どうやら俺は、この眼を持って生きていかねばならないらしい   作:けし

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遂に50話です。ここにきて初めて勇音さんの戦闘を書きました。

ところで
・50話記念の幕間の話みたいなの、欲しいですか?
・FGO風穂積様パラメータ、欲しいですか?(上の方が終わってからアンケートとります)
アンケート取ってみようと思います。

アンケートは7/20まで受け付けます。


50

「さて、俺はともかくオマエは無傷なわけで。これからどうするんだ?」

 

 外に感じる霊圧は、護廷十三隊の隊長格のもの。そして刀剣解放をした破面のものも感じる。

 朽木白哉。

 更木剣八。

 涅マユリ。

 卯ノ花烈。

 感じた霊圧を記憶と照らし合わせると見事に4文字で揃ったわけだが、この4人は隊長格。

 特に更木剣八の戦闘力はズバ抜けている。その霊圧も感じられる。

 涅マユリに至っては何故か破面と行動を共にしている。

 そしてそれは白哉も感じたらしく。

 

「ヤツめ…。裏切ったのか…」

「はぁ…。多分違うぜ」

「その根拠は」

「勘。直感ってやつ。なんというか、意見があったんじゃないか?いわゆる『破面(アランカル)版涅マユリ』ってやつに会ったんだろうさ」

 

 それを聞いた白哉は、心底心得がいったという表情をしてみせた。

 ──というよりも呆れの成分が強かった気がするけども。

 まあ、それは俺も同じようなものだ。

 なるべく顔を合わせないようにしないと…な。見つかればまず実験台への勧誘()一直線なんだろうから。

 

「まあいいさ。白哉、オマエ先に行け。この先何があるか分からないからな。俺は休みたい」

「分かった。ならばそうさせてもらおう。怪我は治してもらうといい」

 

 そう言って、白哉はここを離れていった。ここからどうなるかなんて、誰にも分からない。

 未来は曖昧で、いくら分岐していようとも、現在時制でどれか一つに確定することは無い。あやふやだから、未来っていうのは最強でいられる。

 …もし確定できるやつが現れたら…。さて、どうしてくれるかな。

 

「……これもまた、あやふやに終わるわけだ。ところで、いつまで隠れてるんだ?」

「アハハ…、バレちゃいましたか」

 

 柱の残骸から現れたのは勇音だった。2人居たはずだが、もう1人はすでに白哉を追っているようだ。

 

「久しぶりだな」

「ええ、久しぶりです。…変わりましたね、織さん」

「オマエがそう思うなら、そうなのかもな。でも、悪いことじゃないだろ」

「それはそうですけど…。なんだか織さんが、遠くに行っちゃいそうで…」

 

 その顔は、少し悲しげで、悔しげで。

 後ろ髪引かれる思いはあるけども、それでも立ち止まるなんてできない。

 それに、まだ俺は──。

 

「っ、この霊圧は…」

「なんですか!?これ、重いというか強いというか、いやそれより、霊圧ですか…これ!?」

「霊圧だよ。ただ、かなりヤバい霊圧ってだけ」

 

 本能的に霊圧であることを否定したくなるのは、何となく分かる。それでもこれは霊圧だ。それは事実。

 そして、この霊圧の持ち主は…。

 

「…行くか」

「織さん、怪我を…!…って、あれ、血は止まって……?それに傷が無くなってる…?」

「…またか。気にするなよ」

「うぅ…。私役立たずですか…?」

「それは俺が決めることじゃない。何かオマエに出来ることが一つでもあるなら、オマエは役に立ってる。本当に役に立たない奴なんて、そうは居ないんだ。…それに」

「それに…?」

 

 チラリと斬魄刀を見やり、そして霊圧を見て。

 

「少しは戦えるようになったんじゃないのか?…何のためにかは知らないけど」

 

 そう言って、瞬歩で俺は立ち消えた。勇音を1人残すのは不安が残るが、そんなものは伽藍には響かない。

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

 

「織さん!」

 

 一瞬にして消えてしまった。

 折角追いつけたと思って。伸ばした手は虚空を攫う。残るのは虚しさ。

 やっぱり、私じゃ追いつけませんか?その隣には、立てませんか?

 腰に挿した斬魄刀は、飾りじゃないのに。

 貴方を想う気持ちは、空っぽじゃないのに。

凍雲(いてぐも)』だって、私の声に応えてくれた。私の想いを、支えてくれた。

 不意に、柱の影に霊圧を感じた。

 

「誰ですか。そこにいるのは」

「ふーん、アンタがあの男の想い人なわけ?」

「…破面(アランカル)……」

 

 目の前には、少し幼い雰囲気を残した、自尊心の強そうな子。

 …スタイルは、勝ってる。

 

「アンタ、なんか失礼なこと考えたでしょ」

「何のことです。それに想い人じゃないです。一方的な、片想いですよ」

「ふーん。まあいいや。私はロリ・アイヴァーン。破面(アランカル)なんて可愛くない名前で呼ばないでちょうだい。アンタには悪いけど、あの穂積織とかいう男。私気に入ったのよ」

 

 玩具として。

 副音声はそう言っている。

 言うまでもない。この破面は、私たちの邪魔だ。

 

「──奔れ、『凍雲』」

「へぇ、それがアンタの斬魄刀ってやつ?」

 

 刀が三叉に分かれ、雪の結晶のような形を得る。

 氷雪系の斬魄刀『凍雲』は、日番谷隊長の『氷輪丸』や朽木さんの『袖白雪』ほど、強力なものではない。特に、戦闘においては。

 だけど、戦わなければならない。

 

「まあ、アンタなんて私にかかれば雑魚よ、雑魚。だから、…大人しく殺されてしまいなさい!」

 

 手に持っているのは、刃の短い刀。ともすれば、織さんのナイフにも似ている。

 ──関係ない。私は織さんの隣に立つために。戦う。

 

「風なんて吹いてない。ちょうど良さそうです」

「は?何言ってんのアンタ。遺言かなにか?まあ、私には関係ないけどね!」

 

 ダンッと大きく踏み込んで突っ込んでくる破面。猛スピードだけど、余裕はある。

 刃の腹をそっと撫でて。紡ぐ。

 

「──停れ(とまれ)、『凍雲』」

 

 同時に、白い煙のようなものが滲み出る。

 みるみるうちにそれは広がり、破面を覆い尽くす。空間を覆い尽くす。

 

「ちっ、何よコレ!」

「どうですか?()()()にいるって、なかなか味わえない経験ですよ?」

「ンだと!?そんなもんどうでもいいんだよ!くそ、気持ち悪いわね!」

 

 雲は、お気に召さないようだった。

 でも、逃げられない。

 

「もういい!こんなの無視してアンタを殺してやる!所詮ただの雲なんだからね!」

「さあ?あなたに出来るんですか?」

「今すぐに殺し…て………。アレ?なんで動けないんだよ…?まるで重石が乗っかってるみたいな…。重い…!?」

「斬魄刀から出た雲が、ただの雲なわけがないじゃないですか。包んだものは、ゆっくりと『重くなる』。それが凍雲。それに、放っておくと、()()()()()()()()()?」

「な!?クソ、なんだこいつ!?」

 

 破面の足下から、ゆっくりと凍っていく。

『凍雲』は、雲で包んで重くした相手を、次第に凍らせていく。敵味方関係なく。無差別に。重くなったところから優先的に。

『重くして氷の世界へ沈みこませる』と言われたこともあったっけ。

 やっぱり、氷雪系の斬魄刀なんだなって思った。

 

「ああもう!ムカついたわ!テメェ、ぶっ殺してやる!」

 

 手に持つ剣を、高く掲げて。

 

「毒せ!『百刺毒娼(エスコロペンドラ)』!!!」

 

 ブレる一人称は、焦りと怒りからだろうか。斬魄刀を構えて、解号が怒声を以って唱えられた。

 私の戦いは、まだまだ折り返し。

 負けられない。こんな奴に、織さんの手を汚させない。目を向けさせちゃいけない。

 今更だけど私は、相手と戦う覚悟を決めた。

 

 

 




『凍雲』の能力は、百人目さんのアイデアをベースにしました。案外強力な力かも、と思ってます。
百人目さん、ありがとうございます。

読者のみなさん、ここまで拙作を支えてくださって、ありがとうございます。

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