ゾイド-ZOIDS- “シールドライガーZERO” 作:MONO猫
気が付けばYouTubeでのゾイド放送も終わってしまいました。
これからもぼちぼちで進めていきます。
よろしくお願いします。
手元の無線機の緊急アラートで飛び起きる。すぐに周囲を確認するが、荒野は静かなまま、夜空には星がきらめいている。放浪の旅を行う際に無線機は欠かせない物の一つで、近隣での戦闘や災害等の情報を得ることができる。
砂漠越えでは砂嵐の発生個所や発生場所の予報を得ることもできる。しかし今鳴り響いているのは救難信号や超大規模災害時のための緊急性の高いアラートだ。更に電波出力から個々で保有しているポータブルタイプからの電波ではなく、各基地に設置してあるような大型の無線機だと分かる。今いる場所で無線が届くのは昨日寄ったルイスのいる基地かこれから向かうレッドリバー検問所防衛基地の二つしかないはずだった。
「ライガー!」
見上げるとシールドライガーも周囲を気にしているようだ。荷物を簡単にまとめシールドライガーに飛び乗る。通常回線で使用する周波数帯を確認するが定期的なノイズだけで特に何も発信されていない。定期的なノイズはおそらく暗号無線だが、退役した身では最新の暗号コードを知らないためその情報を解析することはできない。
また、状況が呑み込めていない現状では、救援にしても避難するにしても動きようがない。まずは情報が必要だった。
近隣で直通接続可能な相手への通信準備をしていると、当の本人からの指定暗号無線が入る。基地を出る際に独自の指定コードを用いた暗号無線を共有していた。お互いコードを理解した上で、複数通信毎にコードを変えていく事で傍受不能な無線通信が可能である。また、無線の指向性を上げることで遠方での通信も可能となっている。
「ロイさん、ルイスです。聞こえていますか?」
声色から緊張が伝わってくる。若干早口になっているがなるべくいつも通りのペースを意識しているようだった。
「聞こえているよ。」
合わせていつも通りのゆっくりとしたペースで返事をする。
「そちらで把握している情報を教えてもらえるかい?」
「はい、・・・。」
こちらの意図を理解して深呼吸してから説明を始める。
「そちらでも緊急アラートは確認しているかと思いますが、現在レッドリバー検問所付近に帝国領土側からの砲撃を受けています。また、同時刻に大陸北部の基地でも同様に砲撃を受けているとの情報を得ています。現状各基地とも健在で応戦しているとのことです。ただし、夜間ということもあり敵影を正確に確認できていないため、帝国軍かそれを模した盗賊かは判断できません。現状共和国軍としては、北部での砲撃規模が大隊相当と大きいことから本隊はそちらであり、レッドリバー側は陽動だと判断しています。ロイさんには帝国行きを中止して頂いて至急南東方面への避難してください。」
「了解した。」
この短時間で広い情報網から必要な情報を得て、戦況を理解できていることが分かった。そしてもう一つ。
「微力ではあるが、必要とあらばこの老兵を前線に投げ打ってもらっても構わないよ。」
「もちろん、そういう選択肢があることは理解しています。ここからは私の予想でしかありませんが、共和国軍が帝国軍の侵攻で北部部隊が本体と断定することすら陽動の可能性があると考えています。その場合レッドリバー基地が崩れるとその東方にあるエレミア砂漠まで一挙に侵攻してくることとなります。また、大陸中央からの侵攻も警戒が必要なため私共も動くことができません。そこで丁度お手透きの方がいらっしゃるのでそちらへの避難しつつ偵察もかねて南東への避難をお願いしたいのです。このような内容で満足して頂けましたでしょうか?」
何も聞かなくてもよかった。むしろこちらの思惑を理解した上での回答だ。いつまでも老兵が口出しは成長の妨げになるもの、自分で情報を集め現状の最適解を判断できるようになったのならもう一人前であり、信頼して任せることが重要なのだろう。それが自分の考えと違う可能性もあるがそれは当たり前で、こちらにも受け止める気合いが必要なのだ。試すなどと上から考えた自分が恥ずかしくなる。
「すまない、余計なことを言ってしまったな。ルイスはよく戦況を理解しているな。得られた情報からこちらがすべきことは私も同じ考えだよ。すぐにでも南東へ移動を開始する。」
「いえ、引退されたのにこき使うようなお願いをしてしまい申し訳ございません。どうかご無理はなさらないで下さい。いざというときはお逃げください。」
「ありがとう。そちらも気を付けて。落ち着いたらまた会おう。」
「はい、ではまた。」と言葉と共に無線が切れる。
シールドライガーは会話の途中から走り出していた。南へは岩場が続くため、遠回りにはなるが南西に向かい、その後南東へ向かうこととした。ほぼトップスピードを維持して半刻ほど走るとレッドリバー検問所防衛基地付近での戦闘の無線が聞こえてくる。
「・・・。・・くそったれ!・・・」
「撃ち返せ!・・。・・撃ち返せ!・・。・・敵は対岸各所に・・分散しているぞ!」
「・・・それくらい見なくたって・・・分かっているさ!あいつら所かまわず撃ち込んできやがる。・・・。・・・バカなんじゃないのか!!?・・・」
「橋だけは死守しろ!・・・。・・・」
「・・。・・了解!!」
砲撃音や爆発音も混じっているためかノイズが入る。混線しているようだった。受信周波数を調整し帝国側の無線もないか確認したが、暗号無線すらキャッチできなかった。通常谷を挟んだような地形かつ夜間には相手が確認できないため砲撃戦の効果は非常に薄い。しかも敵の無線通信が全く行われていない。さらには砲撃の効果を確認するための飛行ゾイドによる偵察すら行われていないようだった。確かにこれは陽動と判断するのも頷ける。
「レッドリバー検問所、応答願います。」共和国軍所属時の周波数で2度呼びかける。想定より早く返答が来る。
「・・。・・・こちら共和国軍レッドリバー防衛部隊。貴機はどこの所属か?・・現在戦闘中のため、確認できない者の接近は許可できない。・・。・・」
「こちら、元共和国軍所属のロイ・クラウド。緊急アラートを受信しここまで来た。援護は必要か?」
敵にも聞かれる可能性があるため、詳細な情報確認等は行わず確認程度で済ませる。
「・・感謝する。しかしこちらの・・・・戦力は十分のため・・・・・・・援護は不要。・・・・直ちに・・・・避難して・・ください。・・・。・・・」
「了解した。幸運を祈る。」
直接やり取りしてノイズの要因を確認する。その間ライガーを高速走行させている状態だが、ノイズの強度は増していく一方だった。既に方角を南東に変えてレッドリバーからは離れ始めている。通常のノイズや混線であれば状況は一定のままのはずである。周囲のノイズが増す要因としては雷雲やその地域特有の磁場等が上げられるが、現在地はそのような地域は無く、進行方向には星が見えるほど晴れ渡っている。状況からしてジャミングと判断できるがそれは同時に敵が国境を既に越えているという最悪の想定である。
ここまで大規模に戦闘を行う敵の目的は共和国へ致命的なダメージを与える効果が得られるため。もちろんエレミア砂漠を越えれば共和国首都であるニューヘリックシティを背後からの強襲が可能になるが、それだけならば大規模戦力で直接戦線を押し上げた方が手っ取り早い。
それでも大規模な陽動に加えてジャミングまで行っての侵攻は共和国に察知されずに強襲する必要がある箇所であるということ。察知されれば早急に対策または退避されてしまうような重要施設だ。エレミア砂漠の南東には小さな農村しかないはずだが何か帝国への脅威となるものが隠されていると考えるのが筋だ。もちろんそのような重要施設を破壊された場合、帝国への抑止力が働かなくなり戦争の激化は免れないだろう。
「・・・どちらにせよやることは変わらないな。いいかライガー?」
高速走行のまま吠えるシールドライガー。深呼吸をして操作を行う。先ほどまでシールドライガーが減衰し調整していた振動が増える。コックピットシートの背後から湧き出すような熱を感じる。正面のパネルに表示してあるライガーのゾイドコアの出力がレッドゾーンギリギリまで上がり、各駆動系のゲインもミリタリーゾーンまで引き上げられる。戦闘時のみに入れるミリタリーモードだ。90tを超える身体を最高速度の250㎞/hまで引き上げてゆく。
視界には一面の砂漠と星空が広がる。レーダーはジャミングの影響でノイズまみれ、無線も当然使えない状態が続く。頼りになるのは自分の目だけである。随分と走り、駆動系の発熱による高温アラームが発報される。機体保護のためスロットルを80%程度に下げ負荷を減らそうとするがシールドライガーはスロットルを固定し速度を維持する。
「ライガー無理はするな、このままではたとえ敵を見つけてもまともに戦闘できなくなるぞ。走ってくれるのはうれしいがここは一度速度を落とそう。」
ロイの言葉を無視して走り続けるライガー。代わりにメインパネルにライガーの装備品リストを表示する。そこには各種兵装の他に昨日基地に寄った際の水タンクも含まれていた。
「全く、相変わらず無茶をする奴だなお前は。」
シールドライガーは何を今更と言っているかのように唸る。スロットルを下げようとする力を緩め、速度を保持する。装備品の一部パージを行い徐々に水が抜けていくようにする。落ちた水はライガーの背から各脚部へと落ちてゆき、駆動部付近まで流れると高温により蒸発してゆく。温度メーターが若干下がりアラームが解除される。水タンクが持つ間は最高速度が維持できるが長時間は持たないだろう。
更にしばらく走ると遺跡が見えてくる。もう少しでエレミア砂漠を越えてしまう。敵はまだ来ていないのだろうか、もしくは敵が攻めてくるということ自体が勘違いであってくれれば良いと楽観視していると2時の方向に一瞬光が見える。
星や建物の反射のような光だったが、ライガーをそちらの方向に向かわせる。次第にその光の反射は複数あり、それは動いていることがわかる。既に侵攻している敵部隊があったとしても高機動ゾイドで編成された1個中隊程度であり、単機でも十分戦えるだろうと考えていた。
「くそったれ。何だあの馬鹿げた部隊は・・・」
全くの想定外だった。小型ゾイドは確認できず、近距離から遠距離まで高火力武装を有するゴリラ型のアイアンコングが12機、シールドライガーと互角の性能で高速戦闘可能なタイガー型のセイバータイガーが32機で構成されていた。
通常の部隊であれば指揮官機として扱われるような大型ゾイドのみの大部隊だ。しかも、侵攻速度を上げるためか各ゾイドともブースター等の高機動換装が施され、何機かのアイアンコングには大型バルカン砲まで搭載されており、大規模要塞すら落とせるほどの大火力だ。
この規模の戦力との単機戦闘経験等もちろんなく、シミュレーションのような規定の動きもない。さらに相手は敵地深くまで侵攻する任務に選ばれたエリートで構成された部隊だろう。周囲に他の戦力はなく、ジャミングにより援軍を呼ぶ術すらない。先ほどの無線の状況から共和国軍もこの状況は把握していないと判断できる。
つまり今ここで帝国軍の侵攻を阻める者は自身を除いて他にいないのである。もちろん単機での戦闘等無謀で十中八九撃墜される。これが追われている立場ならやりようはいくらでもあるのだが・・・
周辺への救援要請等の無線通信手段を試みるがジャミングによりどこにも届かないのだろう。正面を走り抜けようとしている敵が反応しないのがその証拠だ。通信方式を光通信に切り替えて照準を敵部隊に合わせる。
「帝国軍機部隊に勧告する。ここは共和国領土である。即刻侵攻を停止し反転せよ。また、ここより先は大規模迎撃部隊が配置されている。従わない場合は武力による鎮圧を行う。繰り返す・・・」
はったりを含めて2度通信を終えるころにはセイバータイガー4機がこちらに転身し砲撃を開始していた。まだ距離があるため牽制でしかないが戦う意思確認には十分だろう。速度を維持したまま背にある水タンクを自壊させて駆動系を急冷し、他の旅路用の荷物をパージする。ゾイドコアのジェネレーター出力及び各駆動系、電気系のチェック。マスターアームスイッチをSAFEからARMに切り替え、戦闘前のチェックを短時間で済ませる。
「ライガー、やるぞ!!」
シールドライガーが雄叫びを上げる。