どうやら俺は、この眼を持って生きていかねばならないらしい   作:けし

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最近詰まり始めてもう一個書き出しました。ネタ枠のような何かですが。亀更新のくせに思う人には謝りますが、止めたりはしませんのであしからず。




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虚圏(ウェコムンド)に乗り込んだ…って、敵のお膝元にか?」

「はい。元々その予定でしたし、少々早まっただけっス」

「というか、その…黒腔(ガルガンタ)ってのは開けたのか?」

「アタシが開発しました。繋界儀という術式ですよ。何なら、今から行きますか?」

「…他にいるんだな?虚圏に乗り込む奴が」

「ええ。というか正直な話、穂積サンが卍解を会得したら送り込むつもりだったんスけど、黒崎サンの修行が思ったより早く進んでまして」

「俺の卍解会得が思ったより遅かったってか。まあ、自覚はしてるよ」

 

夏のある日に、浦原商店の居間でそんな話をしていた。黒崎一護を始めとした奴らが虚圏に行ったのは初めて聞いた。別にそれがどうしたという話だが。

 

「穂積サンの卍解が特殊というか何というか…。本来なら卍解は、具象化した斬魄刀本体を屈服、もとい倒してから会得に至ります」

「知ってる。その説明は聞いたぞ」

「まあまあ。ところが穂積サンの斬魄刀は、具象化したはいいんスけど、卍解を教える条件を出すなんていう前代未聞なことをやってくれたんス」

「具象化の段階で転身体一回壊したんだがな」

「あれは驚きました」

 

引っ張り出される感覚を殺したとは、誰の弁だったか。

 

「まあとにかく、穂積サンはサクッと卍解を会得しちゃって下さい。そうしたら、穂積サンを虚圏に送り込みましょう」

「簡単に言ってくれるな。でもまあ、糸口は何となく掴めてる」

「おや穂積サン、うまく行きそうなんスか?」

 

軽い口調でそう問いかける。実は、会得自体は出来ている。ただ、使い熟せるかどうかは別問題。この卍解は、俺以外には使えない。そもそも卍解はそういうオンリーワンな能力ではあるが、その中でも飛び抜けて変な能力だ。誰にも理解出来ないという意味でも。

そんな時、ふと脳裏に浮かんできたのは、空に消えゆく藍染の姿。そしてその後に浮かぶ黒腔の閉じる姿。

 

「…なあ浦原」

「どうしたんスか?」

「その繋界儀とやら、一回見せてくれないか?」

 

あの時、空に見えた深青の線は、今でも網膜に焼き付いて離れてくれなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あれが…『虚夜宮(ラスノーチェス)』…」

 

僕の目の前に佇んでいるのは、全てが真白に塗りあげられた建築物。巨大であるが豪奢ではなく。ましてや荘厳でもない。ただただ佇むだけ。ポツンと1人で、虚ろに在る。

これだけ大きいのに、その中身は恐ろしく空っぽ。ああ、つまるところは伽藍洞ということだ。

 

「で、これからどうするんだ黒崎」

「決まってんだろ。突っ込むぞ」

「相変わらず考え無しか…。と言いたいところだが、今回はそうするしかないみたいだ。しかし、この壁はそうやすやすと破壊できないぞ?」

「だよな…。恋次、どうにか出来ねぇか?」

「任せろ」

 

その後、ドゴオォォンッ!!という馬鹿でかい音を立てて壁を破壊した僕たちは、何とかこの虚夜宮へと乗り込むことに成功した。

見た目こそモノクロで、シンプルを具現化したようなこの建物はその実というか案の定というか、迷路のような構造になっていた。少し広いところに出れば敵に出くわす。まるで来ることが分かっていたかのような。

 

「『銀嶺弧雀』」

 

この手に現れたのは、僕の新しい兵装。以前使っていたものとは少し異なり、全体が霊子で構成された弓だ。あのいけ好かない父親との特訓で何とかモノにした訳ではあるが、加減しても十二分に強い。

この『銀嶺弧雀』、『魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)』、アナログではあるが『銀筒』に、そして新たに会得した攻撃手段である『自在兵装(シュヴァルクガル)』があれば、大抵の破面は倒せるはずだ。

そうこうしながら、目の前に現れた破面との戦闘が始まる。

告げられた名前を聞いた僕の気持ちは、悪魔と遭遇したかのような絶望感。

隣の阿散井は奮闘してくれている。僕も、やられてばかりではない。

 

「どうした死神に滅却師(クインシー)。お前たちの力はそんなものなのか?僕を失望させないでくれたまえ。君たちは貴重な資料になり得るのだからね」

 

先程からこの男の口調と言ったら、どうにもあのマッドサイエンティストを思い出されてしまう。

背中を駆け巡る悪寒を堪えて、2対1という状況を効果的に用いる立ち回りを続けていた。阿散井の攻撃の間隙に体勢を崩すように仕向けた矢。重視するのは攻撃力よりも射程と弾速。意識を()りあげていき、霊子を緻密にコントロールする。

 

「阿散井!」

「っ!」

 

軽い音を立てて矢が空を切り裂く。破面(アランカル)には鋼皮(イエロ)と呼ばれる天然の鎧が有るそうだが、この矢はそれに傷をつけるかどうかの威力。だが、同じ所に何度も矢をぶち当て続ければ。

 

「くっ!僕の鋼皮に傷を…!?どうやら君は滅却師(クインシー)としてはかなりの力を持っているらしいな」

「そいつはどうも!」

 

皮肉のような言葉に対して、矢を掃射して面制圧を試みた。簡単に防がれはするだろうが、その場に留めておけるくらいの攻撃だ。

矢の密度は高く、今の奴にはおそらく目の前はおろか矢が降ってくる範囲全ては視界が塞がっているはずだ。そして、今の阿散井ならばその隙を突くことができる!

 

「っ、なに!?」

「くらえぇぇぇっ!!」

 

よし、ようやく奴にまともな攻撃を当てられた。

とは言えやはり、奴も十刃(エスパーダ)の1人。それもNo.8(オクターバ)だ。あの一撃で沈むほどヤワではないはずだ。

 

「…よくも、よくもやってくれたな……!!くくっ、いいだろう。僕も少し本気を出す必要があるみたいだ……」

 

ザエルアポロは手に持つ斬魄刀を顔の高さまで掲げ、妖艶さと狂気を湛えた笑みを浮かべた。狂気のままに、刃を舌が這う。

 

「啜れ、『邪淫妃(フォルニカラス)』」

 

刀剣解放(レスレクシオン)。黒崎たち死神が使う卍解の破面バージョンだと言われる。その力は莫大であり、ひしひしと感じる霊圧も、先ほどまでのそれとは比にならなくなっていた。

霊圧の嵐が吹き荒び、止まった。目を向けると、まるでタコかイカのような触手と思わしきものを背負ったザエルアポロがいた。

振り返ると、肩で息をしていた阿散井が、斬魄刀を強く握りしめていた。よく見れば、それは霊圧を高めている動作だった。

不意に、カッと霊圧が荒ぶる。

 

「卍解!」

 

阿散井の本気か!たしかに隊長格すらも敵わないかもしれないこの破面を相手にするには必要だ。僕と阿散井の力を合わせて勝てるかは分からないが…、やるしかない。

 

「───『狒狒王蛇尾丸』」

 

文字通り狒狒を彷彿とさせる姿。骨龍のような姿に変化した斬魄刀。

ならば、僕も出し惜しんでいる余裕を捨てよう。鋼皮の前では、『魂を切り裂くもの(ゼーレシュナイダー)』をあまり効果が高くないだろうし、仕込みに時間のかかる『破芳陣(シュプレンガー)』も見込みは無い。

要領自体はさっきと変わらない。パワー攻撃は阿散井に任せつつ、正確さと戦略は僕が担う。だが、全く同じではもう通じない。

1つ、切り札をきる。

 

「『我が刃は彼方にて歪む(マイネ・キリング・ファーゼルディッヒ)───』」

 

 

 

 

 

 

 

 

光の差さない闇。かろうじて光源となりうるのは、足元に作られた霊子の足場だろうか。

繋界儀を視た後、浦原の提案で結局虚圏(ウェコムンド)に足を運ぶ事になった。繋界儀を視たことで、俺の中に1つ確信が生まれた。少なくとも今の俺には出来ないが、卍解を完全に掌握し理解したのなら、きっと可能になるはず。

ひたすら縮地で進み続ける。そうしているとやがて、出口と思わしき光が生まれ、真っ白な砂と真っ黒な空の世界に放り出された。

 

虚圏(ウェコムンド)……ね」

 

こんなところに住んでるから空っぽなんじゃないかと、思わず考えてしまうくらいには何も無い。

遠くに揺らめくのは、虚夜宮(ラスノーチェス)だろう。かなりの距離があるのが分かる。全速力で走っても、時間がかかることは間違いない。

ならば、と。

 

「視て、殺してみるか。なにせ、()()()()()のは初めてだからな」

 

直死。世界が歪まないのは、それ自体が理を内包しているから。世界()にとっての当たり前。ヒトからしてみれば、あり得ないことなのだろうか。

触れば水のように滑らかなのだろう白砂は、俺の足にかかる重さを受けて沈み込む。その感覚が、お世辞にも厚いとは言えない草鞋を通じて分かる。気にもならないはずの感覚がよぎるほどに鋭く、全てが自分に向かって落ちてくる。

深く、深く。蒼い海に落ちるような。深海色の脆い世界。

音もなく、腰のナイフを構えた。

遮る物のない世界で、血に塗れた純白のナイフが光を返し、その存在を示す。

右腕を払う。引っかかった感覚は無い。ただ殺したのだと分かった。

 

呆気ない。人を斬るよりも、無機的な感覚。

 

そして訪れる、引っ張られる感覚。

 

どこまでの空間を殺した事になるのか。思考する間も無く、目の前に巨大な建物が居座っていた。近くに大きな穴があるあたり、黒崎たちはここから入ったのだろう。いくつかの霊圧を感じられる。

道中の敵は倒され、いくつかの分岐点があったが直感でチョイス。

そのうち現れたのは。

 

「志波海燕…か」

「穂積副隊長!?」

「ん…?よぉ穂積、久しぶりだな」

 

100年前に死んだと聞かされていた男の姿だった。

 

 




かつての友、志波海燕と相見えた穂積様。
互いに別種の力を携えて、数多の因果の1つがここに終わりを告げる。
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