Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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早速2話目です。
そして主要キャラのも出てきますよ。
あるルートの最初に出てくる人たちですね。


荒野にて

6

 

 

荒野にて早速野宿をしていたカルデア御一行。

いきなりの野宿に武則天は文句を言っていたが、そこは藤丸立香が頭を撫でて機嫌を宥める。

西へ向かって旅をしていたが結局のところ1日では町はおろか集落すら見つからなかった。流石は中国大陸だ。

 

「マスターのために我慢するかのう」

「ありがと。ふーやーちゃん」

「くっふっふっふー。ならば高貴なる妾が野宿で我慢したことをもっと褒めれ」

「偉いです聖神皇帝サマ」

「くっふふふふ~」

 

大陸を旅するのは第五特異点でアメリカ横断した彼にとって慣れている。自分の足で大陸横断した実績は伊達ではない。

1日で町が見つからないなんて特異点攻略時ではいくらでもあったし、野宿なんてザラだ。もう慣れてしまって1人でサバイバル生活くらいできるレベルに達している。

それに今の彼は多くの技術を持っている。特異点で身に着けたモノや英霊に教えてもらったモノなど、その多くが生き残る為のモノだ。

それはそれで助かっている。自分自身は才能なんてないが技術を得ることは出来るのだから。

 

「できたぞマスター!!」

「藤太のご飯!!」

 

野宿になってしまったが美味しい食事は用意できる。俵藤太が居てくれて本当に助かった。

彼さえいれば特異点での食料問題は解決できる。これは我儘でもう過ぎた事ではあるが、もっと早くに契約したかった英霊の1人である。

 

「ほれ、そこの御仁たちも」

「これは美味そうだ」

「美味しそうですねー」

「ありがとうございます」

 

だが大陸横断中に何も成果が無かったというわけではない。実は現地人と出会えたのだ。しかも現段階では一緒に行動をしている。

その現地人に出会えたことで多くの情報を得ることができた。おかげで今の時代の状況をすぐに理解することができ、どう注意すれば良いのかも分かるものである。

更には特有の風習のようなモノさえあることが分かったのだ。知らなかったで済まされないなんてことがあるかもしれないから知ることができて本当に良かった。

 

「むむ、美味い」

「酒も飲むか?」

「ああ、もらおう。酒は好きだ」

 

荊軻が現地人の1人に酒を酌む。

 

「飲み過ぎんなよ姐さん。アンタ酔っぱらったら大変なんだからな」

「そうじゃそうじゃ。もし酔っぱらったら妾に近づかせるな」

 

酔っぱらった彼女はもう別人かという程だ。ギャップがあって良いと思う藤丸立香ではあるが対処が大変である。

謎のスキル『へべれけパワー』は強かった。あのスキルは彼女に酒を飲ませれば発動できるスキルなのだろうか。

でもきっとあとが大変だ。マルタも宥めるのに大変そうだったイメージもある。

さて、現地人である人たちだが最初は出会ってビックリ。まさかの人物たちであったからだ。

彼女たちの名前は趙雲に程昱、戯志才と言うらしい。特に趙雲という名前は三国志の中で有名な名前ではないだろうか。

だから名前を聞いた時は「あの趙雲!?」と言ってしまったくらいである。

そんな彼女たちとの出会いは数時間前に遡る。

 

 

7

 

 

西へ向けて歩き続けるがいつまでたっても見える景色は変わらず荒野である。

 

「全く変わり映えしない景色じゃな」

「だね。歩きっぱなしだし、そろそろ休憩しようか」

 

ずっと歩きっぱなしは流石に疲れる。特にマスターである彼は英霊のようにスタミナがあるわけではない。

こんな所で倒れたら困る以外のなにものでもない。だから休憩は大切だ。

 

「ますたあ まだ、平気?」

「うん。心配してくれてありがとう哪吒」

「うん」

 

近くの岩場に座って一息つく。水を貰って渇いた喉を潤すことで、疲れた身体が少しはマシになった。

 

「でも現地人くらいは会えるかと思ったんだけどな」

「人に会えないのは痛いな。会えさえすれば今の時代がどんなものか分かるというのに」

 

時代は多くの変化がある。それが分かればどう動くかが分かる。

カルデアとの通信が繋がっていれば分かったかもしれないが今だに繋がらない。

 

「この世界の歪みってやっぱ聖杯かな。どう思う孔明先生?」

「それは分からんさ。現段階じゃ圧倒的に情報不足だ…だから今必要なのは情報だ」

「だよね。やっぱ町や集落に行かないとダメか」

 

こんな何も無い荒野で情報収集なんてできるはずもない。今の目標は町を見つけることだろう。

 

「………ちょっとトイレ」

 

どうでもいいことだが今まで挙げたことも無かったけどトイレ問題もあった。その点、新宿では助かった。近代文明ってやっぱり大事。

離れた岩場の裏で済ませたあと、自陣に戻ろうとした時、目の前に黄色い服装をした男たちがいた。

 

「いつの間に…てか、誰」

「アニキ。こんなところにカモがいますぜ」

「だな。身ぐるみひんむいてしまえ」

「わ、わかったんだな」

 

急遽いきなり出会った現地人だが賊紛いなことをしようとしてくる件について。

出会った3人の見た目だがチビ、オッサン、デブであった。ピンチであるのだが何故かそこまで恐怖は無かった。

彼らは今まで出会ってきた各特異点の盗賊たちよりも怖くはない。だけど彼一人だけでどうにかできるかと言われれば難しい。

相手が1人ならば魔術礼装で対処できる。だが3人だともうキツイ。ガンドならいつでも撃てる。

 

他の魔術礼装のスキルを頭に並べる。強化をかけても良いし、回避もある。この状況では回避が得策かもしれない。

何も倒すことが目的ではないのだ。回避して声でもあげれば英霊たちが気付く。距離はそこまで離れていないのだから大丈夫だ。

幸いにも彼らは此方の英霊たちに気付いていない様子だ。作戦は決まった。

 

「何ぼーっとしてんだ!!」

 

だけど藤丸立香が動くまでも無かったようだ。彼の仲間がマスターの危険を察知しないわけがない。

特に義理堅い忠義の人物である燕青がマスターから目を離すはずがないだろう。

 

「よぉ、うちの主に何か用か?」

 

軽快そうな声で賊たちに後ろから声をかけるが、その声の内側には若干の怒りが含まれている。

大切なマスターを狙う不貞な輩に容赦はしないという表れだ。

 

「な、何だこいつ!?」

「い、いつのまに!?」

 

音もなく現れた燕青に怯える賊たち。だが燕青だけでなく、李書文もいつの間にか合流。

 

「マスターよ、いつの間にか現地人と出会っていたようだな。まあ尤も賊のようだが」

「お、お前仲間がいたのか!?」

「ア、アニキ、あいつら強そうですぜ」

「だ、だな」

 

燕青と李書文の圧によって完全にたじろぐ賊たち。それでも襲い掛かろうとする気ではあるらしい。

 

「あ、あんなの見掛け倒しだ。ぶっ殺すぞ!!」

 

3人同時で襲い掛かってくるが彼ら如きでは2人に敵うはずもなく、一瞬で決着がつく。

 

「すいやせんでした」

「命だけはお助けください」

「だ、だな」

 

本当に手首がねじ切れんばかりの対応である。頭も地面に埋まる勢いで下げていた。

 

「で、どーするマスター?」

「儂はお主の判断に任せるぞ」

「うーん」

 

2人は彼らをしばいたが、どうするかはマスターの判断だ。燕青としては大切なマスターに手を出そうとしたのだからもっと罪を償わせようと思っているのだが。

最近、燕青の忠義が重くなってきた気がしなくもない。だけど主限定で優しいので気にしないことにしている周りである。絆レベル突破は伊達ではない。

 

「おーい皇帝サマの出番だぜ」

「何じゃ無頼漢?」

「マスターに手を出そうとした不届き者だ」

「なら情報収集の尋問も兼ねて拷問じゃな!!」

 

いつの間にか来ていた凄い良い笑顔の武則天。いつの間にか手に持っている道具が何か分からないし、使用方法も分からないが絶対に拷問道具だ。

 

「む、現地人を捕まえたか…でかしたな」

 

そんでもってまた気が付いたら諸葛孔明も来ていた。そしてこれから早速、武則天が拷問をしようとしたところを急いで止める。

 

「ストップ、ストップ!?」

「何じゃマスター許すのか?」

「うん。襲われたけどケガも何もしてないしね」

「やっぱ甘いなマスターは」

「呵呵、それがマスターの良いところだろう」

「違いねえ」

 

『許す』という言葉を聞いて賊は希望を持ち始めた。

 

「ゆ、許してくれるのか?」

「うん。そのかわり聞きたいことがあるんだけどいいかな?」

「も、もちろんです大アニキ!!」

 

何故アニキ呼ばわりなのだろうか。

これで一件落着かと思えばまだ終わりではない。まだ続きがあるのだ。

 

「んで、そこの岩陰に隠れてる奴ら。出て来いよ」

 

燕青が岩陰の方に声を掛ける。もしかして賊の仲間がまだいるかと思ったが否定する。

もし、仲間がいるのならばすぐに賊らを助けにくるか、見捨てるかだ。だが捕まえた賊の反応からするとそうではなさそうだ。

 

「おやおや、まさか感づかれておったか」

「バレちゃいましたねー」

「ふう…」

 

岩陰から出てきたのは3人の女性であった。

 

「そこのお主が賊に襲われていたから助けようとしたのだが…どうやら必要なかったようだ」

「ですねー」

「それにしても…そこにいる2人は相当腕が立つであろう?」

「呵呵。そういうお主も中々ではないか」

 

李書文が認めるなら彼女は強いのだろう。彼が認める程なのならば、もしかしたら。

 

(マスターよ。彼女ははぐれサーヴァントではないぞ)

(そうなの孔明先生?)

(ああ)

 

白を基調とした服に槍を持った女性は英霊ではない。彼女は人間として強さの壁を超えた人なのかもしれない。

第二特異点で出会ったネロのような存在なのだろう。あのネロは英霊ではなくて人間であった。

さて、ここで藤丸立香が当たり前の疑問を投げかける。

 

「あなた方は誰ですか?」

 

彼の言う通りで、誰なのか。

 

「ふむ…趙雲だ」

「程昱ですー」

「今は戯志才と名乗っています」

 

この名前を聞いて一番反応したのは『趙雲』であった。

すぐさま諸葛孔明を見たが首を振る。どうやら彼の中にいる英霊の反応から自分の知っている『趙雲』ではないらしい。

それだと目の前にいる趙雲は同姓同名なのだろうか。残念ながら今の段階では分からないのであった。

 

「おーい。どうした?」

「あ、藤太」

「燕青たちが向かったから大丈夫と思っていたが…何か人が増えてないか?」

「うん。増えた」

「なら飯にするか!!」

 

 

8

 

 

趙雲たちや賊たちに出会えたことは藤丸立香たちにとって幸運であった。

ここ三国時代で、情報をいくらか手に入れたのだから。そしてその情報の中では、いくらか気になる情報もあったのだ。

まず時代であるがまだ三国が覇権を争っている時代ではないらしい。情報から、ちょうど黄巾の乱が始まるちょっと前あたりだろうと断定。

まさに三国時代が始まりを迎えようとしているくらいなのだろう。予想としては三国が覇権を争っている真っ只中にレイシフトしたと思っていたのだが。

 

(黄巾の乱か…)

 

そして、気になったのが『真名』という風習だ。本当の名前という意味ならば理解している。ただ、普通に名乗っている名前とは別に持っているのが真名。

ただ、その真名という風習が藤丸立香が知っているソレと違った。何でも親しい仲や家族や、認めた者以外に真名を他人に呼ばれると殺されても文句はないというものだ。

なんて理不尽な風習なのだろうか。そんな風習を知らない者が、真名をつい呼んでしまったら初見殺しもいいところである。

だけど、これが知らなかったでは済まされないという理不尽の1つである。

 

「ふむ。大体、この大陸の情勢が分かった」

 

全てを納得する諸葛孔明。黄巾の乱の前あたりということは、この大陸はいろいろ問題が起き始めているころだ。

それは官僚が権力争いを繰返して政治が乱れたり、地方では天災飢饉が続発して農民の反乱が絶えなくなったりとだ。

その凝縮された結果が張角という人物が首領となって起こした農民たちの反乱である。

 

「そうか。食えなくなったために人を殺してまで生きようとするか…」

 

俵藤太が悲しそうな顔をした。なんせ彼の聖杯への願いが『人間・動物・植物・機械に至るまで、分け隔てなくこの世全てに食を与える事』であるからだ。

食べるということは生きること。それが出来なくなった賊たちに俵藤太は大盛り飯を出す。

 

「お前らもっと食え。食うというのは生きることだ!!」

「い、いただきます藤太の旦那」

「うまい…美味い…旨過ぎるよ」

「うまいんだな」

「でしょ。トータのご飯は美味しいんだから!!」

 

賊たちが涙を流しながら俵藤太の美味しいご飯を口に掻っ込む。それは本当に心の底から泣いており、心の底から食事に感謝している。

それを感じ取った俵藤太はおかわり上等と言わんばかりに昼飯を追加で作り始めた。

 

「ほれ、お主たちも食え!!」

「有りがたくいただく」

「いただきますー」

「ありがとうございます」

 

趙雲たちもご相伴に預かっていた。

 

「ところでお主たちは一体何者なのだ?」

 

いきなり趙雲が質問を投げかけた。それもそのはず。

平全を装っているが彼女は藤丸立香たちを正直なところ測りかねていた。最初に彼らを見た印象だが『化け物揃い』だからだ。

まず李書文と燕青に哪吒、俵藤太、呂布奉先という彼らだがまさに『化け物』だ。彼らを見ただけでも自分では敵わないと思ってしまったほど。

一瞬気になったのが呂布奉先。彼があの『呂布』かと思った。でも噂では女と聞いているから同姓同名と判断。

そんな彼らだが洛陽にいるという最強とうたわれる武人である呂布並みか、もしかしたらもっと化け物かもしれない。

次に荊軻という趙雲と同じように白い服を着た冷静な女。彼女は物凄く静かというイメージを感じられる。歩く時も音すら感じない。

あの体捌きは普通の武人ではできない。諜報に特化した人物だと予想した。もし彼女が暗殺者というのなら恐怖だ。

 

(何だこいつら?)

 

程昱と戯志才が気になったのは諸葛孔明という長髪の男だ。会話しただけでも彼がとんでもないキレ者と理解してしまった。

実は彼女たちは軍師としての能力があり、国に仕えたのならば絶対に軍師になれる。だから軍師としての目が彼が軍師としてとんでもないレベルだと感じ取ったのだ。

 

(うー…驚きました)

(ですね。なんですかこの人。文官としても軍師としても引っ張りだこになりますよ)

 

次に玄奘三蔵。彼女はまだ測りきれない。

彼女が何か偉業を成し遂げるようなモノを感じ取らせてくれるのは分かる。それが何か分からないが、なんというか彼女なら何とかなりそうというのが感じ取れるのだ。

漠然としているが、そう感じ取ってしまったのだから仕方無い。

 

(うーむ、何だろうかこのお方は…良い人なんだが。ちょっと私と相性が良くなさそうな)

 

次に武則天という女性だが、王の資質がある。彼女からは幼さも感じるが裏に国をまとめ上げる才能が感じられる。

趙雲にも程昱にも戯志才にも無い王の才能。この大陸で極わずかしかいないであろう王の才能がある人物。それが彼女である。

 

(こんなところで王としての才覚がある者に会うとはな…今までに目にした中でも上位に入るぞ)

 

最後に一番気になる者。その存在こそが藤丸立香である。

こう言ってしまっては彼に悪いかもしれないが平凡な一般人というのが趙雲たちの感想だ。どこからどう見ても普通で、武術でも頭脳でも抜き出ているというわけでもない。普通だ。

だというのに李書文たちは彼を主と呼んでいる。仕えているのだ。それがとても不思議だ。

何故、平凡な彼に化け物や超天才揃いの者たちが主と慕っているのか。それが趙雲たちにとって想像できなかった。

 

「何者って言われても…カルデアの者です」

「かるであ?」

 

趙雲たちの首が傾く。

現地人の人に亜種特異点や亜種並行世界のことを話したところで分からないだろう。そもそも信じてくれるかも分からない。

だからいつもの返答をするしかない。

 

「俺たちの目的は聖杯の探索です」

「セイハイ?」

「黄金の杯。なんでも願いが叶うって言われてるんです」

「なんでも願いが叶う杯か。聞いたことも無いぞ。眉唾ではないか?」

「かもしれない。でもそれが目的で旅してるんだ」

 

そんな眉唾な話は普通では信じられない。でも何故か彼が嘘を言っているようにも見えないのだ。何故か信じたくなる。

彼は平凡であるが嘘つきや悪人には見えない。はっきり言って善人だろう。

 

「そうなんですねー」

(藤丸立香…不思議な男だな)

「逆に君たちはどうして旅してるんですか?」

 

今度はこちら側の質問だ。

 

「我々は仕える王を探す為に旅をしておるのだ」

「仕える王?」

「ああ。それは私だけでなく…風や凜もだ」

「私たちもですよー。星ちゃんと同じですー」

「はい」

 

星、風、稟という名前が出てきたがこれが真名である。趙雲の本当の名前が『星』なんて聞いたことが無い。

 

(こういう時代だ。自分の武や頭脳の売り込みなんていくらでもあるのだろう)

(なるほど)

 

彼女たちには彼女たちの目的がある。それだけだ。

 

「おかわりください藤太の旦那」

「おう。いくらでも食え」

「いいこと。今後悪さはダメなんだからね」

「へい。三蔵の姐さん」

「だな」

 

一方、俵藤太と玄奘三蔵は賊たちをいつのまにか更生させていた。

 

 

9

 

 

その後、更生させた賊たちと別れた。何でも心を入れ替えて生きていくとのこと。

流石は玄奘三蔵である。

次に趙雲たちだが途中まで一緒に同行することになった。彼女たちも西に向かってるからだ。

 

「じゃあ途中まで一緒だね」

「うむ。よろしく頼む立香殿」

「よろしくですーお兄さん」

「よろしくお願いします」

 

程昱と戯志才が趙雲と一緒にいるのは護衛も兼ねて貰って居るからである。なんせ2人には武力が無いからだ。そんな中で藤丸立香と同行できたのは儲けものだ。

彼らの実力は見ただけで分かる。彼らの力が加わればそこらの賊如きなんて一捻りだ。もし襲ってくるならば、言い過ぎかもしれないがそれは大軍単位が必要と思っている。

今、彼女たちはとても安全圏にいるのだ。

 

「じゃあ行こうか」

 

また西へ西へと向かうカルデア御一行。

現地人に出会えたことはとても素晴らしいことだが、やはり人の集落に向かいたいものだ。

町や集落は人が多い。そして情報も多く入り込む。彼女たちの知らない情報もあるだろう。

 

「なあ立香殿」

「何ですか趙雲さん?」

「お主はセイハイとやらを探しておるが…見つかった後はどうするのだ?」

「見つかった後?」

「ああ。お主達程の人物ならば覇権を取ることができる勢力を創れるはずだ。天下を取ろうと思わんのか?」

 

趙雲はやはり気になった。聖杯という何でも願いを叶えるなんて杯などやっぱり信じられない。

そんなモノを頼るよりも、彼らの力を集結させて振るった方が天下を取れるかもしれない勢力になるだろう。

 

「んー…あんま興味ないかな」

「興味ない?」

「うん。俺たちの目的は大陸の天下取りじゃないんです」

 

藤丸立香たちの目的はこの世界の異変の解決だ。大陸の覇権を手に入れることではない。

もしも彼らがこの時代の人間ならば大陸の覇権を掴もうとしていたかもしれない。でも彼らは時代が違う。世界が違うのだ。考えが違うのだ。

この時代の人間の思想と全く以て違うのだ。だから趙雲は彼の言葉に耳を疑ってしまった。

 

「本当にか?」

「うん」

「本当に本当か?」

「本当です」

 

キッパリと答える藤丸立香。その目には嘘偽りはない。

 

「本当なのだな」

「うん」

「……この大陸は荒れている。さっきの賊もそうだったが食べられなくなった農民が賊になったりするのだ」

 

今の大陸の惨状はあまりにも酷い。無事に生活できている人もいるが、食べられずに死ぬ人もいる。

 

「お主たちの力はきっと大陸を良くするために役立つだろう。力を持っているのに何もしないと?」

「力を持っている人が絶対に国を良くしなければならないなんて決まりは無いと思う。もしそんな決まりがあったら今頃世界は平和だよ」

「むう」

「俺だってこの大陸の惨状を聞いて良くないって思ったよ。でも力があってもすぐにどうにかできるわけじゃない…でしょ?」

「確かに…悪い質問をしてしまったかな」

「気にしないよ。それにもし、俺にできる事があるんなら出来ることはするよ。この手で救える命があるなら救う…平凡な俺には言い過ぎた言葉かもしれませんけど」

 

この大陸を良くできる人は藤丸立香より居るのだ。平凡な自分より才能のある存在が。その役目はその才能のある人達だ。

彼ができるのは少しだけ。困っている人が居たら無視できないのが彼だ。助けられる人が居るのなら助けるだろう。

 

「本当に不思議な奴だな」

「そうかな?」

「ははは。それが主だからな」

 

全く持って不思議だと思う趙雲。でも彼は冷酷な人には見えず、好ましく思う。

 

「それにしても自分より国を良くできる人が他に居るはず…か」

「うん。趙雲さんもきっとそんな人に仕えるんじゃないかな?」

「…これだけの人材がお主に仕えて居るのだから私も試しに仕えてみたい気もするがな」

 

燕青たちがどんな気持ちで彼に仕えているのか知りたいものだ。

平凡であり、才能がない。力がある者たちが揃っていながら覇権を狙う欲もなし。大陸を憂いているのに建国して変えようとは思っていない。

でも助けられる命は助けようとする。生きるために全力を出す。どうしようもなく善人である男。

全く以て不思議な男である。

だけどこの趙雲たちの評価は彼らの真実を知らないから仕方がない。なんせ彼らはこの時代の人間でないのだから。

 

「それにしても建国か。妾は興味あるのう」

「ふーやーちゃん」

「まあ、今の妾はマスターに仕える身じゃからマスターに任せるのじゃ」

 

中には建国を考えている人もいるが、やはり藤丸立香に従うようだ。ますます不思議である。

 

(本当に今まで出会った人の中で一番不思議な男だ)

 

 

10

 

 

この外史は1つだけでない。並行世界という概念が存在するのだから何通りの外史はいくらでもある。数えるのが馬鹿らしくなるほどだ。

だけど1まとめにした時、この外史を1つにすることが出来る。

 

例えるのならば1つの作品と考えた方が良いだろう。様々な物語の作品があるとして、その1つの作品には何通りもの並行世界があるという考えだ。

 

だけど別の作品の物語に違う世界の作品の物語が一緒になることは絶対に無い。繋がりが無いからだ。もし繋がりがあるとしたら、それは誰かが繋げたことになるだろう。

全く法則の違う世界を繋げるなんて普通の人ができるはずもない。もし、できる人がいるのならば特別な存在なのだろう。

 

そもそも全く法則の違う世界。それは異世界とも言うべきか。それとも並行世界はいくつもある隣同士の世界だ。『もしも』でも離れすぎた『もしも』もあるのだから、それを異世界と呼ばれるかもしれない。

 

本当に運よく見つけた世界線だ。正史に出向いて、更に正史から派生する並行世界を渡り歩いていたら本当に運よく見つけた。

この発見は本当に『幸運』だった。他の五月蠅い奴らに見つからないように時間をかけて正史側の並行世界を渡り歩いて良かった。

 

この世界線からは多くのことが学べた。そして恐怖もした。そしてそして凄いと思った。

学ぶことはできたが、この世界と同じことは絶対にできないだろう。だから学んで、できる事を考えた。

 

あの方法なら何とか真似できるだろう。ならば準備をしないといけない。

器が必要だ。器に入れる存在たちが必要だ。7つの陣営が必要だ。戦争が必要だ。

だがこちらの外史にあちら側の概念が存在しない。だから全てこちら側で代用するしかない。上手くいくか分からない。でもやる価値はある。

 




読んでくれてありがとうございました。
登場したのは魏ルートで最初に出てくるあの3人でした。

まずは彼女たちと同行していきます。
次回もゆっくりとお待ちくださいね。

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