今は亡きにじファンにて掲載されていたものにちょこっとだけ加筆修正をいれたものを投稿してみました。
”それ”を呼んだのは、きっと、私が”飢えて”いたからだと思う。
”それ”は卵のようで、しかし大地に根付く大樹の根のごとく下から生えた何が地面に食い込んでいた。
その奇妙な物体に周囲の反応は様々だった。
気味の悪さに嫌悪感を隠そうともしない者。
興味深そうに眺めるもの。
ともかく”それ”を召喚した少女、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールに浴びせられていた
あんなもの、見たことがない。
誰かが、まるで感情をどこかに置き忘れてきたかのような声色でそう呟いたのが聞こえた。
無理もあるまい、と召喚の儀に立ち会っていた中年の教師は心の中で呟いた。
事実、あのような異形の物体は図書館の書物にも記されていないものであると思われるし、教師の数十年に及ぶ人生の中で、”それ”を見たとこも、聞いたことなど一度もない。
この学園、トリステイン魔法学園の長であるオールド・オスマンならば何か思い当たるものもあるかもしれないが、今この場にいるのは中年の教師…ジャン・コルベールしか居ない。
本来ならば、すぐさまミス・ヴァリエールに召喚の儀の続きを促す必要がある。
何せ彼女だけですでに多大な時間を浪費しているため、次の授業が押しているのだから。
だが、”それ”がコルベールの視界に入り込むたびに何か言いようのない不安が、彼を次の儀式へ進めることを許さなかった。
「ミス・ヴァリエール」
”それ”を召喚した少女に声をかけた。
ただ呆然と”それ”を眺めていた少女は、コルベールの言葉ではっと正気へと戻った。
振り返り、コルベールを見つめるルイズの瞳には”それ”を召喚した戸惑いと不安が混ざり合わさって揺らいでいた。
「召喚の儀は、いったん中止しましょう。正直”あれ”がどういったモノなのか検討がつきません。特例として、一度オールド・オスマンに確認を取ってからにしましょう」
そうルイズに伝え、周囲の生徒たちに撤収を促した。
コルベールから撤収の指示を受けた生徒たちは、戸惑いながらも教室へと帰っていった。
一部の生徒は、ルイズへの暴言を置き土産にしながら。
心無い生徒の言葉に、ルイズが口を開こうとしたその時だった。
閃光。
上空から突如降り注いだ、光。
その光は寸分の狂いもなく、ルイズが召喚した”それ”を貫いた。
その瞬間、ピクリとも動かなかった”それ”は、まるで魂が宿ったかのように己の表面に緑色の光を脈動させた。
その光景に、まだ残っていた生徒も、コルベールも、ルイズも、動きを止めた。
そして、”それ”から新たな光の矢が生まれ、ルイズの胸を刺し貫いた。
小さな頃、無数の
いつものように魔法が使えない私を母様が叱りにきて、逃げ出したときだったと思う。
目に映ったのは偶然だったが、私はそれをただじぃっと見つめていた。
昆虫は生きていて、無数の蟻から逃れようと必死にもがいていた。
しかし、もがいてももがいても、無数の蟻たちを跳ね除けるにはかなわなかった。
その姿に、昆虫を私に、無数の蟻たちを
私は土で汚れてしまう手を気にせず、蟻から昆虫を取り上げた。
獲物を突然とり上げられた蟻たちは、あわてた様子で周囲を彷徨っていった。
その光景に私はざまあみろと心の中で笑い、そして昆虫を手短な場所に逃がしてやった。
奇妙な満足感に浸っていたせいなのか、背後からかけられた声に思わず悲鳴を上げてしまった。
「昆虫を逃がしたのかい、ルイズ。君はやさしいんだな」
振り返れば、そこには両親が決めた婚約者がそこにいた。
彼は私の頭をなで、優しい声色で私に語りかけた。
「ルイズ、あの虫に何を思ったかは僕にはわからない。けど、そのきれいな手を土で汚すなんて、淑女としてはお転婆に過ぎるんじゃないかな?」
そう言った彼は、自分のハンカチで私の手をやさしく拭いてくれたのだった。
私は恥ずかしくなり、ずっと下を向いて、彼にされるがままだった。
また、彼は語りだした。
「ルイズ、君の行動はきっとあの昆虫にとっては天の助けに違いなかった。けど、獲物をとられた蟻にとってはきっと不幸なことだったろうね」
そんなことを言う彼に、私は彼をにらんだ。
「怒らせてしまったようだね。すまないルイズ。けど、次に同じような場面を見つけても同じことをしてはいけないよ」
何故、と私は彼に問いかけた。
「蟻たちが獲物を捕らえるのは生きるためだ。生きたいという”
そういって彼は立ち上がった。
「人も一緒さ。お金持ちになりたい、名誉がほしい、幸せになりたい。そういった”飢え”を満たすためにみんな頑張ってるのさ」
だから、そんな頑張りを妨げてはいけないよ。
彼は私を抱き上げた。
「さあ、戻ろう。君のお母様には僕からも計らっておくから心配しないで」
そう言って彼は笑顔を私に向けた。
私は真っ赤になった顔を見られたくなくて彼の胸に顔をうずめた。
そして、ふと疑問に思って彼に尋ねた。
あなたにも”飢え”はあるの、と。
「もちろん、あるさ」
そう言った婚約者の声は、どこか冷えていたと思う。
みんなが持っている、それぞれの”飢え”。
私の”飢え”は……
抗うことのできないこの”飢え”は、きっとこのとき…。
「おお、おきたかの、ミス・ヴァリエール」
目覚めた少女に、学園の長、オールド・オスマンはそう声をかけた。
「おーるど…、オスマン……?」
目覚めた少女、ルイズは己の現状を把握しきれずにいた。
なぜ、オールド・オスマンがここにいらっしゃるのか。
なぜ、私は保健室にいるのか。
ぐるぐると、様々疑問が脳裏をよぎっていくがまずは身体を起こさないと失礼だと考えたルイズは、腕に力を入れてベットから身体を引き剥がそうとした。
が、オスマンはそれを手で制した。
「無理はせんように。混乱しているのはわかるが、今はしばらく身体を休めておくといい。詳しいことはのちほど話そう」
その言葉に申し訳なさとありがたさを思い、ルイズは再びベットに身体を預けた。
「さてミス・ヴァリエール、まずは”あれ”を召喚した後の話からかの」
オスマンは語りだした。
”あれ”から光があふれ、その光がルイズを刺し貫いたこと。
その光に貫かれたルイズはそのまま気絶してしまったので保健室へ運んだこと。
周囲にはたいした被害はなかったこと。
光を放った”あれ”はそのまま砕けて消えてしまったこと。
すでに夜も更けていること。
話を聞いていたルイズは、途中から顔を青ざめさせていた。
”あれ”が何だったにせよ、砕けて消えてしまったのでは召喚の儀は行えない。
それはイコール、ルイズの留年が確定してしまったということに他ならない。
そんなルイズの様子を察したオスマンは、自分のヒゲを掻きながらルイズをなだめた。
「あのような出来事のあとに留年だなどとは言わんよ。使い魔も消えてしまったということは、再度召喚が可能かもしれんしの。ミス・ヴァリエールの体調を見て、再度儀式を行うことにしたわい」
オスマンの配慮に、ルイズは感謝の気持ちでいっぱいだった。
「お心遣い、感謝いたします。オールド・オスマン」
「うむ…。今回ばかりは致し方ないわい。ミス・ヴァリエールの過失とは思えんしの」
目に少し涙を浮かべつつ礼を述べるルイズに、オスマンは飄々とした笑いを返した。
が、それもつかの間、オスマンは不意に表情を暗くした。
「その、ミス・ヴァリエール。少々伝えにくいことを伝えねばならん」
そんな言葉を漏らしたオスマンに、ルイズは不安を覚えた。
いったいどんなことなのだろうか。
留年よりはマシだと思うが、まさか、この結果を実家に伝えるのではなかろうか。
そうなればお母様やお姉さまにどんな折檻をされるのだろうか。
ガクガクと身体を震わせ、また顔を青くしだしたルイズをよそに、オスマンは手鏡を取り出した。
「ミス・ヴァリエール。先ほど光に胸を貫かれたというのを説明したと思う。そのあと気絶したことも、の。その際に、その、少々”あざ”のようなものができてしまっての」
それも、貫かれたところとはまったく別のところにと、オスマンは手鏡をルイズの眼前に差し出した。
そこには、先ほどの想像で顔を青くしたルイズと…
「何よ…コレ…っ!?」
左頬にくっきりと浮かび上がっている”
続きなどない。だれか書いてー
何か感想あればドゾー