書きたいことと精一杯のギャグと喜劇、始まります。
というわけで、『完結』外させていただきます。
皆さまの日常の小さな楽しみの一つになれば、幸いです。
さて、シン。喜劇で踊ろうぜ
銀河帝国の中のシャルロット
シャルロットにとって、そこは未知の国だった。
単一惑星の中でさえ、いくつかの国を廻っただけの彼女にとって、五つの太陽系を支配している巨大な帝国なんて、想像を超えていた。
「そういえば、シンって、どんな国に住んでいるの?」
「ジョーカー銀河帝国。出来てから、十年は行きましたか?」
迷ったように告げるシンに、向かいの席に座っているハイネは、新聞から眼を離して二人に目線を向けた。
「もうすぐ十周年記念イベントがあるな。なんだ、シンはそんなことも覚えてないのか?」
苦笑するようなハイネに、シンは小さく頭を下げた。
「すみません。俺って、途中参加ですから」
「あのな、途中参加でも『ヴィルティラス』だろうが。そんなんじゃ、宰相殿に怒られるぞ」
「はい」
珍しくシンが下手に出ていることに、シャルロットはちょっと意外そうな顔を向けた。
「『ヴィルティラス』じゃ一番の新人なんだ、俺」
「へぇ~・・・・・ところで、それって何?」
質問され、シンはしばらくきょとんとした顔をした後、『ああ』と盛大に声を上げた。
「説明してないか?」
「してもらったことはないかな」
「おい、シン」
あまりの事実に、ハイネが半眼で睨んでくる。
まさか連れていく国のことを、説明していないなんて。無責任にもほどがある、と彼は無言で語っていた。
「いや、説明しようとしましたよ。ほら、今だって」
「今だってなんだ? まったくおまえは、戦場にいれば頼りになるのに、こういった『報告・連絡・相談』関係は駄目なんだからな」
「いや、俺も事務処理はかなり上手くなりましたよ」
「おまえの事務処理向上のために、宰相が三日間も付きっきりになったの、俺は忘れないぜ」
「あの時は俺もまだまだ未熟だったじゃないですか」
「自分の未熟を棚に上げて、『やれません』って言った時の宰相の顔と皇帝代理の顔、俺は一生、忘れないからな」
呆れて溜息をついたハイネに、シンは『それはそうでしょうけど』と小さく呟いて顔をそむけた。
その仕草があまりに子供っぽくて、シャルロットは笑ってしまう。
あの世界で一夏達の前にいたシンはとても頼りになって、どんな危機も覆してしまうヒーローに見えたのに。
「なんだよ、シャルロット」
「ううん、シンって、やっぱり同い年なんだなぁって」
「はぁ? 最初からそう言っているだろうが」
「今になって実感が湧いたなぁって思ったの」
『なんだよ、それ』とシンは目線で問いかけるのだが、彼女は小さく笑ったまま答えなかった。
そんな二人を、ハイネはとても暖かい目で見ていたが。
「ともかくだ」
ハイネが指を鳴らす。すると、外の景色を映していなかった窓に光が差し込んできた。
「ようこそ、シャルロット嬢。我らが『ジョーカー銀河帝国』へ」
まるで舞台の役者のような仕草で、ハイネは外へと手を向けた。
自然とシャルロットの目線が外へ向き、星々の輝きに負けない豪華絢爛なビル群が視界に入ってきた。
「ここが『帝都』ですか?」
「『ジョーカー銀河帝国』の中心地『帝都』だ。この街並み、宰相が『三十年計画よ!』とか言って立案した配置なんだよな」
「へぇ~~」
気の長い話だ。それとも、都市開発とはそんなに時間がかかるものか。
「で、師匠が『一年で終了させた』んですよね」
「そうだな」
「・・・・・・え?」
眩しくて感動しながら見ていたシャルロットが顔を戻すと、何故か濃い影を纏った二人がいた。
何が、と声をかけようとした彼女の前で、二人は同時に呟く。
「あの極悪無敵の大馬鹿が」
何やら、シン・アスカの師匠はまわりに迷惑をかける人物らしい、シャルロットは密かにそう思った。
移民したなら、まずは移民申請。
「あ、シン・アスカの関係者ですか。なら、どうぞ」
「え?」
入国ゲードで素通しされた。
「なるほど、シンさんの関係者ですか。じゃ、どうぞ」
帝都に入る時の警備システムの担当者に、そう言われて通された。
「あ、シンさん。そっち関係者ですか。なら問題ないですね」
「え?」
帝都の中心、まさに帝国の中枢の政庁に入る時、警備していた人たちがそう言って通してくれた。
「お帰りなさい、ハイネ、シン。そちらは? シンの関係者? じゃセキュリティコードは仮発行しておくわね」
「え? え? え?」
政庁の上層階に行くと告げられ、途中のセキュリティゲート前で呼び止められ、当然のようにIDを発行された。
「お帰りなさい、二人とも。アイリスなら執務室ですよ」
「はい、ありがとうございます」
金髪の女性が向かいから歩いて来て、軽い挨拶のあとにシャルロットの目線を向けてきた。
「あ、そちらの方が。初めまして、アセイラム・クリシュタリア・エーテルです。以後、お見知り置きを」
「は、はい。初めまして、シャルロット・リースです」
あまりに綺麗な人に慌てて頭を下げると、彼女は微笑みながら『では、失礼しますね』と小さく頭を下げて通り過ぎていく。
「綺麗な人だったね」
「そうだよな。師匠の奥さんの一人だよ、あの人」
「え? 奥さんの一人?」
「で、うち―『ジョーカー銀河帝国』の皇帝代理だな」
「・・・・・・えええええ!?」
まさかのトップとのすれ違いに、シャルロット絶叫。
「ちょ! シン! なんで普通にすれ違うの?!」
「なんでって、ここが帝国の中枢で、帝国を実際に回している人達の仕事スペースだからだよ」
言われて、シャルロットは一瞬だけ呆けた後、シンの襟首を掴んでいた。
「なんでそんなところに連れてくるの?!」
「いや、戸籍とか作らないと」
「前は簡単に作ってくれたじゃない!」
「あの時と状況が違うだろうが! 帝国で偽造作れって! 俺を殺す気か?!」
「シンが殺されるなんてあるわけないじゃない!」
思わず叫んだシャルロットに対して、シンは何故か遠い眼を天井に向けた。
「は、ははは」
瞳に小さく光が輝いている気がしたが、気のせいかもしれない。
「そうだな、殺されることはないって、普通は思うだろうな」
何故か、ハイネは壁に手をついて項垂れている。
背中がすすけているように見えるのは、気のせいとしたい。
「行くぞ、シン。気を取り直せ」
「はい、大丈夫です、ハイネ」
二秒後、二人はキリッとした表情を作り、ドアをノックする。
「どうぞ」
軽やかに涼やかに、まるでそんな雰囲気の声がした。
『失礼します』と二人が声と同時に扉を開けると、部屋の主がこちらに目線を向けてきた。
長く腰を超えてのばされた、光沢のある髪。シャルロットは見たことない髪色に見入り、続いて彼女の瞳に吸い込まれるように動きを止めてしまう。
プラチナクロームの髪に、深い海のような青色の瞳。仕草一つ一つに気品が宿る、まるで王家の淑女とは彼女のことか。
不意にシャルロットはそんなことを思ってしまった。
「お帰りなさい、二人とも。任務御苦労さまでした。ラウのことは報告を受けています。最後は、あの人らしかったですか?」
僅かに憂いを秘めた瞳が見つめてくる。悲しみか、それとも哀愁かはシャルロットには解らないが。
「・・・・・最後の言葉は、『ああ、懐かしいな。本当に懐かしい、あの時、テラが『帝国創る』と言いだしたときと同じ空だ。底抜けに明るい青空か。テラ、おまえの馬鹿さをよく表している。本当に懐かしい、帝都の』でした」
「そう・・・・・・お帰りなさい、ラウ・ル・クルーゼ」
胸に手を当てて、アイリスは小さく黙とうをささげた。ハイネと、シンも黙とうをささげる中、シャルロットも慌てて行う。
「そして、ありがとう、ラウ・ル・クルーゼ。貴方が護りたかったものは今も健やかに。この帝都の空は、何時までも青いままよ。貴方の願いの通りに」
少しだけ悲しい雰囲気が流れたが、それはすぐにアイリスの両手によって消される。
二度、三度と手を打った後、彼女はイスへと腰を下ろした。
「さあ、話を聞かせてもらったから、次の話をしましょう。シン、貴方が『お嫁さん』を連れてきたって話だったわね?」
「え?」
「は?」
「はい、見事に嫁を連れて来たんですよ、こいつは」
当人たち、方やーシンは硬直。方やーシャルロットは赤面し停止。そして当人以外のハイネは面白そうに語る。
「そうなの、いいわね。それで、式は何処にするの? ああ、帝都で一番の式場ならば私が抑えてあげるわ」
言い終わる前に、アイリスの手が執務机に触れ、ウィンドウが表示された。
空中に展開したモニターに手を触れ、式場の番号に走らせる。
「ちょっと待ってください! 俺はまだそんなつもりは!」
「そうなの? ならば同棲がしたいのね。いいわよ、帝都でも見晴らしのいい物件を探して上げましょう。貴方の給料ならば安い買い物でしょう?」
「いやそうじゃなくて!!」
喜々として外堀を埋めにかかる宰相に、シンは必至に言い訳をしていったのでした。
十分後、アイリスは半眼でシンを見ていた。
「それじゃなに? 貴方は偶然に助けたシャルロットに、『考える時間を作る』って約束しておいて、半ば放置したって言うの?」
「あ、いえ、そんなつもりは」
見事に反論し、見事に勝ち取った勝利が、シンの首を絞めつけていた。
「・・・・はぁぁぁぁ」
深々とアイリスはため息をつき、シャルロットへ顔を向けた。
「ごめんなさいね。うちの騎士が迷惑をかけたようね。シャルロット、貴方の帝国での生活を許可し、私たちが保証します。それで許してくれないかしら?」
「い、言え。そんな、十分です」
予想外の高待遇に、シャルロットは慌てて頭をげる。
「よろしくお願いします」
「はい、解りました。なら、私のほうで貴方の保証人になってあげるから、これなら帝都の何処にいても問題ないわね。ただ、軍とか重要施設は流石に入れてあげられないから、入らないでね?」
小さくウィンクしたアイリスに、シャルロットは同性でも魅力的だなと感じていた。
「・・・・・で、シン。『ディガーダー』の言い訳を聞かせてもらおうかしら?」
フフッと笑うアイリスは、とても魅力的で魅惑的だったのだが、何故かシャルロットは寒気を感じたという。
一時間後、真っ白に燃え尽きたシンがいた。
「・・アイリスさんを怒らせたらダメって解ったよ」
密かに決意をするシャルロットに、近場にいたハイネはそっと呟く。
「マジギレした時の怖さは、皇帝代理のほうが怖い」
「・・・・・・」
嘘でしょう、とシャルロットが絶望した顔で見てくるのだが、ハイネは小さく首を振った。
「それと、だな。彼女が宰相だからな」
「え?」
「実際に帝国を回している人って言った方がいいか?」
悪戯っ子のように告げるハイネに、シャルロットは固まった後、悲鳴を上げたのでした。
まさか、ついたその日のうちに、帝国のトップ3のうちの二人に会うなんて思ってもみなかった、と。
『トリュアリテ』。
帝都の中心街に聳え立つ巨大なビルは、政庁の近場にあること、交通の要所の真上に建っていることもあり、多くの人が喉から手が出るほど欲しい物件ではあるのだが。
地上八十階の高層マンション、といえばいいのだろうか。段階的に狭くなった場所の最上階。テラスどころではなく、庭がついたような最上級マンションの一室で、シャルロットは呆けた顔で夜景を見ていた。
『いいわね、ここがいいじゃない』とか、何故か嬉しそうにカギを持っていたアイリスと、『国賓が滞在するならばここに決まっています』と可愛く力を込めるアセイラムの二人に、半ば強引に鍵を貰ったのだが。
「母さん、私はなんというか、とても昔が懐かしいです」
フワリと沈みこむようなベッドに横になり、シャルロットは亡き母に呟いたのでした。
現実逃避をしないとなんだか怖い彼女は、小さく彼の名を呟く。
「政庁直属即応鎮圧抹消部隊『ヴィルティラス』所属、シン・アスカ准将」
偉いのではと考えていたが、まさかエリート中のエリート。その上で、彼の師匠はかなり特別らしい。
はぁと溜息をついてシャルロットは気分転換のために、庭に出て見ることにした。
ビルの上とは思えないほど、見事な緑で描かれた庭園は、何処となく『日本式』に見える。
「和式って言うのかな?」
「ま、元々が帝国は日本ベースだからなぁ」
独り言に返答を返され、シャルロットはえっと顔を空へ向けた。
「やっほ、異邦人さん。どうもどうも」
「え、どうもどうも」
長い黒髪と、光に透かしたような紫水晶の瞳。年のころは、二十歳を超えているだろうか。
知っている。彼はあの圧倒的な強さを見せつけた、シンの師匠。
テラ・エーテル。
彼は空中を当然のように舞いながら、ゆっくりとシャルロットの隣に降り立った。
「ようこそ、帝国へ・・・・・って締まらないな。ようこそ! 野望と欲望の渦巻く地へ!」
大げさに両手を広げ、何故か出現したマントを翻す彼は、『フハハハハハ』とか笑っている。
明らかに不審者、だというのにあまりの馬鹿さ加減に毒気を抜かれてしまう。
思わずシャルロットは笑ってしまう。
「お、いいね。いい笑顔だ。初めての地で緊張してないか?」
「大丈夫です。でも、今日は皇帝代理と宰相に会って、少しだけ驚きました」
彼はその言葉に、にっこりと笑う。とても人懐っこい笑顔だなぁとシャルロットは感じた。
「そっか、アイリスとセラムに会ったか」
「え、宰相さんの名前、あと皇帝代理はアセイラムさんじゃないんですか?」
「愛称だよ。昔、俺が言い難くて『セラムでいいじゃん』って言ったからな。そっから使っている」
彼は懐かしそうに告げて、ニヤリと別の笑みを浮かべた。
コロコロと表情の変わる人らしい、とシャルロットは思いながらも、相手の目的を聞いていないことに気づく。
「あの、どうしてここに来たんですか?」
「ん、そっかごめん、俺は・・・・」
「師匠!!」
瞬間、彼の姿が消えて、シンがそこに立っていた。
「え?! ええええ?! シン、どうしたの?!」
「シャルロット! 何かされなかったか?!」
「何も。お話をしていただけだよ。え、どうしたの?」
「師匠が『シャルロットに会ってくる』とか言い出したから、心配になって」
焦っていたようなシンと『そんなに悪い人じゃなかったよ』と思っているシャルロット。
そして、二人の背後の空中から盛大な高笑いが響き渡る。
「フハハハハハ! 遅い! 温い! ちょこざいな! まだまだ甘いな! シン!」
「師匠!!」
怒鳴り声をあげるシンの前で、テラは両手を盛大に広げる。
「ようこそシャルロット!! 『俺の帝国』へ!!」
夜空に、一つ二つと花火が咲く。次々に上がる花火に、近隣の人たちが外に出て、あるいは窓から身を乗り出すように見てくる。
「そしてよくぞ戻った『凍焔の鬼神』! さあ! 皆の者よ! 可愛らしい異邦人の来訪を祝し! 強くなった騎士が戻ったことを喜び! 盛大に祝うがいい!! 今日は俺のおごりだ! 帝都中の酒を開けろ! 帝都中の食材を集めろ! 宴の始まりだぁ!」
「おおおお!!!」
轟音のような叫び声が帝都を揺らす。
「あ・・・・年代物や希少品のワインやウィスキーをラッパ飲みしたら殺す」
「陛下の大馬鹿!」
「やるわけねぇだろうがこの馬鹿!」
「常識くらいあるわ! この馬鹿!」
真顔で告げるテラに向けてのヤジの雨あられ。
「・・・・・・・え?」
シャルロット、その中の一文で気づく。
「シン、あれってテラさんだよね? シンの師匠の」
「ああ。で、信じられないかもしれないが、『ジョーカー銀河帝国』の皇帝でも有る」
「へぇ~~~~」
その日、シャルロットは『ジョーカー銀河帝国』について一日目でトップ3全員に会った事実を知り。
「宴じゃ宴じゃ! 夜も忘れて飲んで食べて! 語りあかそうぜ!」
「おうさ!!!」
とてもノリのいい人が多いことを知る。
「悪いな、シャルロット、こんな馬鹿な皇帝がいる国で」
「ううん、楽しいよ、シン」
「なら良かった。改めて、ようこそシャルロット、俺達の『ジョーカー銀河帝国』へ」
微笑みながら手を差し伸べるシンに、シャルロットは同じように笑顔で握り返したのでした。
後日、国家予算並の資金が一夜にして消えたことを彼女は知り。
二日で皇帝一人で補充したことを知り。
『あ、うん、だいたい解った』とシンに語ったのでした。
というわけで、書いてみた。
書いたはいいが、原作を何にするかで悩んだ。
ISでないけど、ここでいいかと考えてみる。
シャルロット出ればISじゃね? とか考えてみる。
後に誰か合流させて、ISで帝都空中戦とか燃える、かな?
まあ、いいか。
じゃ、シン、次の喜劇は何がいい?
「あんたはまたそうやって俺に何をさせたいんだよ?!」