シン・アスカの異世界渡航記『完結』   作:サルスベリ

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 独自設定、独自解釈。色々と言い訳がありますが、どうかご容赦を。

 だってカッコいいんだもの。

 好きでしょう、英霊のいる生活。

 という言い訳を土下座しながらさせてください。

 さあ、シン、後は任せた。喜劇で踊る時間だ。






『神帝』を鍛えた者

 

 突然だが、テラ・エーテルには幼馴染と呼べる人がいる。

 

 生まれた時から知っている幼馴染もいれば、物心ついた頃から、あるいは彼が『彼らしくなった』ときからの付き合いもいる。

 

 テラ・エーテルの場合、十二歳以下からの付き合いは『幼馴染』と呼んでいるのだが。

 

 生まれた時からの知り合いは、ルルーシュとのび太、アセイラム。一歳児くらいからがアイリス。少し離れて三歳児からキラ、高町・恭也。

 

 今のところ、このメンツがテラが『狂乱と恐怖の化け物』だった頃を知っている人たち。

 

 四歳児が笑いながら自分の心臓をえぐり出して潰すのを、見てしまった悲劇の人たちともいえる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 懐かしい写真というものは、時に人を追い詰めることがある。

 

 シン・アスカは、その日、珍しいものを見ている皇帝代理を発見した。

 

「アセイラムさん、どうしたんですか?」

 

「え、シン? いえ、ちょっとだけ昔を思い出して」

 

 懐かしそうに、といった表情ならばその言葉に納得しただろうが、今の彼女は少しだけ顔色が悪い。

 

 まるで怖がっていたものを再確認したような、そんな顔をしている。

 

「アルバムですか?」

 

 そっと手元を覗きこむ。

 

 場所が場所だけにあってもおかしくないのだが、こんなところにあるアルバムとは、よっぽど大切にされていないのだろうか。

 

 政庁の最上階にはあるが、滅多に人が通らない。執務室とも反対方向の予備倉庫、だったはずだ。普段は使わないが、もしかしたら使うかもしれない資料を置いてある場所。

 

「探し物をしていたら、偶然、見つけたものです」

 

 アセイラムはアルバムを閉じて、ギュッと胸元に抱えた。

 

 泣きそう顔だというのは解る。今にも涙があふれそうなほど悲しい顔をしながらも、彼女は決して涙を流すことなくアルバムを抱きしめたまま、ゆっくりと瞳を閉じた。

 

「誰のですか?」

 

「・・・・ごめんなさい、シン。これは答えられません」

 

 瞳を開いて顔を向けてきたアセイラムは、すでに何時も通りの穏やかな笑みを浮かべていた。

 

 普段通り、何も変わらないはずなのに、シンの視界には『無理やりに感情を押し込めた』ように見えた。

 

 ひどく気になる。自分の感が妙に騒いでいる、こんなことは師匠にかかわることだけだったのに。

 

 だとすると、あのアルバムは師匠のものか。と、そこまで考えたシンは不意に思い出した。

 

 そういえば、師匠のアルバムは十二歳からしか見たことがない。隠されていたわけではない、十二歳からのアルバムは見せてもらったことがある。

 

 隠されているのか、あの師匠が誰にも見せないように。だとするならば、だ。こんな倉庫に置いておくことはない。あの師匠が隠して誰にも見せないようにするのなら、彼の城に置いておく。

 

 完全に独立させた異世界『エデン』に浮かぶ、テラ・エーテルの一族のあらゆるものが収められた浮遊大陸『ヴァルハラ』。その中心に立つ『神帝城』の最奥ならば、誰も近づけない。

 

 『六柱神』、『護元神』だけではなく、六つの魔王と、四つの原初の神が護る最秘奥。

 

 師匠の『サイレント騎士団』でさえ突破できない絶対なる管理者が護る領域に収めたものは、決して世の中には出回らないはずなのに。

 

「ごめんなさい、政務に戻りますね」

 

 一礼してアセイラムはシンの隣を通り抜けた。不意に、漂うように流れた雫に慌てて振り返ると、廊下の先に彼女の背中が見えて。

 

「まったく、あいつは」

 

 その途中で軽くため息をついている男がいた。

 

「バトラー」

 

 漆黒の肌に白い髪。執事服を纏った男は、滅多に『ヴァルハラ』から出てくることはないのだが、どういうわけか今日は政庁にいる。

 

「シン、すまないが時間はあるか?」

 

「え、はい」

 

 鷹のような瞳で見つめられ、シンは僅かに体を構えさせた。

 

 フッとバトラーが笑う。緊張を解すように微笑する彼は、何処か『皮肉屋』のように見える。

 

「そう身構えるな。何も、戦おうとするわけじゃない」

 

「ぜひとも言えますけど」

 

 彼と戦えるならば、是非と言いたい。シン・アスカが知る中で、対人戦闘において彼に並ぶ者はいない。

 

「私程度の実力者ならば、五万といるだろう?」

 

「嘘つかないでくださいよ、『正義王』」

 

 彼の正体を師匠から聞いたことがある。彼の生き様、彼のあり方、そして彼がテラの一族に『縛り付けられている』理由も。

 

「止めてくれないか。私はそれを名乗れるほど、崇高な存在ではない。ただの英霊の残骸だ」

 

「でも、俺は知っていますよ。ジョーカー銀河帝国皇帝テラ・エーテルが唯一絶対に『勝てない』と明言した存在、『正義王エミヤ』の強さを」

 

 改めて彼の名を告げると、バトラーと名乗っている男は小さく苦笑した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 英霊『エミヤ』。

 

 かつて、冬木で行われた聖杯戦争に呼ばれた英霊、として彼の物語は始まる。

 

 彼の過去を細かく記した書物はない。人類が宇宙に飛び出し、広大な銀河を旅するようになって、いくつかの太陽系を発見し移り住んだ結果、最初の地球の記憶は酷く曖昧になってしまった。

 

 同じ宇宙に同じ生命体は存在しない、これが間違いなのだと知ってからは特に。太陽系に人類は育つ、複数の太陽系があるならば、複数の異なる進化を遂げた人類が育っているのは、ある意味で必然だったのかもしれない。

 

 異星人はいた。友好的な種族もいれば、非友好的な種族もいる。BETAとか特に人類に対して有害な存在でしかない。

 

 話がそれたが、『エミヤ』と呼ばれる英霊は当初はそれほど有名ではなかった。精々、物語の一コマに名前が出てくる程度。

 

 英雄王、騎士王、征服王といった王たちの名前に比べたら、誰も見向きもしない存在でしかなかった。

 

 しかし、ジョーカー銀河帝国が出来て、その皇帝のテラ・エーテルがある雑誌でこう答えてから評価が一変した。

 

 『皇帝陛下が過去の英霊たちと戦ったら、誰に負けますかね?』と。

 

 雑誌の記者は『え、負けないよ。当たり前じゃん』と気楽に答えてくれると思ってしたのだろうが、彼はいつになく真剣な顔で答えた。

 

 『俺は『エミヤ』にだけは勝てないさ。あの人の生き様や信念を折れるわけがない。正義の味方であろうとして、自分に厳しく生きた人だ。俺は絶対にあの人に勝てない。きっと、俺がもっと強くなってもそれは変わらない。俺は英霊『エミヤ』に勝てないな』。

 

 その瞬間、帝国が別の意味で揺れたのを、シンは知っている。

 

 こうして目出度く、彼にとっては不幸にも英霊『エミヤ』は多くの人が名前を知ることになり、最終的に彼が正義の味方であろうとしたことから、『正義王』と呼ばれるまでになった。

 

「とても不快なことを考えていないか?」

 

「ええ、とても忠実で正しい歴史を思い出しています」

 

 鋭く見てくる男に真っ直ぐに答えると、彼は小さく頭を振った後に、手慣れた動作でシンの前に紅茶を置いた。

 

「まさか、バトラーのを飲めるなんて思ってませんでした」

 

「長い話になるからな。シン、おまえはテラの過去をどのくらい知っている?」

 

「師匠の?」

 

 問われて思い出すのは、最初の出会い。その後の地獄の訓練と鬼灯様と閻魔様に助けられた日々。

 

 後は、『昔は馬鹿だった』と笑っていることくらい。

 

「そうか、ほとんど話していないか。ラウから聞いているかと思っていたが、彼も話していないとは」

 

「え、それだけじゃないんですか?」

 

「ああ」

 

 珍しく彼は言葉に詰まる。何時も、といってもほとんど会話した記憶はないが、彼は明確な発言をしていたはずなのに。

 

「五代前から私はテラの一族と付き合いがある。『正しくありたい』と願った結果、私はこうして『バトラー』として存在しているが」

 

 彼の話は、とても大昔のこと。テラの世代のかなり前の頃に、一族が混迷した時代があった。

 

 これでいいのか、このまま強さだけでいいのか。一族全体が割れて競って、争って血で血を洗う内部闘争にまで発展した時、一人の男が聖杯を使って彼を召還したらしい。

 

 悲劇を止めるために強くなったが、それが誰かの悲劇にならないとも限らない。だからこそ、『正義の味方』の判断が欲しい、と。

 

「む、無茶苦茶なことを言いますね」

 

「私に審判者であれと願ったのが、その時の馬鹿ものだ。まったく、掃除屋であった頃が懐かしいと思えるようになるとはな」

 

 何処か疲れた顔のバトラーは、紅茶を見つめた後、首を軽く振った。

 

「今はテラの話だったな? 私はこうして彼らの一族と共にあったのだが、初めてだったな」

 

「初めて、ですか? あ、師匠がですか?」

 

「ああ、初めてだ。私が『殺そうと思った』のは」

 

 予想外の一言が出てきて、シンは次の言葉を飲み込んだ。

 

「生まれながらにして、テラは破綻している。私から見てもそうといえるほどに、あいつの中はとても危うい。悲劇をなくしたい、誰も悲しませたくない、なんてことはあいつは考えていない」

 

「え、いや、そんな。だって師匠は」

 

 彼は何時だって誰かを助けていた。多くの人を護り、多くの悲劇を止めてきたのに。そんなことはない。

 

「あいつの行動原理は、『自分にとって親しい人であるか、そうでないか』だ。赤の他人だったら、見捨てる」

 

「そんなはず、ないでしょう? だって、今までだって」

 

「シン、落ち着いて思い出せ。テラが、『帝国以外の国を助けている』ことがあったか?」

 

 言われてシンは、記憶を探った。何度も思い出せる光景は、常に『帝国領内』であった。

 

「あ・・・・」

 

「そうだ、シン。テラは、救世主じゃない。ヒーローじゃない。あいつ自身が言っているように、『破壊神』でしかない。強くあり、絶対であり、そして大切な人以外を斬り捨てる殺戮者。それが、テラ・エーテルの本質だ」

 

 嘘だ、と叫びかけたシンは、グッと言葉を飲み込んだ。

 

 目の前のバトラーが、何処か悲しそうに見えたから。それに、ラウ・ル・クルーゼの言葉が脳裏をよぎったから。

 

 あいつが馬鹿ものであり続けられるように。

 

「テラは昔、四歳児の時に笑いながら自分の心臓をえぐり出して、握りつぶした。どうしてだか、解るか?」

 

 かなり衝撃的な話を聞かされた気がした。けれど、シンは心の何処かで『師匠ならやる』と思えた。

 

「強くなりたいから」

 

「そうだ。あいつの母親は『天魔の一族の最後の純潔の姫』。吸血鬼も元を辿れば天魔の一族に辿り着く。だからこそ、死んで蘇れば強さが増す。あいつはそれを知っていたから、死んだ。自分の体を再構築して、強度を増すために」

 

 強くあれ、強者であれ、絶対であれ。テラ・エーテルの過去を聞いて、シンは『何でそんなことを』と嘆くよりも、『師匠らしい』と納得できてしまった。

 

 テラ・エーテルは強さを求め続ける。馬鹿やって周囲を笑わしていながら、何処までも貪欲に、何処までも渇望するように。 

 

「このまま強くなった場合、こいつは世界を壊す。だから、私は殺そうと思った。ここでこの狂気を断てば、と」

 

 固有結界まで使って叩き潰した、バトラーとしてではなく、『エミヤ』としての全能力を使って潰した彼は、再び立ち上がって笑った。

 

「そして、あいつは『あ、俺って馬鹿だったんだ』と呟いて、倒れて。その後にアセイラムとアイリスにボコボコに殴られて、現在のあいつとなった」

 

「・・・・・・・えええ」

 

 シン、一気に脱力。なんだか、シリアスを突っ走っていたのに、気がついたらギャグになっていた気持ちで一杯だ。 

 

「あのアルバムは、その当時にものだろう。テラのことだ、『いらないな』と放置していたのを、誰かが予備倉庫に放り込んだ、と言ったところか」

 

「え、ちょっと待ってください、バトラー。その時の師匠は何歳だったんですか?」

 

「十歳だが、どうした?」

 

「十歳で、英霊に立ち向かうって、どんだけなんですか」

 

 呆れてしまう。英霊とは過去の英雄たち、人が戦って勝てるわけがないのに。常識的に考えれば、逃げの一手ではないだろうか。 

 

 呆れたシンを前に、バトラーは思う。『十二歳の頃、過去に戻って第五次聖杯戦争に突撃した後、第四次に突撃して、その後に人理焼却にまで首を突っ込んだことは黙っていよう』と。

 

 シン・アスカの精神安定のためにも。

 

「あのアルバムのことは触れないでやってくれ。あいつの幼馴染達は、全員が心臓を握りつぶす瞬間を見ている。トラウマになっているかもしれないからな」

 

「はい、解りました。あのところで、最近の師匠は、その」

 

 言いよどむシンに対して、バトラーは皮肉を精一杯に込めた笑みを浮かべた。

 

「『破壊神』ではあるが、絶望を周囲にまき散らすことはない。確かに親しい人しか助けないが、それは『帝国に入ったら話は別』だろう」 

 

「そっか、そうですよね」

 

 ちょっと安心しているシンに対して、バトラーは内心で言葉を付け足す。

 

 『だが、敵となれば国家や星ごと潰しかねないのが傍にいるが』と。

 

 丁度そのころ、『サイレント騎士団』の団長が小さくくしゃみをしていたとか、していなかったとか。

 

「引き止めてすまなかったな、シン」

 

「いえ、おかげで色々と聞けましたから。俺も強くなります。クルーゼさんが言っていたとおり、師匠が『馬鹿のまま』でいられるように」

 

 誇らしげに笑う少年を見送り、バトラーは小さくため息をついた。

 

「やれやれ、私らしくないな。おせっかいか、こういったのは君の役目ではなかったかな? 『ジャンヌ』」

 

「そうでしょうか? 中々、素敵な訓示でしたよ」

 

 空間が揺らぎ、扉が開くような文様が走った後、金髪の女性がバトラーの背後に立っていた。

 

「・・・皮肉ならば受け付けていないが?」

 

「本心です。貴方も『親心』が解るようになってきましたね」

 

「解りたくはなかったが」

 

 まったく、出来の悪い子ほどかわいいとは、奇妙なものだ。バトラーは再び溜息をついて、立ち上がる。

 

「君が出てくるとは何かあったかね?」

 

「腹ぺこ王様が御帰還しました」

 

「ほう、それはそれは。しかし、それにしてもだ。聖杯のシステムを解読して組み込むなど、テラとルリは何をやったのやら」

 

「それはアインズの仕業ではなかったですか?」

 

 バトラーはその言葉に固まり、深々と溜息をついた。 

 

「オリジナルの『アインズ・ウール・ゴウン』ならばできる、といって魔法をため込んで強さを増したあいつは、今度は儀式魔法にまで手を出したか」

 

「誰もが強さを求めるものです。ですが、それを感情のままに振るわないだけ良識があるのでしょう」

 

「常識といわないのは、君なりに理解しているからかね?」

 

 意地の悪い質問を投げると、元『聖女』様は可愛く首を傾げた。

 

「テラの一族に連なる者に、常識があると思いますか?」

 

「聞いた私が馬鹿だった」

 

 あまりに当たり前な一言に、バトラーは思わず顔を手で覆ったという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 色々な話を聞いて、色々なことを考えて。これから先、師匠にはもっと優しくしてやろうかなと考えていたシンだったが。

 

「師匠?! シャルロットに何をしたんですか?!」

 

 数分前の自分を投げ捨てることをシンは決めた。過去に何があったとか、彼の性格がどうだとかもう関係ない。 

 

 師匠は馬鹿で世間知らずで常識がない、とてもはた迷惑な馬鹿だ。

 

「え、俺? いや、俺じゃないって」

 

 真顔で返す彼に、シンはふと振り上げた拳を止めた。

 

 あ、これは嘘じゃない。ということは、誰が彼女の部屋にウェディング・ドレスなんて送ったのか。

 

「何かするのはシンだろ? 結婚した後とか、色々と」

 

「やっぱりあんたかぁぁぁぁ!!!」 

 

 全力で殴りつけた拳は、彼に当たることなく虚空を薙ぐ。

 

「師匠! どうしてそんな迷惑なことするんですか?!」

 

「迷惑ってなんだよ。おまえが何時までもフラフラしているからだろ? いいから誰か決めて結婚しろ」

 

「俺はまだ十七ですよ!」

 

「え? 俺がアイリスとセラムと結婚したの十六」

 

 時が止まった。思わず、拳をゆっくりと下ろした後、通信端末を起動。素早く政庁へ連絡し、二人に確認。 

 

「・・・・法律は、だってその頃は連邦制だったから十八からじゃないですか?」

 

「連邦? あれ、シンに言ってなかったっけ?」 

 

「何をですか?」

 

 嫌な予感がして、シンは思わず身構える。いたずらっ子のような顔をした師匠が言うことなど、大抵がろくでもないことだから。

 

「二人を嫁によこせって言った帝国があって、そいつらが説得しても応じなかったから、俺が全力で滅ぼした。で、俺の帝国を作ったから二人に『じゃ、結婚して』って言った」

 

「・・・・・・え?」

 

「おう! だから、セラムとアイリスと俺の三人の結婚記念日がジョーカー銀河帝国の建国記念日」 

 

 親指をグッと押し出して誇るテラに対して、シンは初めて知った事実に打ちのめされていたのでした。

 

 『ああ、あのバトラーが言っていたことは本当だったのか』と。内心で師匠に対しての色々なものが崩れていくのだが。

 

「よ! 銀河一の幸せ者!」

 

「うちの陛下は本当の馬鹿だよな!」

 

「その幸せを俺たちに分けてくれよ!」

 

 帝都の一角にあるカフェテラスの中で、テラは周りからの言葉に両手を上げて答えていた。

 

「おうよ! 俺は幸せ者だ! だからおまえらも幸せにしてやる! 俺の帝国は喜劇で回してやるんだからな! この国にいる限りは絶望と後悔を刻んでやる!」

 

 言ってることが逆じゃないか。シンは呆れながらテラを見つめていると、彼はニヤリと笑ってさらに声を張り上げた。

 

「こんなところに来て、『幸せで太ってしまう』って後悔と、『明日も幸福か、毎日これか』って絶望をな!」

 

 『フハハハ』とか笑っている師匠と、周りからの野次の雨あられ。 

 

 『この馬鹿皇帝』、『いい加減にしろ馬鹿もの』、『常識を知れ、陛下』とか色々といわれても笑っている彼と、それに釣られて笑っている人たちを見つめながら、シンはふと思う。

 

 彼がどういった存在で、強さに貪欲で敵に容赦がないとしても、味方には頼もしい存在である以上は、このままでいいのだろう、と。

 

「というわけで、シン、いいかげんに結婚しろ」 

 

「何処からどうつながってその結論になるんですか、師匠!?」

 

 あんまりな結論に盛大に突っ込みを入れると、テラは『え、違うの』という顔をしているから、シンはもう一度と拳を握るのでした。

 

 

 

 

 

 




 
 シリアスと知り合いって似ているよね、思いっきり趣味に走った回なのですが、テラの過去とか織り交ぜてみました。

 伏線とかになります。

「え、これが伏線って、どういうことだよ?」

 なればいいなぁ、と考えて候。

「は? 待った、何処から何処までが本気なんだ?」

 プロットは投げ捨てるものですよ、シン。

「おいおい」




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