これまでお付き合いいただき、ありがとうございます。
シンは色々とやることあるので、私のごあいさつで申し訳ないです。
色々と紆余曲折、拙い文であり、脈絡もなく繋がりもあるのかなって、駄作のような文章を読んでいただき、ありがとうございます。
これにて、一先ず、シン・アスカの異世界渡航記は終了です。
今までありがとうございました。
以上、ティスでした。
季節は巡るものである。時は過ぎ去っていくものでもある。
彼は追いかけた背中の一つを追い抜き、さらに遠くにある背中を追い始めた。
立ち止まっていたわけではない。
諦めたわけではない。
けれど、自分が前に進む意思を失っていたことを思い出した。
強くなりたい。もっと高い場所に飛びたい。そう思っていただけで、心はずっと同じ場所にいた。
だから、今こそ前を向こう。
今度こそ、あの頃の自分にさよならを告げて。
原点は相変わらずそこにある。
幼い頃の自分は、そこにいる。
見つめてくる瞳を真っ直ぐに見詰めて、穏やかに笑ってこう告げよう。
『大丈夫、俺はもう前に進んでいるから』。
そして、こう別れを告げよう。
『また会おう。俺が俺の強さを示した時に』。
さあ、歩きだそう。
願ったあの場所を目指して。
出会いは別れの始まりだと、昔に師匠に教えられたことがある。
「シン、忘れものはないな?」
「はい。大丈夫です」
声に振り返って、笑顔を向ける。
住みなれた部屋には荷物はなく、すっきりと片付いた場所があるだけ。
「哀愁か?」
「どうでしょう。寂しいとは感じますけど、また戻りたいとは思えません。俺はもうここでやるべきことをやりましたから」
「そっか」
ハイネはそう告げて、ゆっくりと歩きだした。
「行くぞ」
「はい」
IS学園での生活は、これで終わり。色々とやり残したことはあったのかもしれないが、自分ができることは精一杯にやったつもりだ。
懐かしいと思える廊下を通り過ぎ、授業中の教室をそっと通り過ぎる。
「もう行くのか、シン?」
「織斑先生、お世話になりました」
「ん」
教室からわざわざ顔を出してくれた彼女は、小さくため息をついていた。
「おまえほど、騒がしい存在はいない。弟が世話になったな」
「あいつなら一人でも辿りつけたでしょう。自慢の弟さんですよ」
褒め言葉を返すと、彼女は先生の顔ではなく、姉の顔で告げた。
「当然だ」
何処か照れたような顔で。
彼女と別れ、アリーナを横目に歩きながら、思い出深い場所に背を向ける。
「シー君、サヨナラだね」
束がひょっこりと顔を見せる、泣きはらした目をしながら精一杯に笑顔を浮かべて。
「うん、いいのか?」
「うん、いいの。いつか私は私の『IS』でシー君の世界に辿り着くから。だから」
彼女は、晴れやかに笑って駆けだした。
「絶対に、『無限の宇宙の彼方』で待っていてね!」
バイバイと手を振って彼女は走り去っていった。
「いい女だな、あの子」
「ええ、俺にはもったいないくらいですよ」
ハイネの茶化しを正面から受け止め、シンは軽く苦笑した。
校舎を通り抜けて、正門を目指す。その途中の角で、シンは簪と出会った。
「行くの?」
「ああ、もう戻らないといけないからな」
「そっか。シン、ありがと、私は私なりに頑張ってみるね」
晴れた笑顔で笑う彼女に、そうかとだけ告げる。
「姉は姉、私は私だから」
「解った。じゃ、またな」
右手で握手を求めると、彼女は微笑みながら手を握り返してくれた。
職員用の玄関へ向かい、靴に履き替えて外に出ると、ラウラが待っていてくれた。
「とても貴重な体験をありがとうございます」
「いいって。ラウラ、忘れるなよ」
「はい。私は軍人としての矜持を持ち続け、いずれ貴方のような立派な軍人になります」
「俺よりも、だろ?」
ちょっと意地悪いに告げると、彼女は照れたように笑いながら、『もちろんです』と伝えてきた。
ラウラと別れ、正門に向かう途中で、楯無に待ち伏せされた。
「あらあら、忙しいのね」
「悪かったな、楯無。俺はもう戻るよ」
「そう、簪ちゃんのこと、ありがと」
小さく呟き頭を下げる彼女に、シンは小さく忠告しておく。
「言葉にしないと伝わらない思いもある。きちんと伝えてやれよ」
「そうね。変な意地はってないで、話してみるわ。ありがとう」
「どういたしまして」
笑顔を向ける彼女に、シンは手を振って別れを告げた。
彼女に見送られながら正門へ向かうと、横から影が近づいてきた。
「シン、準備できたよ」
声をかけて駆け寄ってきたシャルロットに、シンはちょっとだけ顔を歪めた。
「いいのか? いくら同じ世界とはいえ、まったくの別の宇宙なんだぞ?」
「うん、いいよ。それにシンが言ったんじゃない。『考える時間をくれる』って。私はまだまだ決められないから、もっと・・・じゃダメ?」
小さく首を傾げるシャルロットに、『仕方ないな』とシンは呟く。
この世界から、もうすでに『シャルロット・デュノア』という存在は消えている。デュノア社に名前はなく、戸籍にも登録されていない。
けれど、シャルロット・リースという名前はあるのだが、これからは行方不明として扱われるのだろう。
織斑・千冬はそう答えてくれた。今は、それを信じよう。
彼女は良くも悪くも先生だった。先に生まれ、先に道を示し、そして見送ってくれる人だった。
「シンさん、私はもう少しここに残りますわ。家のこともありますので」
セシリアはそう告げて、優雅に一礼した。
「すべてが片付いたら、御迎えをお願いしても?」
「あ、うん、それ―ディガーターを預けておくから、連絡をくれれば。でも、セシリアもいいのか?」
「はい、私はシンさんの世界を見てみたいのです。幾万の星達が瞬く、漆黒の彼方を」
真っ直ぐに見つめ微笑む彼女に、『これも曲げられないよな』とシンは小さく呟く。
解った、待っている。言葉ではなく見つめることで意味を告げると、彼女は嬉しそうに一礼した。
「モテモテだな」
「からかわないでくださいよ、ハイネ。戻ったら、シェリルとティーラになんて言おう」
「俺についてこい、出いいんじゃないか?」
からかっているのかと顔を向ければ、彼は穏やかに微笑んでいる。本心でそれを言えと。
ちょっと気持ちの落ち込んだシンは、深々と溜息をついて足を再び進める。
進む先には、一人の影が立ちふさがった。
「シン、行くのか?」
織斑・一夏は、真顔で真っ直ぐに見詰めてくる。
「ああ、悪かったな。色々と迷惑をかけた」
「いや、俺も色々と学ばせてもらったから。クルーゼさんに教えられたこと、俺は一生かけても身につけてみせる」
「それがいい。あの人はそれを望んでいる」
グッと拳を握って突き出す一夏に、シンは拳を合わせることなくすれ違う。
「まだ俺はシンと同じ場所に立てない。だから、いつか追いつく」
背中に突き刺さるような決意と言葉に、シンは答えることなく歩き続けた。
「必ず追いつく」
一夏が振り返る。あの時ーアリーナでシンを見つけた時と同じように、迷いながらも、けれど決定的に違う強い意志を秘めて。
「それまで、強くいろよ、『
「解った、それまで俺は強さを磨いて剣を構えて待っている。待っているからな、『
そして、シン・アスカはあの時と同じように親指を突き出した。
二人はそれっきり別れた。
セシリア・オルコットは二年後、オルコット家の財産を福祉事業にすべて寄付し、そのまま姿をくらました。
篠ノ之・束はISの技術を公開。誰でも使える宇宙服としてのISを世界に向けて発表した。
そして、第五回、第六回、第七回の『モンド・グロッソ』を制覇した織斑・一夏は、『夢をかなえてきます』と書き置きを残して姿を消した。
ある日、ある場所、そして約束の時。
困難に立ち向かう勇気を持て。
夢を諦めることなく、真っ直ぐに進め。
俺がいるかぎり理不尽なんて消してやる。
だから、おまえはおまえの魂が叫ぶままに生きろ。
ジョーカー銀河帝国皇帝が、とある場所で叫んだ言葉が刻まれた場所で、シン・アスカは空を見上げていた。
「追いついたか?」
「どうだろうな?」
問いかけに答える声は一つ。背後にいる気配は、二つ。
「言葉を重ねるのは俺達らしくない、騎士ならばさ」
「その魂で示せ、だろ? 行くぞ、シン・アスカ」
「来いよ、織斑・一夏」
二つの閃光が、真っ直ぐにぶつかりあった。
長らくお付き合いしていだだき、ありがとうございます。
これにて、一応の終幕とさせていただきます。
稚拙で繋がりない、突発的に思いついたものを徒然に書いただけの作品ではございますが、感想をいただいたり、評価をいただいたりと、勉強になりました。
シン・アスカのIS世界での活躍は、以上になります。中途半端ではありますが、彼が元の世界に戻ったからには、話は終わりにしなければ、と言ったところです。
では、いずれまた、何処かの騎士の物語でお会いしましょう。
蛇足として、『シン・アスカ』のネームバリューってすげぇって思った。