シン・アスカの異世界渡航記『完結』   作:サルスベリ

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 昔、立ち尽くしていた少年が、今は立派な騎士となって誰かを護れるようになったわけですが。

 彼はちょっと真面目すぎませんか? 

 というわけで、今回のお話。

 シン、喜劇で踊る準備はいいかい?







それぞれの矜持

 

 

 無限に広がる大宇宙には、人間以外の生物も存在する。SF小説のような宇宙人たちに出会うことに、宇宙へと飛び出した人類は胸を高鳴らせていたのだろうが、物事はそう簡単に行かなかった。

 

 BETAと呼ばれるその存在は、一切の交渉を無視して攻撃を開始。意思の疎通さえできないので、同じく言語体系が違うヴァジュラよりも性質が悪く、お互いに会った瞬間に殲滅開始といったあり様。

 

 ジョーカー銀河帝国では、『BETA死すべし、慈悲はない』が軍人の教本に乗るくらい、即座殲滅蹂躙を掲げている。

 

 発見次第即時攻撃開始許可を、帝国軍の各司令官はもちろん、小隊長にまで与えているくらいに、ジョーカー銀河帝国にとってBETAの存在は許し難しといえる。

 

 ハイヴは残らず、BETAは小型種まで殲滅し、殲滅後には各種センサーによる徹底的な確認まで行う帝国だったが。

 

 そのBETA戦に対して、小さな影を落とす事件が起きた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シン・アスカはその報告書に目を通して、顔をしかめた。

 

 BETAの発見後に国境配備の精鋭三十四軍のうち四つの軍が動いて殲滅作戦開始。BETA側の攻撃はこちらの人型兵器に届くことなく、艦隊による艦砲射撃から始まった戦闘は、人型兵器の戦闘を行うまでもなく終了した。

 

 しかし問題はその後、BETAが何処から来たかのか。

 

 帝国軍は速やかに情報局に協力要請。情報局もBETA発見時から調査を開始しており、出所は速やかに判明したが。

 

「・・・・・シン、資料に目は通したな?」

 

「はい、ゼンガーさん」

 

 寡黙な男から言葉に、シンは顔を上げた。

 

 まるで巌なような、とは言い過ぎではないだろう。腕を組んでいた男が口を開くと、こちらの姿勢が自然と伸びる。背筋がピンとなるとは、こういったことを言うのか。シンはそんなことを感じながら、目の前のゼンガーに視線を向けた。

 

「ならばそう言うことだ」

 

「はい」

 

 言葉少なく語る彼に、シンは再び資料に目を落とす。

 

 すでに現場には、刹那、スザク、ガイ、ハイネと、エイルン隊長まで揃っている。これに他の任務で別方面に行っていたティーラが合流。追加でシンとゼンガーまで投入してのヴィルティラス八名によるBETA殲滅戦。一匹も細胞の一遍も残さない、徹底的な焼却を行うつもりでいる。

 

 精鋭三十四軍のうちの第二十四軍も現場に留まり、周辺宙域に広く展開してのBETA包囲網を形成、一つの取りこぼしのない万全の対策を行っているわけだが。

 

 詳細に記された宙域図の一部、問題のBETAの発生源だけは『接触禁止』宙域に設定されている。

 

「頭の痛い問題だな」

 

「はい」

 

 本当に頭痛がしてくる。ジョーカー銀河帝国にとって、BETAは殲滅対象、残らず一匹も落とすことなく、細胞の一欠片さえも許さずに消しさるものであるのに。

 

 今回の戦闘において、発生源に対しての攻撃は許可されなかった。

 

 相手を怖がった、そんなわけがない。帝国軍の兵士でBETAを脅威と見ている者は多いが、恐怖の対象として見ている兵士は一人もいない。

 

 兵力が足りない。現在、精鋭三十四軍のうちの一つの軍で受け持っている状態だ、当初は四つの軍で対応していたのだから、兵力は十分だ。いざとなれば周回十二軍から軍を回せば済む話だ。同時に帝国軍の上層部、元帥の直轄部隊も残っている。

 

 そして、何より今回の作戦にまだ『騎士団』は投入されていない。

 

 皇帝と皇妃達が持つ十四の騎士団は、規模の違いはあってもBETA相手に後れをとる戦力ではない。

 

 では何か。ごく簡単な話だ。帝国軍が動けない宙域に発生源があった。

 

「まさか『他国からの流入』があるとはな」

 

 絞り出すように告げたゼンガーの言葉に、シンも顔をさらにしかめた。

 

 今回のBETAの発生原因は、単一惑星国家だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 帝国領土以外からの脅威の侵入。

 

 当初、その話を受けた時の宰相は一瞬だけ呆けた後に、深々と溜息をついたという。 

 

 まったく馬鹿らしい話じゃない、本当にアホらしい話。どうしてこんな事態になるまで放っておいたのか。考えてみれば簡単に排除できる問題ではないのか、そもそも単一惑星国家とはいえ軍隊があるのだから、外敵の排除くらい動いてもいいのでは。

 

 アイリスはそんなことを口走っていたが、聞いていたのはアセイラムだけだったので外に漏れなかった。だが、問題点は今も健在。まったく事態は好転していない。

 

 いくら他国とはいえ、ジョーカー銀河帝国に比べたら国力差は一万分の一以下、もしかしたら一億分の一かもしれない勢力しか持たない国家、彼らが対応できないならば帝国軍に強制介入によって事態を収束させればいいのでは、と考えていたのだが。

 

 小さくとも相手は国家。無理やりに介入しては、そこに住む人々をいたずらに混乱させるだけでは。今もBETAに蹂躙されているのに、さらに混乱させるのは、非道すぎないかと意見が出てしまい、宰相も皇帝代理も迂闊に動けなくなった。

 

 帝国の脅威は排除したい軍人たち、周辺国家への配慮に揺れる議員や官僚。国家ならば当然なるような内部意見の分裂や対立が、この時はジョーカー銀河帝国を揺さぶってしまった。

 

 何時もならばアイリスが意見を通すか、アセイラムが上手く纏めて動かすのだが、今回ばかりは状況が悪い方に転がった。

 

 二人は、どちらの意見も『納得』してしまったから、強い意見で押し通すことができなくなってしまった。

 

 どうすると帝国のトップたちが悩んでいる頃、事態をさらに悪化させるような話が舞い込んできた。

 

 即ち、問題の国家の代表が直接に会談を申し込んできた。

 

「『ラグリアス』の政府上層部を帝国の政府に招き入れていただけるならば、我が国は貴国に従いましょう」

 

 眼鏡をかけた優男風の人物、『ラグリアス』の大統領『グランド・アーキランド』は、そう告げた。

 

 一瞬アイリスは拳を握って殴りそうになった。この男は何を言っている、この瞬間にも彼が護るべき国民が死の危険にさらされているというのに、それを条件にして自分達を売り込もうというのか。

 

「いかがですか?」

 

「貴方は何を言っているか解っているのかしら?」

 

「ええ、もちろん。噂に名高いジョーカー銀河帝国。その政府中枢には皇帝の一族しか入れない。これは意見が固まり、人民を省みない政治になってしまう。そうならないように、外部の意見を入れてみてはと提案しています」

 

「へぇ、そう」

 

 ごく真面目に告げるグランドに、アイリスの表情が凍りつく。あっけに取られたのでもなく、図星をさされたのでもなく、相手の本質を見抜いたから。

 

 この男は政治家だ。生粋の政治家であるがゆえに、政治を行えている。だからこそ、死ぬ人達を『数字としか認識』していない。

 

 そこにある、悲しみも怒りも理解していない男が、政治家としての能力を持ってトップにいるというのは。

 

「無様ね」

 

「何か?」

 

「いいえ、何も。そう、貴方達を迎え入れたら、我が帝国に従うというのね?」

 

「ええ、その通りです。私たちはかなり有能ですよ」

 

 当たり前のような自信のある発言と、優秀そうな笑顔。カリスマもあるのかもしれないが、アイリスにとっては『その程度』でしかない。

 

「残念ながら、貴方達が入ることはないわ」

 

「では、私達の国家は貴方達の介入を拒否します。速やかに我が領域から軍を引いてください」

 

「あら? 我が軍は貴方達の国家の領域に入っていないのだけれど?」

 

「それはおかしいですね」

 

 グランドはにやりと笑う。その手が差し出したのは一枚の写真。夜空を埋め尽くす帝国軍の艦艇と、人型兵器の数々。

 

「それが何か?」

 

「言われないと解りませんか?」

 

 グランドがやれやれと首を振る。その仕草がアイリスの『カン』に触ったのだが、平然とした顔を崩すことはせずに写真を手にとって首を傾げる。

 

「解らないのだけれど?」

 

「はぁ、貴方のような方が宰相とは。まったく、嘆かわしい」

 

 よく言った、貴様。アイリスはにっこりと笑って受け流したが、近場で聞いていた一部の政治家や官僚が、すっごい笑顔で笑っている。

 

「ご覧の通りですよ、貴方達の軍が我が国家の『宙域』を侵食しています。ですから、速やかに軍を撤退させてください。これは国際問題になりますよ?」

 

「国際問題ね」

 

 うん、何を言っているか解らない。アイリスは今までの憤りが一気に消える気がした。この男は恐らく、今までこういった手法で国家を運営していたのだろう。あまりに馬鹿げていてあまりに子供っぽい手法だが、『同程度の国家が広がっている』ならば、有効な手段かもしれない。

 

 宝くじを買って当たる、よりは確実な手段だろう。

 

「ええ、国際問題です。貴方達の噂が本物ならば、『悪逆な皇帝』による蹂躙が我が国家を消すのでしょうが」

 

 あ、これは駄目だ。アイリスは笑いながらそう思った。この男は決定的なものを勘違いしている。話し合いですべてを解決し、話術が優れていれば武力など退けられると考えている。

 

 この男はおそらく知らないのだろう、本当の暴力というものを。

 

 さてどうしてやろうか、とアイリスは内心で笑っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 現場についたシンは、すぐに降下作戦が始まると考えていた。しかし機体を格納庫へ収納し待機との命令に、コクピットから飛び出す。

 

「あの、どういった」

 

 格納庫にはすでにエイルンがいて、スザクと刹那、ガイが睨みあっていた。

 

「話は解るが、あそこは帝国領ではない」

 

「けどな!」

 

 エイルンの言葉を、ガイが遮る。怒りを隠そうとしない彼を前に、部隊長も苦渋に満ちた顔で首を振る。

 

「ダメだ。我々が動けば、それはすなわち帝国の侵攻作戦と取られる」

 

「エイルン、お前」

 

「ガイ、すまない、解ってくれ」

 

 真っ直ぐに見つめ拳を握ったまま直立不動で放つエイルンに、ガイも言葉を収めるしかない。

 

 彼だって動きたい。もし彼が一兵士の立場でいたならば、真っ先に動いただろう。しかし、今の彼はヴィルティラス部隊長、彼が動くということはヴィルティラスが動いたこと。

 

 それは即ち、政庁が承認したということであり、『ジョーカー銀河帝国が宣戦布告なく他国に侵入した』という結果が残る。

 

 悪名高き帝国が他国を一方的に蹂躙した、と他の勢力は大々的に宣伝するだろう。そうなれば、今は態度を保留している小さな勢力が、他の勢力に参加していくことになる。

 

 それは最後には帝国の首を絞める結果になって、最終的に人民を危険にさらしてしまう。自分達が非難されるならばいくらでも耐えられるが、自分達の行動の結果で人々が苦しむのは耐えられない。

 

「だが、動かなければあの惑星は死ぬ」

 

 淡々と告げる刹那に、エイルンの表情が歪む。解っている、誰もが理解してはいるが、もう一歩が踏み出せずにいる。

 

「代表同士の話し合いが行われているから、それを待ったほうが」

 

 スザクが控えめに提案するが、それが単なる気休めでしかないのは誰もが解っている。

 

「エイルン、俺は行くぞ」

 

「待てガイ。それは反乱だ」

 

「しかしな!」

 

 一触即発。膨れ上がったそれぞれの感情が、破裂してもおかしくはない緊張感が格納庫に流れ始めた。

 

「落ち着け」

 

「けどな!」

 

 ゼンガーの制止も今のガイを止められない。このままではヴィルティラス内部での分裂・ぶつかり合いに発展しかねない。

 

「何してんだよ?」

 

 不意に流れた声に、誰もが顔を向けた。

 

 呆れた顔をしたハイネが、データ・ボードを片手に歩いてくる。その後ろにはティーラがいて、彼女は何時も以上に無表情を貫いていた。

 

「ハイネ、おまえからも言ってくれ」

 

「おまえから止めてやれ」

 

「ガイも部隊長もちょっとは落ち着けって。そんな感情を閉じ込めた状態で戦っても、周りを巻き込むだけだろうが」

 

「しかしな!」

 

 ガイがハイネに詰め寄る。その両手をするりと回避した彼は、小さくため息をついた。

 

「落ち着けって。今、宰相が国家代表と話し合っている。あの様子じゃ、すぐにでも結果が出るだろ」

 

「それまで待てばいい」

 

 努めて冷静に言うエイルンに、ガイが反射的に振り返って叫びそうになったが、言葉を飲み込む。

 

 彼の右手に赤い血が流れていたから。

 

 ギリギリで抑えつけているのは彼だけじゃない、全員がギリギリで自分を抑えつけて必死にその時を待っている。

 

 シンはそんな光景を見つめながら、ゆっくりと歩き出す。

 

 立場も解る、想いもそれなりに理解している。簡単に動けない権利を持っていて、それでも誰かを助けたいと思い続けることの難しさも、少しは理解できている。

 

 目の前で助けを求めている人を助けることが、悪いことだとは思えない。けれど、国家に所属しそれなりの権限を与えられているならば、それは国家を背負っているのも同じ。

 

 自分はヴィルティラス。ジョーカー銀河帝国にとっては、『政庁』と同じ顔に等しい。

 

 ぼんやりと考えながら歩いて行った先は、廊下の途中。ふと顔を向けると窓から問題の惑星が見えた。

 

 単一惑星国家、今もあそこはBETAが蹂躙し、人々が悲しみに嘆いている。

 

 助けたい、でも自分が動いたらジョーカー銀河帝国が危なくなる。

 

「・・・・・・俺」

 

 船が動き窓から見えていた光景が、自分の顔を映した。

 

 今の自分じゃない、『あの頃の自分』。

 

 『また助けられないのかよ』と責めるような視線に、思わず顔をそむけた。あの頃とは立場が違う、今の自分が動いた結果なんて簡単に予想がつく。ここは待つべきだ。

 

 言い訳を口にして、また顔を向けた時、そこには今の自分がいて。

 

「師匠」

 

「よ、シン」

 

 気楽な笑顔を浮かべたテラがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 変わらない笑顔で、何時もと違う服装をした彼は腕を組んだままシンを見ていた。 

 

 白一色の全身を覆うマント。背中に『四獣と交差した剣』、左胸に血の十字架、右胸に雪の結晶の紋章を刻まれたそれは、テラ・エーテルが滅多に纏わない正装。『サイレント騎士団』全軍を率いる時に纏う儀礼用。

 

「師匠が来たから大丈夫ですよね」

 

「ん、そうだな。俺が来たから・・・・・って思ったんだけど、止めた」

 

 なんだって、とシンが疑問を浮かべる前で、テラはマントを脱いで普段と変わらない服装に戻った。

 

「じゃな、シン」

 

「え? ちょっと待ってください! 救わないですか?!」

 

「なんで?」

 

「何でって」

 

 頭の後ろで腕を組んだまま、歩きだしかけたテラは振り返る。その視界に収められた自分の姿に、シンは昔の自分をまた幻視した。

 

「助けてと言っている人たちがいるんですよ?」

 

「そうだな」

 

「だったら」

 

「だったら?」

 

 先を促されて、シンは言葉に詰まった。彼は何を言っているのだろう、今までは率先して助けていたのに、今はまったく動こうとしない。

 

 いや、自分の騎士団を率いてきたなら、助けようとしていたのだろうが、ここに来て戻ろうするなんて。

 

 今までの師匠とは違う行動に、シンは戸惑いを浮かべた。

 

「・・・・・・・あのな、シン」

 

 ちょっとだけ呆れたような顔をしたテラは、ゆっくりと歩いて来てシンの胸を指差す。

 

「おまえ、何か勘違いしてないか?」

 

「え?」

 

「おまえの『魂は俺に任せろ』って言ってるのか?」

 

 ハッとした。師匠が来たときに助かった、終わったと思っていなかった自分の心を、はっきりと自覚していた。

 

 悔しかった。悲しかったし、憤りもあった。師匠が来て安心した自分に、助けてと言っている人たちを助けられない自分に。

 

 強くなったのに、あの頃と変わらない自分自身に。ふざけるなと叫びたかった自分の魂を自覚できた。

 

「すみません、師匠」

 

「ん?」

 

「今回は、『譲れません』」

 

 真っ直ぐにテラを見つめ、シンは言い放つ。睨みつけるように、不敵な笑みを浮かべて。

 

「そっか、それは残念だ」

 

 軽く肩をすくめたテラに、シンは深々と頭を下げて、走り出す。

 

 もう後のことは、後でどうにかすればいい。今は心の赴くままに動く、もしそれで何が不都合があったとしても。

 

 問題ごと消してやればいい。

 

 軽くなったシンの心に押されるように体は最速で格納庫に飛び込む。

 

「シン?」

 

 ティーラがこちらを見て、速やかに自分の機体へ走り出した。ありがたい、こちらが言いたいことを察してくれるなんて。

 

「待てシン! どうするつもりだ?!」

 

 エイルンが叫ぶが、その表情には憤りや戸惑いではなく、『よくやった』と言わんばかりの笑みが浮かんでいた。

 

「助けます!」

 

「他国侵攻になるんだぞ!」

 

「だからなんですか?! 俺達は騎士ですよ! 騎士が目の前で嘆いている人々を助けないでどうするって言うんですか?!」

 

「帝国を危険にさらしてもいいのか?!」

 

 言葉の応酬の押し問答。それをしながら、エイルンは自分の機体へ向かう。同時にスザク、刹那、ガイ、ゼンガー、ハイネも同じく機体へと走り出していた。

 

「こんなことで帝国が揺れるわけないでしょうが! それに、今動かなければ国民から『怒鳴られますよ』!」

 

 機体のコクピットへ飛び込み、起動をかける。

 

 『全部やっておいたよ』とティスの言葉に頷き、通信システムを最大で動かす。回線はすべて、使える周波数もすべてだ。

 

「ジョーカー銀河帝国は目の前で嘆く人々を救うための国家でしょうが! 今動かないでどうするんですか?!」

 

『それで何かあったらどうするつもりだ?』

 

「その時は」

 

 言葉に詰まる。どうするって決まっている、けれどそれを自分が言っていいのか、それを言えるだけの実力があるのか。

 

 迷うシンの視界の隅で、テラが親指を突き出した。

 

「その時は俺が何とかしますよ! これでいいですか部隊長!?」

 

『十分だ! 全員! 今回の事件は『凍焔の鬼神』が責任をとるそうだ! 存分に行くぞ!』

 

『了解!』

 

 全員の返答を背に、シンは真っ先に飛び出す。

 

 その日、一つの惑星がジョーカー銀河帝国に編入となった。

 

 

 

 

 

     

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、グランド以下政府役員たちは自分達の国家に戻った時に、全国民から『罷免』を要求され、以後は辺境の土地でひっそりと暮らすことになったとか。

 

 そして、『凍焔の鬼神』はと言うと。

 

「ほれ」

 

「はい」

 

 始末書の山を受け取って、必死に書類を書いたのでした。

 

「シン、カッコ良かったぜ」

 

 ハイネ達に褒められ、ちょっと気持ちよく書類をしていたシンは、ふと気配を感じて顔を上げた。

 

「あ、宰相」

 

「シン・・・・・」

 

 怒られると思って直立不動で待つシンの頭に、小さく暖かい温もりが触れて行った。

 

「やるじゃない、それでこそ男の子・・・じゃないわね、それでこそ『神帝』が選んだ騎士よ」

 

 言葉だけおいてアイリスは去っていく。

 

 シンはそっと自分の頭を触り、小さくガッツポーズをしたのでした。

 

 

 

 

 

 




 

 フッと思いついたアイディアを文章にするって難しい。

 何となく書いていくと話が方々に転がってしまうのを、どうやって制御していいか解らない。

 あ、暴走するのが俺の作風だって開き直ってみた。

「おいおい、それでいいのかよ?」

 ええ、いいんですよ。シンが主人公しているならそれで、万事がオッケー。

「だからって色々なところに突っ込むのはやめてくれよ」

 解っています。ところでシン君、ダンジョンとか興味ありません?

「は?」


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