どうやら俺は、この眼を持って生きていかねばならないらしい   作:けし

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うーん、戦闘描写をなるべく細かく書こうとするとムツカシイ。

亀進行が心配になってくる拙作の、第33話です。


33

 斬り結ぶ。刃を降ろす。───斬る。

 互いの実力の端は見えず、まだ様子見の段階だ。

 だけど、辺りの景色は様変わりしていた。鋭い刃で斬り裂かれたような滑らかな断面を空に向けて、大小様々な岩が座している。

 

「『剃刀紅姫(かみそりべにひめ)』」

「『雲耀(うんよう)』」

 

 斬撃が飛ぶ。空の切っ先と血霞の切っ先が向かい合い、音を立てて消えていく。

 開いた距離は刀の間合いには程遠いが、互いの射程は満たしていた。千日手。膠着というにも緊張が抜けているように感じ、埒があかないとついに飛び出したのは俺だった。

 縮地で懐に踏み込み、胴を真一文字に斬り裂かんと刃を振るう。浦原はそれを刀の腹で受けながらも、勢いに逆らう事なく横に飛び、難なく着地した。

 一息つきたげだが、俺が許さない。返す刀を振るいながら再び距離を詰める。予備動作が読まれやすいのか、浦原は再び軌道に刀を滑り込ませてきた。

 

「チッ」

「ふう、危ない危ない」

 

 どの口が言ってやがる。ギリギリで防いでいるように見えて、アイツにはおそらく全て見えているのだろう。あれでも元隊長だからな。

 しかし、別に俺とてまだ全開にしたわけじゃない。

 

「そろそろいきますか」

「はぁ。ウォーミングアップってことか?随分派手だったな」

「アナタの実力が想定以上だったんスよ。ま、嬉しい誤算とでもしときましょう」

「そうかよ」

 

 俺は肩を回すように、自分の前で刀を振るった。

 

「『剃刀紅姫』!」

 

 血の色ような刃が飛ぶ。目前に迫っても、俺は動かない。

 

「やられ過ぎて慣れたよ、ソレ」

「あら。バレちゃいました?しかし、どうやらソレがアナタの力のようっスね」

「ああ、そうだとも」

 

 首を飛ばすように振るわれた刃を、同じく刀を振るって受け止める。赤い斬撃は、まるで見えない壁にぶち当たったように止められていた。これは、斬撃を放つと同時に背後に回った浦原の急襲。ソレを止めるのは、俺じゃなければ苦労したかもしれない。

 しかし、唯式の力がそれを容易にする。

 

「壁を作る…ように見えますが、穂積サンの事ですから、少し違う気がするっスね」

「勘がいいな。答え合わせは、終わった後でいいな!」

 

 そう言って、かみ付き合う刃を力を込めて勢いよく振り払う。

 追撃。やり返すように背後に回って、袈裟斬り。それが振るわれる直前に、浦原は足を半歩引いて半身になる事で避け、流れた俺の身体へと刃を突き立てる。俺は無理矢理身体を捻ってそれをかろうじて躱し、倒れる前に受け身をとって立ち上がった。それを読んでいたかのような浦原の追撃は、それをかき消すように斬魄刀を払うことで消した。

 刀が弧を描いて降ろされる。銀の切っ先が幾度となく弧を描き続け、相手を襲う。

 これ自体はただの手合わせだ。俺の力を量るという名目の。しかし、底を知るためには俺の場合、殺し合わなければならない。殺せないという時点で、俺の力に蓋がされるのだ。自惚れではなく、これは俺の力が、直死の魔眼ありきであるから。

 開いた間合いを見て、ふぅと息を吐く。全身の筋肉を弛緩させ、感覚を緊張させる。

 不意に浦原が、言の葉を紡いだ。

 

「【破道の四・白雷】」

「っ…!」

 

 貫通力と射速を兼ねた牽制攻撃。白哉が好んで使う鬼道の1つだ。間合いを一瞬で飛び越えた光を、俺は体を傾けて避けた。

 同時に、意識も逸れた。しまったと思った時には、浦原の掌の上だった。

 

「【破道の七十三・双蓮蒼火墜】!」

 

 放たれた鬼道は、七十番台の強力な代物だった。それだけでも脅威だが、なにより不味いのは俺が避けられない体勢だったことだ。

 不意打ちの白雷に体を大きく傾けてしまいバランスを崩したために反応が遅れ、刀を滑り込ませるにも間に合わないタイミングだった。

 刹那の思考が永遠に延びる。その中で、1つの考えが雲のように浮かんだ。理性の範疇である事を理解した上で、それを現実に反映した。

 浦原は俺を殺す気で戦っている。実力を見るとはそういう事だ。

 ならばこちらも。殺さない程度に殺してやればいい。死から逃避できる程度に押し付けてやればいい。

 もう隠すことなど出来はしない。何より、アイツが本気を見たいというのなら。もう躊躇う理由などどこにもなかった。

 眼を見開く。世界は反転し、生溢れる世界に死が氾濫する。万象に死を。泰然と死を主張する線が、囁き、叫び、殺せという。

 そんな中、迫る青白の大砲に走る禍々しい線を、俺は手刀でなぞった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「コレは…、予想以上っスね…」

 

 藍染と渡り合った、という情報は耳にしていました。しかし、実際自分の目で見るまで、その事が信じられなかった。かくいう今も、まだ半信半疑です。なにせ、『反膜(ネガシオン)』を斬ったという話ですからね。そしてそれは今、事実なのだと確信しました。

 まさか、鬼道を素手で断ち切るなんて。

 藍染が本気で戦ったという事実はどこにもない。しかし、反膜を斬り裂いたというただそれだけで、彼の興味の琴線には触れたはず。最大限の警戒と、最大級の興味。藍染は恐らく、穂積サンに対しこの2つを同時に抱いている。だから、彼には利用価値があります。

 アタシが彼に求めているのは、戦闘能力も勿論のこと、さらにもう一つ。それは、鏡花水月の能力下においても戦えるという、一種異質な継戦能力。少なくとも護廷十三隊の殆どは完全催眠の支配下だろうから、穂積織というジョーカーは必要不可欠。

 しかしこうは言いますが。厳しくなるっスけど、戦闘能力はやはり必要なんスよ。

 アタシはこれでも元護廷十三隊隊長っスから、それなりには戦えるつもりではあります。

 紅姫の斬撃に耐える障壁と、アタシと渡り合えるだけの戦闘能力なら、一先ずは及第点と言えます。しかし、そこから先も知っておきたい。

 

「穂積サン。アナタ、卍解は使えないんスか?」

「…使えないよ。今の所はな。なんだ、使えた方がいいか?」

 

 彼は、さも興味がないように言い捨てた。力を求めるのは人の性だと思うんスが…、どうにも彼には、『力』に対する執着が薄いらしい。それはそれで構わないんスけど、アタシにとっちゃマズいことです。何故なら彼には、力を手に入れてもらわなければならないから。少なくとも今の彼では、崩玉を手に入れた藍染惣右介には遠く及ばないだろう。卍解を会得していないということはつまり、まだまだ成長の余地があるということでもあります。

 ───転心体でも使いますかね。黒崎サンはあれで上手くいきましたから、まあ穂積サンでも何とかなるでしょう。

 

「もちろんス。さて、今の力も粗方分かりました。鉄裁サーン、データ取れましたか?」

 

 岩陰から、バッチリです店長と合図を返され、ほっと胸を撫で下ろした。

 

「で、これだけのために俺は呼ばれたのか?」

「まぁ、初めはそのつもりだったんスけどね…。卍解の話で、少し気が変わりました」

 

 コホンと、間を置いた。態とらしいかもしれなかったが、些細な事でしょう。

 

「穂積サン。卍解、会得してみます?」

 

 吹くはずのない風が、疲れの溜まった身体を撫でたように感じた。何のことはない。彼の変わった雰囲気に、少し呑まれただけ。

 

「卍解…か。殺す過程と殺した結果は見るんだけど、方法はどうでもいいんだよなぁ。でも…」

 

 ───それで、藍染は殺せるか?

 ───もちろんス。

 

 言葉のない会話。それが会話と呼べるかはさておき、どうやら彼の決心はいい方向に傾いたみたいですね。

 

「ああ、いいぜ。その卍解ってやつ、俺に教えろ」

 

 思わずニヤリと、笑みが浮かんだ。

 

 

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