どうやら俺は、この眼を持って生きていかねばならないらしい   作:けし

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今話でかなり好き嫌いが分かれるかなと思います。
ああ…、またお気に入りがガタ落ちするんだろうな…(いつものこと)

さて、もうすぐ50話。勇音さん成分もそろそろ放出します(次話)


49

 異変に気付いたのは、破面が俺を見た瞬間だった。

 

「私が何か、攻撃をすると思いましたか?…もう、手遅れです」

「?…動かない」

「どうしたのだ?」

「ちっ、白哉。アイツ、厄介な力を持ってるらしいぞ」

 

 そう言って見せた左手には、黒い紋様が浮かび上がっていた。肘と手首の間に大きく横たわる部分は、俺の意思を受け付けない。

 

「『奪う』…。アイツ、見つめた部分を持ち主から奪い取るみたいだ」

「ほう…。それは厄介だ」

「なにが『(アモール)』なんだか。これじゃ『盗賊(ラドゥロン)』じゃないか」

 

 それとも盗みたいほどに愛しているのか。

 押し付けがましいの(セールス)はお断りだ。とは言え返品は出来そうにないわけで。

 だからもう、殺すしかないのだ。

 視れば案の定、紋様の中心に渦が浮かぶ。そこをめがけて、刃を突き刺した。

 

「兄は何を…!?」

「ん?ああ、オマエは見るの初めてだったか。端的には言えば『殺した』んだよ。あの破面の『愛』は、文字通り『薄っぺらな嘘』ってわけだ」

「…兄は変わったな」

「そうかもな。でも違うぜ?これは元々あったんだよ。隠れてたのが表に出ただけ。穂積織という男の本質で、本物なんだ」

 

 だから、言い表すとするなら『元に戻った』と言うべきなのかもしれない。

 オレが死ぬことがきっかけで、俺が産まれた。

 だったら、それまでのオレとは誰だったのだろう。

 …もう、殺してしまったのだけれど。声を聞くことも、何も出来ない。

 誰かがそれを求めるのなら。果たしてそんな奴がいるのだろうか。

 

「私の『(アモール)』を受け取りなさい!受け取れ!受け取れ!」

「言っただろ。押し付けがましい愛なんざ、殺し尽くしてやるってな」

 

そう言いながら、貼り付けられた愛とやらを淡々と殺す。

 

「不要な愛はただの我儘。所詮オマエは愛を知らないんだ。…まあ、俺が言ったところでっていう話なんだが」

「何故だ、何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だ何故だぁぁ!」

「うるさい」

 

 そういって、斬魄刀を斜にかまえた。

 

「その目、殺し尽くす。『唯識(ゆいしき)易景崩落(えきけいほうらく)』」

「失せるがいい。──『吭景(ごうけい)・千本桜景巌』」

 

 全身の目を潰され、刃の(のど)に呑まれるように。桜に包まれた破面。

 当たり前のように虫の息。この世界には留まれない。壊れたものは捨てられ(トラッシュされ)る。

 結局、オマエは知らないだけだったんだ。心の中でそう口にした。

 破面のもたらす愛は、俺にとって不要。そもそも俺は愛なんて知らないし、忘れてしまった。底の抜けたバスタブに水はたまらない。

 虚無というのは、なんでも受け入れるし、なんでも失う。ただただ、伽藍洞なだけ。

 だからその愛はきっと、誰にも受け取られず。打ち捨てられるのだろう。

 藍染惣右介ですらも。あるいは、神様だって。

 

「直死──」

 

 ──いや、こいつは仏教徒だったのかもしれないな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、藍染様から伺ってはいたが、それほどだったとはね」

「全くだヨ。私としたことが、常識に囚われてしまったようだネ」

 

 な、なんで意気投合してるんだ…!?

 いや、たしかにマッドサイエンティストで、キチガイで、なんか色々…というか見れば見るほどよく似ている気がするけども!

 

「では、そのお題の対価と言ってはなんだが、僕の研究…といっても少々古臭く未完の代物だが、見せてやろうじゃないか」

「いいネ、興味深いヨ」

 

 ……もう突っ込まないぞ、僕はもう突っ込まない。

 大層愉しそうな表情で大きな扉の奥に消えていった2人。彼らは何というか、虚とか死神とかであるとか言う前に科学者だということか。

 …もう、嫌な予感しかしないな…。

 その後、僕と阿散井の傷はしっかり改造………間違えた、治してもらいました。

 

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

 

 

 

「僕たち破面が、元は虚で、その虚は人間の魂から変じて生まれるのは分かってるね?」

「当たり前のことを聞くんじゃないヨ。そんな事は当然だ」

 

 薄暗い廊下は、埃の1つもなく綺麗にされていた。そんな場所を、白を基調にした服装の2人が並んで歩く。

 

「僕たち破面には、ごく稀に()()()()()を思い出すことがある。僕は比較的古参の破面だから、人間としてはかなり古い時代を生きていた」

「フム…、それで?」

「僕の生前は、やはり科学者──錬金術師というやつでね。とくに人体の研究なんかをしていたんだ。兄は軍人だったから、新鮮な実験台は容易に手に入った」

「どんな研究をしていたのかネ?」

「結論を急かさないでくれたまえ。破面となってからは、生体の研究なんてやらなくなったんだからね。研究者仲間なんてものはいない。人間の身では、やはり1人だと限界がある。…そんな僕は、ある組織の名前を知った。異端の人間たちが集う穴倉。蓄積と計測の院。そこはそう呼ばれていた」

 

 回想するように、僅かな懐かしみを抱いて語るザエルアポロ・グランツに、そんな話は微塵も興味がないと言いたげな涅マユリが先を急かす。

 面倒な話だと思いつつも、こういう話をしたがるものだと分かる辺り、やはり同じ穴の(ムジナ)というやつなのだろう。

 

「──『アトラス院』。未来を守り、研鑽する叡智の結晶。世界の理を明かさんとした、科学者の集合体さ」

 

 そう言い切って、一際大きな扉の前に立った。古めかしく、そこだけが使われた痕跡がない。

 手を伸ばしても無駄と言わんばかりに高く居座る天井と、それと同じ高さにまで作り上げられた扉は、その存在を高々と主張する。

 

「僕も一時期、そこに属していた。今思えば、かなりの満足感を得られた時期だった。未知へ挑むことをあれほど楽しんだことは、他にはなかった。…まあ、そこの所長が蒸発したせいで、なし崩し的にアトラス院を去ったんだがね」

「で、その中には何があるのかネ?その『アトラス院』とやらも興味を惹くが…」

 

 目先の興味に目がいくのは、涅マユリが生来から科学者であるからだろうか。

 

「アトラス院には、ある格言がある」

 

 そうして、ザエルアポロの口から語られた言葉は、紛れもなくかのアトラス院の言葉。

 

「『自らが最強である必要はない。我々は最強であるものを創り出すのだ』というやつさ。心底共感したね。当たり前かもしれないが、いざ耳にすると素晴らしい格言だ」

「それならば、君は作り出したのかネ?その『最強であるもの』とやらを」

「言っただろう?『未完』だと。全くもって癪な話だが、コレは僕1人の手には負えなくなってしまってね。そこでだ、死神。君にこれらの完成を目指してもらいたいんだ」

 

 ガゴン、という音が重く広く響き渡る。ゴゴゴゴと擦れる音を鳴らし、威圧感を創り出す。

 

「オオ……!!」

「流石に『七大兵器』は無理だったが、アトラス院のものやそこで僕が作った『礼装』 たち。…先も言ったが大半が未完成だ。興味があるものを持っていくといい」

 

 そこにあるのは第二の天蓋ともいえる青空。底抜けの空。

 そして、無造作に放られた謎の道具。

 

「僕にできたのは、『トライヘルメス(擬似霊子演算装置)』とやらを本物の霊子演算装置『ホーエンハイム』に改造する程度だったよ」

「…素晴らしい!素晴らしいヨこれは!なんという事だ、未だこのような世界があろうとは!ハハハ!イイ!いいじゃないか!!」

「…僕も、側から見ればああ見えることがあるのかもしれないね…」

 

 その歓喜ぶりをみたザエルアポロは、感情表現に関しては自重を覚えようかと、彼にしては珍しい密かな決心をしたのだった。

 

 

 

 




アトラス院では主に生と死の研究や不死者、死徒などの研究に勤しんでいた。不死、死を乗り越えることに対しての研究。その果てに『受胎告知(ガブリエール)』が生まれた。すなわち彼の結論は死を遠ざけるのではなく、死すらも受け入れること。


ということにします。ミハイル・ロア・バルダムヨォンと似たような考えですね。
当然他の研究や七大兵器もいくらか頭に入れてはいますが、優先度が低く、詳しくは知ろうとしませんでした。

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