時間が空いてすみません、書きたいことたくさんあったり、他のところで色々と頑張ったりしました。
クオリティを上げたなんて言えないけど、馬鹿騒ぎはやったつもりです。
では、シン、久し振りに喜劇で踊ってくれ。
男には決して退けない戦いがある。
「テラ?」
隣で名を呼ばれても、彼は動かない。何時もなら周囲に誰かいたら、すぐに気づいて笑顔を見せるはずなのに。
何がとアイリスは顔を向けようとして、止まってしまう。
グルリと普段なら考えられないような、機械のように素早く動いたテラの顔と、そこに浮かんだ『甘味』、『決意』の文字に。
「アイリス!」
「は、はい?」
「俺の我儘を許してくれぇ!!」
「は?」
そして彼は光を超えて飛び出した。
後に残ったのは一枚の紙。何処にでも有るようなチラシには、彼が決して逃れられない宿命が書いてあった。
「はぁぁぁぁぁぁぁ」
深々と溜息をつき、アイリスはシン・アスカを呼び出したのでした。
彼は降り立つ。普段なら絶対に来ない場所に、普段なら余計な混乱を起こさないために寄らない場所へ。
何時もなら、と彼は周りの迷惑を考え、自分の欲望を抑えつけ、自己を捨てて周りを助けてきたのに、今回ばかりは自分の欲望を優先する。
申し訳ないと頭を下げ、すまないと謝罪を口にしながら、彼は真っ直ぐに目的地へ向かう。
多くの人が振り返り、首を傾げて再び視線を戻す。見たことあると誰もが考えながらも、違うだろうと首を振る。
彼と似ているが容姿が違うと、誰もが疑問を感じることなく答えを出す中を真っ直ぐに。
同じ目線の人の背後に立ち、一歩一歩と前へと進む。今か今かと心を躍らせ、ようやく手に入ると高揚感を噛みしめながら。
一人、一人と減って行った。誰もがいなくなり、最後の一人が消えた時、彼は最高の笑顔で両手を上げた。
「・・・・・・・」
そして固まる。
「1200円です」
相手は無表情で見下ろしている。その隣にいる妹さんは、唖然とした顔で固まっている。
遠目には御両親が、『まあまあ』と微笑ましい顔で見ていた。
「ハイ」
錆ついた機械のように、御金を払い『目的のもの』を手に入れる。
「・・・・・君に特典を上げよう。『特別』だ」
「ハイ」
「少し店の中で待っていてくれ。『大丈夫だから、きちんと待っていてくれ』ないか?」
「アイ」
とても冷たい顔で見下ろしてくる『幼馴染』に、彼は機械じかけのロボットのように歩きだしたのでした。
そして我らが主人公、シン・アスカはというと。
「何してんですか、師匠?」
呆れた顔でそう呟いた。
彼の視界、肩を落とした十二歳の少年が通り過ぎて店に入る時、偶然に見えた看板にはこう書いてあった。
『春休み企画、十二歳以下の子供に特別なケーキ販売』と。
若返りの秘薬がある。
飲んだ者の年齢を戻す秘薬であり、とある英雄王がよく使っていたもの。当然、その宝物庫と同等のものを持つと言われている、テラ達の一族も所有しているのだが、秘薬と言われているようにとても貴重なもの。
通常、そんな薬を使う機会などないと思えるのだが。
「呆れたぞ俺は」
「すみません」
場所は変わって高町家のダイニング。
正坐をしている十二歳の少年、テラと。その幼馴染であり同年代のはずなのに、子供になっている馬鹿を叱る恭也。
「おまえが甘味を大好きなのも、うちの甘味を特に大好物なのも知っているが」
「当然じゃないか!」
「だからといって子供になって列に並ぶなどするな」
「だって、好きなんだもん」
プイッとそっぽを向くテラに、恭也は盛大に溜息をついた。
何時もなら思慮深く周りの迷惑を考え、決して他人を見下すことなく困った人のために全力で駆けつけて。
「おまえはそう言うやつだったな」
馬鹿らしく考え馬鹿らしい行動で、誰もが呆れるような結果を持ってくる。
ジョーカー銀河帝国皇帝、『神帝』テラ・エーテルとはそういう馬鹿であったと誰もが思い出す。
なら、これも仕方のないことか。
「ならいいのよね?」
「母さん」
楽しそうに動き出した高町・桃子を振り返った恭也は、そのまま固まった。
「はぁ~~~いテラ君、これなぁ~~んだ?」
「けぇぇぇぇきぃぃぃぃ!!!」
電光石火の飛びつき。テラの化け物染みた運動神経すべてを使った動きは、一般人の桃子には見えないもの。
しかし、彼女はテラの母親と知り合い。テラが小さい頃から知っている。予想不可能、誰もが先を読めない馬鹿と呼ばれた彼の動きを、正確に予想できる数少ない人物。
それゆえに。
「はい」
「はう?!」
「はい!」
「はうわ?!」
右に動かしテラが飛びこえる。左に動かし、テラが滑り転がる。
左右に揺れるケーキに飛びつく様は、まさに犬が主人に甘えるように。
「あらあら、随分と素直になったのねぇ」
微笑みながらケーキを動かす桃子と、それを見ながら苦笑している士郎。
「恭ちゃん、あれっていいの?」
妹の言葉に、兄は頭痛がしてくる頭を抑えながら、どうにか言葉を絞り出す。
「母さん、『それ』は一応」
「なぁに?」
「一応でも、俺達の帝国の『トップ』だから」
認めたくない、言いたくはないが、今のテラを見ていて皇帝だと言いたくはないのだが、現実は変わることはない。
「そうね、でも私にとっては小さい頃からやんちゃ坊主のテラ君だから」
確かにそうだが、だからといって皇帝を手玉にとっているような、そんなパティシエなんていてほしくない。それが自分の母親なら、認めたくないくらいに。
しかし、だ。恭也は思い出す。昔からテラは母親には逆らえないことが多いな、と。どんなにバカやって暴走していても、母親の一言には止まっていたことが多い。
父親とは殴り合いのケンカしないと止まらないが。
「あの恭也さん」
シンは目の前の光景を震えながら指差していた。
「ああ、ちょうどいい。シン、連れ帰れ」
「ええ?!」
無情にも突き出された物体に、シンは嫌そうな顔で受け取るしかなかった。
テラ君じゅうにさい、こうていへいかとしてがんばる。
「よぉぉし!」
「止めて本当に止めてそれは止めてダメだから止めて!」
「よ・・・・し?」
「だからテラ!! ああもう! シンいいからその馬鹿をつまみだして!」
政庁に、何時もと別のアイリスの怒声が響き渡った。
十二歳のまま戻れなくなりました。帝都に戻ったテラは真っ先に年齢を戻そうとしたが、何故か秘薬が見当たらず。
『あ、補充してない』とポツリと呟いた言葉に、誰もが戦慄した。テラが子供なのは問題だ、さらに十二歳という年齢も問題だ。
意識は年齢に比例しないのは若返りを行った誰もが知っていることだが、テラの場合は何故か年齢に引っ張られることが多い。
思慮深さも短慮さも、色々な考えも、誰かを助けようとしたことも。大人のテラならやらないことも、今のテラならやってしまう。
いい方向でも悪い方向でも。
今も執務室に突撃。扉をバンっと開けて入るなど、普段のテラからは考えられない方法で入り、唖然としているアイリスとアセイラムから書類を奪って、頑張って処理しようと奮戦して。
結果、書類は粉砕されましたとさ。
「むぅ」
「師匠が事務処理が苦手なの知っていますけど、今のほうが『マシ』になってたんですね」
「むうぅぅ」
まさか持っただけで書類を粉砕してしまうとは。
首根っこを掴んで外に連れ出したシンは、深くため息をついた。
「シン!」
「はい?」
扉を閉めたとたんに勢いよく開いた扉から顔を出したアイリスは、見たことない決死な形相をしていた。
かなり時間をかけた書類が消えたら、怒るのも無理ないか。
「これを使いなさい」
「え?」
渡されたのは、カメラ。それも一目でわかる高級品。
「それにこれです」
続いてアセイラムからはケーキの入った箱が色々。固定化でもかけてあるのか、重ねても潰れることはない。
「写真、お願い」
「頼みました」
二人ともグッと親指を突き出し、そのまま執務室へと消えていく。
何が言いたかったのか、シンとしては意味不明なのだが、とにかく渡された以上は意味があるのだろうと振り返ると。
「行くぞシン」
「えぇぇ?」
犬の尻尾と耳をつけたような、そんな雰囲気のテラが走って行ったという。
子供っぽいから理性が甘い、甘いということは欲望に素直。つまり、甘味があるなら迷わず一直線。他のことなど眼中にない、馬鹿がそこに爆誕していたのでした。
ケーキ、翠屋のケーキを両手に持って次々に口に入れるテラ。普段ならこんな食べ方しないだろうな、いやするか。
シンは無感動に写真を撮りながら、変なことを考えていた。
そもそも、師匠は何故こんなにも甘味が好きなのか。食事を放っておいても甘味だけは放っておかない。
「師匠、なんで甘味が好きなんですか?」
結論が出ないから思いっ切って聞いてみた。
「ん~~~何でって言われてもなぁ」
「何かきっかけあるんじゃないですか?」
「そうだなぁ」
テラは手に持ったケーキの一つを見つめ、小さく頷く。
「母上って料理があまり得意じゃないんだよ」
「はぁ」
「バッタ達がいたから料理する必要ないし、そもそも箱入り娘だったらしいし」
「そうなんですか」
初めて、だろうか。テラの口から両親についての話を聞くのは、これがシンにとって初めてだ。
父親のこと、母親のこと、他の親族のこと。彼はまったく語ろうとせず、聞いたとしてもはぐらかされるだけ。
「そんな母上が最初に覚えたのが、甘味だったからさ。俺が馬鹿やる度に作ってくれてさ」
「それで甘味が好きに?」
「うんにゃ」
感動した話だな、とシンが頷いていると、テラは即座に否定した。
「母上が作った甘味ってさ、砂糖漬けばかりでさ。甘いっていうより苦いって言うのかな」
「うわぁ~~」
「それでさ、見かねた桃子さんが作ってくれたケーキが、とても美味しくてさ」
だからか。テラが翠屋のケーキに拘っているのは、一番最初の甘味の記憶だからか。
「で、母上と桃子さんの料理戦争が起きてね」
さらにトンでもない話が出てきた。
あの温和な桃子が怒ったことがある、とは。
「もう凄かなったなぁ」
「そう、ですか」
「うんうん、シンさ」
「はい?」
見たくないなと思っていた彼に、テラは笑顔で指をさす。
「俺、写真嫌いだから」
「えええ?!」
途端に、カメラが砂のように崩れてデータが消されていく。
「師匠」
「ふっふん。まだまだ弟子に負けん」
大笑いするテラは、ケーキを食べ続けたのでした。
後日、写真を楽しみにしていたアイリスとアセイラムの冷たい目にさらされたシンは思う。
つまりだ、昔の可愛い頃のテラの写真がないから、今回の件で撮りたくなったのだが、それを当人に見透かされて阻止された、と。
「俺、今回は悪いわけじゃないよな」
『どんまい、シン』
始末書とまで言われて、肩を落とすシンの背中を、そっと相棒が撫でたのでした。
なんか、はっちゃけるものばかり書いていたら、真面目なものが書けなくなった、というより書き方が定まらない。
「俺は平穏に生きたい」
というわけで、やっぱりシン君。
「なんだよ?」
別の異世界に飛ぼう、そのほうがやりやすい。
「あんたって人はぁぁぁぁ!!」