昔、師匠のテラさんは『え? 射撃って撃てば当たるだろ?』なんて真顔で言っていたな。
撃てば当たるって、どんな理屈なんだろう。
俺が射撃がへたくそだって知って、色々な人が教えてくれたっけ。
ロックオンさんとか、付きっきりだったし。
次元さんも色々と教えてくれたっけ。
でもさ、俺が一番に印象に残っているのは、あの人だよな。
『射撃の神様』。
なんだよ、ティス?
本当にすごい人って、変だよね?
そうだな。
フェネクス襲来後、学園は大騒ぎになっていた。
アリーナの監視カメラはすべて全滅、防護フィールドがあって侵入者を防ぐはずなのに、作動した形跡はない。
ならば、敵は何処から入ったのか。
調査委員会を立ち上げて本格的に調べるべきだ、という意見もあったのだが。
それを止めたのは織斑・千冬だった。
『この一件は、私が預かります』と。
彼女の実力、あるいは今までの職務態度により、反対意見も出ずにこの一件は一任されることになった。
「頭の痛い問題だな」
小さく呟く彼女の前で、問題の解決手段を持っているはずの人物は、ずっと黙ったままでいる。
「シン・アスカ、相手の情報について話せないのか?」
「すみません」
何度も繰り返される問答に、千冬は小さくため息をついた。
明らかにシンは相手を知っていた。
相手の武装、性能を把握した上で対応していたように見えた、とあの時にアリーナにいた全員が話していた。
だというのに、彼は何も話そうとしない。
「本来なら拘束して話させることもできるが」
『もしも』の話を振った瞬間、千冬は強烈な寒気を感じた。
シン・アスカは黙ったまま座っている。気配が変化した様子もなく、眼光が鋭くなったわけでもない。
威圧か、あるいは圧迫感。妙な気配は彼ではない、その後ろにいる何者かが自分を睨みつけている。
「おまえには、用心棒がいるようだな」
「ええ、まあ」
曖昧に答えながら、彼は小さく何かを呟いた。途端に気配が消えて、寒気がスッとなくなった。
「今後、あいつはまた来るのか? 確か、『フェネクス』だったか?」
不死鳥の名を持つISか。
千冬は小さく口の中で転がしながら、もしあれを相手にして戦えるのかと考え始める。
無理だ。相手の武装を壊しながら、あの速度に対応できる人間などいない。もし自分がISを、あの『相棒』を使えるならば可能性はあるが。
「武装はまだあるのか?」
「大丈夫です」
「そうか、解った。ならば、次からは任せる。用務員の仕事に、警備もあるからな」
「解りました」
一礼し、シン・アスカは退出していく。
「おまえが何者で、何処に所属しているのか、本当に知りたくなった」
彼が出て行ったドアに向けて、千冬は小さく言葉を投げた。
廊下を歩きながら、シンは小さくため息をついた。
「で、ティス?」
『ふぅむ。我が主に対しての不敬、許し難し。我が名にかけて成敗いたす』
妙に古風な言い回しに、何を言ってんだと隣を見てみると、着物姿に刀を持ったティスがいたりした。
「何してんだよ?」
『うん、今日は侍の気分なのです』
どういう気分なのだろうか。
頭痛がしてきたシンは、振り払うように別のことを考えるようにした。
相手は『フェネクス』の四番機。主動力が動き続けるかぎり、相手の武装に限界はない。
無限の武器庫を背負った独立機動兵器。それは、まさしく『マテリアル』そのもの。
通常のMSといった兵器が建造時のサイズを変えられないのに対して、『RX-0』シリーズは『マテリアル』と同じようにサイズを変更できる。
『フェネクス』四番機が実証したデータを得て、それ以降の『RX-0』全機に実装されたシステムは、現在の帝国軍の正式採用機体に一部であるが搭載されている。
戦場における武器・弾薬の補充。転送システムとは別に、機体内部にて精製される武装の数々は、単体及び部隊の作戦遂行能力を格段に高めた。
パイロットの体力が持つ限り無限に動き続ける機体、撃ち続けても尽きることのない弾薬とエネルギー。味方からも敵からも畏怖される機動兵器は、無慈悲に戦場を蹂躙していく。
しかし、だ。
シンはギュッと拳を握った。
『マテリアル』には届かなかった。武装も含めて、パイロットが望むままに大きさを変える『マテリアル』は、規格外を通り越して『機械にして魔法を使う』といわれるほどの存在となった。
「こっちの武装は?」
『フェザー・ビットは補充完了、エクスカリバーとアロンダイトは修復完了。機体コンディションは良好』
問題はないか。使ったとはいっても、遊び程度にしか使っていないから、それほど心配はしていなかったが、まさかここまで損傷も欠損もないとは。相変わらずのタフさに、シンは苦笑してしまう。
『で、機密メールにあった内容だけど、どうするの?』
『フェネクス』と相対した瞬間に、ティス相手に送られてきたメールには、アイリスの署名が添えられていた。
『貴方の射撃能力の向上と、こっちの都合で『フェネクス』四番機を送るから、撃破しなさい』。
いいのかよ、とシンは思い出した内容に呆れてしまう。
一機の建造で艦艇五隻分とか聞いていたのだが、それを撃破しろとはどういった都合があったのだろうか。
リタ関係か。ほぼ間違いなく、彼女関係で何かがあって、その過程で『フェネクス』の撃破が必要になったと。
どういうことなのか、色々と問い詰めたいのだが、あいにくと通信手段がない。いや、もしかしたらティスに言えば『マテリアル』の次元通信手段で連絡できるかもしれないが。
自分の第六感が告げている、『絶対にろくでもないこと』だと。皇帝の馬鹿まっしぐらの行動によって鍛えられたシン・アスカの第六感は、かなりの精度で今回の一件の原因を突き止めていた。
頭痛がしてくる。彼女は冷静で穏やかなくせに、どこか損得勘定が偏っていることがある。
女の子の純情のためならば、十億くらいは捨てるくらい、確実にしそうだ。いややったことがある。前に何度か、国家予算並の資金を使って、そういったことを叶えたことがあった。
周りの苦情も、資金の無駄遣いといった文句も、『皇帝陛下が補てんしたけど、ダメかしら?』の一言で、黙るしかなかった。
チートだよな、とシンは口の中で言葉を転がす。
なんていっても、最大のチートというかバグは『神帝』テラ・エーテル銀河帝国皇帝陛下か。
単体の戦闘能力は次元が違う。『王の財宝』もどきの武器システム、真祖クラスの眷獣を十二体、その上に四つの神様もどきの獣を従えて、瞳に九人の異能の王の力を宿す。
父親は初代から両親の力と技能のすべてを子供に宿す一族の直系、母親は天魔の一族最後の純潔の姫。
彼の私物扱いの『サイレント騎士団』は、平然と銀河戦争や次元空間での殲滅戦を行う破壊神の集団。
『霧の艦隊』の技術と、他に色々と混ざり合わせた『絶・戦艦』級という名の戦艦空母の二隻、『イオナ』と『アリア』が司る総旗艦直衛の遊撃艦隊。
全長千メートル級の巨大な総旗艦『アルカディア』と、惑星管理コンピュータ以上の処理能力を持つメインコンピュータの『バビロン』。
そして、彼の代行者にして、『冷酷無比な巫女』ホシノ・ルリ。
彼一人で銀河戦争、彼に従う『サイレント騎士団』も含めれば、多次元戦争さえ殲滅戦できるんじゃないか、と噂になる彼。
で、『黄金律』はEXあるんじゃないかって金運を持っているから、帝国が財政難になることはない、と。
『シン、シン、テラ様のこと?』
「あの人って、弱点があるんだよな?」
『うん、政庁ではイスに座っても一時間もたない、書類仕事は誤字脱字だからで止めさせた、料理を作ろうとして台所を爆発させたって話があるよ』
「あ~~~」
戦闘面では無敵で無敗で無双なのだが、一般的な状況ではまったく役に立たない人だった。
『あ、シン、アイリス様から『フェネクス』の撃破手段が送られてきたよ』
「本当か? 助かった、それで?」
『うん、背部ユニットへ狙撃、三発直撃で撃破』
その瞬間、シンが浮かべた表情をティスは、ずっと忘れられなかったという。
背部ユニットへ狙撃三発。
亜光速で動きまわる相手に、背部ユニットへの狙撃を行えと。射撃能力が高くない、というより低い自分に対してあまりに酷い仕打ちではないか。
これは本格的に、彼女は自分の射撃能力を向上させるつもりか。
『ん~~でもシンって土壇場や逆境で能力値を上げるよね』
隣のティスが意味不明なことを言っているのだが、そんなことはないと彼自身は否定したくなった。
『シンって、自己評価が低いよね』
「正当な評価してるだろ?」
『そうかな?』
きょとんとした顔で首を傾げる幼子は、とても可愛くて魅力的なのだが、着物姿に刀を帯びているので、色々と台無しだったりする。
とにかくだ、手段が解ったならば実行するのみだ。
訓練したいな、と考えていたシンは今日も通常業務に戻るのでした。
「あ」
「お」
掃除道具を持って歩いた廊下で、シンは前から歩いてくる一夏達を見つけた。
「授業か? 移動教室ってところかな?」
「・・・・なあ、どうしてシンはあんなに強いんだ?」
質問に対して、まったく別の言葉が返ってきた。
真剣に、真っ直ぐに見詰めてくる一夏の瞳には、僅かな怒りが浮かんで見えた。後は、深くドロドロとした嫉妬。
「俺はそんなに強くないよ。仲間の間じゃ、俺は平均クラスでしかない」
彼の色々な感情を知りながら、シンは知らない顔で答えながら足を進める。
「IS相手に生身で戦えたじゃないか」
「まあ、あのくらいなら。誰でもやれるさ」
実際、『ヴィルティラス』ならば全員があのくらいの動きはできる。生身での戦闘が苦手な騎士でも、音速戦闘くらいはできなければ『ヴィルティラス』所属にはなれない。
帝国軍でも、中尉以上ならば音速戦闘くらいは部隊訓練でやる。規定によれば大尉への昇進条件が、『生身での音速戦闘及び銃弾を回避もしくは斬撃などによる斬り払い』と明記されている。
「俺でもできるか?」
「さあ?」
何故にそこで一夏が、そんなことを質問してくるのか。
シンは相手の意図が解らずに、曖昧に答えを出した。
努力すればできるのではないか、あるいは帝国だけなのだろうか。シン・アスカにとっては、周りとは帝国の住民だけなのでそれ以外が可能なのかどうかは解らない。
「シン、俺を鍛えてくれないか?」
「いや一夏はセシリア達に特訓してもらっているんだろ? なら、それで強くなれよ。俺のは、そうだな」
真剣な顔の彼に対して、シンは自分の過去を思い出して一瞬で蒼白になって首を振った。
「地獄に行きたいか?」
目が死んでいる彼の問いかけに、殺気じみていた一夏が僅かに身を引いた。
周りで聞いていた全員が、『大げさだな』と思っていたが、彼の言葉には真実しかない。
実際、シン・アスカは何度も死んでいるのだから。
『あ、鬼灯さん、こんにちは』とか日常的に挨拶をした後、閻魔大王に『また来たの、シン君。君も好きだねぇ』と言われて呆れられたりしたのは、いい思い出だ。
いい思い出と言わないと挫けそうだが。
「俺は強くなりたいんだ。シンみたいに」
「俺じゃなくて、一夏らしく強くなれよ。それ、おまえの専用機だろ?」
彼がつけているブレスレットが、彼の専用機『百式』の待機状態なのだろう。軽く指さすと、一夏は視線を向けた後、付きだしてきた。
「俺はこいつに恥じないような人間になりたい。千冬姉に顔向けできない男にはなりたくない。だから」
頼む。真っ直ぐに見詰めて、頭を下げた彼に対して、シン・アスカは昔の自分を幻視していた。
きっと、あの時の師匠もこんな気持ちだったのだろうか。
「解ったよ。ただし、ISを使ってだな。その代り、訓練場で俺もやりたいことがあるから、それをしていいか?」
「あ、ああ! 訓練場の使用申請してくる!」
「放課後になったらな。授業に出ないと、怒られるぞ」
「解った、ありがとな」
笑顔を浮かべる一夏に、シンは『ま、お互いに男だからこれくらいはな』と軽く答えて掃除道具を再び持ち上げて歩きだす。
「あ、そうだ、一夏。おまえさ、死んでも生き返ることできるよな?」
「なに言ってんだ、シン? 普通、無理だろ?」
振り返った彼の一言に、その場にいた全員が否定を浮かべた。
「そうか? なら、手加減してやろうか」
意外そうに頷いた彼は、そのまま歩いて行ってしまう。
残された誰もが、一夏も含めた全員が『彼も冗談を言うのか』と思ったというが。後に織斑・一夏は語る、『はは、冗談じゃなかったんだな』と。
そして、彼は空を舞ったのでした。
ISは現行の兵器を一掃し、価値観を一遍させた希代の発明。その武器の威力、武装の豊富さ、防御の固さなどから『最強の兵器』と呼ばれることもあるのだが。
白い機体が空を舞う。自らの翼で空を優雅に飛び回る姿は、兵器というよりは妖精か何かに見えなくもない。
しかしだ、彼は自分の意思でも機体の制御でも、飛んでいるわけではないので見ている者からすれば恐怖の象徴でもあった。
「・・・・素人にしてはいい動きだぞ」
「慰めにもなってないよ、シン」
右足を突き出した状態で、彼は何故か穏やかな表情で語っていたのだが、見ていたシャルロットからしてみれば、追い打ちをかけているようなものだった。
訓練開始後、ISを纏った一夏は突撃するたびにシンに迎撃され、撃墜されてはアリーナの壁に飛んで行って激突。壁には彼の大きさの穴が何個も作られていた。
「いや、実際にいい動きだって。まだ動かして一か月もたっていないのに、この動きができるのはセンスがいい証拠だ」
「褒め言葉が殺し文句に聞こえますわね」
なるほどとうなずくセシリアだったが、言い方が妙な方向に行っていることに気づいていない。
「それ、『相手を惚れさせるって意味』じゃなかったかな?」
「え、えええ?! そ、そうなのですか? 日本語とは難しいものですわね」
「あ、うん、そうだね。セシリアってやっぱり天然?」
「私の何処が天然なのですか?」
話が脱線しているような二人を横目に見ながら、シンは一夏の動きを改めて観察してみた。
動きはいい、本当に嘘やお世辞じゃなくそう思った。ただ、それは素人にしてはといったレベル。昔からISを扱っているセシリアと比べたら、子供が遊んでいるようにしか見えない。
彼がクラス代表になったのは、虐めじゃないかと疑ったのだが、できるだけ多くの時間をISに使えるように配慮した結果なのだろう。
セシリアとシャルロットが、彼を代表に押したということも加えれば、自己防衛のためということもあり得る。
彼は唯一の男性適応者。これから先、色々な組織に狙われることを考えれば自衛手段のISが自由自在に使えるようになることは、彼の安全のためにもいいことだ。
「よし、本気で行くぞ一夏」
「ちょ、ま」
「男なら二言ないよな」
後にセシリアとシャルロットは語る。
『あの時のシン・アスカは鬼だった』と。
訓練でアリーナを借りられる時間の半分を一夏の特訓へ、残りの半分をシンは自分の射撃訓練に貰うことにした。
というよりも、一夏が半分の時間でボロ雑巾のようになってしまい、シャルロットから『ストップ』がかかったからという理由もあるが。
「あ~~~そっか、シンも人間だったんだね」
「シンさん、私はそんなシンさんでも尊敬していますわ」
二人からの目線が痛い。
一夏や箒からの目線も、『暖かくて理解ある』ものに変わっている。
「だから、俺は人間だって」
前前から言っているのに、どうして信じてくれないのか。全員からの目線が暖かくて泣けてくる中で、シンは右手に持った銃を再び上げる。
オートマチックの、何処にでもあるような銃を構え、トリガーに指をかけて引き金を引く。
標的までは五メートル。素人でも当たる距離なのに、八発の弾丸の中で的に命中したのは二発のみ。
『うん、シン、こりゃだめだぁ』
「何処の殿様だ、この野郎」
隣で大げさに嘆くティスにゲンコツを入れたくなったが、グッと堪えてカートリッジを交換する。
次々に弾丸を消費するのだが、当たらない。
まさか的が動いているのかとシン以外の全員が考えるほど、彼の弾丸は的を外して何処かへ行ってしまう。
しかし、だ。的の後ろに配置した壁にすべての弾丸が刺さっているので、彼の射撃が外しているだけだったりする。
「ああ、クソ。もうこうなったら殴ってやる」
「シン! それじゃいつもと変わらないじゃない!」
「射撃を鍛えたいのでは?」
シャルロットとセシリアの言葉で、なんとかシンは踏みとどまる。
「なあ、俺の射撃って何が悪いんだ?」
はぁと溜息をついて振り返るのだが、四人から見てもシン・アスカの射撃の姿勢などに問題は見られない。
むしろ、なんで当たらないのかが解らない。五メートルの距離を外す彼の技量が、別の意味で飛び抜けているのではないかと疑ってしまう。
誰もが原因が解らない中、唐突にティスが両手を上げた。
『あ、シン、いい人の助言がある』
「誰だよ?」
唐突に両手をあげて振り回す相棒に、シンは誰の助言かを考え出した。
ロックオン・ストラトスか、あるいは次元・大介か。もしくは、射撃や砲撃の分野でトップをとった誰かか。
『じゃん! 『射撃の神様』からのアドバイスビデオメールです』
「はぁぁぁぁぁぁ?!」
思わず、シンは叫んでしまった。
彼のことはよく知っている。
射撃において、帝国内で並ぶものなし。早撃ち、狙撃、砲撃なんでもこなすエキスパート。射撃において、事象や法則さえ改変しているのではと疑われるほど、彼の射撃は別次元だった。
特にだ、あのチートオブチートのバグキング、『神帝』テラ・エーテルをリボルバー二丁のみで止めたのは、帝国内で伝説になっている。
そんな彼は、世間一般ではこう呼ばれている。
『魔弾の射手』と。
ジョーカー銀河帝国特別相談役にして、宰相と皇帝代理以外で帝国すべてに命令権を持つ人物。
皇帝への防壁がシンならば、皇帝のストッパーが彼。
実際に彼の人望はかなりあり、十三ある皇妃達の騎士団への命令権も有しているのがいい証拠だろうか。
帝国軍や警察機構、情報部の各上層部も彼の一言には真摯に耳を傾けることでも有名だ。
射撃についても並ぶものなしと言われ、年間通して射撃の大会で負けたことはない。
その上で、『サイレント騎士団』の団長にして『神帝』の巫女、ホシノ・ルリ以外で『サイレント騎士団』への命令権も持つ。
ルリさえ持っていない近衛騎士への命令権も、彼は持っていることからテラの彼への信頼度や、周りからの信頼度の高さが解る。
『魔弾の射手』、彼は色々と重なってシンに会えなかったことをちょっと後悔して、自分が射撃する時のことを話し、さらに自分の射撃映像を送ってくれた。
シンがそれを見た後、射撃ができるようになったので、『射撃の神様』は人に射撃スキルを与えると噂になるのだが、それはまた別のお話だろう。
「ありがとうございます」
その日の夜、シンはお礼のビデオメールを彼に送った。
『凍焔の鬼神』シン・アスカより、『魔弾の射手』野比・のび太様へ。と、宛名を添えて。
本当にすごい人だよな。あの人の一言で、帝国の意見が割れるとか、方針ががらりと変わるって本当なんだろうな。
俺はまだ会ったことないけど、一度でいいから会いたいよな。
噂じゃ、『剛鬼』とか、『空間の魔術師』って人たちと幼馴染らしいけど、誰とも会ったことないんだよな。
なんだよ、ティス?
『うん、普段は気配さえさせない人達ばかりだからね』って、何のことだ?
おい、まさか、あんなに一般人って外見の人たちなのか?!
気配さえ普通ですって、どうやって誤魔化してるんだよ?!