オリジナルゾイドバトルストーリー 青い猟犬 作:ロイ(ゾイダー)
ライジャー部隊の襲撃で損害を被りつつも共和国軍部隊は、進撃を継続した。
森林地帯のどこに敵機が潜み、油断した共和国軍の喉笛を噛み切る機会を狙っているか分からなかった。
部隊に配備されたゴルドスやゴルヘックスといった電子戦機が、レーダーで森林に潜む敵を捜索する。その中には、高速戦闘ゾイドであるハウンドソルジャーも加わっている。
ハウンドソルジャーには、索敵用のアクティブレーダーが搭載されている。
ハウンドソルジャーのアクティブレーダーは、索敵半径こそ専用の電子戦ゾイドに劣るが、限られたエリアでの索敵能力に優れていた。
「見つけたか!」
アレックスのハウンドソルジャーのアクティブレーダーが金属樹木の林立する森の中に潜んだ敵機の反応を捉えた。同じく、ニーナのハウンドソルジャーHBGもハイパービームガンのレーザーサーチャーで金属樹木が林立する森の奥に潜む敵影を捉えていた。
「ガルタイガーか……」
捕捉した敵機の機種の予測がモニターに表示される。超小型荷電粒子砲を内蔵し、速度に優れたガルタイガーは、待ち伏せに最適だといえた。
森林に潜む敵機を確認した共和国軍部隊は、火力で森林諸共吹き飛ばす事で対処した。
ガンブラスターとカノンフォートが森林地帯に砲門を向ける。
「砲撃開始!」
数秒後、2機種の火力が一斉に左右の森に叩き付けられる。
爆炎が木々をなぎ倒し、燃え盛る残骸が飛び散った。
「全滅したか?」
共和国士官の1人が呟く。次の瞬間、ジャイロクラフターを装備したガルタイガー……ガルタイガーGCが森林上空から飛び出す。
ガルタイガーGCは、ガルタイガーにグレードアップパーツ ジャイロクラフターを装備した強化型である。その最大の特徴は、ジャイロクラフターによってVTOL低空飛行が可能という事である。
これを装備したガルタイガーは、陸戦ゾイドとしてだけではなく、地形を選ばず活動可能な空中砲台として敵を攻撃できた。森林地帯に隠れていたガルタイガーGC部隊は、共和国軍を襲う機会を林立する金属樹木の中で待っていたのである。
だが、彼らは、アレックスのハウンドソルジャーのアクティブレーダーとニーナのハウンドソルジャーHBGのレーザーサーチャーによって発見され、ガンブラスターとカノンフォートの砲撃によっていぶりだされる事となった。
ガンブラスターの黄金砲から発射されたビームを浴びて森林に潜伏していたガルタイガーGCが数機纏めて大破した。突然の砲撃に堪らず、ガルタイガーGCが低空から飛び出した。
1機のガルタイガーGCは、上空からガンブラスターに襲い掛かった。背部に装備した超小型荷電粒子砲が不気味に光る。至近距離から直撃を受ければ大型ゾイドでも致命傷となる威力を有していた。ガンブラスターの超電磁シールドの展開も間に合わない。
ガンブラスターが打撃を受けるかと思われたその時、アレックスのハウンドソルジャーが跳躍した。
ハウンドソルジャーのクロスソーダーがガルタイガーGCの胴体側面を貫いた。
胴体を貫かれたガルタイガーGCは、地面に叩き付けられて機能停止した。ニーナのハウンドソルジャーHBGもハイパービームガンの一撃で1機のガルタイガーGCを葬っていた。
残り2機となったガルタイガーGCは、ジャイロクラフターを全開にして離脱を図った。
ガンブラスターのハイパーローリングキャノンを受けて上空で爆発炎上し、僅かに残った燃え盛る残骸が森林に落下した。森林に潜む脅威は完全に排除された。
森林地帯を進撃する5つの共和国軍部隊は、森林を抜け、暗黒軍基地を包囲した。
ゴジュラスmkⅡ量産型とディバイソン、ガンブラスターが基地守備隊に対して砲撃を開始する。
上空をスカイブルーのテラノドン型飛行ゾイド レイノスの飛行隊が乱舞した。
レイノス隊は、急降下し、胴体の3連装ビーム砲で機銃掃射を行った。
弾着観測機のレイノスの観測データを受けたウルトラザウルス〝インヴィンシブル〟の遠距離からの弾着観測射撃も開始された。
基地に次々と砲撃が行われ、暗黒軍基地守備隊のゾイドと人員、防衛設備に多大な損害を与えていく。
慌てて格納庫から発進した守備隊のヘルディガンナーが次々と砲撃の前に蹴散らされる。ダークホーンが、ガンブラスターのハイパーローリングキャノンを受けて火を噴いて崩れ落ちる。
ゴジュラスmkⅡ量産型の砲撃を頭部に食らったデッド・ボーダーがもんどりうって倒れた。
砲撃がやむと同時に基地内にシールドライガーmkⅡを指揮官機とする高速部隊、アロザウラーとベアファイターNEWを中核とする歩兵部隊が突入した。
シールドライガーmkⅡが瓦礫に潜んでいたガルタイガーの超小型荷電粒子砲を食らって撃破される。
すかさず、周辺の僚機が集中砲火を浴びせてガルタイガーを撃墜する。
アロザウラーの火炎放射器が砲台を次々と破壊していく。そのアロザウラーをデッド・ボーダーが接近戦で撃破する。
共和国軍のゾイド部隊が、暗黒軍と交戦する中、アレックスのハウンドソルジャーとニーナのハウンドソルジャーHBGも活躍していた。アレックスのハウンドソルジャーがクロスソーダーでダークホーンを貫く。
アイアンコングmkⅡ量産型が長い腕でアレックスのハウンドソルジャーに殴り掛かる。
「当たるか!」
ハウンドソルジャーは、後退して振り下ろされた鉄拳を回避する。
「今だ!ニーナっ」
「はい!」
ニーナのハウンドソルジャーHBGのハイパービームガンがアイアンコングmkⅡ量産型の胸部装甲を撃ち抜いた。デッド・ボーダーがGカノンを放つ。だが、ハウンドソルジャーは、高機動でそれを回避、クロスソーダーで首筋を貫く。
「このままいけば、基地の制圧も近いか。」
アレックスは、周辺の戦況を見て呟く。彼の周りでは、共和国軍のゾイドが次々と暗黒軍守備隊のゾイドを撃破していた。
このままいけば、暗黒軍基地を占領するのも時間の問題に思えた。次の瞬間、彼らの頭上は、眩く太い光の奔流が通過した。
「………荷電粒子砲!?」
それを見たアレックスは、思わず叫ぶ。
その閃光は、後方で支援砲撃を行っていたゴジュラスmkⅡ量産型とガンブラスター、ゴルドスが部隊毎壊滅した。残されたのは、どろどろに溶けた地面と赤熱する破壊されたゾイドの残骸のみ。
「デスザウラーだ!暗黒軍の改造機だ!―――――うぁああっ!」
友軍機からの通信は悲鳴を最後にぷっつりと途絶えた。その直後、アレックスとニーナは、基地の格納庫から異形の敵機が出現するのを見た。
共和国軍部隊の目の前に改造デスザウラー デスキャタピラが出現したのである。
その改造デスザウラーの形状は、従来のデスザウラーと大きく異なっていた。まず、機体の各所が、蛍光緑色に輝いていた。
黒い装甲と相まってそれは、ニカイドス島で共和国軍が初めて遭遇した暗黒ゾイド デッドボーダーとヘルディガンナーを連想させる。
それらの暗黒ゾイドと同様にゾイドを強化するエネルギー鉱石 ディオハリコンを投与された機体の特徴である。
その両腕部には、アイアンコングの部品が移植され、マニピュレーターに改造されていた。両肩には、ビームランチャーとハイブリットバルカンが装備されている。そして両脚部と胴体には、大型のキャタピラが装備されていた。
「デスザウラー……!」
「改造機か!」
突如として基地から出現した改造デスザウラーの異形の巨体を見た攻略部隊の共和国軍兵士たちは、動揺を隠せない。
第1次暗黒大陸上陸作戦では、飛行改造されたデスザウラーが航空支援のマッドフライを撃墜し、艦砲射撃を行っていたウルトラザウルス<インドミダブル>を強化された荷電粒子砲で撃沈していた。
最初の暗黒大陸上陸作戦を頓挫させたこの改造デスザウラーは、デスエイリアンと呼ばれる機体であった。
更に第二次暗黒大陸上陸作戦でも、デスクラッシャーという巨大な改造デスザウラーが共和国軍に被害を与えていた。
共和国軍兵士にとって未知の高度な技術で強化されたデスザウラーは、恐怖の対象であった。
暗黒軍によって強化されたデスザウラーは、基地に侵攻してきた共和国軍に襲い掛かった。
デスキャタピラの右肩のハイブリッドバルカンが火を噴いた。直撃を受けたゴジュラスmkⅡ量産型の上半身が蜂の巣にされた。左肩のビームランチャーが連射され、もう1機のゴジュラスmkⅡ量産型の頭部を吹き飛ばす。
2機ゴジュラスmkⅡ量産型が地面に崩れ落ちる。デスキャタピラの両腕部に内蔵されたビーム砲が連射され、アロザウラーやカノンフォートが次々と破壊された。デスキャタピラの胴体に砲弾が数十発着弾し、爆発した。
その攻撃は、大したものではなかったが、デスキャタピラの動きを止める役割を果たした。
それは、ディバイソンの17連突撃砲による攻撃。
即座にディバイソンが頭部の超硬角を振りかざしてデスキャタピラの無限軌道付きの脚部に突進する。ディバイソンは、前のゼネバス帝国との戦争後半のデスザウラー無敵時代に首都を失ったヘリック共和国軍が、デスザウラーを撃破する為に開発した重突撃ゾイドである。
ディバイソンは、デスザウラーを撃破する事は困難だが、ツインクラッシャーホーンを振り立てての突進は、条件によっては、その重装甲を貫くことができた。
だが、通常機よりも強化されたデスキャタピラに通用するかは未知数であった。デスキャタピラは、ディオハリコンの投与によって出力を強化されている。
デスキャタピラは、ディバイソンの突進を両腕で受け止めるとビームランチャーで頭部を吹き飛ばした。頭部を失ったディバイソンは、その場に擱座した。
ガンブラスターが砲撃を浴びせようとしたが、それよりも早くハイブリッドバルカンが火を噴いた。
「くっ!これでは砲撃できん!」
ガンブラスターは寸前で電磁シールドを展開してそれを防ぐ。だが、防戦一方では、デスキャタピラを撃破できない。
このままハイブリッドバルカンの猛射を浴び続ければ、ガンブラスターの電磁シールドといえど、持ち応えられない。
次の瞬間、デスキャタピラの胴体に高出力ビームが着弾した。デスキャタピラのパイロットは、敵機の姿を探す。敵機は、デスキャタピラの正面にいた。
攻撃を行ったのは、ニーナのハウンドソルジャーHBGだった。更にアレックスのハウンドソルジャーがハインドバスターと三連ブレストボンバーをデスキャタピラに叩き込む。
「こっちだ!タンク野郎!」
「隊長!」
デスキャタピラの目の前に2機のハウンドソルジャーが立ち塞がった。
アレックスのハウンドソルジャーが背部のハインドバスターを連射した。同時にニーナのハウンドソルジャーHBGもハイパービームガンを発射する。ビームが次々と着弾する。
だが、アイアンコングの装甲にダメージを与えられる威力のビームも、デスキャタピラの重装甲には、大した損傷を与えられない。
「ちっ、なんて重装甲だ……くっ」
アレックスのハウンドソルジャーにデスキャタピラのハイブリッドバルカン掃射が浴びせられる。
アレックスは、寸前で機体を後退させる。後一瞬でも判断が遅れていたら、彼とハウンドソルジャーは蜂の巣にされていただろう。
「あの改造デスザウラーは、装甲が強化されている様です。っ!あのキャタピラも重量増加に対応する為のものだと思います!っ」
攻撃を回避しながら、ニーナが報告する。
「ハウンドソルジャーの火器じゃ、奴の装甲を撃ち破るのは不可能か……ならば!」
アレックスは、砲撃でデスキャタピラを撃破する事を諦めた。彼は、ハウンドソルジャーの装備火器では、デスキャタピラの重装甲を撃ち抜くのは、不可能だと判断していた。
「クロスソーダーを使う。こいつの槍は、大型ゾイドの装甲を突き破れる。」
「隊長……」
「ニーナ、援護を頼む」
「分かりました隊長!」
2機の蒼き猟犬は、同時に動いた。デスキャタピラのビームランチャーが火を噴く。
アレックスのハウンドソルジャーは、回避する。更にデスキャタピラはビームランチャーを乱射しようとする。だが、ビームランチャーが発射されることはなかった。
デスキャタピラが怒りの咆哮をあげる。アレックスのハウンドソルジャーの頭部側面に装備された2本の特殊合金製の槍 クロスソーダーが展開される。
槍を掲げた騎士さながらに猛スピードでハウンドソルジャーは、突進する。ハウンドソルジャーHBGがハイパービームガンで援護する。デスキャタピラの巨大なマニピュレーターがアレックスのハウンドソルジャーに振り下ろされる。
「当たるか!」
ハウンドソルジャーはその攻撃を横に飛んで回避する。次の瞬間、アレックスのハウンドソルジャーが跳躍、デスキャタピラの胸部にクロスソーダーを突き立てた。
素早い一撃にデスキャタピラは、反応する事も出来なかった。
加速されたクロスソーダーの一撃は、デスキャタピラの重装甲を突き破り、内部機関を貫いていた。デスキャタピラの悲鳴が炎上する基地に木霊する。
「後は、任せたぞ!」
アレックスのハウンドソルジャーがクロスソーダーを引き抜くと同時にデスキャタピラは、悲鳴を上げて悶える。
「隊長!」
ニーナのハウンドソルジャーHBGもハイパービームガンを連射する。
「今だ!」
更に友軍のガンブラスター2機のハイパーローリングキャノン、通称黄金砲が火を噴いた。集中砲火を浴びたデスキャタピラは、爆発四散した。
デスキャタピラが撃破された事で、暗黒軍の守備隊は総崩れとなった。
共和国軍部隊は、再び体制を立て直し、基地への侵攻を再開した。
敵のドーベルマン型高速ゾイド ジークドーベルの奇襲攻撃によって旗艦のウルトラザウルス<インヴィンシブル>が損傷を被った事による指揮系統の混乱というアクシデントに見舞われたものの、共和国軍は、暗黒軍基地を制圧した。
その後、その高性能が認められたハウンドソルジャーは、キングライガーと共に新世代の高速ゾイドとして優先して生産され、共和国軍高速部隊に配備された。
シェパード型高速ゾイド ハウンドソルジャーは、新生共和国軍の頼もしい番犬として彼らの進軍を助けたのである。
暗黒軍のドーベルマン型高速ゾイド ジークドーベルとは、同じイヌ科ゾイドであることと性能・運用方法が似通っていたことから、ライバル機として暗黒大陸の戦場で度々激突したことで知られている。
但し、その高性能と引き換えに量産性ではコマンドウルフに劣り、コマンドウルフの量産性と整備性には叶わなかった。
その為、ZAC2056年の大陸間戦争の終戦まで、共和国軍高速部隊は、コマンドウルフのマイナーチェンジ機であるコマンドウルフNEWを戦場に配備し続けた。
その意味では、コマンドウルフの後継機種としては、成功したとは言い難い機体でもあった。