どうやら俺は、この眼を持って生きていかねばならないらしい   作:けし

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相変わらず進まない話…。
ま、次回からポンポン進む予定。………多分。

この形は初めて書いたんですが……。モデルは言わずもがな、空の境界のワンシーン。会話だけって難しい。
登場人物は多分区別がつくと思います。途中から三人だけです。
・浦原サン
・夜一サン
・橙子サン
最初だけ鉄裁サンがいる。



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「穂積サンのことはこっちでも色々と調べてて、この前結果を頂きました。黒桐サンは相変わらず仕事が早いっス」

「儂は其奴のことを知らんが、情報統括の無い流魂街で一個人の情報を調べ上げるとはの……」

「私は全く知らないがね。それよりも、私を呼んだ用件を聞かせてくれ。さっさと帰って、この前買ったヴィシャ盤を弄りたいんだ」

「ああ、この前言ってたアンティークのやつっスか?魔術的価値が云々って。アタシにはよく分からないんスけどねぇ。ホントただ古いだけじゃないスか」

「バッカお前、古くて、尚且つ曰く付きってのは私たち(魔術師)の興味関心を引くものなんだよ。それより、何もないなら本当に帰っていいか?」

「まあまあ。今から話しますよ。なんだったら軽食くらいなら少しは用意しますよ。鉄裁サン、お願いしていいっスか?」

「承りましたぞ店長」

「全く…。鉄裁が居ない今だから言うが、相変わらずあの趣味の悪い髪型はどうにかならんのか?」

「それをアタシに言われましてもねぇ」

「そういえば鉄裁は現世に来てからずっとあの髪型ではないかの?」

「…言われてみればそうっスね」

「本気か?あの髪型で云百年も過ごしたって?冗談だろう?」

「まあいいじゃありませんか。橙子サンも早く帰りたいようっスから、本題に入りましょう」

「ああ、そうしてくれ」

「夜一サンも聞きます?」

「大事な話になるじゃろう?聞いておくとするわ」

「別に面白くも何とも無いぞ夜一。ただ、織のことを少し話すだけだからな」

「何じゃ、穂積のことはその黒桐とやらに調べてもらったんじゃないのか?」

「それはこっち側の話っス。しばらく預けてみて、魔術的には何か無いかと思いましてね」

「あれを私の観点から語るのは難しいな。正直、魔術師としては大成しないよ」

「魔術教えてるって聞いたんスけど」

「あれは魔術というより催眠だ。無いよりマシ程度のものさ。織は獲物を持ち替えることがあるそうだから、それを起動スイッチにしてそうだがね」

「ちなみに何教えたんスか?」

「秘密だ秘密。こういうのは隠してた方が面白い」

「ま、そういうもんスかね」

「それでいいのかの喜助?」

「橙子サンがこう言ったのなら、これ以上問いただしたって無駄っスよ。夜一サンも分かってるはずっスよ」

「…まあの」

「それよりさっさと本題に切り込め。入ろうとしたら普通に逸れたぞ」

「ハイハイ。それじゃあ黒桐サンが得たデータを見てみましょうか。えーと、年齢と生年月日とかはどうでもいいっスね。出世は、と。穂積家の養子……っスか」

「養子じゃと?」

「そうみたいっスねえ。じゃあどこからかというのは……、東流魂街にあった今はどうやら没落した中流貴族で詳細はまだ不明…と」

「東流魂街の没落貴族…か。思い当たる節はないのう」

「ま、その辺りは今後も黒桐サンが情報を上げてくれるでしょう」

「そっちの世界は知らないからさっぱりだ。おい喜助、分かりやすく説明しろ」

「そうっスねえ、穂積サンは生まれも育ちもちょっとした貴族の家系なんスけど、生家は没落してて不明、育ちは穂積家のようです。あ、穂積家は割と名の通った商家っスよ」

「商家?馬鹿言うな、あんなのが商家から生まれるはずがない。となると怪しいのはやっぱり生家か」

「『あんなの』とはまた酷いっスね」

「私からしても正直推し測れんぞあいつは。まさかあの眼を拝める日が来るとはな」

「あの眼…。眼になにかあるんスか?」

「ああ。お前ら、織があり得ないものぶった斬ったとか、そういうのは知ってるのか?」

「あり得ないもの?ええ、彼は今まで斬れないとされたものを斬ってますね。反膜(ネガシオン)やら鬼道やら」

「その反膜とやらは知らないが、やはりか。いつから開眼したのかは知らないが、相当長く触れ合ってきたと見える」

「やはり?橙子サンが思い当たる節は、どんなのなんスか?」

「儂も聞きたいのう。穂積のやつ、どんな手品をつかったんじゃ?」

「織は手品も何も使っちゃいない。全部、織にとっては当たり前のことさ。何が切欠になったのかは知らないが、あいつは元々あの眼を持っていた。そして何かが切欠で開眼した。そうとう苦悩したと思うが…、多分あいつ、いつからか性格変わっただろ?」

「……一時期、といってももう100年ほど前ですが、彼は2年間ほど昏睡していたことがあります。橙子サンが言う切欠にはなり得るんじゃないっスかね」

「100年だと?相変わらずお前たちの時間の尺度は理解できん。……ああ、多分それだ。それで脳みそが死を理解してしまったんだろう。あいつの眼は『直死の魔眼』と言う。死を直視するんだ。無機、有機関係なく、『活きている』すべてのものの死の要因を読み取って、干渉可能な現象として視覚化する。私ら魔術師から見れば、魔眼とよばれるものの中でも最上位のものだ。効果も価値も、他の魔眼なんぞ目じゃない。噂の列車に出されればとんでもない値がつくぞ」

「『死を直視する』じゃと?どういうことじゃ?」

「文字通りだ。直死の魔眼の持ち主には、ものの死が視える。線や点といった形でな。まあ、それは織から得た情報だから間違いない。つまり、織に見えてる世界は死が折り重なった脆すぎる景色。終末の風景と言い換えてもいい。100年もよく日常生活を過ごせたな」

「なるほど…。それは真っ当な精神じゃ過ごせそうにない。アタシじゃ即発狂しますね」

「当然だ。織の場合は視点をズラして俯瞰してるんだろう。真っ当な、とは言えないが、なんとか折り合いを付けてるみたいだな。まあ、チャンネルのようなものかね」

「その眼は、あらゆるものを殺せるんスか?」

「正確には、あらゆるものを殺せるようになる、だ。眼だけじゃ殺せん。あれには死にやすい線と殺せる点しか見えないから、実際に殺すには織がそれに触れなければならない。魔眼の大半はピントが合ったものに対して何らかの効果を発揮するものが多いんだがな。直死の魔眼は少し特別だ」

「あらゆるものを殺せるようになるのはホントっスね?」

「ほう?お前にとって大事なのはそこみたいだな。あの眼の前では再生したりする能力も意味がない。流石に不死身となると分からんが、その辺りは織次第といったところか。あれは命を殺すのではなく存在を殺すものだから、死の概念が無いとかそういうのじゃ無ければ殺せると思うんだがね」

「あー、なんかもう儂じゃ理解できんぞ喜助。お主と違って魔術を知っとるわけじゃないからの」

「んー、この辺りは魔術というより死の概念を掘り下げた話っすから、まあ難しいでしょう。アタシも頭を抱えそうっスよ」

「あれを深く理解しようとする必要はないし、まずもって理解できんだろう。さっきも言ったが、死が視えることに真っ当な人間は耐えられない。死は、生きている限りおよそヒトには理解できない代物だ。それを理解してしまった織は、常人と比べられない。比べることが出来ない。比較対象がいなければ、相違点も類似点も分からない。それ見ろ、理解できるはずがないだろう?」

「魔術的には、そういうもんスかねえ」

「魔術的にじゃなくても、だ。私にはあれを理解するつもりなどないよ」

「……まあ、またこんな話をする機会があるでしょう。さて、重たい話はここまでにしましょう。鉄裁サンの料理も出来上がる頃合っスから、テレビでも見て待ちましょうか」

「ああ喜助、新聞あるか?私新聞派なんだ。今日びのバラエティは肌に合わん」

「今時は笑わせれば食っていけるんスよねぇ。えーと確か…、あ、あったあった。今日付の朝刊っスよ」

「悪いね。…へぇ、やっと止まったのかい」

「止まった…?ああ、最近噂になってた連続自殺っスか?」

「ああ。どうにもきな臭かったんで、織に情報だけ渡してみたんだが、思いの外喰いつきが良くてね。終わってみれば少しばかり満足そうな顔してたから、多分当たりだったんだろうね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

時間は割とあっという間に過ぎる。その間に、破面の襲撃や虚の襲撃があったりしたが、特に俺が出張ることもなかった。黒崎が少し変わった連中と関わりを持ったというのは、浦原から聞いた。なんでも、黒崎に眠る力を制御するものらしい。まあ、特には興味を持たなかったが。

こっちもこっちで、色々あった。式から提示された卍解の条件は、修行すればクリア出来るようなものでもなく、しかしこの前の破面との戦いで僅かに認めた風な口ぶりを見せてくれた。

橙子の魔術指導もそれだ。戦闘に関わるものだから、浦原家の地下の部屋を使うわけだが、まだ長時間の維持と制御が上手くいかない。何かをスイッチにすれば上手くいきそうだが……。いっそ剣を握った時だけにするかな…。あの時もそんな感じだったから。

 

「あーあ、もうアタシじゃ敵わないっスねぇ」

「馬鹿言うな。オマエまだ全然本気じゃないだろう。 知ってるぞ、オマエ割とヤバい能力持ってるだろ。頭キレるだけでも厄介なのに戦闘強いとかなんなんだオマエ」

「それ、藍染隊長にも同じことが言える気がするっスけどね」

「それはそれ、だ」

 

藍染惣右介という男は、俺にとって特別とも言える存在だ。好悪とかそういう次元じゃなくて、文字通り存在自体が。未来を考えるのは俺ではなくアイツ。後ろを振り返るのが俺。かつて式はそう言った。そう言われると、鏡花水月という力は確かに世界を支配できる能力だろう。それも、理想郷に等しい世界を。そこに紛れ込むだろう異物が俺。アイツにとっての俺は多分そういうものだろう。

 

───世界にとって、俺とは何なのか。

 

死神?異物?殺人鬼?愚者?死?

そんな言葉が泡沫のように浮かび、消えゆく。

そんな風に変わったのは、この景色を知ってから。終末を知り、およそあらゆるものに終わり()を齎すことは、俺にどんな終わり()を告げることになるのか。

直死の魔眼を持つ俺は、側から見れば理不尽な存在だ。なぞれば殺すし、突けば殺す。かと言って、俺自身は決して理不尽な存在だというものではない。俺だって人間だから、斬られれば死ぬ。突き殺される事だってある。

藍染惣右介にしたって、それは同じ事。たとえ崩玉を取り込み不死とか何かになっても。生きているのなら理はその身を縛る。

そう。俺にとっては何より。

 

───生きている(殺せる)ことが全てだ。

 

溢れんばかりの虚無を満たすには、これがいい。俺は今までで()()()()()()()()()()()()()。藍染惣右介というのは極上に過ぎる獲物()なのだ。

死が、俺の前に立ちはだかろうとしている。

薙ぎ払え。

斬り開け。

突き崩せ。

 

死が、俺の前に立つな。

 

カタリ、と震えた音がした。

 

 

 

 





※会話部分が読みにくいとの指摘がありましたが、今話の部分はそのままにしておきます。次回このような形で描写する時に、改良してお届けしますね。
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