どうやら俺は、この眼を持って生きていかねばならないらしい   作:けし

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遂に黒崎一護の登場です。いや、全然短いけども。



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 相変わらず、朽木の周りは賑やかになる。

 現世で何かやらかしたらしい朽木は、途轍もなく不満そうな赤髪の男と、クールぶってるが内心申し訳なさでいっぱいだろう朽木隊長の手で連行されてきた。引きずられる朽木も、その目その身体に力は無く、諦観漂う感じだ。

 見たところ、死神の力の譲渡だろうか。感じられる朽木の霊圧が大きく減衰している。しかしまあ、それほどの危機に陥る状況が、今の朽木にあるのか?たしかに、剣術は強くないし、俺も鬼道しか教えてないが、それでも並みの副隊長格くらいの実力はあると見てもいい。やむを得ない事情と言うのがあったのか。

 どちらにしろ、俺が考えたところで何かが分かるわけでは無い。人は決して分かり合えないのだから。

 

「なあ朽木。何があったんだ?」

「……穂積…殿」

「あー、こりゃ無理か。しかし、見事に持ってかれてるな」

「兄もそう思うか」

「ああ。ってか、そんな怖い顔するなよ」

「生まれつきだ。しかし、ルキアが能力譲渡を決断する男…か」

 

 ふむ、と顎に手を当てて考える白哉。どうやら、白哉は既に接触済みらしい。今のところ、さして興味が湧いたわけでは無いが、聞いていていいと思った。

 

「どんな奴だったんだ?」

「ああ、まだ力に振り回されているだけの男だ。気にすることはないだろう」

「ふーん、まだ、ね」

 

 仮にも朽木の力と意志を、一部とはいえ受け取った男。ならば、追いかけてくる可能性は高い。一介の死神が穿界門を開けるとは思えないが。

 と、そこで思い出した。浦原喜助という、ジョーカーの存在。

 至上の頭脳を持って産まれた変人。闘いも強いのだから、その性格以外には非の打ち所はない。性格以外には。

 大事な事だから二度言ったが、世の中の人間はそんなもの。「天才と狂人は紙一重」とはよく言ったものだ。だが実際、紙一重なのでは無く、同一存在なのは浦原を見ていればよく分かる。表裏()()。天才の中には狂人が住むという事だ。

 隔絶した才能がもたらす孤独。浦原が、それとどう付き合っているのかには、全く興味は湧かない。だけど、ある事は確かだ。そしてそれは、恐らく俺の持つソレと似たものだろう。

 

「ソイツは、来ると思うか?」

「来なければ、それまでの男だったという事だ」

「はは、まるで来るのを期待してるみたいだな」

 

 照れ隠しなのか、朽木隊長…いや、白哉は何も言わない。なんやかんやで真性のシスコンであるコイツの事だ。法を守るべき朽木家の立場と、自身の心情を天秤にかけた結果の行動のはず。だから、俺がそこにとやかく言うような事はないし、第一、権利なんてものも無かった。

 

「恋次、牢に繋いでおけ」

「は、はい!」

 

 隣の阿散井六番隊副隊長は、少々緊張した声で、にしては悲しげな顔でそう答え、何故かまた気絶した朽木を連れてどこかへ消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『ルキ、アっ』

 

 くそ、また思い出しちまった。肩をバッサリ切り裂かれて、辺りに赤が広がる。雨に打たれて、命が流れて冷えていく俺の身体が、さらに冷やされる。心地良ささえ抱くその感覚に、思わず身を委ねそうになる。

 だけど、それは許されねえ。目の前で、俺が護りたいと思ったものを奪われた。俺のものって訳でもねえし、大して親しくもなかったが、それでも、俺に力を与えてくれた恩人だ。これで助けなきゃ、俺は親から貰ったこの名前に嘘をつく事になる。

 たとえあの結果が必然だったとしても、俺は全力で抗ってみせる。

 

「黒崎サーン、準備はいいッスか〜?」

「ああ、いつでもいいぜ」

 

 俺は眼を開けて、眼前の敵に集中する。手に持つ斬魄刀の重みを握りしめ、改めて目標を確認する。むき出しの刃に、俺の意志が乗り、そしてそれは、全てを斬り裂くものとなる。

 

【引けば老いるぞ、臆せば死ぬぞ!】

【叫べ!我が名は──】

『斬月!!』

 

 あの日手にした俺の斬魄刀。それは、俺の意志と俺の魂の発露。浦原さん曰く、斬魄刀とはそういうものを写し取ったものらしい。詳しいことは知らないが、つまり、このデカい出刃包丁みたいな刀が、俺の魂の具現という事だ。

 ギチギチと、俺の霊圧を喰らわせる。まだ拙いが、これが俺にできる唯一の技。

 まずは、上段に構えて。

 

「月牙──」

 

 そして、振り下ろす──!

 

「──天衝!!」

 

 三日月にも似た青い斬撃が、猛スピードで飛んでいく。そしてそれは、目の前の浦原さんへと。

 

「大したモンですよ黒崎サン。ここまでとは」

 

 バギィと、軋み、壊れるような音が聞こえた気がした。

 

「ですが、まだ甘いッスね」

 

 それは、杖の一振りで、俺の月牙が掻き消された音だった。しかし、ンな事で驚いてたら始まらないのは、ここ数日の特訓で理解した事だ。紛れも無い変人なのは確かだが、それ以上に、この人は強い。

 油断はしない。俺は気を引き締めて、教わった歩法で斬りかかる。

 

「もう使いこなしてるッスね。いや、流石ッス♪」

「飄々としてんじゃ、ねぇ!」

 

 くっそ、ムカつく。強いのは分かるが、この性格はどうにかなんねーのかゲタ帽子。

 ギィンという音は、俺の斬月と浦原さんの杖が斬りむすんでいることを意味する。今更だが、見た目的に杖の方が折れないのか?いや、アレが変な杖だって事は分かってんだが…。

 

「余計な事、考えない方がいいッスよ!」

「ぬおっ!!?」

 

 くそっ、油断しねえってさっき決めたじゃねえか!

 俺はそのまま、このわけ分かんねえ空間に点在する大岩に激突した。しかし、それの痛みなんざ、慣れちまえばどうという事はない。

 まだだ。もっと強く。もっと。じゃなけりゃ、護りたいモンも護れねえ!

 再び、斬月が俺の霊圧を求める。望むがままに、明け渡す。

 

「──月牙天衝!!」

 

 空間を、青い光が染めた。

 

 

 

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