Fate/Grand Order 幻想創造大陸 『外史』 三国次元演義   作:ヨツバ

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ついにFGO第二部第五章が配信されましたね!!
私も興奮しながら早速プレイしています!!
ガチャも回します!!

そんな中でひっそりとこちらも更新です。


反董卓連合-洛陽の怨霊-

306

 

 

荊州軍も張譲が召喚した亡者兵に襲われていた。だが歴戦の強者たちが特攻して亡者兵を潰していく。

 

「はあああああああああああ!!」

「ふんはあああああああああ!!」

 

華佗と卑弥呼は熱血激熱粉砕の勢いで亡者兵に突貫していく。

 

「あの筋肉はともかく、あいつ本当に医者なのか!?」

 

華佗の意外な強さに魏延は驚いていた。

 

「確か…医者と同時に道士でもあるって言っていたような」

 

華佗はある道教の教団に所属している。本業は医者ではあるが道術の心得は持っているのだ。

このような怪異に関して対処もすぐに実行できる精神の持ち主である。実際に亡者兵が出現した瞬間にすぐさま動いたのが華佗である。

 

「うおおおおおおお!!」

「うむ、流石はダーリン。その熱き燃え上がる魂…惚れ直してしまう!!」

「卑弥呼…」

「むむ、待ってくれ。こんな所でプロポーズは…!!」

「何を言ってるんだ卑弥呼。それよりもこの怪異…太平要術の書が関係している」

 

華佗の見立てだとこの怪異は太平要術の書が関係している。まさに正解であり、禁城にいる張譲が仕掛けたものであるのだ。

 

「ぬう、やはりか!!」

「卑弥呼も同じ見立てだったようだな」

「うむ。このような怪異は太平要術の力でないと起こらない現象だからな」

 

何処かに術者がいないかと気を感知するが近くの何処にもいない。術者は想像する通り洛陽内にいるのだ。

 

「やはり洛陽内に向かわなければならないか」

「ならば急いで道を開き、洛陽に向かいましょう」

 

蘭陵王が亡者兵を斬り裂きながら華佗の元へと近寄る。

 

「おお、蘭陵王か。頼む。このまま俺と卑弥呼で洛陽に向かって太平要術の書の術者を討つ!!」

「うむ。私とダーリンのコンビならイケるぞ!!」

 

亡者兵たちは多いが反董卓連合の本隊側程ではない。更に周囲が敵だらけなんてカルデア側の呂布奉先からしてみれば、何処からでもかかってこいという勢いである。

 

「□□□□□□□□!!」

 

呂布奉先は亡者兵たちを簡単に叩き潰していた。彼を先頭に魏延たち荊州軍も攻め込んでいる。

 

「攻めこめー!! 亡者共に我ら荊州軍の力を見せ付けるのだ!!」

「弓隊構え!! 放てー!!」

「紫苑さま。このまま我らは呂布奉先と共に突撃します!!」

「分かったわ。後方からの援護は任せて」

 

他の軍がいなかったおかげであるのか、戦場は本隊側と比べて大混乱はしていない。だが反董卓連合の本隊側は今だに大混乱である。

その大混乱の原因が今は亡者兵でなく、呂布こと恋になっているのだが。

 

 

307

 

 

反董卓連合の本隊はたった1人の敵将によって大打撃を受けていた。

その敵将こそが恋である。亡者兵も本隊を大混乱させる要因であるのだが、恋の暴れ具合によってそれどころではないのだ。

 

「うああああああああああ!!」

 

恋は吼えながら方天画戟を振るう。

 

「うあああああああああ!!」

 

今度は近くにいた亡者兵を掴んで投げ飛ばす。

 

「うわっ、あぶなっ!?」

「避けるのだー!!」

 

投げ飛ばされてきた亡者兵を避ける雪蓮や鈴々たちであるが、避ければ避けたで後方にいた仲間の兵士や敵の亡者兵が吹き飛ぶ。

恋を攻めに転じさせないために猛攻撃を5人で繰り出していたが長くは持たなかった。

今の恋は凶悪な獣だ。まるで手が付けられないと獣とは誰かが言ったものである。

 

「うああああ!!」

 

亡者兵だろうが敵の兵士だろうと構わず恋は掴んで投げ飛ばす。投げ飛ばした後は飛び跳ねて梨晏と公孫賛に方天画戟を振るった。

 

「くうう!?」

「うわあああ!?」

 

彼女たちも避ける。もはや今の恋に真っ向から競り合いなんて出来るはずもない。

 

「あっ、しまったーー!?」

 

避けた時に手が滑り、公孫賛の剣が宙に投げ飛ばされた。

 

「これ貸してもらうわね」

 

投げ飛ばされた剣を入れ替わりに走って来た雪蓮は掴んでそのまま恋に突進。二本の剣で斬り付ける。

 

「はああああああああ!!」

「…うっとおしい!!」

 

二本の剣で繰り出される斬撃をギョロリと目で捉え、全て見切ってみせた。

 

「普通いまの全て見切る!?」

「…どけぇ!!」

「うぐっ!?」

 

腹部に蹴りを入れられてしまう。受け身を取ってゴロゴロと公孫賛の所まで転がる。

 

「痛ったーい……これありがと。この剣返すわ」

 

公孫賛に剣を返すとすぐに雪蓮は恋に立ち向かう。

 

「…おいおいこんな奴に敵うのかよぉ」

 

公孫賛の弱音はもっともだ。それほどまでに目の前にいる恋は手が付けられない強さである。

その異常なまでの強さに驚いているのは彼女だけでない。仲間の華雄だって驚いているのだ。

恋の強さは元々知っていたが、これほど異常なまでの強さは見た事も無い。

 

「…あれは恋なのか?」

「華雄殿ーー!!」

「おお、音々音か。生きていたか!!」

「勝手に殺すなです!!」

 

陳宮こと音々音が無事な兵士たちを連れて華雄と恋の元へと来る。

 

「もはや戦場は大混乱なのです!!」

「見りゃ分かるわ!!」

「無事な兵士はわずかです。こんな状況ですが撤退するしかないのですよ」

「…撤退したいのはやまやまだが、難しいぞ」

 

チラリと視線を恋の方を見る。

 

「恋殿!?」

 

今の恋をいつも一緒にいる音々音が見ても異常だと思えてしまった。

 

「うあああああ!!」

 

方天画戟を天にかざす。まるで力を溜めるようだ。

事実、彼女は力を溜めている。妖力のコントロールなんて恋はやったことなんて一度もない。ただ本能的にやっているだけだ。

 

「あああああああああ!!」

 

方天画戟を地面に叩きつけると広範囲で妖気の暴風が発生した。

妖気の暴風によって敵味方関係無く吹き飛ばされていく。恋は二発目を放とうとしているのかもう一度、方天画戟を天高く翳す。

 

「ちょっ…今の何なのって…またさっきのが来るわよ!?」

「あんなの何発も出されたらこっちの身が持たないよ!?」

 

恋が繰り出す妖気の暴風。受けた威力はまるで爆発に巻き込まれたが如く。

余波だけを受けても身体中が軋む痛みが走る。

 

「次のをまともに喰らったら立てないかも…」

「弱気か太史慈殿」

「関羽だって足がガクガクしてるじゃん」

「うぐ……」

 

凶悪な獣の如くの恋を相手にし、妖気の暴風まで喰らえば肉体の限界も近い。それでも立ち上がるのは負けるわけにはいかないからだ。

 

「私は…桃香さまのために負けるわけにはいかんのだ!!」

「うあああああああああ!!」

 

恋は方天画戟をもう一度地面に叩きつけるために勢いよく降ろした。しかし方天画戟は地面に叩きつけられなかったのだ。

 

「石兵八陣!!」

 

誰かの言葉が響いた瞬間に恋の周りに石柱が落ちてきた。

 

「…っ!?」

 

まるで凶悪な獣を閉じ込める大きな檻のように見えた。

 

「う、うあ、あああ!?」

 

恋は石柱の檻の中で膝を付く。溜め込んでいた妖気も無散した。

 

「ぜぇ、ぜぇ…ま、間に合ったか」

「わー、孔明さんすごーい!!」

「今の何々ー!!」

 

いきなり何が起きたかと思った愛紗と雪蓮たちであったが、すぐに横から聞こえてきた声の者たちに目を向ける。

そこにいたのは諸葛孔明と電々に雷々であった。

 

「も、もしかしてコレはあんたがやったの孔明?」

「む、孫策か。ぜぇぜぇ…」

「なんかめっちゃ息切らしてるわね」

「急いで走って来たからな…」

 

なんとか息を整える諸葛孔明。

 

「孔明殿助かったぞ。これはやはり孔明殿がやったのだな」

「ああ。これでも私は魔術師だからな…いや、こちらの言い方だと妖術師か」

 

諸葛孔明の宝具『石兵八陣』によって恋を封じた。

彼女は抵抗しようともがいているが石兵八陣の術中に嵌っている状況では上手く身体は動かす事は出来ない。

身体を上手く動かせず、石兵八陣の中では張譲から無理矢理供給されていた妖気も遮断されている。これで異常なまでの力も発揮することは無い。

 

「本当に助かったわ孔明。てか、こんな凄い妖術があるなら最初から使ってよ」

「ごもっともだが…此方にも色々と事情がある」

 

その事情とやらに首を傾けてしまうが何はともあれ、凶悪な獣の恋を封じたのである。

 

「これで呂布は封じた。疲れているところ悪いがまだ事態は解決していないぞ」

 

諸葛孔明の言う通り、周囲には亡者兵がワラワラと沸き上がっている始末。まだ戦いは終わっていない。

 

「う、うああああ!!」

「む!?」

 

石兵八陣の中にいる恋は立ち上がる。その姿に驚いてしまった。

英霊でさえ、石兵八陣の中では自由が利かないはずなのに恋は立ち上がる気骨を見せたのだ。

 

「…負けない!! 恋は…月を守る!!」

 

今の恋を動かしているのは『月を守る』という意思だけだ。

その力強さに素直に驚嘆する。全員が驚いているが一番驚いているのが術者の諸葛孔明である。

 

「…驚きだな。だが」

 

驚いた諸葛孔明だが冷静になって手を翳す。そんな時、別の声が響いた。

 

「待つのです!!」

 

陳宮こと音々音が恋を守るように前に出てきたのだ。小さい身体でありながら恋を守るという意思がヒシヒシと伝わってくる。

 

「お前は陳宮」

「ね、ねね…」

 

音々音の姿が目に入った瞬間に冷静さを少し取り戻したのか恋から発せられている荒々しい気が薄れていく。

 

「恋殿…ここはねねにお任せください」

「ねね…」

 

 

308

 

 

張譲は妖力を放出して周囲にいた骸骨の妖魔や亡者兵に分け与える。

 

「今度は龍になれないが前よりも太平妖術の力を使えるんだよ!!」

 

周囲にいた骸骨の妖魔たちが一ヶ所に集まり盛り上がっていく。そして巨大な骸骨の妖魔になった。

その姿は禍々しく、今まで戦ってきた巨大エネミーと遜色無い。

 

「まずは貴様らを殺して天子さまを手に入れる。その次は外の有象無象どもを蹴散らしてやろう!!」

 

骸骨の巨大妖魔に張譲は乗る。

 

「叩き潰せ!!」

 

巨大な骸骨の手が藤丸立香たちに迫る。

 

「三蔵ちゃんは詠さんを守って。秦良玉に哪吒、迎え撃つよ!!」

「はいマスター!!」

「了解 妖魔迎撃!!」

 

藤丸立香は魔術礼装のスキル『全体強化』を発動。

更に秦良玉はスキル『白杆槍[B]』を発動。哪吒はスキル『道術[A]』を発動。

攻撃強化して2人は迫る巨大骸骨の手を振り払った。

 

「せえええええええい!!」

「やあああああああ!!」

「こいつら!?」

 

掴めば簡単に握り潰せるのが4人。ただ掴んで潰せば終わりなのだ。

張譲は巨大骸骨の手を振り払われたからといって焦らない。藤丸立香たちは前に悪龍となった自分を倒したのだ。

簡単には攻略できないのは百も承知。太平妖術の力と自分の考える策で倒すだけだ。

 

「叩き握り潰せ!!」

 

巨大骸骨の腕を4本に増やして秦良玉と哪吒を握り潰そうと迫る。

 

「秦良玉、哪吒捕まらないようにして。狙いは月さんに取り憑いた張譲を捕まえるんだ!!」

 

「任せてくださいマスター!!」

「ボク 捕まらない 無問題」

 

迫る巨大骸骨の手を避けながら2人は立ちまわる。

避けながら攻撃して巨大骸骨の妖魔を破壊していくがすぐに再生してしまう。

 

「再生というより補充ですね」

 

秦良玉がトネリコの槍で巨大骸骨の妖魔の身体の一部を破壊すると骸骨の妖魔が召喚されて破壊された部分にくっついた。破壊された部分は何もなかったかのように元に戻っている。

いくら部分破壊しても補充されては攻撃の意味が無いのだ。完全に巨大骸骨の妖魔を倒すには全体的に破壊しなければならない。

 

「私にはあの巨大骸骨を倒す宝具は持っていません。ですが哪吒殿ならば…」

 

哪吒の宝具ならば巨大骸骨を燃やし破壊し尽くせる。だが発動したくとも張譲は月の身体に取り憑いている。ということは人質という意味でもある。

無暗に高火力を出せば月の身体を傷つけてしまうのだ。悪龍となった張譲の時よりも戦い辛い。

 

「巨大骸骨 後回し 張譲捕縛」

 

哪吒は飛んで月に取り憑いた張譲に向かう。

 

「近づかせると思うな!!」

 

巨大骸骨の身体から複数の骸骨の妖魔が現れて哪吒の行く手を阻む。

いくら破壊しても骸骨の妖魔はいくらでも召喚される。張譲をどうにかしなければ次の一手は出せないのだ。

 

「まずは張譲を月さんの身体から除霊しないといけない」

「ならアタシに任せて。悪霊怨霊退散は今までもやってきたし!!」

 

玄奘三蔵ならば月から張譲を祓う事が可能だ。そもそも彼女の専門分野である。

 

「月から張譲を引き離せるの!?」

 

「もっちろん!! 御仏の名に懸けて月ちゃんから張譲を追い払ってみせるわ!!」

 

月から張譲を引き剥がすにはまず近づかなければならない。

 

「なら三蔵ちゃんを月さんの所まで!!」

 

藤丸立香はすぐさま玄奘三蔵を月の所までのルートを考え出す。

月に取り憑いた張譲は巨大骸骨の妖魔の上に乗っている。ならば単純な話であり、哪吒と秦良玉の2人で道を切り開く他無い。

 

「秦良玉、哪吒。三蔵ちゃんを張譲の所まで道を切り開いてくれ!!」

「「了解!!」」

 

秦良玉と哪吒は仕切り直しと言わんばかりに武器を構え直して巨大骸骨の妖魔に突貫。自慢の武器を振るって妖魔の身体を破壊していく。

 

「ふん…いつまでも壊せて行けると思わない事だ」

 

ニヤリと笑う張譲。その笑いの理由はすぐに分かるのであった。

 

「なっ、硬い!?」

 

先ほどまでは槍を振るえば破壊できていたが今はたった一振りでは破壊出来なくなった。

まるで骨密度が上がったようにだ。まるでではなく、まさに上がっているのかもしれない。

 

「妖魔 硬度上昇 力上昇」

「くくく…こいつはどんどん強くなるぞ。反董卓連合が戦う限りな!!」

 

巨大骸骨の妖魔の力の源は月たちが実行した大粛清を受けた者たちやこの戦で死んでいった戦死者たちだ。

洛陽に彷徨う怨霊や戦死者たちは全て巨大骸骨の妖魔の糧になる。反董卓連合で敵味方たちが戦死するたびに強大骸骨の妖魔は強くなるのだ。

 

「亡者兵もそうだが…反董卓連合を止めなければこいつは際限なく強くなる!!」

 

月たちが行った大粛清からの袁紹たちが起こした反董卓連合という流れ。その流れ全てが巨大骸骨の妖魔を強くさせてしまっているのだ。

硬度はまだ上がり、破壊力も上昇している。動きも最初はぎこちなかったが今では早くなっていきている。

 

「これ、時間が経つほどマズイんじゃあ…」

 

時間が経つほどというよりかは外で戦っている反董卓連合が問題なのだ。

戦争をしているのだから敵味方はどちらか必ず死ぬ。死んだ者は全て巨大骸骨の妖魔の糧になる。

これは反董卓連合が止まらない限り巨大骸骨の妖魔は止まらない。

反董卓連合で戦っている人間の数を数えるのも馬鹿らしい。更に張譲は外にも骸骨の妖魔を召喚している。戦いは反董卓連合側の優勢であるが張譲がまた場を掻きまわして戦死者を増やしている最悪な始末だ。

 

「より強くなれボクが生み出した妖魔よ!!」

 

反董卓連合の戦いが終わらない限り際限なく強くなる妖魔。仮定で考えれば並みの英霊よりも強くなる。

今はまだ戦えているが時間が経つにつれ強大になっていくのは確実である。藤丸立香たちだけでは足りなくなるのも時間の問題である。

 

「相手は妖魔で死霊系のモンスター。グレイやニトクリスがいれば…いや、せめて藤太がこっちにいれば」

 

哪吒と俵藤太のコンビならば巨大骸骨の妖魔を倒す手立てはすぐに思いつたかもしれない。我儘な願いだが更に源頼光もいれば有利だったに違いない。

怨霊の張譲に関して言えばグレイやニトクリスたちがいればより有利だったはずだ。しかし今はこの場にいない。

 

「かかれ!!」

 

巨大骸骨の腕が4本も伸びてきて秦良玉たちに襲い掛かる。

振り払い、握り潰そうとし、叩き潰そうとする。一撃でも喰らえば致命傷になる。

掴まれば握り潰され食われてしまうのだから絶対に捕まるわけにはいかない。

哪吒と秦良玉は上手く立ちまわっているが解決策は玄奘三蔵を月に取り憑いている張譲の元まで向かわせる事。玄奘三蔵を月の元に送り込めば張譲を除霊させることが出来るのだ。

張譲を月から追い出せればおのずと巨大骸骨の妖魔も弱体化する。

 

「しかし…なかなか近づけませんね」

 

解決策はあるが実行するまでが遠すぎる。巨大骸骨の妖魔の攻撃を避け、幾度となく召喚される骸骨の妖魔を破壊。破壊された骸骨の妖魔は巨大骸骨の妖魔へと吸収される。

 

「周囲の骸骨 破壊無意味 やはり大元攻撃」

 

哪吒は火尖槍を握り直し、風火輪をジェット噴射してワラワラと向かってくる骸骨の妖魔を粉砕しながら強大骸骨の妖魔へと向かう。

 

「突貫!!」

「この羽虫がぁ!!」

 

哪吒の突貫と巨大骸骨の妖魔による振り下ろされた腕がぶつかり合う。

砕けたのは巨大骸骨の腕であった。

 

「砕けた腕なぞいくらでも直せる。我が作られし妖魔よ。その飛んでいる羽虫を捕まえろ!!」

 

残った3本の腕で哪吒を捕まえる。

 

「くあ!?」

「哪吒!?」

 

ミシミシと軋む音が哪吒の身体から響いてくる。

 

「無問題 早く 除霊!!」

 

哪吒はただ突貫しただけではない。玄奘三蔵を導くための道を作り出したのだ。

敵の意識が逸らされている隙に玄奘三蔵は走る。

 

「三蔵ちゃん!!」

「分かってるわ!!」

「秦良玉は三蔵ちゃんを援護して!!」

「はい!!」

 

秦良玉は前を駆けて骸骨の妖魔を倒しながら玄奘三蔵を月の元へと導いていく。

月に取り憑いている張譲の元までなんて彼女が西へ旅した距離に比べれば何の苦もなく、遠くも無い。

 

「いっくわよー!!」

 

間合いまで入った瞬間に玄奘三蔵は如意金箍棒を床に突ける。

 

「伸びて如意棒!!」

 

玄奘三蔵は如意棒を伸ばして棒高跳の要領で高く高く跳んだ。ある意味、彼女は戦闘でアグレッシブである。

高く高く跳んで玄奘三蔵は巨大骸骨の妖魔に乗っている張譲の元に向かう。

 

「ただ殺されに来たか!!」

 

巨大骸骨の身体の一部から骸骨の妖魔がウゾウゾと湧き出た。

 

「ぎゃてー!?」

 

巨大骸骨の妖魔は無数の骸骨の妖魔の集合体だ。それならば分離することは可能である。

 

「骸どもに食われろ」

 

玄奘三蔵は高跳びの結果により巨大骸骨の妖魔の上へと落ちながら向かっているが、その下に無数の骸骨が待ち構えている。

 

「世話焼ける 駄目僧侶」

「え?」

 

二つの飛来物が無数の骸骨たちを破壊していく。その二つの飛来物というのは哪吒が予め放っていた乾坤圏である。

捕まっていようが乾坤圏を放っていれば遠隔操作で戦う事が出来る。

 

「貴様…さっさと握り潰されろ!!」

 

ミシミシと更に軋むが哪吒は耐える。

 

「ボク 頑丈 まだ無問題!!」

「なら食われろ!!」

「そんな事は御仏的にさせないわ!!」

 

玄奘三蔵は無事に巨大骸骨の妖魔に着地した。

『速読経(A)』を発動。お経というものは除霊にも効果があるもの。あの玄奘三蔵のお経だ。怨霊、悪霊には効果覿面なのは間違いない。

 

「うあ…何だこれは!?」

 

玄奘三蔵のお経が月を通じて張譲に響く。

 

「うぐぐぐ…五月蠅いぞ!!」

 

お経が心底嫌なほど効いている張譲。怨霊となった張譲にとって玄奘三蔵は相性の悪い相手である。

太平妖術の力で妖気を周囲に爆発させて衝撃波で玄奘三蔵を吹き飛ばそうとするが彼女は耐え抜く。

 

「必ず月ちゃんを助けてあげるんだから!!」

「この…近寄るな!!」

 

更に骸骨の妖魔を召喚して玄奘三蔵の前に壁のように盛り上がらせる。

 

「詠ちゃん。月ちゃんに声を掛けてあげて!!」

「声を…!?」

「ええ、月ちゃんは張譲に取り憑かれてる。それは月ちゃんと張譲が鬩ぎあっているとも言うわ。でも今の月ちゃんは張譲に身体の主導権を取られている…なら月ちゃんが頑張って張譲を追い出そうとする気があればアタシの力もより効果的に効くはずよ!!」

 

玄奘三蔵の法力に月が身体から怨霊の張譲を追い出そうとする気持ちがあれば可能性がグンと上がる。

張譲は月に複雑に絡みつくように取り憑いている。それが月の状態を見た玄奘三蔵の感想だ。

怨霊に取り憑かれたらもう何も出来ないわけではない。人間の強い精神ならば追い出す事は可能だ。そこに玄奘三蔵の法力が加われば必ず怨霊を追い出せる。

しかし取り憑かれてた本人が弱気ならば可能性が低くなるのだ。そのために取り憑かれた本人には強い意志を持っていなければならない。

実際に取り憑かれてしまった人からしてみれば何も出来ないかもしれない。だが追い出したいという気持ちや抵抗する気持ちがあるのと無いとでは全く違うのである。

 

「怨霊に取り憑かれた時に1人じゃ何も出来ないわ。でも大切な仲間がいれば心強い事この上ないわ!!」

 

玄奘三蔵も1人よりも仲間がたくさんいた方がとても心強く、何でも出来そうな気になってくる。

 

「だから声を掛けてあげて。詠ちゃんは月ちゃんにとって心のよりどころなんだから!!」

 

今の月は恐らく自分自身の不甲斐なさと張譲の巧みな話術などで心を摩耗させられている。だからこそ詠の言葉が必要なのである。

信頼する仲間からの言葉はとても心強い。

 

「月!!」

 

詠は喉を傷めるのも気にせずに大声で月に呼び掛けた。

 

「聞こえる月!?」

 

ただ呼びかけるだけ。それだけで十分なのだ。

 

「今から助けるわ。だから月も張譲なんかに負けないで!!」

 

詠は形振り構わず月に声を掛け続けた。その声が月に届くと信じて。

 

「そんな声が届くものか。董卓の身体はもはやボクが完全に乗っ取ったんだからね。声を荒げても無駄だ!!」

「アタシはアンタなんかに声を掛けてない。月に声を掛けてるのよ。アンタが反応してんじゃないわよ!!」

「この……無礼者がぁっ!!」

 

張譲は腕を振り上げると連動して巨大骸骨の妖魔の腕も降りあがった。その行為を見るだけで詠を叩き潰そうとしているのだと分かってしまう。

このままでは藤丸立香もろとも詠は叩き潰される未来しかない。しかしそんな未来は来なかった。

 

「…な、何だ。腕が降ろせない!?」

 

腕が振り上がったまま降ろせないのだ。まるで天井から糸で固定されたかのようになっている。

 

「何でだ。何で腕が振り下ろせないんだ…まさか!!」

『え、詠ちゃん…立香さん』

 

今まで張譲が董卓の身体を借りて声を出していたが一瞬だけ本人である月が声を出したのを詠は聞き逃さなかった。

張譲が腕を振り下ろせなかった理由は簡単だ。心の奥に追いやられていた月が取り憑いている張譲に抵抗した結果だ。彼女は完全に封じ込まれたわけではない。

 

「月!!」

 

月本人が声を出したのだ。詠の言葉は月にちゃんと届いたのである。

ならば詠がするべきことはより声を掛け続けるしかない。

 

「月、月、月。待ってて、今から助けるから。だから月も張譲なんかに負けないで!!」

『…詠ちゃん』

「月さん聞こえるなら頑張って。俺らが必ず助けるから!!」

『…立香さん』

 

月が無事という事だけで詠は安心した。より安心するには早く助けなければならない。

 

「董卓め今更…表に出てくるんじゃない!!」

「何言ってるの。その身体は月ちゃんのものでしょ。なら出ていくのはあなた!!」

「なに!?」

 

気が付けば玄奘三蔵は骸骨の妖魔で盛り上がった壁を気合でぶち破って張譲の目の前に到達していた。

そのまま掌底を構えて玄奘三蔵は月の身体に取り憑いた張譲を見据える。

 

「御仏の加護、見せてあげる!!」

「何をす…!?」

「五行山・釈迦如来掌!!」

 

全力の蹴りと掌底の連打を叩き込んだ。

玄奘三蔵の宝具である『五行山・釈迦如来掌』。

敬うべき仏にして天界に於ける師である釈迦如来の力のごく一部を借り受けて敵対者を懲らしめる奥義。

先ほどのスキル『高速読経(A)』はこの宝具を撃つためでもあったのだ。

 

「ぐあああああああああああああああ!?」

 

蹴りと掌底が容赦なく連続で張譲に撃ち込まれた。

 

「ば、馬鹿な…こ、この身体は董卓のもの。それを、こんなっ…!?」

 

張譲は月の身体を取り憑いている。それは藤丸立香たちが月を傷つけないだろうと高を括っていた事へと繋がる。だが玄奘三蔵は容赦なく張譲へと掌底を連続で繰り出した。

本当に容赦なくボコボコにしてきている。掌底は一撃一撃が重く、何故か今の張譲に突き抜けるように効いているのだ。

 

「ぐ、ああああああああああああ!?」

 

ここで張譲は異変に気付く。取り憑いていた月の身体が巨大骸骨の妖魔の上に横たわっていたのだ。

 

「ぐおおおおおお…あ…れ!?」

「あたしが月ちゃんを殴るわけないでしょ。懲らしめるのはあんたよ!!」

「な、何だってーーーーー!?」

 

玄奘三蔵が攻撃したのは怨霊となった張譲だけだ。月には1発も掌底を撃ってはいない。

彼女は月に取り憑いた張譲だけを狙って宝具を撃ちこんだのである。

 

「月ちゃんの身体から出ていきなさーーーーい!!」

「馬鹿なぁぁぁ…お前は一体ぃぃぃぃ!?」

 

最後に覚者掌底の一撃を与えて張譲を月の身体から完全に吹き飛ばした。

 

「ぐあああああああああああああああああああ!?」

 

張譲を月から追い出した瞬間に巨大骸骨の妖魔は態勢を崩して倒れた。

 

「わああああっ!?」

 

巨大骸骨の妖魔が態勢を崩せば上に乗っている玄奘三蔵と月は落ちてしまうのは当然だ。

 

「世話焼ける ドジ僧侶」

 

捕縛から抜け出した哪吒は落ちていく玄奘三蔵と月を受け止めて藤丸立香たちの元に戻る。

 

「月!!」

 

詠は急いで哪吒から月を抱き抱える。

 

「月!!」

「え、詠ちゃん。私…」

「よ、よかった…」

 

月は無事であったが張譲に取り憑かれていた副作用なのか疲労感があるようだ。まだ上手く自分の身体を動かせない。詠が支えていないと倒れてしまうほどである。

 

「私……間違っていたのかな」

「そんな事無いわよ。張譲に何言われたか分からないけど…アタシたちは国を建て直すために覚悟を決めてここまでやってきたのよ」

 

月たちが国を建て直すために自ら血で汚れる覚悟は決めた。そして実際に国の膿を全て抉り出すように悪官たちを粛清して多くの血を流させたのだ。

そのやり方が正しいかどうかは分からない。中身をよく知らない者ならば正しくないと言うかもしれない。

 

「立香さんは……どう思いますか?」

「分からない。でも悪人なら全て粛清していいかなんて言われたら俺は肯定できないよ」

「……やっぱり」

「でも月さんたちの国を建て直したいという気持ちは否定しない。月さんのその気持ちは間違ってるとは思わない」

 

月たちの国を建て直してより良くしたいという気持ちは本物なのだ。

過程が苛烈で冷酷でも未来のために自分が汚れる事を選んだ月たち。その覚悟だけは誰も馬鹿には出来ない。

 

「マスター!!」

「どうした秦良玉!?」

 

護衛と周囲の警戒に戻っていた秦良玉が異変を察知した。

 

「まだ終わってないようです」

 

倒れた巨大骸骨の妖魔がゆっくりと立ち上がる。そしてその頭上に多くの怨霊や悪霊が集まっていた。

 

「張譲…」

「おのれえええええええええええええええ!!」

 

怨霊と悪霊が集まっている中心には怨霊の張譲がいた。張譲は多くの悪霊、怨霊を吸収しているのだ。

 

「よくもやってくれたなぁぁぁぁぁ!!」

 

張譲は多くの怨霊を吸収した結果、藤丸立香が今まで見てきた巨大ゴースト系のエネミーへと変身した。

 

「なっ…!?」

「ボクの邪魔ばかりして…どうしてお前たちはボクの癇にいちいち障るんだ!!」

 

目の前には巨大な怨霊と巨大骸骨の妖魔が立ち塞がった。

 

「董卓。お前は自分が間違っているかそいつ等に聞いていたな。間違ってるに決まっているだろう!!」

「…っ」

「間違っている間違っている。だからこそこのような状況になっておるのではないか!!」

 

月が死に体の漢を救うために魑魅魍魎の十常侍たちや何進を粛清した。更に甘い蜜を啜る悪官たちも粛清した。

朝廷に溜まりに溜まった膿を取り除けば綺麗になると思ったからだ。綺麗になった朝廷に善良な官僚たちを入れれば漢はまた蘇るはずである。

方法は無理矢理であるが腐敗しきった国を一度解体させてから建国し直すには悪くない手ではある。遅かれ早かれこのまま腐敗しきったままでは反乱が起こるのだ。腐敗しきった国が反乱によって壊滅させられるのはどの国でも、どの歴史でもあるものである。

反乱が起これば月が守るべき親友である詠や献帝である白湯さえも殺されてしまう可能性があるのだ。いずれは誰かが漢を壊す。ならば大切な人を守るために月が今の漢を壊したのだ。

 

「新たな朝廷を建てる為に今の朝廷を壊したが…その結果が反董卓連合だ。董卓お前は漢を救うどころが終止符を打ったに過ぎない!!」

 

どんな汚名も罵詈雑言も受ける覚悟はしてきた。全ては漢を、皇帝である白湯たちを救うために冷酷になってまで茨の道を突き進んだ。だが結局は漢を救えなかった。

救えなかった証明が反董卓連合だ。反董卓連合によって董卓についてきてくれる兵士たちは命を落とした。友人であり武将の霞や華雄たちも傷ついた。皇帝である空丹や白湯も危険に晒している。そして一番の親友である詠を今まさに危険に晒されているのだ。

今の状況にどこも漢が救われたと誰もが思えない。月だって漢を救えていない事は嫌でも理解してしまった。

 

「決してお前は漢を救えない。救えなかった。もうお前は死ぬ運命しかないんだよ!!」

 

巨大な怨霊となった張譲は手を大きく広げる。手には妖力が溜まっていく。

 

「死を受け入れろ!!」

 

反乱に失敗した者や国を建て直すのを失敗した者の末路は死だ。それは歴史が実証している。

月は漢の再建国に失敗した。そして逆賊董卓として大陸中に知れ渡っている。反董卓連合に負けた月は捕まれば処刑されるしないのだ。

 

「どうせ殺される運命だ。晒し首にされるのが嫌ならボクがここで塵も残さず殺してやろう!!」

 

恩情だと言わんばかりに張譲が広げた瞬間に妖力が放出され、眩く凶悪な光が月たちを包み込むのであった。

 

「あははははははは。あとはボクが新たに国を建て直してやるさ!!」




読んでくれてありがとうございました。
次回はまたも未定です。(今年中に3章を終わらせる気で頑張ってます)

306
華佗ってアニメでは道教の一員なんですよね。
ゲームでは医者なんですけど。この物語ではどちらの面も持っています。
華佗がメインの話もいずれ書きたいですね。
307
やっぱ恋を強化しずぎたかな。もはやバーサーカー。
あと孔明先生が最後の最後でもっていきました。
308
巨大骸骨の妖魔は…まあガシャドクロをイメージしてもらえば幸いです。
三蔵ちゃんのお経って本当に悪霊や怨霊に効きますよね。(自分はそう思ってます)

あと幕間で秦良玉のことを藤丸立香は良(リャン)さんって呼ぶんですね。

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