感想にてアイディアいただきましたので、ちょっと書いてみました。
細かいことは気にしない。
銀河と銀河の間をどうやって行き来したとか、気にしちゃダメ。
同じ宇宙でも一光年とか一万光年とか離れている地点って、ワープ以外にどうやって辿り着くの、とか気にしちゃダメ。
あ、それをやりそうな馬鹿がうちにいた。
さて、シン、喜劇で踊ってくれよ?
その日、シン・アスカの姿は『ヴィルティラス』本部にあった。
「これが長期出張申請書。これが機体の移動許可申請書、これが機体の戦闘許可申請書。で、こっちが『ディガーター』の使用許可申請書に、使用報告書と使用計画書に、後は使用後の所在地の報告書と、所持者の身辺警護理由と、本人の意思確認における」
ぶつぶつと呟きながら書類を山積みにしていくシンの姿に、誰もが生暖かい眼を向けていた。
行方不明になっていた彼が帰ってきた時、誰もが喜んだ。もう、書類が宙を舞って、本部内が声で揺れるくらいに。
よく戻ってきた、何してきたんだ、何処に言っていた。けがはないか、どんな教訓を得てきた。
なんてことは聞かれない。シンに向けられた言葉は一つだけ。
「よくやった、クルーゼさんの願いをよくぞ叶えた。で、後は皇帝陛下を何とかしろ」
全員が一言一句違えることなく、同じ言葉で出迎えたことに、シンは『怒りや呆れ』より先に、頭痛がしてきた。
また何をやったんだ、師匠は。ちょっと怖くなりつつ、シンは自分の机にある『馬鹿の報告書』と書かれた箱を開ける。
ダンスパーティのために中央議会の議事堂を制覇。
よし、まだ常識的な行動だ。議員全員にリンボーダンスをさせた、なんてまだまだ謝罪と土下座で終わる。
小学校の遠足のために『サイレント騎士団』総出撃。
シン、思わず報告書を握りつぶしそうになったが、何とかこらえた。いや子供たちのために護衛を出したのか、普通なら危ないところに行く時は軍がつくのだが。警察機構が動いてもいいはずなのに。
いやまった、その前に護衛が必要な場所に見学に行ったのか。何処に行ったのだろうとシンが目的地の書かれた場所に目線を向けると。
『テラ・エーテルによる宇宙誕生の実演』。
何してんだ、あの人は。迷いなく報告書をシンは机に投げつけた。
出来るかどうかは『可能』なのは知っているが、まさか子供たちに宇宙の誕生を見学させるためだけに、異世界を作ってビックバンを起こしたのか。
おかげで学校側から『大変に勉強になりました』と感謝状が届き、生徒達から『馬鹿って凄い』といった感想文が届いている。
他は、と次の報告書を手に持った彼は全身の血が抜けるような、そんな脱力感を味わった。
『ふぁんとむたすく一行様の帝国への招待』。
テロ組織じゃないか、あそこ。確か一夏達の世界にいる、テロ組織でISを強奪したり、科学者を拉致したりしていなかったか。
どうしてそんな危ない連中を帝国に入れるのか。シンは心の底から疑問と呆れを感じたのだが。忘れよう、彼はそう心に決めて最優先でしなければいけない書類に手を出したのでした。
というわけで、彼は絶賛、申請書類を書きまくっていると。
『ううう、これがティスの稼働許可申請書。これが電子装備使用許可申請書、電子装備の使用報告書、技術協力許可申請書に、技術協力における内容の報告書。戦闘許可申請書と、デスティニーの稼働報告書』
彼の隣で、蜜柑箱を持ち出したティスが必死に似たような書類を書いている。
シン関係の書類はシンが、デスティニー関係の書類はティスがやる、といった役割分担を決めたのは、そうしないと終わらないため。
とはいえ、機体の移動関係はティスの署名で通る書類ではないので、シンがやるしかないのだが。
「はかどってるか?」
「ハイネ、もう書類は見たくありません」
コーヒーを差し出すハイネは、呆れたような顔で一枚の書類を指差す。
「申請書じゃなくて、事後報告書で書けばいいだろうが。突発的戦闘なら、それで宰相も許してくれるだろ?」
「あ、いやでも部隊長は駄目じゃないですか?」
「部隊長もそこまで鬼じゃないだろうが。全部、『始末書』で纏めて書いちまえばいいんじゃないか?」
「始末書、書いたことです」
「優等生だったからな、お前は。ほら、これが書式だ」
そっとハイネが差し出すデータ・ディスクを、シンは賞状をもらうように頭を下げながら両手で受け取る。
「ありがとうございます、ハイネ」
「いいって。どうせおまえのことだから、全部申請書類で書いてるだろうって思ってな」
机に座って微笑するハイネに、『こういうところが多くの人から慕われるところかな』とシンは思った。
「じゃ、早速・・・・・・っと、そうだ。また師匠がやらかしたみたいですけど、大丈夫ですか?」
とりかかる前に、報告が来ているのかシンが確認ための口に出すと、ハイネはコーヒーを飲みかけた姿勢のままピタリと止まった。
「どれだ?」
コーヒーカップを口から離して、鋭い視線を向ける。
「そんなにあるんですか?」
「報告書に挙げられてない案件なら、すでに十二件ある。現在、作成中だ」
多くないか、それ。シンは喉元まで出かかった言葉を、何とか飲み込んだ。何をやっているのか、あの師匠は。好き勝手している、だけならばいいのだが、大抵が誰かを助けるためにやっていることなので、怒るに怒れない。
個人の好き勝手でやっていることなど、今までで『帝国を創った』以外にないのがテラ・エーテルという馬鹿だったりするが。
「いえ、この『ファントムタスク』って連中なんですが」
「・・・・・・ああ、あの道化師の」
「は、道化師?」
「違うのか?」
真顔で語るハイネに、嘘や冗談といったものは見られない。
テロ組織だったはずの『ファントムタスク』が、どういった理由で道化師となったのか、シンは推察できずにいた。
上手い話には裏がある。
彼女はその言葉を今ほど実感できたことはなかった。
話が来たとき、思わず食い付いたのが運のつきかもしれない。
あの仮面の男にすべての太陽炉を破壊され、ISのエネルギー源を失ったこと、新しい技術のために色々と出資していたのに、根幹となるエンジンが失われたことで、すべてが浪費になったこと。
『ファントムタスク』事態も、重大な被害を受けてしまったこと。様々な理由により苦しい立場に追い込まれたとき、彼は目の前に立っていた。
『技術の出所に案内してやろうか』。彼は真顔でそう告げた。普通ならば誘い出すための罠か、あるいは虚言でしかないと判断しただろう。
もしくは技術を持って来させて、相手を利用するだけ利用して捨てるような、そういった対応もできたはずなのに。
何故に乗ってしまったのか。それも自分とオータムとMの三人のみで。色々と思い返してもおかしい話しかない。
彼に案内されて路地裏を進んで、気がついたらここにいた。見たこともない摩天楼、夜空の星に負けないほどの豪華絢爛な都市。
何処だ、と問いかけた言葉に対して彼は答えた。
『ジョーカー銀河帝国』の帝都だ、と。ふざけるなとオータムが怒鳴りつけた時には、彼の姿はなかった。
罠だ。全員が気づいた時には、すでに終わっていた。
見知らぬ地、人脈も資金もない場所に放り出され、身を隠す場所さえ解らないまま、三人は路地裏を歩くしかない。
戻る手段はない、戻る方法もない。
「どうするんだ?」
スコールがあたりを探りながら聞いてくる。
「どうしょうもないわね。私のミスよ」
項垂れて路地裏に座りこみそうになりながら、スコールは何とか気力で立っていた。
何故と疑問ばかりが脳裏によぎる、どうして話に乗ってしまったのか、あるいは何時から相手の策略だったのか。
「奪えばいい。何時も通りの話じゃないのか?」
Mが気楽なことを言うが、それが果して通るのか。確実に地球じゃない、都市の形を見ても、夜空に輝く星を見ても。地球のわけがない。
人工の光が溢れているのに、夜空にはっきりと星が見えるなんて、今の地球のどこを探してもないのだから。
「スコールが動かないなら、私は勝手にさせてもらう。まずは、そのあたりの通行人を・・・・・」
「どうするんですか?」
声は、とても近くからした。
ハッとして三人が顔を向ける先、二十歳くらいの女性が立っていた。
長い銀色の髪と金色の瞳。全身をマントで覆った彼女は、冷たいほどの笑みを浮かべてそこにいた。
「通行人を、どうするんですか?」
「聞かれたならば。ならば話は早い、おまえから・・・・」
「ふむ、どうするというのかな?」
声は別の方向から、何がと向いた先に男が立っていた。
白いといよりは『鋼のような髪』。黒い肌の、鋭い眼光の男は執事服を纏っていた。
「この帝都でいたずらは駄目」
「オイタもダメです」
また別の声が。違う方向から、二人の少女が歩いてくる。薄い青色の髪と白い髪の少女だ。
「我が君のお膝元で、何をやろうとしているのかな?」
また別の、と三人が顔を向けた先にいたものは、とても許容できなかった。
悲鳴を上げなかったことを褒めてやりたいと、スコールは自分たちの度胸を称えた。
ガイコツだ。ゲームの中にいるようなスケルトン。だが、あの気配はなんだ。ザコキャラじゃない、まるで『死そのもの』といった存在だ。
「改めて、ですが。我が主の帝都で、何をするつもりなんですか? そもそも、貴方達がここにいること事態、あり得ないことです」
女性が語る、睨むでもなく見つめるでもなく、ただ淡々と。
「主星の結界を破る技能があるとは思えんが?」
男は鋭く見てくる。まるで巨大な剣の前に立ったような圧迫感がある。
「結界は素通りした。つまり、『そう言うこと』」
「酔狂ですね。我が君にも困ったものです」
少女たち二人は無表情だ。まるで感情が揺らがない、こちらのことなどどうでもいいと思っているように。
「さて、な。意味があるのかもしれんが」
ガイコツが笑う。まるで命を吸い取るように。
「・・・・・ああ、貴方達がクルーゼさんをだまして技術を持っていった『ファントムタスク』ですか?」
瞬間、圧迫感が増した。周りを囲んだ存在すべてが、だしていなかった殺気を放つ。
「なるほど、つまり外の世界にいるくらいならば、ここで『踊っていろ』というわけですね。解りました。貴方達は見逃します」
圧力が消える。同時に女性以外の全員の姿が消えていき、最後に残った女性の姿も幻のように揺れている。
「ですが、『許した』わけじゃありません。クルーゼさんを裏切ったこと、我が主が許しても私達は許さない。ずっと見ています。貴方達がどう行動し、どう考え、どういった結果を出すのか」
ユラリと揺れて消えた女性は、声だけがその場に流れる。
『忘れないことです。貴方達は『クルーゼさんの温情で生きていること』を。誰かの役に立ち、誰かの笑顔の代価を得られないならば、貴方達に生きている資格はない』
ユラリユラリと声が揺れる。姿がないのに、声だけは確実に聞こえてくる。まるで耳元で囁かれているように。
『命尽きるその瞬間まで、帝国の『楽しみ』のために踊りなさい、道化』
声が途切れ、次の瞬間にスコール達は悲鳴を上げた。
「だから、道化師だって。今、何だか芸人みたいに人を笑わせているぜ」
「ええ? いや、そんなはず。人違いかな?」
「なんなら後で見に行くか? チケットとってやるからシャルロットと見に行ってこいよ」
さりげなくデートしてこいって意味に聞こえるのだが、シンは『違いますよね』とハイネに目線を向けたが、彼は小さく視線を反らした。
「あの」
「シン」
ゾクっと背筋が凍った。
まるで油の切れた機械のように、シンはゆっくりと首を回す。
ハイネはそっと気配を消して離れていく、強く生きろよと心の中で祈りながら。
「や、やあ」
振り返ったシンが見たのは、何故か『神剣』を持っているティーラだった。
「お帰りなさい、シン。戻ったのね?」
「あ、うん、ただいま」
「そう・・・・死ね」
「だぁぁぁぁぁ?!」
鋭く突っ込まれた切っ先を回避して、シンは大きく飛び退く。
「嫁を連れてきたとはどういこと!?」
「待った! 何か誤解があるから!」
「全員が知っているわよ!」
「誰だ?! そんなデマ流したのは?!」
反射的に室内を見回す。今日は珍しく『ヴィルティラス』全員が本部にいるため、誰か答えを知っているのではと思っていたシンの視界に、全員が顔をすらす光景が映った。
嘘だ、シンは項垂れる。あの真面目な刹那やスザク、頼もしい存在のハイネはもちろん、ガイやゼンガーの親分さえも。
「お、俺は・・・・『帝国のノリとギャグとジョークのためなら命がけ』って気質は大っ嫌いだぁぁぁぁ!!」
「待ちなさい! シン!!」
追いかけるティーラから何とか逃げながら、シンは心の底から叫んでいた。
師匠のようになりたくなかったが、どうやら自分は知らず知らずのうちに師匠に似てきたらしい、そんなのは嫌だ、と。
後の世に『ファントムタスク』と呼ばれる事務所が、伝説として語り継がれることになる。
世界中のすべてを笑わせ、ギャグで世界を回し、ジョークを潤滑油にして、コントで戦争を止めた、とされる伝説の芸人を排出した大手事務所。
笑いに生きたいならば、そこを目指せと呼ばれるそこの始まりを、誰もが知らなかった。
初代メンバーの三人は、始まりのことを誰にも語ることなくこの世を去ったという。
『我ら、見事にやり遂げた』と言い残して。
自分の限界を悟る。どう書いてもギャグにならない、喜劇にならない。
でもどうにか頑張ってみようと考える。
文才、ほしい。アイディアを形に出来る才能、欲しい。
欲しいならばひたすら書くしかない。
というわけで、シン、次の喜劇でよろしく。
「がんばるなら付き合うけど、頼むから俺の周りを騒がしくしないでくれよ。なんだよ、その『ごめん』って。おい! 待てよ!!」