Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義 作:ヨツバ
実はそのメインの話はもうちょっと後くらいからです。最初の方はある物語を書いていこうと思ってます。
そしてこの3章ではついに恋姫の主人公である北郷一刀が登場します!!
更に次の目的地へ
212
ノウム・カルデアにて。
「先輩…」
マシュ・キリエライトはベッドで眠る藤丸立香を見守っていた。
彼がレムレム睡眠で何処かの特異点などの別世界に干渉するのは今や珍しいことではない。しかし自分自身も一緒に行けないのが彼女として歯がゆい部分だ。
藤丸立香がレムレム睡眠で何処かの特異点に干渉している時はいつもマシュは一緒について行くことが出来ないからだ。
「大丈夫だよマシュ」
「ダ・ヴィンチちゃん…」
「立香くんならいつものように目覚めるさ。その時は私たちが「おかえりなさい」っと言うんだ」
帰りを待つしかないわけではない。残った側にも何か出来る事はあるものだ。
「それに恐らく彼だけじゃない。ノウム・カルデアから立香くんだけじゃなくて何騎か英霊もいなくなっている。十中八九一緒に行ったんじゃないかな」
「…ですよね」
(気になるのがほとんどが中国圏内の英霊なんだよね。まあ何故か1騎だけ日本出身の英霊もいたけど)
藤丸立香がレムレムした後、召喚した英霊も何騎か消えているのだ。
例外もあるが、9割が中国圏内の英霊だけが消えているのである。もしもの可能性があるとこれから他の中国圏内の英霊が藤丸立香が干渉している特異点に呼ばれるということだ。
「それで朕を呼んだわけかダ・ヴィンチちゃんよ」
「お、来たね」
「ふむ。本当ならばそちらが朕の前に出向くものだが今回は不問とする。朕の臣下が助けを求めているならば応えないわけにはいかぬからな。はっはっはっは!!」
ダ・ヴィンチの前にはノウム・カルデアに確認されている中国圏内の英霊たちがいる。
「ったく後輩は何をしてるんだか」
「指導者の肉体は無事であるようだがまだ目覚めはせぬか」
「ヒヒン。マスター大丈夫ですか。ニンジンは足りてますか!!」
「若い儂も向こうに行っているようだな」
「義兄も弟子も同じ特異点にいるようだね」
集まったのは合計で6騎。どの英霊も一癖も二癖もある奴ばかり。
「さっそく本題を言おう。もしかしたら君たちも立香くんが干渉している世界に行くかもしれないんだ」
「ほう?」
「立香くんがレムレムした後、9騎の英霊も消えた。しかもそのうち8騎が中国圏内の英霊たちだ。さらにその後に2騎の中国圏内の英霊が消えたんだ」
ダ・ヴィンチの言いたい事はすぐに分かった。それはここに集まった中国圏内の英霊たちももしかしたら藤丸立香が今まさに干渉している世界に転移するという事である。
「新たに2騎の英霊がノウム・カルデアから消えている。恐らく立香くんが干渉している世界に行ったのだろうね」
(そう言えばここに蘭陵王と秦良玉がいないわね)
ダ・ヴィンチも藤丸立香がどの時代の特異点に干渉しているか調べているが今だに見つからない。普通に調べて見つからないのならば調べ方を変えるしかない。
中国圏内の英霊ばかりの英霊が呼ばれているという点で中国の時代ではないかとアタリをつけている。後は見方を別ベクトルにしてみるのみ。
「ふむ。急に呼ばれるかもしれんということか?」
「うん。だから覚悟はしておいて」
「よいだろう。朕の臣下を救うために出陣しようではないか!!」
「やれやれしょうがない義兄と弟子だ」
212
ある野営にて。
「おおっ…」
「どうしたマスター?」
「何か分からないけど始皇帝がこっちに来そうな気がしたんです孔明先生」
「奇遇だな。私は義妹がこっちに来るんじゃないかと感じ取ったところだ」
藤丸立香と諸葛孔明は謎の感覚に襲われていた。悪く無い感覚であるがもしも本当に来たら大変ではある。
「おいどうした立香。飯食わねえのか?」
「食べます炎蓮さん」
「美味しいお米なら無限にあるぞ!!」
「ほんと、藤太…てめえはどこに行っても引っ張りだこになるだろうな」
彼等はある目的地に向かう途中で野営をしているところだ。
次の目適地は陳留。華佗に診察、治療の依頼が入ったため陳留に向かう事になったのである。
その患者というのが曹操である。
「曹操さんか」
「立香は知ってんのか?」
「うん。会った事があるから」
前に洛陽で会った事を思い出す。
「会った事あんのか。ん、それは何かおかしい気が…」
「っところで炎蓮さんは曹操さんに会った事があるの?」
「ん、ああ…」
藤丸立香たちは過去に跳んだりしたので炎蓮たちには時系列に少しズレがある。そこをツッコミを受けると説明が難しいのですぐに話題を変えた。
「あいつとは…曹操とは黄巾の乱で会った事がある。まあ、まだ曹操が幼い頃にも会ったことがあるがな」
「へえー」
これもまた妙な縁があるものだ。藤丸立香が出会った人物たちは何かと繋がりがある。
目の前にいる炎蓮は魏の曹操と少なからず面識があった。その曹操と藤丸立香も面識がある。2人は曹操と面識がある者同士。
そして華佗が患者として診察に行く相手が曹操であり、次の目的地が曹操のいる陳留なのである。
これだけで『妙な縁がある』と言えるものだ。
「曹操はこの大陸でまたといない傑物だ」
「お前も会ったなら分かるんじゃないか?」
「それは、うん、分かる。曹操さんを見たけど覇気が凄かった」
「あの齢にして既に覇者の風格があった。いずれ天下に名乗りを出るのは間違いねえ。はっきり言うと今の雪蓮よりも上だ」
あの炎蓮がこうも高い評価を出すのは珍しい。それほどまでに曹操という人物は傑物なのだ。
曹操もまたこの外史における何かしらの能力が異常に抜き出た人物なのである。
(実際史実でも曹操は魏という大国を創り出すからな)
大国を創るのは孫呉も同じであるが、それでも天下に一番近かったのは魏であった。
「これから曹操に対して雪蓮たちがどう打って出るか気になるところだな。まあ、まずは袁術から独立してもらわねえといけねえが」
モグリとおにぎりを口に放り込んだ。
旅の仲間として新たに加わった炎蓮。彼女は死んだ事になっているので今更、建業に戻れないと言うのだ。
これからどうするかと話し合ったところ于吉に恨みがあるので一緒にぶちのめしたいとの事。彼女の性格からしてみればやられっぱなしは我慢できないのだ。
運よく生き延びたからには自分の出来ることを考えた結果、藤丸立香たちと旅をする事に決めたのである。
「オレの考えた結末としちゃあ違うがある意味自由になったもんだ」
「自由って…」
「オレは雪蓮に任せて隠居するつもりだったんだぜ。その後は自由になるつもりだった」
「そういえば言ってたね」
結末としては雪蓮たちに大きな仕事を残してしまったが炎蓮としては乗り越えると信じている。少しだけ心残りはあるものの今の炎蓮は全ての業務を放り捨てて藤丸立香たちとの旅を案外満喫しているのだ。
建業には居なかったタイプの仲間たちとの旅は案外新鮮で大陸を周るというのは戦いとは違った興奮を与えてくれる。
「…いずれは戻るんでしょ?」
「んーそうだな…いずれは顔を出すさ。気が向けばな」
「気が向けばかい!!」
心なしか炎蓮の顔はスッキリしていた。それは元気になったからなのか、孫家の当主から解放されて自由になったからなのか。もしくは両方なのかもしれない。
なんにせよ今の彼女は元気であるということだ。この事を雪蓮たちに報告するとどういう反応をするのか分からない。
喜ぶのか、怒るのか。両方か。それも分からないものである。
「つーか、てめえもいつか戻れよ」
「え、俺も?」
「そうだ。てめえ役目を果たしてねえじゃねえか」
「…それって」
「孫呉に血を残してねえだろ」
忘れかけていた孫呉の役目を思い出す。そもそもその役目は果たすつもりはなかったが本音を言えば怒られる。
「いやぁ…それは」
「しっかし立香がオレと同じでいつ孫呉に戻るかも分からねえかならな……いっそオレが立香との子をつくるか?」
「え!?」
「最終手段としてそれでもいいか。そして孫呉に送り込めば解決するっちゃするか……孫家と鬼神と天の血を持つ子になるな」
炎蓮がとんでもない事を言い出した。本気で考えているのか真面目な顔で考えている。
「いやいや、お互い死んだり消えた事になってるから送り込んでも意味ないでしょ!!」
「実はデキてたって言えば大丈夫だろ」
「それで雪蓮さんたちは信じるの!?」
「あいつらなら信じるんじゃねーか?」
普通は信じないはずである。だが何故か微妙に否定できない部分もあった。
「面白い話をしておるのうお主ら」
「ちょ、ちょ、ちょっと弟子ってば炎蓮さんと子をつくるの!?」
藤丸立香の真後ろから武則天と玄奘三蔵がヌルリと顔を出す。すぐさまこれから面倒事が起きるのではないかと直感で分かってしまう。
「そういえばあの孫家のチビが言っておったのう。マスターは孫家の者たちと子作りしたのか?」
「してません」
「ここに清姫がいれば嘘かどうか分かるのだがのう」
「清姫に誓って嘘はついてません。紅閻魔ちゃんにも誓ってもいいです」
もしここに清姫がいたらもっと大変になっていた。
「マスター言っとくけど、不邪婬戒はダメよ!!」
「不道徳な性行為はしてません。そもそも性行為自体してません」
左右から武則天と玄奘三蔵の言葉が耳に入ってくる。一方は静かに責めるように、もう一方は諭すように注意してくる。
それを見て炎蓮はニヤニヤしていた。そもそもこの話題の元凶は炎蓮である。
「まあ、最終手段だよ。その時はよろしくな」
「どの時!?」
建業の時と変わらず藤丸立香は炎蓮に遊ばれるのであった。
そんな傍らで悩む者がいた。
「そ、曹操がいる陳留…」
「どうしたの人和さん?」
何とか炎蓮たちのところから抜け出した藤丸立香は人和が悩んでいるのに気付いた。
「あの、私たちって…曹操とは」
「あ、そっか」
張三姉妹と曹操には因縁がある。因縁といっても彼女たちは曹操に狩られかけたというものだ。その前に藤丸立香たちと接触して一芝居打ったのである。
「人和さんたちの顔を知ってるのは俺たちを除くと曹操さんたちの陣営だもんね」
正確には曹操は張三姉妹の顔は分からない。実際に知っているのは曹操の部下たち数人だ。
このまま陳留に行けば張三姉妹の顔を知る誰かに出会う可能性はある。
「大丈夫かしら…」
人和が不安がっているのは陳留に行って捕まるのではないかということだ。最悪な考えだと殺されてしまうと思っている。
「お姉ちゃんは殺されたくなーい!!」
「ちぃだって死にたくないわよ!!」
ギャイギャイと騒ぐ2人。彼女たちの気持ちは当然だ。
「あいつら何か曹操とあったのか?」
「炎蓮さん。彼女たちもわけありです」
「ほーん」
俵藤太からおかわりをもらったおにぎりを口に放り込む。彼女もまたある意味わけあり。わけあり者ならば根掘り葉掘り聞くのはよろしくないのは誰もが分かる。
「まあ、詳しく聞かねえことにする。藤太おかわり」
「おおとも」
実は炎蓮も少なからず張三姉妹と因縁はある。それは炎蓮に重症を負わせたのが黄巾党だからだ。彼女たちは何もしていないが黄巾党の頭目としての責任がある。
最も彼女たちは暴走していた黄巾党を止められずにいたが。
「大丈夫だろう」
「孔明さん?」
「既に黄巾党の張角たちは死んだ。今更お前たちを捕まえてもどうにもならん」
黄巾党の乱は既に終わっている。張三姉妹が生きていたからといって捕まえても何かあるわけではないのだ。
「堂々としていろ。そっちの方が逆に気付かれないさ」
寧ろ黄巾党は時が過ぎ忘れられていっている。普通にしていれば気付かれない。もしも何か言われても「知らない」で押し通せば他人の空似ということになるのだ。
「そ、そうかしら」
「そうだ。それでも不安なら向こうに着いたら宿屋に籠っていればいい」
「そうしとくわ…」
顔を出したくなければ家に籠ればいいだけである。永住するわけでなく、華佗の診察で立ち寄るだけなのだから終わればすぐに出ていけばいいだけだ。
「立香くーん。もしもの時は守ってー!!」
ガッシリと藤丸立香に抱き付く天和。
言われなくても彼女たちに何かあれば助けるつもりだ。
「くっつきすぎじゃ」
そう言って武則天は天和を引き剥がそうとするのであった。
「ただ診察しに行くだけだから何かあるわけないでしょ」
藤丸立香はそう思っているが何も起こらないわけではない。実は何かしらの事件が起こるのだ。
主に華佗と貂蝉と卑弥呼が中心となる事をこの時は分からなかった。
213
陳留にて。
「ねえねえ実は美味しいお店があるんだけど行かない流琉?」
「季衣ったらまた~?」
2人の少女はある点心の店について語らい合う。
「それにその店には2人の武芸者が路銀を稼ぐために働いてるみたいなんだ」
「武芸者?」
「そう。何でもとっても強いらしいよ。店で暴れてた悪漢を軽く倒す程なんだって」
「へえー」
ちょっとだけ興味が出た流琉と呼ばれた女性。彼女にとっては美味しい店という方が気になるのだが。
「1人が女でもう1人が男みたい」
(強い女性の武芸者なら華琳様は気に入るかも)
「で、男の方は仮面をつけてるって」
「なんで仮面?」
「さあ。でも噂だとその素顔はとってもカッコイイらしい」
「へえ、カッコイイ男性かあ」
少女としてはカッコイイ男性と言われれば気になるものである。
「行ってみよ!!」
新たな物語が紡がれる。
読んでくれてありがとうございました。
次回は……予定では7月中には更新したいと思ってます。
次回はカルデア側の追加の仲間たちについてと華佗が曹操のいる陳留に向かう話です。
はっきり言ってしまえば漢ルートの話ですね。
そう…貂蝉たちがはっちゃける話です!! 次回『漢女道:イチィィ!!』
まあ、この物語は漢ルートなんですから書きたかったんです。
北郷一刀たち蜀陣営の登場はもうちょっと先です。