ここは人間の中。
ただし、人間は仮面ライダー世界の住民です。
面白味は少ない
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人間の体の中には、約37兆2000億個の細胞が、24時間365日、元気に働いています。
ここは人間の中。
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頸動脈、首の中の一際太い動脈にて。
「いやーまた会っちゃいましたね白血球さん!!」
「そうだな。今、赤血球はどこに向かってるんだ?」
「今ですか? 今は……そうです……ね……あっ、脳まで行きますね!!」
「そうか」
たまたま出会った赤血球と白血球は並んで話していた。赤血球の腕には、何時ものように荷物が抱えられている。
その時だった。
「うわー!!」
「な、なんだぁ!?」
「助けてー!!」
悲鳴が頸動脈に響く。
「……何だっ!?」
「悲鳴ですね、何かあったんでしょうか……」
「すぐ近くに何が……」
声の出所は、頸動脈の分岐した細い血管の一本。
白血球が覗き込めば。
「███ ██」
「█ ███ █」
何かがいた。
オレンジ色のバネのような形をした謎の物体が、血管の壁を破壊している。
「うわっ!! 何かいる……あれは……細菌でしょうか……?」
「いや、あれはウイルスのようにも見える。だがあんなの今までに見たことが無いぞ……?」
「オレンジ色の、頭……?」
─────
『バグスターウイルス』
2011年に存在が確認された、人間にも感染するコンピューターウイルス。ゲーム病を引き起こし、宿主を消滅させることもある。消滅した宿主はバグスターになる。
コンピューターウイルスであるためにウイルスと名前がついているが、細胞に感染するかどうかは不明。
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「……とにかく倒すぞ!! 赤血球は離れておけ」
「あっ、はい!!」
白血球は赤血球が離れていくのを尻目に、ナイフを構え、バグスターウイルスの中へと飛び込んだ。
「うおおおおおっ!! 死ね、雑菌野郎!!」
ザシュッ
「██ █ ──」バタッ
ナイフを一振り。バグスターウイルスの一体は両断され、床に転がる。手応えはあまりなかった。
「案外倒しやすいな。この勢いで……!!」
ザシュッ
ザシュッ
ザシュッ
「██ █ █ ──」バタッ
「█ ██ ██──」バタッ
「██ ──」バタッ
その勢いで、白血球は周囲のバグスターウイルスを殺していく。一体、二体、三体、四体。
だが。
「……おかしいな。全然数が減らない……増殖が早すぎるのか……!?」
一向に数が減らない。むしろ増えている。さっきまで数えられる程しかいなかった筈のバグスターウイルスが、血管の中を埋め尽くしそうなばかりに増えている。
しかも。
「ヒャア!! ここが新しい宿主かぁ!! 」
バグスターウイルスの上を走る、やはり見慣れない一体の侵入者。
「貴様、貴様がリーダーか!!」
「おっ、免疫細胞だな?」
─────
『バグスターウイルスの種類』
バグスターウイルスは、それぞれゲームのキャラクターを元にした人格を持ち合わせる。現在感染しているのは爆走バイクのキャラクター、モータスのバグスターウイルス。
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「ここの免疫は、俺のスピードについて来れるかなァ!?」
ダッ
「っ、逃げるつもりか!! 待て!! 逃がさんぞ!!」
「音速を越えるぜぇぇっ!!」
白血球を認識したモータスバグスターは、頸動脈を埋め尽くしそうなくらいに溢れているバグスターウイルスと、それに囲まれて動けないでいる赤血球等の頭を踏みつけて掛けていく。行き先は脳。
白血球はそれを追い掛けるが、バグスターウイルスも、赤血球も溢れる道を走るのは困難を極めた。
「退け退けぇ!!」
「っ、血流が増加している……そこかしこで増殖しているということか……!?」
モータスバグスターはますます走る。白血球を振り切り、途中で見つけた細胞を片っ端から撥ね飛ばし、脳内にいた一体の赤血球から荷物を奪った。乱暴に開封するモータスバグスター。
「ああ!! ノルアドレナリンとドーパミンがぁ!!」
「おおっ? ガソリンだぁ!! 貰うぜぇ!!」
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『神経伝達物質』
脳の神経から放出される物質。ゲーム病は患者がストレスを感じることで悪化することが分かっているため、ストレスを感じた際に放出されるノルアドレナリンやドーパミンがバグスターウイルスの増殖を助けると考えられている。
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「いやぁ、やっぱりこれうめぇなぁ!!」
神経伝達物質を摂取したモータスバグスターは、己の体から新たに大量のバグスターウイルスを放出した。脳の隅々にウイルスが侵食していく。
「なんてことだ……!!」
白血球が追い付いた時には、もう脳はバグスターウイルスに荒らされ始めていた。
白血球はモータスバグスターに飛び掛かるが、あと少しの所でモータスバグスターが加速して回避するため、攻撃はさっぱり当たらない。
「避けるな!!」
「追い付いてこいよ!! 俺の走り屋魂を越えてみなぁ!!」
「ふざけたことを……!!」
攻撃、回避。攻撃、回避。
そんな応酬が続くこと十回、二十回、三十回。白血球は徐々に疲労していく。後からやって来た援軍は、溢れかえるバグスターウイルスの対処で手一杯だ。
そして。
「おっ? そろそろ良い頃合いだなぁ!! あばよあんちゃん!!」
「っ、何処へいく、待てぇっ!!」
唐突に別れを告げたモータスバグスターは、どこかに消えてしまった。
辺りを見回す白血球。そして気づく。
バグスターウイルスの増殖が、ますます早まっていることに。
「████」
「███ █ █」
「██ ██ ██」
「█ █ ██ █」
「██」
「█ ████」
「█ █ █」
「っ……!? 何だ、この数は……飲み込まれる……!!」
─────
『発症』
一般的にバグスターウイルスは患者の体内で増殖し、十分な数が集まると、患者を取り込んだ巨大な姿、バグスターユニオンに変化する。治療が出来るのは仮面ライダーのみ。
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「っ……ダメだ、押し流さ、れる……!!」
脳内はバグスターウイルスで埋め尽くされた。それらは血流に乗り、心臓へと流れていく。全身を飲み込まれた白血球も、流れに抗えずに押し流される。
「白血球さぁん!!」
「赤血球!? 何でここに……」
「勢い、凄くて……流されて……白血球さんもですか?」
「ああ……」
外頸静脈まで流された所で、血管の灯りまで消え始めた。しかも定期的に地面が揺れている。
グラグラッ
「きゃあっ!?」
「揺れている……何が起こっているんだ……!!」
グラグラッ
「っ……」
白血球は手当たり次第に辺りのバグスターウイルスを倒してはいるものの、それよりも増殖が早いのでなすすべが無かった。
「どうすればいいんだ……!!」
……それは、突然訪れた。
唐突に、血流を埋め尽くしていたバグスターウイルスが全部、さっきモータスバグスターが消えた時のように見えなくなったのだ。
流されていた白血球と赤血球は床に落とされ腰を打つ。
「……居なくなった?」
「いてて……もしかして、皆逃げたんでしょうか? でもどうして……」
ピコーン
「……いや、違う!! まだ、奴等はここにいる!!」
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『分裂』
バグスターユニオンが仮面ライダーに倒されると、バグスターウイルスは患者の体内から離れて独自の形態に進化する。患者の中からバグスターウイルスは大幅に減るが、この時も患者とバグスターとの繋がりは保たれており、体はダメージを受けている。
治療をするには分離したバグスターを倒すことが必要。治療が遅れると患者は消滅し、バグスターウイルスは完全体になる。
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白血球のレセプターはまだ、近くの血管の中にバグスターウイルスがいると叫んでいた。
「そんな、でも、どうすれば良いんですか!?」
「……分からない。俺に出来ることは、残っている連中の排除だけだ!!」
そう叫んで、白血球は血管の中へと走り込んでいく。
一時間後。
シーン
「……レセプターが鳴らなくなった」
ひたすら血管を探して、時々残っているバグスターウイルスを潰して、また捜索に戻ってを繰り返していた白血球のレセプターは、唐突に沈黙した。
バグスターウイルスは、もういない。
「ということは……でも、本当にいなくなったんでしょうか?」
「多分な。少なくとも、そう思うしかないだろう」
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『治癒』
仮面ライダーがバグスターを倒すと、患者の中のウイルスも消滅する。受けた損傷もなかったことになり、体は回復する。
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「……良かった」バタッ
「ああっ!! 白血球さん!?」
「悪い……ちょっと……休ま、せ……」
この体の外で何が起こっていたのか、彼らは知るよしもない。
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次回予告
「いやー、一時はどうなるかと思いましたね白血球さん!!」
「何があったのかはさっぱりだが、とにもかくにもいなくなったのは幸いだ。もう二度と来ないで欲しい所だな」
「そうですねー」
「……と、言ってもいられないか。悪いな赤血球、切り傷が発生したと連絡が来た。じゃあな」
「あっ、頑張って下さいねー!!」
次回『溶原性細胞』
続きはないよ
……続きはないよ!!