイガー―――――――部隊指揮官のソコロフのガルタイガーは、アレックスのハウンドソルジャーを道連れにしようと試みたが、アレックスのハウンドソルジャーとニーナのハウンドソルジャーの背部のハインドバスターを同時に受けて一部の残骸を残して消し飛んだ。

 

 

 

ガルタイガーの色鮮やかな黄色とオレンジの残骸が散らばる黒い大地――――――今やそこには、2機の青い犬型ゾイドだけが佇んでいた。

 

 

「これで暗黒軍の奴らも、基地を襲撃するのを多少は躊躇う様になるだろうな。」正面モニターに映る残骸を見渡しながら、アレックスは言った。

 

「だといいですけどね。隊長」

 

 

そういうとニーナは、ため息をついた。連日、彼女達のいる基地を含め、エントランス湾の共和国軍は、暗黒軍の嫌がらせの様な少数部隊による攻撃を受け続けてきた。その度に、アレックスの率いる部隊は、戦果を上げてきた。

 

「このハウンドソルジャーは、いい機体だ。ライガー系に匹敵するパワー、300kmを超える速力、大型ゾイドの重装甲を撃ち抜ける攻撃力、アクティブレーダーによる優れた索敵能力……こいつが、量産化されれば、共和国軍高速部隊は、暗黒軍に後れを取る事は無くなるに違いない。」

 

アレックスは、現在の愛機 ハウンドソルジャーの性能にほれ込んでいた。

 

「ハウンドソルジャーがもっと配備されれば、暗黒軍との戦闘も有利になるでしょうね。」

 

 

ニーナも彼に頷く。2人ともハウンドソルジャーの性能の高さに惚れ込んでいた。

 

 

従来の共和国軍の高速ゾイド シールドライガーmkⅡ、コマンドウルフNEW、ベアファイターNEWでは、暗黒軍の装備する高速ゾイド ジークドーベルやガルタイガーを撃破する事は、困難であった。

 

特にゼネバス帝国軍が末期に開発したライオン型高速ゾイド ライジャーは、ゼネバス帝国軍の軍備を接収、利用している暗黒軍も高速部隊に配備していた。

 

 

 

現状の共和国軍高速部隊の数的主力であるコマンドウルフNEWでは、ライジャーやガルタイガーに勝利するのは不可能に近かった。その事を元コマンドウルフパイロットのアレックスとニーナは、身をもって認識していた。

 

 

「こいつは、ハウンドソルジャーは、コマンドウルフの後継機に相応しい機体だ。」

 

 

ハウンドソルジャーも、元々は、ライジャーに対抗できるコマンドウルフの後継機種として開発されていた機体だった。

 

そして、暗黒軍との戦争に突入してから、ハウンドソルジャーは、暗黒軍の強力なゾイドに対抗する為に更に数々の新技術を導入し、設計の改良が加えられた後、正式採用されたのである。

 

 

2機のハウンドソルジャーがガルタイガー部隊を全滅させて数分後、遥か後方からコマンドウルフNEWの部隊が出現した。その数は、12機。

 

 

「……(これが、今の〝小隊〟か)」

 

接近してくる部下の機体を見つめ、アレックスは、現在の共和国軍の部隊編成が、数年前、ゼネバス帝国と戦争していた頃とは、様変わりしている事を改めて実感していた。

 

その時期、デスザウラーによって共和国首都を始めとする国土の大半を制圧され、苦しい戦いを強いられていた頃、1小隊に配備されるゾイドの数は、2~6機だった。

 

この頃は、共和国軍のゾイド不足や中央山脈でのゲリラ戦が主体だった為、機動性と整備の簡便さが求められていたからである。

 

だが、中央大陸戦争の後半、デスザウラーを撃破可能な超大型ゾイド マッドサンダーが開発、量産されてから、ヘリック共和国軍は再編成され、その規模も拡大した。

 

 

それに伴い、共和国軍の部隊編成における小隊の規模も拡大し、今では、高速部隊や強襲部隊では、1個小隊辺り10機から15機のゾイドが配備される事も珍しくなくなっていた。

 

 

「アレックス隊長とニーナ中尉だけで潰したんですか、こいつら」部下の1人は、黒い大地に転がる敵機の残骸を見て驚嘆した。

 

「約3機はニーナのお陰だけどな。1人で全滅させてやれなかった。」「それでも凄いですよ!」

 

「魚狩りは終わったか?」

 

 

「はいっアレックス隊長!」

 

「アレックとマイクの奴がへまをしてダメージを受けましたが、機体も、パイロットも命に別条はありません」

 

「蜥蜴(ヘルディガンナーの綽名)共が混じってたのか?」

 

 

「いいえ、魚(ウォディックだけです)」

 

 

「それは珍しいな。」

 

 

アレックスは、コマンドウルフNEWに乗る部下達をガルタイガー部隊の追撃には参加させていなかった。コマンドウルフNEWにとって最新鋭のガルタイガーやライジャーは、危険すぎる上に捕捉すること自体が困難な存在だった。

 

 

その為、彼は、敵の高速ゾイドの追撃は、自分と副官のニーナのハウンドソルジャーのみで行い、部下のコマンドウルフ部隊は、高速ゾイド以外の敵………海上から出現する海戦ゾイド部隊の迎撃にあたらせていた。

 

 

今回も、機動力でハウンドソルジャーに劣るコマンドウルフNEW部隊は、ガルタイガーの追撃ではなく、海上から出現した敵ゾイドの迎撃にあたった。海上から沿岸地帯に上陸して基地への砲撃を行う暗黒軍の海戦ゾイド部隊を撤退前に捕捉して撃破することは、旧式化しつつあるとはいえ、210kmの最高時速を誇るコマンドウルフNEWにとっては十分可能な任務だった。

 

だが、その任務は、容易な物でもなかった。海上から現れる敵機は、ヘルディガンナーか暗黒軍仕様に改造されたウォディックの2機種―――――――そのどちらもコマンドウルフNEWにとっては危険な敵であった。ヘリック共和国軍が最初に遭遇した暗黒ゾイドの1種 ヘルディガンナーは、運動性と速度では、コマンドウルフに劣っているが、瞬発力とパワーは侮れない。

 

 

かつてゼネバス帝国海軍が開発したウォディックは、優れた海戦ゾイドとして知られている。だが、短時間しか陸上での活動できなかった。その為、コマンドウルフ等の陸戦ゾイドの前では、良いカモでしかなかった。

 

しかし、暗黒軍仕様の機体は、ゾイドを強化するエネルギー鉱石 ディオハリコンの投与によって出力を強化され、陸上での行動時間が大幅に増大している等、同クラスの陸戦ゾイドにとっても油断できない相手であった。アレックスも何度か部下に損害が出たのを知っていた。

 

 

「アレックの奴は、ドジを踏んだんですよ」

 

「そうなのか?」

 

「ウォディックだからって油断してたんですよ。」

 

「2人は無事か?」

 

「はい、どちらも軽傷です。ですが、コマンドウルフはどちらも中破相当の損害を受けました。」

 

 

「中破相当か………随分と手ひどくやられちまったな。………そろそろ帰還するぞお前ら。帰って祝杯と行こう!」

 

「はい!」

 

「他部隊の人と喧嘩しないでくださいよ隊長」

 

 

「分かってるよ!ニーナ中尉」

 

任務を終えた青い猟犬に率いられた軍狼達は、友軍の待つ〝巣穴〟へと帰還していった。

暗黒の大地に残されたのは、破壊された黄色いトラ型ゾイドの残骸のみ。

 

 

 

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