どうやら俺は、この眼を持って生きていかねばならないらしい   作:けし

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今回あんまし話が進みませんごめんなさい!
前回の投稿、閑話の部分どうだったでしょうか?やれる限りやったつもりで、彼らの日常をもわもわ妄想しながら書いてたんです。
そしたらあんななりましたわ。

速報)現時点で山じい、藍染、ウルキオラは強化決定。


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 槍と剣。白と黒。

 視覚的に、あるいは物理的に混ざり合わないコントラストは、俺の眼に、はっきりした境界を視せる。

 空を飛び、空を踏み、もはや音を超えるほどの速度で交わり続ける。

 

「全く…。あの速度に援護なんか出来るかっての」

「あ、あの…!」

 

 横合いからかけられた女の声。ソプラノ…だったか?こういう高い声。橙子は音楽もテレビもあまり興味ないらしく、もっぱら紙かゲームか曰く付きの品物を手にしているのを思い出す。

 

「なんだよ?」

「黒崎くんは…、黒崎くんは助かりますか!?」

「…やっぱり、アレが黒崎一護だったのか」

 

 まあ、外見的特徴には共通点はある。オレンジの髪とか死覇装とか。何より、斬魄刀が同じだ。

 胸の穴は虚の穴と同じで、もうアレが人間ではないことを示す。

 人間で、死神であったことはもう過去形だ。

 

「…知らない。正直、助けようだなんて思ってない」

「そんな…!?」

「大体、助かる可能性があるかどうかも分からないじゃないか」

「それでも…、きっと黒崎くんは戻ってきます!」

 

 …眩しい目だった。

 無条件でなんでも信じてしまいそうな、それが希望なら、掛け値無しに信じる目だった。

 目を逸らすように、戦闘に意識を向ける。

 あの戦闘で鬼道による援護は、むしろ邪魔になりかねない。

 

「…はぁ。俺に誰かを助けるなんて無理な話だ。お前みたいに希望を持つこともない。俺には、死しか見えないからだ」

「………」

 

 それでも、と破面(アランカル)の方を見た。息は上がってるけれど、まだその目から光は消えていない。抱えているがらんどうに、何もないと思っていた空っぽに、底があると知った。埋められると知った。ソレは正しく、()()()()()()()ヤツの目だった。

 

「殺す以外のことは、あの破面に任せた。今のアイツになら、何かが出来るかもしれない」

 

 正直、気にくわないけれど。ソレは新たな門出となりうる変化だから。後ろを向いて歩き続けるしかない俺にとって、輝かしくて、眩しくて。

 刀を執る。空っぽの伽藍に響く重みは、俺がいつまでも虚無であることを悟らせる。そんなものは今更だ。感慨なんて、それこそが空っぽだ。

 腰のナイフを、目の前の女に預けた。

 

「持ってろ。ソレ、大事なモノだから。取りに来るまで預かっててくれ」

 

 それだけ言って、戦闘に乱入するべく()()()()()

 

「…必ず」

「……」

 

 声は微かだけど、耳を叩くには十二分だった。

 そして、揺らぐ世界が死を顕す。もう過熱することはない。海にいるような深さが、機嫌を悪くするだけだ。

 

開境(かいきょう)しろ──」

 

 仕方ないとばかりに、式は苦笑(わら)った。

 慈しむような笑みを、『式』は浮かべた。

 

「──『唯式』」

 

 アイツの空っぽが埋まることへの羨望と、俺の空っぽが埋まらないことの虚無を抱えて。俺はただ、空っぽの境界に立つ。

 

 

 

 

 

 

 ──────────

 

 

 

 

 

 

 

「よぉ喜助。久しぶりやなァ」

「あらら、久しぶりっスね平子サン」

 

 その日、喜助のもとを訪れていた私は、聞きなれない関西弁の男の声を聞いた。

 初めて聞いた関西弁はイメージよりも少し軽く、意外とすんなり耳に入った。

 

「ん、なんや客でもあるんか?珍しいこっちゃ」

「これでも駄菓子屋ですからね。近所の子供くらいは、相手にしてますよ」

「アホか。どう見たって女物やないか。こないな靴履いとるヤツがガキなわけあるかい」

 

 あら。意外と見てるみたい。喜助の知り合いらしく、どうやらかなり古い付き合いらしい。さて、私に対してどんな反応を示すかしら。

 

「何か用っスか?何なら奥で待つっスか?」

「ほな、そうさせてもらうわ」

 

 ギシギシと音を立てる板張りの床。裏にはルーンが刻んであるから、音から連想される脆さとは、実は縁遠いものだ。

 スーッと開かれる襖から覗くのは、金髪おかっぱの男。

 …なんか懐かしい男を思い出すわね。これで服装が赤で被ってる帽子がシルクハットなら、ほとんど完璧だったのだけれど。

 

「お、えらい別嬪サンやないか。喜助、コイツ誰やねん」

「あ、そういえば橙子サン居ましたね。その人は蒼崎(あおざき)橙子(とうこ)サンっス。こっちに来てから、色々世話になってるっスよ」

「へぇ。ワイは平子真子(ひらこしんじ)いう者や。よろしゅう」

「蒼崎橙子です。よろしく」

 

 線は細いが、喜助と同じ匂いがする。

 死神、というやつなんだろう。

 

「ほなら、橙子サンと呼ぼか。アンタ、喜助とどんな関係や?まさか()()ちゃうか?」

「ふふ、うまい冗談ね。けど残念、そんな関係じゃないわ。ただの友人とでも言うべきかしらね」

 

 小指を立てて言ってきた男に、笑顔でそう返した。男はそれに少し引きつった顔で返答した。なにかしたかしら?私。

 

「それじゃ、私も真子くんって呼んでいいかしら?」

「かまへんで。美人にそう呼ばれるんはむしろ光栄ってモンや。何を聞きたいんや?」

「あなた、死神ね?」

 

 瞬間、空気が凍りつく。刹那の時間だったけど、漏れ出た殺気は歴戦のソレ。()()()()()()()()、卒倒してたかもしれないわね。

 

「分かりやすい反応をありがとう。まあ、手を出すとかそんなつもりはないわよ」

「…はぁ。試された…つーより知ったったな?ビックリしたで。アンタ何者や?」

 

 値踏みと疑問の視線。時計塔時代に慣れた者ではあるけれど、本当の戦闘者からのソレは、やはり重みが違う。

 

「あなたが知ってもしょうがないもの。私からは話さないわ。喜助から聞いたらいいと思うのだけれど」

 

 そう言って僅かに開いた襖から零れる視線と、目を合わせる。

 ワッ、と僅かに硬直した声が聞こえて数秒後に、襖が開いた。

 

「ちょ、驚かさないで下さいよ橙子サン。()()で視ないで下さいよ。一瞬動けなかったじゃないっスか」

「あらごめんなさい。少し緩んじゃったのね」

 

 まさか『魅了の魔眼』が少し覗いちゃったとは。反省反省。

 

「喜助、どういうことや」

「あー、橙子サン、いいっスか?」

「私は別にいいわよ?あなたたちに不利益にならなければね」

 

 そうして、喜助は『魔術師』の存在を口にした。

 

「へぇー。そないなヤツらがおったんか。つーか、それなら橙子サン今何歳や?」

「あら?知りたいの?」

 

 うっ、と冷や汗を垂らす真子くん。当然よね。だって女に年齢の話は厳禁なんだもの。

 …尤も、死神は素で長命らしいから、そんな感覚が無いのかもしれないけど。

 かくいう私も、そんな感覚は薄れてしまった。今の自分が本物か、()()かなんて忘れてしまった。

 

「い、いや…ええわ。おっかないわアンタ。正直相手にしとうないわ」

「私に戦う力なんてないわよ。敵になることもないわ。私はただ、織に興味があるだけ。まあ、存外気に入っているのよ。彼も、ここも」

「…まあええわ。そない言うんやったら、ワイも気にせえへん。…ところで織ってだれやねん」

「ああ。それもアタシから話しますよ。端的に言って──」

 

 ──単独で藍染惣右介を殺し得る切り札…ってヤツっス。

 

 全く。きっとアレの本質は殺す者でも切り札でもなんでもないのだろうに。難儀なヤツだよ。

 織。自分が殺人鬼であると思ってるうちは、お前は(から)のままだぞ。

 愛用の眼鏡を外してから、そう呟いた。

 

「さて、そろそろ仕事に戻るとしようかね。じゃあな喜助。真子。また来るよ」

「はいはい。それじゃ、待ってるっスよ」

「(…?眼鏡外したら人格変わるんか?オモロいやっちゃ)ああ、さいなら」

 

 さて、今度の設計は…と。ああ、その前にあの依頼が残ってたか。また織に持ってくとするかね。

 

「猟奇的殺人…ねぇ。ひと段落したら、教えてやるとしよう」

 

 思わず手庇を掲げて目を細める。

 少しだけ傾いて、季節が少しだけ進んでいく。微々たるものだけども、こんな変わり方もまた、面白いものだ。

 

 

 

 

 





なんか今話はダラダラしてますね。すいません。
次回はそれなりに進行するはずですし、次次回も話はすすみます。
なので少しの間お付き合いを。
破面編も佳境に差し掛かりつつあります。今しばらく、この作品にお付き合い願えれば幸いです。

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