シン・アスカの異世界渡航記『完結』   作:サルスベリ

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 毎度毎度、馬鹿馬鹿しい話をお届けします。

 ちょっと思いついた話でございますが、どうかご容赦のほどを。

 ガチの戦闘シーンって難しいなぁというところです。

 では、シン。後はよろしく、喜劇で踊ってくれ。





実は甘味が大好物です。

 

 男には決して譲れないものがある。

 

 どんなに優しい人でも、気前のいい人であったとしても、決して『これだけは』というものがある。

 

 過去に存在した英雄たちでもそうだ。すべてを犠牲にした政治家や、軍人たちにもあったもの。

 

 人が人として生きるならば、どれほど欲望を捨てようとも、自己を犠牲にしたとしても、決して『譲れないもの』はある。

 

 人が生きているなら当然の話だから、『テラ・エーテル』にも譲れないものはある。

 

 知っていたはずだった。彼が無欲だなんて思っていなかった、彼が傲慢だとは思えなかった。

 

 シン・アスカにとって、テラ・エーテルは『いいよ』と許してくれるような、寛大な師匠だとは思っていなかったが、話せば解ってくれるはずだと、心の何処かで甘えていたのかもしれない。

 

 両手に持っていた『ウロボロス』が弾かれた。

 

 衝撃に顔をしかめる暇もなく、目前に迫った見慣れた顔に驚愕を浮かべるでもなく、反射的に自分の体を無理やりに捻る。

 

 衝撃が頬を斬った。紫色のはずの師匠の瞳が銀色に染まっているのが、僅かに見えた。

 

 『斬王の瞳』。視界内に捕らえた存在を斬る能力、と昔に聞いていたから咄嗟に反応できた。

 

 本当に規格外、化け物とかチートとかバグとか、色々な言われ方をしている師匠。他の国では『サイレント騎士団』こそが『神帝』テラ・エーテルの凄味であるとか、強味であるとか言われているが。

 

 まったく違う。『サイレント騎士団』は、師匠にとっては『手加減』でしかない。十億とか二十億とかいう戦力も、彼からしてみればちょっと頼りになるかな程度でしかない。本当に彼の本質を知る者ならば、『サイレント騎士団』を相手にしがほうがマシといえる。

 

 嘘だと思いたかった事実を眼前につきつけられる。今までの訓練は遊びだったのかもしれない、今までの地獄は実は師匠にとっては児戯だったのかもしれない。

 

 そう思える。

 

「は、ははは、師匠」

 

 彼は答えない。答えずに無数ともいえる銀色の円環を浮かばせて、十二の巨大な獣たちを従えた、両手に二メートルの巨剣を持つ彼は無言で『怒り』を叩きつけてくる。

 

「まさか、そこまでですか?」

 

 不意に呟いたシンは、数時間前の出来事を思い返す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 事件の始まりは、何時だって突然。昔からそうだったように、日常の何気ないことが、事件の始まりを知らせてくれるのだが、その時のシンは『それ』を見落としていた。

 

 シン・アスカは執務室まで、という連絡を受けた彼は政庁を上へと昇っていた。呼び出しなんて珍しい、お叱りかと思ったのだが最近は特に問題を起こしていない。異世界とかリタのこととか、そういったものはすべてお説教済みなので大丈夫だろう。

 

 では、どうしたのか。他の問題か、あるいは直接の任務とか。最近にあった出来事は師匠であるテラの『近隣プチッと蹂躙事件』くらいのはずだ。まさか他に何かやらかして、その後始末にということか。

 

 いや、待った。そうならば書類が自分の机に来るはずだ。事件の発生直後とか最中なんてことは、あの師匠が『露見』させることはない。何時だってこっちに話がくるのは『事後』でしかない。

 

 もしかして、その切っ先を掴んだのか。さすが、帝国情報局。日々のたゆまぬ努力が実を結んで、ついに師匠の行動の先を掴んだということか。

 

 違うか、とシンは思い直す。情報局は優秀なのは認める、他国の議員の朝飯の内容を五分後にすべて調べ上げるとか、各人の好みの香水まで探り当てるとか、色々無駄な方向に力を注いでることもあるが、やる時はやる人たちばかりなので、師匠の行方を探り当てたと信じたいが、出来ないだろうと確信してしまう。

 

 あの師匠の巫女、ホシノ・ルリが情報局の『調査』を師匠に届かせるわけがない。『サイレント騎士団』は、史上最強絶対無比。伊達や酔狂で、そう言われているわけではないのだから。

 

 とすると、今回の呼び出しはどういった理由でなのか。ちょっと嫌な予感がしつつシンは執務室の扉を開いた。

 

 彼の心配は杞憂だったのだが。

 

「久しぶりだな、シン」

 

「恭也さん」

 

 執務室にいたのは、師匠の幼馴染にして単純な近接戦闘においては師匠を圧倒する人物。単純な身体能力においては、『え、マジですか』とシンでさえ信じられないような動きをする人。

 

 実は、高町・士郎のほうがもっと信じれない動きをしているのだが、シンは戦っているところを見たことがないので知らない。

 

「テラがまた馬鹿やったと聞いて顔を見に来たんだが」

 

「あ、そうですか」

 

「逃げられた」

 

 憤りを滲ませている恭也に、シンは『本気で逃げたんだろうな』と察してしまう。野比・のび太と高町・恭也の二人が揃ったら、いくらテラでも逃げることができない。単純な戦闘になればテラの勝ちだろうが、それでも周囲五十キロは荒野になりかねない大乱闘になるだろうから、そんなことは誰も望んでいないしやろうとも思わないだろう。

 

 だから逃げたか。

 

「で、今、その話をしていたのよ。恭也、子育てが忙しいところ、悪いわね」

 

「忍から『たまには息抜きが必要よ』といわれていたからな。息抜きがてらテラをたたきのめしてやろうと考えていたんだが」

 

 いや、待ってとシンは思う。息抜きで師匠と戦うなんて、そんな無謀なことを考えるのは恭也達くらいだ。さすが戦闘民族『高町家』。あのブリタニアと双璧をなす帝国の『脳筋集団』だ。

 

「シン、何か失礼なことを考えていないか?」

 

「いえ、そんなことありません」

 

 表情に出していないはずなのに、恭也は鋭くこちらの内面を見透かしてくる。さすが、師匠の世代はハイスペックが多いな。廃スペックもいるが。

 

 呆れて考えているシンだったが、シンの世代のそれを超えたハイスペックがいるのだが、彼は考えないようにしていた。

 

 拳で戦車を粉砕する少女とか、刀一本で戦艦を両断する青年とか、色々なぶっ壊れがいることをシンは覚えないようにしていた。

 

「まあ、テラは後で捕まえるとしてだ。お土産もある」

 

 恭也が持ち上げたものに、アイリスが珍しく瞳に星を浮かばせていた。

 

「ありがとう、恭也。貴方のおかげで私は後五十年は戦えるわ」

 

 ウキウキ気分な宰相殿がいて、壁際には音符を乱舞させながら紅茶を入れている皇帝代理がいた。

 

 そうなる気持ちも、解らなくはない。恭也が持ってきたものは、ジョーカー銀河帝国では滅多に手に入らない、嗜好品。至高品と誰もが言っているとてつもなく美味しい、シュークリーム。

 

 高町・桃子氏によるとても美味しい、スィーツであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ジョーカー銀河帝国において、最も甘味に強い欲望を持つ者は誰か。

 

 誰だって甘いものは好き。大人の男性ならば、甘いものなどという人もいるかもしれないが、好きなものは好きといえる世の中であってほしいと願っている人たちによってつくられた世界で、男らしくないとか女らしくなんてことは個人の意見でしかなく、周りに強要するものでもない。

 

 個人の趣味趣向は個人の自由であるべき、なんて皇帝が帝国全土への放送で言うものだから、『あ、自由なんだ』と国民が思ったとか思わなかったとか。

 

 趣味趣向だから人殺し大好き、周りを虐めるの大好きとか言って実行するとしたら、とてもいい笑顔の皇帝以下政府関係者や軍人たちが迫るので、そっと心の中にとどめている人たちはいるが。

 

 話を戻して甘味が大好きな人は、実はジョーカー銀河帝国には多い。特に政府関係者、あるいは特務部隊とか。実力者になればなるほど、甘味が好きという人が多くなるのがこの国。

 

 ヴィルティラス部隊長のエイルンはもちろん、大好物だ。普段は堅物な印象がある甘いものを食べている時は、少年のように無邪気になる。

 

 といったように、甘味大好きな人達は、甘味が関わると人が変わってしまうくらいに、常識がなくなるらしい。

 

 そして、ジョーカー銀河帝国において、こと甘味が関わってくると人が変わったように凶暴な戦闘生物になるものがいる。

 

「ああ、おいしかった」

 

「はい、とても美味でした」

 

 アイリスとアセイラムが深々と息を吐く。一年も前に食べたきり、その後は食べられる余裕はなかった。

 

 いくら翠屋が帝国内にあっても、あちらは第一太陽系、こちらは第二太陽系。ちょっと行って戻ってくるくらい可能だろうが、仕事が立て込んでしまうととてもじゃないが政庁を抜け出せない。

 

 届けさせるって手段もあることはあるのだが、『別の太陽系まで出前を』なんてとてもじゃないが言えない。やれないことはない、かもしれないが。自分のために出前をしてもらうとか、誰かに代理で行ってもらうなんて我儘が言えるわけがない。

 

 宰相と皇帝代理が言い出したら、誰もが『やろう』と言いだして翠屋の製造能力を軽く超えてしまうだろう。

 

 それでは相手に迷惑がかかると我慢していたのだが。我慢が時に最高の調味料になることを、二人はこの時に改めて痛感したのだった。

 

 満足、満腹。室内にいた誰もが幸福感を味わっている時だった、シンはふと空になった箱を見つめた。

 

 保温がきく持ち運び可能、いざとなれば時間停止もかけますって専用の箱なのだが、どうも気になることが一つ。

 

「あの恭也さん、ちょっといいですか?」

 

「なんだ?」

 

「あれ、全部だったりします?」

 

 シンが指さしたのはシュークリームが入っていた箱。

 

「そうだが?」

 

 あっさりと答えた恭也だったが、すぐに顔色を変えた。

 

 しまった、と顔にありありと書いてある。そしてそれは、すぐに全員に伝播していく。

 

「ちょっと待って、本当に全部?」

 

「ああ、すまない、失念していた」

 

「ほ、本当に全部ここに?」

 

「ああ」

 

 アイリスとアセイラムの問いかけに、恭也が顔を抑えつけるように答える。しまった、失敗したと誰もが思っている中、事態は最悪な状況に陥っていく。

 

「ただいま」

 

「師匠?!」

 

 珍しく扉を開けて入ってきたテラに対して、シンは咄嗟に反応した。

 

 状況は最悪、場所は不味い。ここでもし彼が知ってしまったら、と考えるシンの脳裏に核爆発で周囲を薙ぎ払う光景と、次元震動弾が炸裂する空間の歪みが同時に映る。

 

 史上最悪最凶、そんな事態が帝都で、しかも政庁の中で起きたとしたら帝国国民の不安は最高潮になる、そうなったら帝国警察機構が動くことになって、最悪の場合は帝国軍まで動くことになる。

 

 帝国軍が動けば国境の警備が不安定になって、侵入してくる敵国は必ずあるだろう。それくらい、帝国は恨みを買っているのだから。

 

 どうする、どうする。シンが必死に考えている中、他の三人も状況を打破するために色々と思考を巡らせる。

 

 一方、テラはきょとんとしたまま視線を動かす。

 

 ゆっくりと動いた先で、止まった。

 

 瞬間、シンが最初に動いた。

 

「ティス!!!」

 

『はい!! コード入力! 『天帝牢獄』!!』

 

 もうやるしかない、シンは決意を込めて叫んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 範囲対象は自分と師匠の二人。普段だったら、『止めろよなぁ』と言って笑いながら作用を打ち消すのだが、彼が呆けていたから完全に取り込めた。

 

「・・・・・シン、今さ」

 

「は、はい」

 

 実行してみたのだが、もうすでに後悔しかない。せめて、アイリスと恭也を入れていれば、どうにか説得ができたかもしれない。咄嗟の判断で展開したのだが、自分の判断ミスを呪いたくなる。

 

「翠屋の箱が見えたんだけどさ」

 

「は、はぃ」

 

 もう正坐して土下座した方がいいんじゃないか。問いかけるテラの気配が、明かに普通の状態ではない。殺気や怒気なんて言葉が小さく見えるくらいの圧力が、全身を絞めつけてくる。

 

 一般人が魔王に会ったら、こんな気分ではないだろうか。シンは場違いな考えをしながら、必死に心の平静を保とうとしていた。

 

「・・・空じゃなかった?」

 

「・・・・・・」

 

 シン、答えられず無言。どうしたらいいか、いっそのこと今から翠屋に行きませんかと誘ってみるか。これならば問題解決、といかないのがテラの立場。

 

 帝国中を飛び待っているが、彼は皇帝陛下。ちょっと店に入ると、皇帝陛下御用達なんて報道されてしまう。報道されたらその店は賑わうのだが、店が目的で押し掛ける人たちだけではないのが、悲しいところ。

 

 皇帝陛下にあって色々と相談したいと考える人まで押し掛けるから、彼は特定の店に出入りすることは控えていた。

 

 当然、大好物がある翠屋でさえも。

 

「シン?」

 

「は、はい」

 

「答えろよ、おい」

 

「・・・・・・すみません!」

 

 土下座実行、速やかにシンは頭を下げて謝罪することにした。

 

「食べてしまいました!」

 

 対してテラは無言。何の音もたてず、気配もまったくしなくなった。

 

 あ、これは助かったとシンは思いたかった。思い込もうとしてみたのだが、自分の中の第六感が最大警告を告げている。

 

 覚悟完了したか、こちらは決死覚悟が完了した。そんな言葉を向けてくる自分の内心に、シンは諦めてフウっと溜息をつき、顔を上げた。

 

「いい度胸だ、お前」

 

 そこで見たテラの顔を、シン・アスカは一生、忘れることはなかった。

 

 笑っていない、笑顔じゃない、瞳が笑っていない。そういったものではなく、瞳に光を灯しながらも、無表情な彼がそこにいたから。

 

 あ、死んだ。

 

 シンがそう思った一方で、体は速やかに両手に『ウロボロス』を引き抜く。ついでにティスに最大戦闘を通達、全身が『戦闘モード』になったのを感じた瞬間に、両手に衝撃が走って。

 

 話は最初に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宝具の雨が降り注ぐ。ランクとか等級を制限するとか、そんなものは無関係に降り注ぐ武器達。

 

 英霊が使っていたものもあれば、神々が使っていたものもある。かつて英雄王の戦い方を見ていたテラの先祖の誰かが組み上げた、『王の財宝』に似せたスキルは、実はオリジナルとは全く違う理論を持っていた。

 

 黄金の波紋ではなく、銀色の円環。その内部に瞬く七色の光芒は、その最もたる違いらしい。

 

 『天壌無窮』を引っ張り出し、シンは宝具の雨を潜り抜ける。

 

 元となった技術は『ボソン・ジャンプ』。科学的な技術により作成された技術は、瞬間移動と伝えられている。

 

 だが、違う。本当はそういったものではないことを、シンは昔に師匠に言われて知っている。『実は時間移動』だと。禁じ手があるから、瞬間移動となっているだけなんだと。

 

 剣、槍、刀、次々に降り注ぐ武器の数々には古今東西以上に、未来のものまで混じっている。

 

 古ければ古いほど神秘は増す。その理屈で言えば未来の武器など脅威ではないのだろうが、テラ達の一族はそれを『神秘に通じる』ように仕立て上げた。

 

 過去から未来へ流れ、世界が滅んだ後にその武器を新しい世界に持ってくる。あるいは時間操作で一万年以上の時間をかける、それに耐える武器を生み出して工作すれば、それらは神秘に通じる武器となる。

 

 こうしてテラ達の一族が長い年月をかけて生み出した武器達は、過去の英霊が使っている宝具に劣らない威力を持っていた。

 

 レーザーやビームが、太陽の聖剣と同じ威力を発揮するなど、誰が信じれるかと当時は叫んだものだが、今は信じられる。

 

 身を持って味わっているから。

 

 それに、とシンは地面を蹴とばして大きく距離を開けた。そこに巨大な雷を纏った獅子が飛び込んできた。

 

 宝具だけでも厄介なのに、ここに十二の眷獣まで加わる。真祖が従える、戦争そのものの威力を持つ獣たち。一代限りのものではなく、何代の何千年も磨き続けた眷獣達の力は、あまりに圧倒的な能力を発揮して周囲を圧倒する。

 

 きっと話に聞く真祖とは、こういった力を平然と使うものだろう。

 

 眷獣を叩き伏せ、宝具を叩き落とし、続いてはと視界を向けた先にテラがいた。瞳が他の色に染まる、その瞬間にシンは無理やりに視界から外れる。

 

 チートとかバグって言われてるが、あれが一番だろう。瞳だけで九人の異能の王の力を宿すなんて、ふざけるなと叫びたい。視界に入れただけで能力を『発揮可能』とか意味が解らない。

 

 これだけで十分だろうといえるのだが、テラの身体能力はとても高い。肉体強度もとても硬い。その上にまだ使っていない能力もあるらしい。

 

 叩きつけられる剣、『光滅』を『天壌無窮』で弾く。何度ぶつけたか、何度弾いたか解らない数を受けた後、眷獣と宝具の雨が再び振る。

 

 彼の能力は、彼に被害を与えない。敵味方識別があるのではなく、宝具も眷獣もテラ・エーテルの肉体強度を超えられない。

 

 本当にどうしょうもないな、とシンは内心で呆れながらも剣を握る手に力を込める。

 

「し、師匠、そろそろ止めませんか?」

 

 彼は答えない。

 

 冷たい目でシンを見つめ、右手の剣を持ち上げる。

 

 『彼が馬鹿であるように』。『彼を殺す権利』、不意にシンはそんなことを思い出してしまった。彼が害悪である、彼が世界を滅ぼす前に。彼を討つしかない、それが世界のためである。

 

 違う、とシンは心の底から叫ぶ。そんなことはさせない、そんなバカな話にはさせない。世界は何時だってこんなはずじゃなかったことばかり、そういう風に言う人もいる。実際、いいことより悪いことが多いかもしれない。

 

 でも、それを認めて諦めるなんてしない。

 

 目の前で不幸なことがあって、『仕方がない』と諦めるなんて絶対に認めたくない。そのために自分は騎士になったのだから。

 

「師匠・・・・・ここで止まれ、俺が止める。絶対に止めてやる!」

 

 決意を込めて、シンは剣を向ける。

 

 悲劇を悲劇のままにさせない。誰もが絶望に嘆くことのない世界であってほしい、そう願った人たちの集まりで出来た国の中で、『そうであれ』と祈った人たちのためにも。

 

 シン・アスカは、悲劇と絶望をそのままになんてさせたくないから。

 

 周囲の温度が下がる、吐く息が白く染まる、一面の氷の世界。風も空も空間でさえも凍結させたような世界、その中で熱を帯びるのは彼の身だけ。

 

 

「絶対に止めてやるからな!」

 

 

「やれるものならやってみろ」

 

 

 

 

 

 

「ああ!!」

 

 

「来いよ!!」

 

 

 

 

 そして二人はそのままぶつかりかけて。

 

「馬鹿夫!!!」

 

「ふぎゃ?!」

 

 背後から迫った剣と槍の攻撃により、テラは沈んだのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何時もと変わらぬ政庁から、何時も以上に頑丈に簀巻きにされた皇帝陛下が吊るされる。

 

「シン、お疲れ様」

 

 ねぎらいを受ける彼は、『あ、どうも』と何故か燃え尽きたように灰になったまま、返事をしていたという。

 

 色々、考えさせられる戦いだった。いい経験値を貰った。決意を新たに出来た。

 

 ただ、甘味が原因でなければなぁと、シンは切実に思うのだった。

 

 

 

 

 

 




 
 む、無理やりだった気がする。でも、テラはこういったキャラなのでご容赦のほどを。

「師匠って、なんであんなに甘味が絡むと人が変わるんだろう?」

 昔さ、甘いものを食べようとして色々あったからだよ。

「へぇ、そうなんだ」

 で、国が一つ沈んだけど。

「は?」

 男が甘いものなど、何を考えているってその国の軍人さんがいったんだよね。十二歳の多感真っ最中のテラに。

「あ、ああ、そうか」





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