シン・アスカの異世界渡航記『完結』   作:サルスベリ

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 馬鹿騒ぎって、色々やったよな。

 特に、自分達で自分達の基地とか格納庫を壊すって。

 若気の至りだって笑っていたけど。

 本当、何やってんだか。




幕間1 蒼穹の空の元で。

 

『遠くて辛い道のりだぞ、それでもいいのか?』

 

 溜息交じりに告げてくる相手に、当時の自分がなんて答えたかは覚えている。

 

 強くなりたい、悲運に嘆くことがないほどに。誰にも負けず、世界さえ倒せる力を欲した。

 

 彼の名前を知っている。僅か数年で巨大な銀河帝国を築いた、暴虐の化身。あるいは殺戮の破壊神。

 

 幼馴染が政略結婚させられそうだからで、当時にあった最大の帝国を打倒し、そのまま勢力図を拡大させた銀河帝国を作った人物。

 

 ジョーカー銀河帝国皇帝。

 

 『血の十字架』の主。

 

 神々を足蹴にした騎士。

 

 『神帝』テラ・エーテル。

 

『解った。なら、俺ができるすべてでおまえを強くしてやる。覚悟しろ、おまえはこれから『騎士』になる。軍人や武人じゃない、騎士だ』

 

 死ぬ気でついてこい、と口外に語るように背中を向けた彼に、当時の自分は涙を振り払ってついていった。

 

 それが最初の始まり。シン・アスカの最初の一歩だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 懐かしい夢を見た気がした。何をどう見たか覚えていないが、とにかく懐かしい夢だ。

 

 自分が目指した最初の一歩だった気がするが、どうにも思い出せない。

 

 奥歯に物が詰まったような、というのはこういった感情を言うのだろうか。

 

 歯がゆくても出てこない、どんなに取り除こうともそこには何もない。思い出しても繰り返しても、何もない空虚さ。

 

 けれど、確かに何かある確信が精神を揺さぶる。

 

「はぁ、なんだか朝から疲れたな」

 

『そうかなぁ』

 

 隣でティスが嬉しそうに踊りながら答える。

 

「懐かしい夢を見た、と思う」

 

『うん、うん』

 

「けど思い出せないんだよ。何か知っているか、ティス?」

 

 問いかけに少女は立ち止まり、しばらく空を見上げた後で、にっこり笑顔で指を刺してきた。

 

『ヘタレ!』

 

「・・・・・よし、ケンカ売ってるなら買うぞ」

 

『ヘタレだった頃のシンの夢だったよ』

 

 ズバリと言い当てられた気がした。

 

 何かが刺さったような錯覚を覚え、無意識に胸元を抑えるのだが、何か実際に刺さっているわけでもない。

 

 まったく最悪だ、とシンは口の中で転がしながら政庁へと入って行った。

 

 政庁直属即応鎮圧抹消部隊『ヴィルティラス』は、政庁の地下一階部分に部隊本部がある。

 

 本部といっても、精鋭の中の精鋭を集めただけで、その人数は三十人くらいしかいない。

 

 五つの太陽系を支配下においた銀河帝国において、部隊の人数が三十人は下から数えたほうがいいほど、少ない数だ。

 

 それ以下だと、帝国軍や警察機構ではなく、『血の十字架』にしかいない。

 

 『サイレント騎士団』近衛騎士達か、あるいは皇帝が秘匿している非常戦力、コードネームしか伝わっていない『六柱神』、あるいは『護元神』のみ。

 

 入口で顔パスで入り、すぐに自分が所属する部署の執務室へと入る。セキュリティは大丈夫かと最初は不安になったが、ここまで侵入でいる猛者は今のところいない。

 

 皇妃達の十三の騎士団と、サイレント騎士団の守護騎士が完全に支配下においているテリトリーに入ろうなんて、『星系ごと消してください』と言っているようなものだ。

 

 怖い存在達の足元にいる自分に、ちょっとだけ寒気がした。

 

「シン、遅くないか?」

 

 自分の席に向かう途中で、反対側から人が歩いてきた。

 

「すみません、寝坊しました」

 

「しっかりしろよ。おまえはうちの『エース』なんだからな」

 

 軽く叱りながら通り過ぎる彼―ハイネ・ヴェステンフルスはニヤリと笑っていた。

 

 瞬間、とても嫌な予感が襲ってくる。

 

「なんですか?」

 

「いや、おまえも大変だなって。今日の仕事は、デスクワーク中心だろうな」

 

「はぁ?」

 

 意味が解らない。今日は特に任務もなく、思い当たるとしたら定期メンテナンスを受けるティス―デスティニー関係の書類のみだ。

 

「ほら、人気ものは辛いねぇ」

 

 彼が指さす先、自分の机にはたくさんのファイルが山積みになっていた。

 

「なんなんですか、あれ?」

 

「決まってるだろ。お見合い写真だ」

 

「はぁ?!」

 

 瞬間、シンの絶叫が部屋を満たした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 本部と銘打っているが、他に支部があるわけでもない。本拠地で仕事の中心なら『本部でしょ』とか、普段の聡明さは何処に行ったのか疑問に思うほどに馬鹿な発言をした宰相によって、ここは『ヴィルティラス』本部と名付けられた。

 

 その中の中心にある部屋は、『書類仕事する部屋なら執務室なのでは』ときょとんと首をかしげた皇帝代理によって命名された。

 

 普段の二人の思慮深さを知っている人たちからは、『病気だったんだろう』と言われるほどおかしい考えをしているが、決まってしまったことに否といえる人物はここにはいない。

 

 執務室は部隊ごとに区分けされている、わけでもない。三十人しかいないのだから、大部屋に小さく壁をつけて個人的スペースを確保しているのみ。

 

 昔のアメリカのIT企業の仕事部屋に近いかな、というのが見た人物の共通の認識。

 

 さらにその部屋の隣は、『ヴィルティラス』部隊長の執務室。

 

 現在、二代目の部隊長は、初代隊長が奔放な性格をしていたのに対して、生真面目一辺倒、たまにやる冗談が死ぬレベルで寒いとして有名だった。

 

「では、不満だというのか?」

 

「はい」

 

 執務机の前、直立不動で立つシンに対して、部隊長は真顔で言われた内容を脳内で繰り返し、大きく頷いた。

 

「正式な任務として通達したならば、おまえに拒否権はない。それは理解しているな?」

 

「もちろんです、バザット部隊長」

 

 迷いなく言い切ったシンに対して、部隊長『エイルン・バザット』は少しだけ見つめた後、小さくため息をついた。

 

「部隊長としてではなく、俺個人として話をする」

 

「解りました」

 

「俺も反対だ。軍人ではないとはいえ、俺達は騎士だ。その騎士に与えられる任務として、見合写真に目を通せとは、はっきりいって馬鹿馬鹿しい」

 

 この男にしては珍しい、とシンは内心で思う。

 

 任務に対して実直、有言実行。不満など飲み干して、淡々とこなしていくものだと思っていたが。

 

「しかし、だ」

 

 苦渋を顔中に浮かべながら、エイルンはシンに対して告げるしかなかった。

 

「今回の一件は拒否できん。俺たちが何処の部隊で、直属の上司が誰か解っているな?」

 

「もちろんです」

 

 政庁直属。政庁に勤めているものは誰か、答えは簡単だ。皇妃達。皇帝の奥様にして、実質的に帝国を運営している者達。

 

 政治家や官僚がいないわけではない、議会もあって話し合いをして法案を通すこともある。

 

 国家プロジェクトを計画し実行しているのだが、重要な案件はすべて皇妃達が行っている。

 

 もちろん、『ヴィルティラス』に対しての任務も、彼女達からだ。

 

「では俺から言えるのは、『馬鹿馬鹿しい任務でも、任務だ。さっさと片付けろ』だ」

 

「解りました」

 

 仕方がないかとシンは無理やりに納得して、一礼する。

 

 その時、絶対に壁際を見ないようにした。何があっても視界に入れないように努める。

 

『エルフィーナ、これ何?』

 

『ムッシュへの見合い写真のデータ・クリスタルです』

 

『ほへぇ~~データ・クリスタルが山だね!』

 

『ええ。誇らしく思います』

 

 壁際で二人の相棒が、山のようになったクリスタルを見上げているのだが。

 

「データ・クリスタルって、一個で惑星コンピュータが丸々入りますよね?」

 

「言うな、シン。やっと三分の一が終わったところだ。最近の帝国は、騎士がアイドルに見えるらしい」

 

 頭を抱えそうな隊長の姿に、シンは同情の眼差しを向けた。

 

 しかし、仕方がないことかもしれない。

 

 収入は完璧、技量は精鋭として保証済み。そして何故か全員がそれなりにルックスがいい。

 

 最初、アイリスとアセイラムがルックスで選んだと噂になったが、ものの試しに帝国軍と戦わせたら、三十人が中央四軍を壊滅させたため、誰もが口にしなくなった。

 

「俺達はまだいい方だぞ」

 

「そうなんですか?」

 

「ああ、女性の方がな」

 

 それでシンは察した。

 

 『ヴィルティラス』にも、女性はいる。しかも、アイドルと並べても勝てるほどに美貌を持った人物が。

 収入完璧、技量は問題なし、その上で美人で帝国へのパイプともなる。

 

 周辺国家のそれなりの地位にいる人たちが、放ってこないことこの上なし。

 

「今日は、ティーラが休みが欲しいと連絡があった」

 

「え?」

 

 『ヴィルティラス』の中でも、トップスリーに入る実力者であり、世間的の知名度ナンバーワンの彼女が、休みが欲しいと連絡してくるなんて。

 

「俺はすぐに彼女の機体『エーン・ラティエス』をロックするように通達した」

 

 両手を組み合わせ、顔をうずめるエイルンに、シンは何といっていいか言葉が見つからなかった。

 

 しばしの沈黙が流れる部屋の中で、小さな電子音が鳴る。

 

「はい・・・・・・ありがとう、そのまま取り押さえてくれ」

 

 通信は指向性、音声はシンの耳に届かなかったが、何を入れたかはよく解った。

 

 エイルンが頭痛を抑えるように頭に手をおいたから。

 

「先ほど、ティーラが『エーン・ラティエス』の最大稼働を行おうとした」

 

「そこまでですか」

 

 どうにかシンはやっと声を絞り出せた。

 

 あまりの事態に、脳が現実を拒否してしまったようだ。

 

「現在、格納庫で刹那とスザクが抑えてくれている」

 

「うち―『ヴィルティラス』の二枚看板じゃないですか?!」

 

「念のために、ガイとゼンガーさんをバックアップで配置しておいて良かったと、私は自分の裁量をほめたい気分だ」

 

「うわぁ~」

 

 刹那・F・セイエイ。

 

 枢木・スザク。

 

 獅子王・ガイ。

 

 ゼンガー・ゾンボルト。

 

 『ヴィルティラス』の中でも、特殊作戦などにおいて突破殲滅が得意な四名を配置するほど、今のティーラは怒り心頭ということか。

 

「これで無理なら俺は、東方先生に連絡を入れるところだった」

 

「・・・・・部隊長、俺も行きましょうか?」

 

「頼まれてくれるか? 正直、機体同士ならば抑えられるだろうが、生身となると不安がある」

 

「了解です」

 

 敬礼し、シンは全力で部屋を後にした。

 

「まさか、仲間うちでの損害で始末書を書くことになるとは。貴方は偉大だったのですね、サーシェス部隊長」

 

 溜息交じりに、初代隊長の名前を上げたエイルンは、静かに書類にペンを走らせたという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一方、同じ頃、盛大にくしゃみする男が一人。

 

「なんだ?」

 

「さーしぇす先生、どうしたの?」

 

「お風邪、引いたの?」

 

「うるせぇ、餓鬼ども。いいから遊んで来い。今日は天気がいいぞぉ!」

 

「は~~い!!」

 

 元気に走り回る園児たちの姿を追いながら、アリー・アル・サーシェス元『ヴィルティラス』部隊長、現保育士は目を細める。

 

 今日も世はこともなしだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 格納庫は、凄惨なことになっていた。

 

 片腕と片足を失いながらも相手を抑えつけるランスロット・アルビオン。

 

 下半身が丸々と砕け散りながら、ソード・ビッドを相手に叩きつけるダブルオークアンタ。

 

 巨大な体を半ばまで使って重量による抑えつけを行う、ジェネシック・ガオガイガー。

 

 斬艦刀を二つとも砕かれながら、踏みとどまっているダイゼンガー。

 

 そして、格納庫の周囲すべてを破壊した後に、抑えつけられ地面に叩きつけられているエーン・ラティエス。

 

「うわぁ~~~~これの修繕費って、うち―『ヴィルティラス』持ちかな?」

 

 あまりに予想外の事態に、シンは自分が混乱していることを自覚しながらも、馬鹿なことを考え続けていた。

 

「シン! そっちに行ったから止めて!」

 

 スザクの鋭い叫びに、一瞬で意識が戻った。

 

 目の前に飛び込んでくる鋭い蹴り、それを左手で払いのけたのち、右手を突き出す。

 

 しかし相手はスルリと回避して、上方からかかと落とし。

 

 これに対して、シンは払いのけた左手を戻して反対側へと叩き落とす。

 

「って! ティーラ!!」

 

「邪魔するならば貴方ごと潰します、どきなさい、シン」

 

 フワリと舞い上がるのは、エメラルドグリーンの鮮やかな髪。

 

 睨む瞳は、まさに宝石のようなエメラルド色。

 

 街中ですれ違えば、百人中百人が振り返るほどの美女は、その拳を握って腰を落として、完全に戦闘態勢でいた。

 

「落ち着けって! そりゃ、あれはやり過ぎだと思うけど」

 

「やり過ぎ? 落ち着け? いいえ、シン、これは戦争です。売られたケンカを買って、戦争をする事態です」

 

「おい!」

 

 フッとティーラが揺らぐ。

 

 夢幻、と頭が判断した瞬間には一歩を踏みこんだ。

 

 後ろを拳とティーラが通り過ぎ、その途中に足払い。

 

 見事に彼女は足元を取られて、体制を崩す。

 

「さすがに陛下の一番弟子だけはありますが」

 

 体制を崩して倒れる彼女の姿が、消えた。

 

 二段階の夢幻、『空舟』。

 

「陛下と同じ技が使えるのが、貴方だけではありません」

 

「だからって!」

 

 真っ正面から突き出された拳は無視。後ろから迫ってきた本物を握り、そのまま裏拳を放つ。

 

 皮膚に何かがかすった。それだけで、彼女の姿は再び消えていく。

 

「嘘に頼り過ぎるのが、ティーラの悪い癖だって、言っていたっけ」

 

「ですが、私を捉えられないなら、同じことです」

 

「誰が捉えてないって?」

 

 右手を横薙ぎに一閃。衝撃が腕全体に走り、続いて彼女が床に転がった。

 

「夢幻は確かに嵌めれば永遠に幻だけを追い掛ける。けどな、一度でも外せれば後は続かないんだよ」

 

「迂闊でした。貴方は外し方を知っていましたね」

 

 ゆっくりと立ち上がり彼女は、右目の上から血を流していた。

 

「もう辞めないか。できれば、女の子の顔に傷を、これ以上はつけたくない」

 

「優しいですね、シン。私が傷くらいで止まる、と?」

 

「本気か? なら、傷の一つや二つで済むと思うなよ?」

 

「ええ、望むところです。そうなれば、あんなくだらないことで時間を取られなくて済む」

 

 お互いに睨みあい、片手を開く。

 距離は五メートル。拳は届かないが、剣なら届くような距離を開けつつ、お互いが相手を視界に収める。

 

「止めないか?」

 

「貴方がそこをどくならば」

 

「俺はあんたを止めろって、言われてる」

 

「ならば交渉は決裂です。『アルミューレ』!!!」

 

 ティーラが、彼女を『エーン・ラティエス』の愛称を呼ぶ。

 

 瞬間、彼女の手の中にレイピアが握られていた。

 

 水晶のナックルガードに、厚みの刀身。レイピアと呼んではいるが、刀にも見える刀身を持つ近接武装。

 

 神剣『月光』。

 

「マジかよ! 『ティス』!!」

 

 反射的に、シンも愛称を呼ぶ。

 

 瞬間、シンの右手の中にも近接武器が出現した。

 

 翼の装飾に、炎と氷の意匠が施された剣身を持つ巨剣。

 

 神剣『天壌無窮』。

 

 マテリアルを与えられた者が、マテリアルを理解し育てた末に手に入れる『神経の延長線上としての剣』。

 

 その能力は、持ち主の最も深い部分の願望を現実化する。事象や物理法則を無視してまでも。

 

 あまりに威力の高いため、神剣の使用時は許可を得ることになってはいるのだが。

 

「そこまで!」

 

 二人がぶつかり合う前に、鋭い声と共に槍が飛んできた。

 

 ハッとして顔を向けた先、格納庫の入口で笑顔で立っている人物が一人。

 

「これはどういうことかしら? 騒ぎがあったって聞いてきてみたら、まさか『ヴィルティラス』のエース同士が戦っているなんて」

 

 笑顔で語りながら彼女は格納庫に足を踏み入れ、周りをゆっくりと見回した後、剣を引き抜いた。

 

「ねぇ、どういうことか説明してくれない? ティーラ? シン?」

 

 槍が飛び上がる。まるで吸い寄せられるように彼女の左手に戻った槍は、黒い光を放ちながら、周辺を歪ませる。

 

「ねぇ、どういうつもりだったのかしら?」

 

 右手の剣が、眩い光を漂わせながら、周辺の空間を食い始めた。

 

「二人とも?」

 

 ニッコリ笑顔を浮かべたままのアイリスの問いかけに、シンとティーラは条件反射で土下座した。

 

「申し訳ありませんでした」

 

「はぁ、解ればいいわよ。今回の件、私の落ち度でもあるから不問にします。エイルン、報告書と始末書を提出しなさい」

 

『解りました』

 

 通信モニターが開き、深く頭を下げている彼が映る。

 

「今回の修繕費は私のほうで出します。仕事に戻りなさい。以上」

 

 剣を槍をしまったアイリスは背中を向けて帰って行く。

 

「そうそう、お見合いを回避するために結婚するって手段もあるからね」

 

「・・・・・シン!!」

 

「どうしてそう短絡的に行動するんだよ、ティーラ」

 

 アイリスのアドバイスに、目をキラキラさせてこちらを見てくる彼女に、シン・アスカはため息をついたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何処までも広がる空は、何時までも終わりなんてなくて。

 

 天地が交わらず、永遠だと常に語りかけてくる。

 

 右手に持った剣を持ち上げて、シン・アスカは再び空を見上げた。

 

 『天壌無窮』。自分の神剣の名を告げられ、彼は『そうか』と思った。

 

 変わろうと決意して、強くなろうとあがき続けて、結局のところ自分は変わりたくなったのだろう。

 

 毎日、楽しい日々が続いていけばと願っていたのかもしれない。

 

「さて、と」

 

 彼は神剣を収納してから、歩きだす。

 

 ティス―デスティニーのオーバーホールは問題なし。

 

 しばらく休暇だと部隊長に告げられて、遠出でもするかと歩きだした足の先、何処へ行こうかと考えていた彼は、こうして姿を消したのでした。

 

 それは、シャルロットと出会う数時間前の話だったという。

 

 

 

 




 

 自分が偉いつもりなどはなくて。

 周りを見れば色々な人がいて、色々な意見があって。

 よく聞いて、よく考えて。

 自分がどうしたいかを考えた後、後悔しないように進んだだけだ。

 だからさ、ティス、これからもよろしくな。

 こっちこそ、よろしくね、シン。




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