どうやら俺は、この眼を持って生きていかねばならないらしい   作:けし

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世間も作者もようやく夏休みだ……っ!
相変わらず拙い戦闘描写…。助けてクレメンス……。

vsウルキオラ。ここに決着。


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「──重ねて(とざ)せ『黒翼大魔(ムルシエラゴ)』」

 

 漏れ出るようになっていた(おぞ)ましい霊圧が、荒れ狂うように奔る。

 色彩は緑に縁取られた黒。

 全てを呑み込まんとする荒々しい霊圧が、その内槍へと集まりだした。

 右手に持った槍。腰を落とし、背を見せるほどに半身に構えて、右腕を引いている。全身に力が漲っているのが、目に見えて分かる。

 初めて見せた構えだ。

 

「今の俺の力を、ここで見せてやる」

 

 背中の翼が、より力強く伸ばされてピンと張る。

 そしてそれよりも力強く、技の名が飛び出した。

 

「『黒き日輪よ、灰に帰せ(デ・ソル・セニーツァ)』」

 

 まるで黒い太陽だ。その黒に、莫大な熱量が込められているのが分かる。

 あらゆるものを無に帰さんとして、それが俺という一個人に向けられる。

 真っ向から破ろうなどと考えることはあり得ない。

 なにせこれは黒き日輪の熱量であるから。

 だけども、今の俺は何もないわけじゃない。『式』と、寝ていた式から託されたものがある。

 ナイフを腰にしまう。殺人鬼の時間はお終い。ここからは、純粋に、『穂積織』という男が戦う。だから俺は、斬魄刀を抜く。

 

「──卍解」

 

 さあ。これが、俺の力の真名(しんめい)だ。

 

「『無垢識』──開境──」

 

 この卍解は、俺にどんな変化をもたらすのか。

 ああ。真理は変わらない。この眼とこの刃は、死を視せるだけだ。

 

「──へぇ。こんな単衣(ひとえ)、邪魔なだけな気がするけどな」

 

 赤い革ジャンの代わりに、花の意匠が拵えられた薄い肌色の単衣。帯もなく、ただ袖を通しているだけ。丈が長いものだから、その裾は霊圧の床に垂れていた。

 死覇装はそのまま。妙に似合わない代物だ。

 そして、迫る黒輪に向き直る。

 微かな光が、刀に灯る。

 

「──『雲耀(うんよう)』」

 

 この状態だと、()()()()()

 死は拮抗を許さない。黒い熱量は、形を持ったが故に死んだ。

 

「!!」

「驚くなよ。今まで同じようなものはあっただろう?」

 

 あっさりと霧散した攻撃に、僅かな驚きを見せる破面。

 そんなにショックだったか…、と言うわけでもなさそうだがな。

 むしろ笑みを浮かべてそうだ。

 

「お前を叩き潰して、俺は答えを手に入れる」

「はっ、殺し尽くしてやるさ」

 

 互いの霊圧が跳ね上がる。卍解と、本来の力を手にしたことで蓋が吹っ飛んだ俺も、破面と同じにまで霊圧を高める。

 死神と破面。互いにその枠を叩き壊して、踏み越えた一線。

 死神と虚の境界を取り除くのが崩玉と聞いたことがあるが、そんなものは必要ないらしい。

 

「『黒輪の光槍(ランサ・デル・ラズナーダ)』」

 

 二本目の黒い槍が、今度は左手に現れる。二槍流なんて、する奴が居たんだな。そんな呑気な考えが頭を過る。

 その思考を(かぶり)を振って搔き消す。邪魔だ。

 

「何も変わらないのなら、これで終わりだ。穂積織。──『黒鎖に縛る槍(ランサ・ウナ・カデーナ)』」

 

 槍が投擲された。よく見ると、槍の石突に黒い鎖が付いていた。鎖鎌と同じ原理で、ある程度自由に動くらしい。

 

「何も変わらない…ね。──ああ、『無垢識』の能力も大して変わらない。境界に関わる能力だよ。だけど──」

 

 ──俺だって変わらない筈がないだろう。

 

 たった一回、剣を振るっただけ。

 微かに光る刃が、全てを隔てる境界となる。

創境(そうきょう)』と名付けられる技だ。

 これで、正面からくる槍を弾いた。

 

「フン、まだまだだな。この槍はあらゆる角度から貴様を殺しにかかる」

「だからさ、変わらないはずないって言ってるだろ」

 

 続いて六度。刹那に刃が動く。

 

「『境界識』」

 

 隔絶された空間。全方位への完全防御。

 これ自体はあっという間に崩れるが、在る間だけは絶対だ。

 左右、後方、上下と、縦横無尽に槍が襲いかかるが、それは全て弾かれる。

 ジャラジャラと、鎖が擦れる音がする。

 そして再び、槍は破面(ウルキオラ)の手に収まった。

 

「厄介な力だ。力技で押し通るのも困難か」

「そう簡単にはいかないさ。力で押し通れるようなら、それは理じゃない。ただの物理現象に成り下がる。これでも俺は理を背負う身らしいからな。押し通られる訳にはいかないんだよ」

 

 刀を構える。槍を構える。

 鎖鎌ならぬ鎖槍。闇色のソレは、奇妙な圧迫感を纏っている。

 理を紡ぐ刃。鉄の色は死を纏い、微かな光が神秘的にさえ見える。

 新たに再演される戦い。

 鎖槍が、俺の斬魄刀と鬩ぎ合おうとして、不意にその形を崩した。

 

「っ!!」

「仕手を殺す──」

 

 攻撃に対して、受けるでも弾くでもない、俺に許される第3の選択肢(殺す)を引く。

 想定していただろうに、目の前で、しかも手に持つ武器であるからか、僅かな動揺が走る。

 それは何とも、致命的だ。

 

「『削り鐘楼(しょうろう)』」

 

 あらん限りの力を込めて、その身体に刀を叩き込む。

 軌道は横薙ぎ。捉えるのも困難な速度だった。

 そして俺は目を見張る。

 

「…へぇ。あのタイミングで間に合わせたのか」

「ぐ…っ」

 

 ギリギリで右手に持った槍の穂先を滑り込ませて、何とか躱していた。剣圧で僅かに頬が切れ、血が垂れる。

 槍と鬩ぎ合う刀は、ギリギリと鈍い音を立てて震えていた。

 今度は俺の方から、槍を振り払う。大きな音を立てて、破面は後方へと吹き飛んだ。

 俺はそれを追いかけて、連撃を仕掛ける。一呼吸の間とまではいかないが、一瞬の間に幾重もの刃が破面を襲う。

 破面が不意に、左手を薙いだ。

 

「っ!」

 

 左手には鎖。それは大きくたわんだ状態で、破面の背後に回っていた。咄嗟に後ろへ、弾かれるように飛んで距離を取れば、先ほどまで俺がいた場所を槍が通過していた。

 言葉は交わさない。横たわる沈黙。何もない空間。充満する殺気。

 

「………」

 

 破面が、頬に流れる血に触れる。指先に付着した血は赤く、破面の白い肌にはよく映える。

 その指先を俺へと向けた。

 既視感のある光景。そしてやはり、そこに霊圧が収束する。

 だが、放たれると思った瞬間に、さらに霊圧が跳ね上がった。

 

「!」

「『王虚の黒輪(グラン・ソル・レイ)』」

 

 闇ではなく光。慣れきった瞳には痛いほどに眩い。

 この攻撃──虚閃(セロ)は、都合のいい場所に死が視えなかった。

 だが、死はある。曖昧なだけで、そこにある。

 無いということは、在るということ。曖昧な概念を明確に区切っていけば、それは視える。

 ──『無垢識』の本領は、境界支配。そこに境界を創るだけではない。そこに在る境界を動かすことも、能力の内だ。

 だから、視える。

 

「無駄だよ、ソレ」

「…、何をしても殺す、か。死をなぞるのではなく、触れたものを殺しているようにしか見えないが」

「なぞってるさ。死の線ってのは一種の境界だ。それを動かすなんて造作もない」

「ならば、打ち合いは無意味か。…俺の最大の一撃で以って、終わらせるとしよう」

 

 槍を頭上に掲げる。黒い光が、槍を覆う。

 

「貴様に死を認識させなければいい。迅さではなく、その概念に死を含ませなければ、そこに死はない」

 

 本気なのは、見るまでもない。

 全ては、ここで決まる。

 対した俺も、弓を引き絞るように居合の型をとる。暗示された今だから可能な技。そして、今の俺の最大の技だ。

 

「冥闇を仰げ。緑雷に随え。これで終わりだ──、『黒輪よ、天地を闢け(エストレラ・シエロス)』!」

 

 全力の攻撃。それは先ほどよりも遥かに強く、大きい。

 先程でさえも黒い太陽を思わせたソレは、今や宇宙を連想させるほど。

 

「はは、死を内包させないだって? 無理だよ、ソレ。そこに在る限り、死からは逃れられない」

 

 今、俺でも驚くほどに冷静だ。目の前の宇宙が、魔的に感じるくらい。だから、殺す。

 全く。──ああ、吐き気がする。

 

「死が、俺の前に立つな。──『無垢識』──開境」

 

 直死の魔眼が、世界に死を見出す。

 より鮮明に。より深く。

 理に手を伸ばし。今ここで、雌雄を決そう。

 

「両儀の狭間に消えろ──、『無垢識・空の境界』」

 

 力と速さで、刀を振り抜く。

 そして、闇と死が拮抗する。

 世界から、音が消えた。光が消えた。

 刃が、闇を塗りつぶしていく。

 境界が、死へと傾いていく。

 

「じゃあな、破面(ウルキオラ)

 

 そして、全てが終わった。真っ白な月が見下ろす、なんら変わらない夜がやってくる。

 そこには、何もなかった。初めからなかったのだと言い張ってるように。アイツはもう、俺が殺したのだから。

 だから、跡形も残らない。もう、どこにも居なくなった。

 

「──呆気ない…とは言わない。面白くもなんともない。──ただの殺し合いだったよ」

 

 卍解が解けて、単衣が霧散する。いつもの赤い革ジャンの感覚。

 

「──殺し合い…か。どこまでいっても、俺は人殺しだ。それが、俺のものじゃなかったとしても」

 

 病的に青く、細長い月。たった一振りで砕け散ってしまいそうな。

 

「あと、1人」

 

 在るのが気に食わない、俺の最後の目的。

 あとはやっぱり、殺すだけだ。

 

 

 

 

 

 

 





書きながらこんな決着でいいのかな…と迷い続けた挙句の結果です。
さあ、長くなった破面編もここまで来た。全ての決着まで、あとわずか。
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