ナガレモノ異聞録 ~噂の都市伝説召喚師、やがて異世界にはびこる語り草~   作:歌うたい

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Tales 89【沈めたとて浮かぶもの】

 席を欠いたかつての世界への回想に留め具をかけたのは、立てた片膝を静かに胸元へと抱き寄せる衣擦れの音だった。

 

 

「父親の死を、目にしたのか」

 

「……そうなる。一応、救急車……こっちじゃ治療士か。呼びはしたけど、間に合うはずもなくて」

 

「そうか」

 

 

 話した内容が、内容だったからか。

 肺の中の酸素が足りてなくて重苦しい。

 足先まで通う血のトクトクと流れる感覚が、妙に鮮明だった。

 

 

「だが、母親は? 昨日お前は、両親ともにもう居ないと言っていたが」

 

「……ん。そん時にはもう、居なくなってた」

 

「……もう?」

 

「机に、くしゃくしゃになった手紙があったって言ったろ?」

 

「あぁ」

 

「その手紙、母さんからのだった。限界だ。こんな苦しいだけの生活に耐えられない、ごめんなさい……みたいな感じの内容」

 

「!」

 

 

 遺体の閉じられた右手には、指輪が握り締められていた。

 父さんの左手の薬指についてるのと同じ指輪。

 恐らく首を吊る前に手に持っていたんだろう。

 血が出るまでに、強く強く、握り締めていたんだろう。

 渇いた血を被った価値ある宝石(ダイヤモンド)が、壊れることなく無になったみたいで。

 

 

「ほんと、あっという間だった。こんな風になにもかもが簡単に崩れんのかって。このまま何も残らないまま、ただ沈んでくだけなのかも知れない……って」

 

 

 悲しいよりも、虚しかった。

 蝉の頭みたいに、全てが脆いとさえ。

 

 

「でも、そうはならなかった。沈めたとて浮かぶものがあるように、捨てる神あれば拾う神あり……ってやつなのかもね」

 

「……神か」

 

 

 膝に口を埋めながら、つまらない考え方だっていいたげに緋色の瞳が細くなる。

 確かに都合に振り回されて、疲れて足を止めた人間の弱い言い分にも、聞こえるかも知れない。

 

 

 けど、それでもあの時、沈み行く俺の手を掴んでくれたあの人の手は。

 今でも残っているくらいに暖かかったから。

 

 

 

 

────

──

 

【沈めたとて浮かぶもの】

 

──

────

 

 

 

 腕に抱いた白い遺影が、火葬場の長い煙突から流れる煙みたいに酷く軽い。

 着せられた喪服が対照的に、液を吸ったような重たさ。

 白は軽く、上に、宙に。

 黒は重く、下に、地に。

 例えた理屈がしっくりきて、余計に独りっきり。

 

 焼香をつまんで頭を下げる、顔を知らない黒い服の人達が目の前を行き来するのを見送って。

 生きたふりする死人のように、俺はただ立ち尽くすしか出来なかった。

 

 

『……』

 

 

 これからを想像してみる事すら難しかったと思う。

 

 父さんも。そして、母さんも居なくなって。

 どう"するか"より、どう"なるか"としか考えられなかった。

 いや、考えることすら出来ていなかったっけ。

 接眼レンズの覗き穴が塞がれた望遠鏡で、真っ暗過ぎる夜空に光を見つけられるはずがないように。

 虚々(からから)で穴だらけの心では、何か考えたって結局漏れ出て残らない。

 

 肌があるだけの案山子(かかし)でしかない。

 参列してくれた人達も、掛ける言葉を持て余すように一瞥しては、通り過ぎるだけで。

 同情的な目の色もあったけど、それ以上に『仕方がない』という、隔てるものがあったのだと思う。

 

 そうして、葬儀が終わったあと。

 

 

『お前まで死んだような顔、すんじゃねぇ』

 

 

 棒立つ俺の背を、強く叩いた人が居た。

 

 乱れた白髪と、シミの残った厚い顔した大きい身体のお爺さん。

 そしてその隣に柳のように立って、やんわりと微笑む皺の少ないお婆さん。

 

 

『帰んぞ』

 

『……?』

 

『ハァ……やっぱり上の空だったか。まぁ、仕方あるめぇ』

 

 

 無造作に差し出された傷の多い手を、不思議そうに見れば大きな身体に見合った大きな溜め息。

 そこで漸く、喪失のあまりに空白が募ってばかりだった記憶が、晴れていく。

 

 父さんの葬儀の手続きや準備を、俺の代わりにやってくれたのが、他でもないこの二人だってことも。

 そして。

 

 

『……帰んぞ、流。今日からワシらの家が、お前の家だ』

 

 

 着いてこいって言うだけ言って、ツカツカと駐車場へと去っていくのは。

 細波 一聖さん。

 父さんの、父さん。つまりは俺の爺ちゃんで。

 

 

『──いきマシょウ』

 

『あ……はい……』

 

 

 細いマイクのような、発声補助具を喉にあてながら俺の手を引いてくれたのは。

 細波 (みなと)さん。

 父さんの、母親。つまりは俺の婆ちゃんで。

 

 途方にくれるだけの案山子が、帰って来れる『家』になってくれた人達だった。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 細波 一聖こと爺ちゃん達の家は、萩山区の隣の区域に位置する、『深蘭(しんらん)』という港町の一画にあった。

 

 少し歩けば潮騒の香りが届く、透き通った海面の、目と鼻の先。

 白波に触れた淡い風が冷たく、けれどそれに負けない競りの活気が時々聞こえる漁港の近く。

 昔ながらの庭付きの瓦屋根が、ふとしさ懐かしさを誘う家だと思う。

 勿論、車の後部座席で揺れながら着いた時には、そんな高尚な感慨が沸くような心情じゃなかったけれど。

 

 

『覚えちゃいねぇか。前に来たときゃ、ずっとチビだったもんな』

 

『……』

 

 

 懐かしさを感じたのには、随分昔の下地があったらしい。

 それこそランドセルを背負うよりもずっと前の時に、俺は此処に来たあったそうだ。

 今はもう、此処に連れて来た二人は居ないけれど。

 

 

『そら、入んな』

 

 

 俺の背中を一度こずくと、爺ちゃんは玄関の戸をガラガラと開いて、バタバタと家の中へと消えていく。

 その背中をなんとなくジッと見送って、それでもなんだか脚が重く、縫い止められたみたいに動けない。

 

 あるいは、抵抗みたいなものかも知れない。

 

 開けっ放しの玄関の向こうへ、踏み入ることへの、抵抗。

 帰る家が変わったってことを受け止め切れない臆病さが、そうさせたんだろうか。

 

 

『……だいジョウぶヨ』

 

 

 けど、そんな俺の手をそっと婆ちゃんが両手で包み込んで。

 ガササッと補声器のノイズを走らせながら、静かに微笑みながら手を引く。

 

 

『……お邪魔します』

 

 

 まるでガキの意固地みたいな下手くそな礼儀と抵抗心を聞いても、その優しい笑顔は変わらなかった。

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 それからの日々は、緩やかな晴れの日の海みたいに、ゆったりと時間が流れてったように思う。

 元々漁師だった爺ちゃんは、朝から漁業組合に顔を出して、俺は深蘭町から近い私立学校に通う。

 家に帰宅してからは婆ちゃんの家事を手伝うことが多かった。

 

 というのも、家に帰っても人形みたいにジッと生活のサイクルに置かれているだけだった俺を、爺ちゃんが見咎めたからだ。

 することねぇなら湊の手伝いでもしやがれ。ガキが一丁前になにもねぇをすんな──と、地味に痛い拳骨もセットで。

 

 色々と乱暴だが、多分気を遣ってくれたんだろう。

 

 そのお陰で、婆ちゃんがしてくれていた洗濯の手伝い、掃除の手伝い、料理の手伝いをしてくにつれて。

 能動的にとは言いがたいけど一日の中で少しずつ"何もない"がなくなっていった。

 

 まぁ、ろくに家事もしたことなかったから、最初の内は手伝いどころかむしろ邪魔でしかなかったけど。

 米の炊き方が分からずに困り顔で立ち惚けるような俺にも丁寧に教えてくれた婆ちゃんのおかげで、中学に上がる頃には人並み以上に出来たと思う。

 爺ちゃんが毎日といっていいくらい組合の人達から魚を貰ってくるから、気付いたら魚を捌けるようになっていたし。

 

 

 そんななかで、それなり年月を共にすれば、一緒に暮らす二人のことも次第に知っていく。

 なかでも特に婆ちゃんが『歌手』だったことに関しては驚かされた。

 

 

 しかも現役時代には音楽番組にも出演したこともあったくらいに活躍してて、当時出したベストアルバムが30万枚も売り上げるほど。

 だが、活躍する最中で喉頭がんを患ってしまったらしい。

 婆ちゃんが補声器を使ってる理由も、手術により声帯を摘出したからだ。

 その結果引退する事になったそうだが、引退した今でも深蘭町ではかなりの有名人であるんだとか。

 

 

『け、結婚した経緯なんざどうだっていいだろぉが。いちいち話すもんでもねぇ!』

 

 

 まぁ、それがなんだって爺ちゃんみたいな武骨な漁師と夫婦になったんだろうとは流石に気になったけど。

 尋ねようもんなら爺ちゃんが照れ隠しに拳骨してくるので、ついぞ聞けなかった。

 でも事情通である組合の人いわく、なかなかの大恋愛だったらしい。

 

 

 それだけあって、寡黙というよりは不器用な職人気質の爺ちゃんも、婆ちゃんのことを大事にしているのは見てて分かるくらいだ。

 喋らずとも互いの考えは通じ合ってるみたいだし。

 婆ちゃんも、爺ちゃん相手に補声器を使うことは殆どなかった。

 

 それが少し羨ましくて。

 家事の手伝いに馴れたぐらいから、俺もなるべく婆ちゃんの考えてる事を汲み取ろうと努力していた。

 補声器を使わせずとも、婆ちゃんのして欲しそうなことを先取って、顔色を見て判断してみたり。

 料理の手伝いの時は、特に。

 

 

『……ありがトウね、流ちゃん』

 

 

 そんな俺をくすぐったそうに、婆ちゃんは目を細めて見つめていた。

 目尻に皺を集めて、やんわりとした微笑みで。

 見守ってくれているように、思っていた。

 

 

──けれど、やっぱり俺はまだまだ未熟で。

 

 海の様な優しい瞳の色の奥にあった、婆ちゃんの『悲しみ』を取り零してしまっていたんだろう。

 

 もっと正確にいえば、他でもない自分自身のことをしっかり見つめることが、出来ないでいただけなのかも。

 

 

 

 二人に引き取られてからの日々は、確かに優しくて、穏やかで。

 まるで中身のない人形に、少しずつ綿が詰められていくように。

 色んなことがありすぎてすっかり鳴りを潜めた心を、そっと包み込むような穏やかさがあったと思う。

 

 

 でも。

 それでも、胸の内にぽっかりと空いてしまっている大きな孔は、どうしても埋まらない。

 爺ちゃんに言われた"何もない"を止めることにばっかり目を向けて、鏡を見ることから逃げていたから。

 

 

──逃げ回った尾を引く影に、しっかりと捕まえられてしまったんだろう。

 

 

 ランドセルを卒業して一年が経った頃。

 

 逢魔ヶ刻に。

 燃えるような夕に焼けた街角で。

 

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

『……あら、あの子。細波さんとこのお孫さんじゃない? お買い物の帰りかしら』

 

『えぇ……湊さんのお手伝いで家事とか頑張ってるらしいわよ。偉いわよねぇ、うちのバカ息子にも見習わせたいくらい』

 

 

 すれ違った後の、この手の大きな内緒話には、もういい加減飽きたって良いぐらい聞いてきたことだった。

 

 足りない調味料を買った帰りの、馴れた一幕。

 俺の肩にぶら下げた醤油の瓶に、映る赤空と黒い影。

 空飛ぶカラスの、間の抜けた鳴き声に掻き消されるくらいの騒音に過ぎない。

 

 

『ホントに良い子。あんな事件があったのに……』

 

『例の開発計画のこと?』

 

『そう! 可哀想だと思わない? お父さんのこともそうだけど。母親は、あんな良い子を置いてったっていうじゃない』

 

『薄情な話よねぇ。お腹を痛めて産んだ子供でしょうに……あの子の前に連れてって、頭下げさせてあげたいわ』

 

 

 いつもみたいに聞き流してしまえばいい。

 分かったように語られる、義憤の顔をしたどこまでも他人事な意見なんて。

 何度と聞いたことだろう。

 もっと脚を早めて、さっさと帰ろう。

 きっと婆ちゃんが待ってる。爺ちゃんも、そろそろ組合から戻ってくる頃だから。

 

 そう振り切ろうと大きく踏み出した脚は。

 

 

『……そういえば、知ってる? その、萩乃湿原。なんだかすごく気味の悪い噂が広まってて』

 

『あぁ、私も聞いたわそれ!

 

 確か、────【底なし沼の沼人間(スワンプマン)】……だったかしら』

 

 

 ピタリと止まった。

 影ごと、縫いとめられたみたいに。

 

 

『夜中に萩乃湿原の底なし沼に行って、水面を覗き込むと……って話よね。それで、覗き込んだら自分じゃない別の誰かが映り込むっていう?』

 

『えぇ。それでね? その誰かっていうのが……底なし沼に行った人が、逢いたいって望んでいる人物らしいのよ。しかも、映るだけじゃなくて会話も出来るって話。ただ、その水面に映る人物は……既に他界している人ばっかりなんですって』

 

『し、死者限定ってこと? なによそれ、会話出来るってのもなんだか恐い話ねぇ……』

 

 

 萩乃湿原。

 再開発計画が頓挫することになった事故が起きた場所の名前は、きっと聞き間違えじゃない。

 けど、底なし沼のスワンプマンだなんてそんな噂話、聞いたことなくて。

 

 

『それが、恐いのはむしろ此処からなのよ』

 

『え?』

 

『映り込んだ顔相手にあんまり話し込んでしまうと……そのスワンプマンに、底なし沼に引き摺り込まれてしまうらしいのよ』

 

『うわぁ、確かにそれは……けど、なんだかありがちなオチじゃない?』

 

『肝心なのは引き摺り込まれた後なのよぉ。そのスワンプマン──引き摺り込んだ相手の顔に化けて、その人そっくりの人物に成り代わってしまうって話なの! 性格も考え方も思い出も、全部取り込んで!』

 

『そ、それって……そんなの気付きようがないじゃない?』

 

『そうなのよ。だから、貴方の身近な人物は、もしかしたら──ってオチ。気味が悪いわよねぇ……』

 

『はぁ……気味が悪いのもそうだけど、不謹慎な話ねぇ。そういうの、肝試し気分で若い人が面白がりそうだわ』

 

『困った話よねぇ……あぁ、すっかり話し込んじゃったわ。夕飯の準備しないと』

 

 

 喋るだけ喋って、一番面白がっていた主婦達の遠退く足音すら、もはや俺には聞こえていなかった。

 

 

 スワンプマン。

 逢いたい人。

 成り代わられる。

 死者。会話。

 話せる。もう一度。

 

 息が止まりそうだった。

 真綿で首を締められているみたいに。

 夕焼けの中で、溺れてしまいそうで。

 

 

『父さん……』

 

 

 ぽつりと生気のない顔で呟いた俺の視界の先には。

 

 萩山区行きのバス停へと繋がる曲がり角が、目に入っていた。

 

 

 

 

◆◇◆

 

 

 

 

 空の青も突き詰めればやがて黒に近い蒼穹へと濃さを増していくように。

 地に敷かれた碧い海も深くへと沈む度、色彩全てを呑み込むような単一色の根源へと還っていく。

 

 自然が織り成す美しい光景とて、宙に昇りつめれば、底に沈ませれば。

 やがて黒になるのなら。

 切り離したい重荷を沈めるには都合が良いのかも知れない

 

 

 けれど。

 幾ら深くに沈めたくても、沈んではくれない悲しみが。

 沈めたとて浮かぶものだけが、黒い黒い、沼の水面に映っていた。

 

 

『…………なに、してんだろ。俺』

 

 

 

 映っているのは、紛れもなく俺の顔だった。

 

 父さんの顔じゃない。逢いたい死者の顔ではない。

 ただ生きてるだけの、死人みたいな顔をした俺が居るだけだった。

 

 

『……ははは』

 

 

 馬鹿だろう、こんなの。

 本当に、自分でも笑えてくる。

 帰り道に聞いた噂話ひとつ本気にして。

 服も汚して、靴も泥だらけにして、擦り傷まで作って。

 

 ここに来れば、本当に父さんに会えるとでも思ったのか。

 与太話をすがるように信じて、結果、噂は噂で。

 馬鹿でしかない。一周回って笑えてくる。

 

 きっと婆ちゃんは心配してると思う。

 爺ちゃんももしかしたら、帰って来ない俺を探してるかも知れない。

 

 

《ホントに良い子。あんな事件があったのに……》

 

 

 

 大事な人達に心配かけるって分かってて。

 それでもこんなとこまで来た俺の、どこが。

 

 

 

《可哀想だと思わない?》

 

 

 どこが、可哀想なんだ。

 なんでそんなに哀れんでるんだよ。

 俺のこと、家族のこと。

 良く知りもしない癖に。

 

 

『ははははは!』

 

 

 可哀想。

 

 そう呼ばれるのが、苦しかった。

 自意識の美化の為だけに、『どうしようもない被害者』の枠に押し込められるのが。

 しんどかった。

 

 

《……そういえば、知ってる? その、萩乃湿原。なんだかすごく気味の悪い噂が広まってて》

 

 

《そうなのよ。だから、貴方の身近な人物は、もしかしたら──ってオチ。気味が悪いわよねぇ……》

 

 

《はぁ……気味が悪いのもそうだけど、不謹慎な話ねぇ。そういうの、肝試し気分で若い人が面白がりそうだわ》

 

 

 なのに。

 結局、こんな形に落ち着くのか。

 

 

 冗談じゃない。そんなの、我慢出来るかよ。

 

 

 

《確か、────【底なし沼の沼人間(スワンプマン)】……だったかしら》

 

 

 

『……可哀想って』

 

 

 あぁ、そうかよ。

 だったら、そう呼ばなくさせてやるよ。 

 

 

『言えるもんなら、言ってみろよ……』

 

 

 可笑しく、奇妙に。

 出鱈目にイッた心が、叫ぶ。

 

 空いた孔を埋めるものを見つけたように。

 節穴の目が、泥を睨む。

 

 

『不謹慎……フキンシンか。だったらいっそ……』

 

 

 

 可哀想が似合わない、変人に"成り済まそう"。

 

 例えばそう。

 

 こんな目に逢っておいて。

 

 こんな想いをしておいて。

 

 都市伝説に夢中になってみれば。

 

 可哀想だなんて、言われないはずだと。

 

 

 

『…………』

 

 

 

 

 沈めたとて浮かぶ泥で、空いた孔を埋めるように。

 

 "何もない"から上塗る為に、必要としたのは。

 

 個人ではなく、一塊ですらない、不特定多数へ向けた────

 

 矮小で、幼稚で、不出来な、憎しみだった。

 

 

 

 

  

 

 

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