朝早く起きて、空港まで二人の友達を見送りに行った。仕事で海を渡った私と違い、旅行で来ていた彼らはもう自国へと帰ってしまうのだ。
私は残って多くのことを学ばねばならないし、学生である彼らもまた、自国に帰れば各々学ぶべきものがある。私たちの時間が交わる旅はここまでということだ。
チェックインを済ませ、お土産で膨れた大きなリュックサックを預け、ちょっとした暇もなく二人は搭乗口へ進んでいく。
私は彼らと何回も握手を交わし、私が帰国したときにはまた会おうと誓った。男同士の別れであり、また再開の目処は立っているためあっさりとしたものだったが、去っていく二人の友の背中を見届けるのは少々寂しさが心を占領する。
これまでの長い旅路が幸福だった分だけ、別れの事実が私の心を締め付ける。哀愁を胸一杯に抱えながらも、しばらくして気持ちを落ち着けた私は外へ出た。
エントランスから抜けてタクシーやバスで賑わう駐車場の脇を通り過ぎ、やや閑散とした貨物置き場の側に向かった。ここからなら、飛び立つ飛行機が見られる。
遠目に見える飛行機のなかに黒い尾をした目当ての機体を見つけた。ゆっくりと滑走路を走り始めているそれには今、先ほど別れを惜しんだ二人が乗っている。きっと彼らは私には気付いていないだろう。そういう位置であった。
やかて飛行機は方向を変え、一直線にぐんぐんと速さを増していった。そして滑車はするりと地面から離れ、私の友を含めた多くの人を抱えて飛行機は空へ飛び立った。
弧を描き、みるみる内に雲がひしめく空に上っていく。横に並ぶ窓までハッキリと見えていたはずの機体は次第に小さくなり、何だか細長いシルエットとしか映らなくなる。
私は手を振った。大いに手を振った。遥か向こうにいる友から見えるはずもないけれど、強く手を振った。
やがて飛行機の黒いシルエットは一つの点まで遠ざかり、その点も瞬きをした瞬間に雲の中へフッと消えた。後にはもう、朝方の空があるばかりだ。
それでも私は暫く、その場を動かず虚空をただ見つめていた。どうしてか、あれほど胸を痛めていた哀愁を今やひたすら爽やかに感じる。寂しいことに変わりはないが、また会えるという確信と目の前にある己のやるべきことが力となる。これからまた頑張ろうという気持ちになったのだ。
鞄を背負い直し、踵を返す。
あともう少し歩こう。ここからは一人だけど、あの二人といたほど濃い時間を過ごせるか判らないけれど、また素晴らしいことがあるのだと予感して足を進める。
見慣れた海外の街へ意識を向けた瞬間、そっと風が凪いだ。風の吹いた方向は、先ほど友が去っていった北方だった。
私が思わず振り返ると、空の遥か彼方に雲を割り、青空が覗いていた。