どうやら俺は、この眼を持って生きていかねばならないらしい 作:けし
ああ…、またお気に入りがガタ落ちするんだろうな…(いつものこと)
さて、もうすぐ50話。勇音さん成分もそろそろ放出します(次話)
異変に気付いたのは、破面が俺を見た瞬間だった。
「私が何か、攻撃をすると思いましたか?…もう、手遅れです」
「?…動かない」
「どうしたのだ?」
「ちっ、白哉。アイツ、厄介な力を持ってるらしいぞ」
そう言って見せた左手には、黒い紋様が浮かび上がっていた。肘と手首の間に大きく横たわる部分は、俺の意思を受け付けない。
「『奪う』…。アイツ、見つめた部分を持ち主から奪い取るみたいだ」
「ほう…。それは厄介だ」
「なにが『
それとも盗みたいほどに愛しているのか。
だからもう、殺すしかないのだ。
視れば案の定、紋様の中心に渦が浮かぶ。そこをめがけて、刃を突き刺した。
「兄は何を…!?」
「ん?ああ、オマエは見るの初めてだったか。端的には言えば『殺した』んだよ。あの破面の『愛』は、文字通り『薄っぺらな嘘』ってわけだ」
「…兄は変わったな」
「そうかもな。でも違うぜ?これは元々あったんだよ。隠れてたのが表に出ただけ。穂積織という男の本質で、本物なんだ」
だから、言い表すとするなら『元に戻った』と言うべきなのかもしれない。
オレが死ぬことがきっかけで、俺が産まれた。
だったら、それまでのオレとは誰だったのだろう。
…もう、殺してしまったのだけれど。声を聞くことも、何も出来ない。
誰かがそれを求めるのなら。果たしてそんな奴がいるのだろうか。
「私の『
「言っただろ。押し付けがましい愛なんざ、殺し尽くしてやるってな」
そう言いながら、貼り付けられた愛とやらを淡々と殺す。
「不要な愛はただの我儘。所詮オマエは愛を知らないんだ。…まあ、俺が言ったところでっていう話なんだが」
「何故だ、何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だぁぁ!」
「うるさい」
そういって、斬魄刀を斜にかまえた。
「その目、殺し尽くす。『
「失せるがいい。──『
全身の目を潰され、刃の
当たり前のように虫の息。この世界には留まれない。壊れたものは
結局、オマエは知らないだけだったんだ。心の中でそう口にした。
破面のもたらす愛は、俺にとって不要。そもそも俺は愛なんて知らないし、忘れてしまった。底の抜けたバスタブに水はたまらない。
虚無というのは、なんでも受け入れるし、なんでも失う。ただただ、伽藍洞なだけ。
だからその愛はきっと、誰にも受け取られず。打ち捨てられるのだろう。
藍染惣右介ですらも。あるいは、神様だって。
「直死──」
──いや、こいつは仏教徒だったのかもしれないな。
──────────
「ほう、藍染様から伺ってはいたが、それほどだったとはね」
「全くだヨ。私としたことが、常識に囚われてしまったようだネ」
な、なんで意気投合してるんだ…!?
いや、たしかにマッドサイエンティストで、キチガイで、なんか色々…というか見れば見るほどよく似ている気がするけども!
「では、そのお題の対価と言ってはなんだが、僕の研究…といっても少々古臭く未完の代物だが、見せてやろうじゃないか」
「いいネ、興味深いヨ」
……もう突っ込まないぞ、僕はもう突っ込まない。
大層愉しそうな表情で大きな扉の奥に消えていった2人。彼らは何というか、虚とか死神とかであるとか言う前に科学者だということか。
…もう、嫌な予感しかしないな…。
その後、僕と阿散井の傷はしっかり改造………間違えた、治してもらいました。
──────────
「僕たち破面が、元は虚で、その虚は人間の魂から変じて生まれるのは分かってるね?」
「当たり前のことを聞くんじゃないヨ。そんな事は当然だ」
薄暗い廊下は、埃の1つもなく綺麗にされていた。そんな場所を、白を基調にした服装の2人が並んで歩く。
「僕たち破面には、ごく稀に
「フム…、それで?」
「僕の生前は、やはり科学者──錬金術師というやつでね。とくに人体の研究なんかをしていたんだ。兄は軍人だったから、新鮮な実験台は容易に手に入った」
「どんな研究をしていたのかネ?」
「結論を急かさないでくれたまえ。破面となってからは、生体の研究なんてやらなくなったんだからね。研究者仲間なんてものはいない。人間の身では、やはり1人だと限界がある。…そんな僕は、ある組織の名前を知った。異端の人間たちが集う穴倉。蓄積と計測の院。そこはそう呼ばれていた」
回想するように、僅かな懐かしみを抱いて語るザエルアポロ・グランツに、そんな話は微塵も興味がないと言いたげな涅マユリが先を急かす。
面倒な話だと思いつつも、こういう話をしたがるものだと分かる辺り、やはり同じ穴の
「──『アトラス院』。未来を守り、研鑽する叡智の結晶。世界の理を明かさんとした、科学者の集合体さ」
そう言い切って、一際大きな扉の前に立った。古めかしく、そこだけが使われた痕跡がない。
手を伸ばしても無駄と言わんばかりに高く居座る天井と、それと同じ高さにまで作り上げられた扉は、その存在を高々と主張する。
「僕も一時期、そこに属していた。今思えば、かなりの満足感を得られた時期だった。未知へ挑むことをあれほど楽しんだことは、他にはなかった。…まあ、そこの所長が蒸発したせいで、なし崩し的にアトラス院を去ったんだがね」
「で、その中には何があるのかネ?その『アトラス院』とやらも興味を惹くが…」
目先の興味に目がいくのは、涅マユリが生来から科学者であるからだろうか。
「アトラス院には、ある格言がある」
そうして、ザエルアポロの口から語られた言葉は、紛れもなくかのアトラス院の言葉。
「『自らが最強である必要はない。我々は最強であるものを創り出すのだ』というやつさ。心底共感したね。当たり前かもしれないが、いざ耳にすると素晴らしい格言だ」
「それならば、君は作り出したのかネ?その『最強であるもの』とやらを」
「言っただろう?『未完』だと。全くもって癪な話だが、コレは僕1人の手には負えなくなってしまってね。そこでだ、死神。君にこれらの完成を目指してもらいたいんだ」
ガゴン、という音が重く広く響き渡る。ゴゴゴゴと擦れる音を鳴らし、威圧感を創り出す。
「オオ……!!」
「流石に『七大兵器』は無理だったが、アトラス院のものやそこで僕が作った『礼装』 たち。…先も言ったが大半が未完成だ。興味があるものを持っていくといい」
そこにあるのは第二の天蓋ともいえる青空。底抜けの空。
そして、無造作に放られた謎の道具。
「僕にできたのは、『
「…素晴らしい!素晴らしいヨこれは!なんという事だ、未だこのような世界があろうとは!ハハハ!イイ!いいじゃないか!!」
「…僕も、側から見ればああ見えることがあるのかもしれないね…」
その歓喜ぶりをみたザエルアポロは、感情表現に関しては自重を覚えようかと、彼にしては珍しい密かな決心をしたのだった。
アトラス院では主に生と死の研究や不死者、死徒などの研究に勤しんでいた。不死、死を乗り越えることに対しての研究。その果てに『
ということにします。ミハイル・ロア・バルダムヨォンと似たような考えですね。
当然他の研究や七大兵器もいくらか頭に入れてはいますが、優先度が低く、詳しくは知ろうとしませんでした。