ゾイド-ZOIDS- “シールドライガーZERO”   作:MONO猫

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早くも更新が遅くなってしまっています。

ストーリーや内容はおよそ決まっているのですが、都合により時間をかけられていません…言い訳ですw
時間を割いていないだけです。

最近NHKの筋トレにハマって筋肉痛が酷い今日この頃です。それでは本文に移ります。



0章-2 伝説の三銃士が語るゾイド乗り 後篇

 山小屋の湯が沸いたことを伝える音が響く。ワグナーは椅子から立ち上がると暖炉の上にあるケトルを持ち上げる。用意していたドリッパーにゆっくりと湯を入れながら話し始める。

 

「今からもう30年以上前の事だな。当時私とグロスコフ、ビービーの3人は帝国軍基地でどのような相手でも負けなしだった。軍の演習では満足できなくなり、各地の強者が集まると言われていた勇者の谷に来たんだ。ここでも私たち3人は勝ち続け帝国の三銃士とまで呼ばれるようになっていた。そんな頃に彼が勇者の谷に訪れた。」

 

 思い出しながらゆっくりと話すワグナーの声と、珈琲の香りが小屋に広がりリンはその香りを堪能しながら手元のメモ帳に記入していく。

 

「初めて会ったのは彼がまだ共和国軍の軍人だったころだった。彼の見た目は小柄で優しそうな雰囲気、歳は私より20近くは上だっただろうか。相当腕に自信を持っていたのだろう、初戦にいきなり三銃士の誰かと戦ってみたいと言った時は皆が笑った。見ず知らずのおっさんが当時、曲がりなりにも帝国最強と言われていたゾイド乗りに戦ってみたいと言ってきたんだからな。」

 

 話しながら入れた珈琲を渡す。「どうも」と飲もうと口を付けたが熱かったためか、慌てて離すとすぐにコップを置いた。そんなリンの姿を見ながらクスリと笑うと珈琲を一口すすりまた話し出す。

 

「勇者の谷にいたゾイドはどれも装備を整え、標準の装備よりも火力を上げていた。そんな中にゾイドとしては強力だが、標準装備だけのシールドライガーを誰もが甘く見ていた。

 そんな思い上がりを一蹴するつもりで、腕に覚えのあるコマンドウルフ乗りとセイバータイガー乗りが戦ったが、結果は全弾撃ち尽くしても一発すら当たらず、襲いかかった一瞬で体勢を崩されたところを狙われ終了という有様だった。当時の私でもそこまではできなかったであろう芸当だよ。」

 

 暖炉に薪をくべ、元の椅子に腰をかけ目線を戻すとリンは少し驚いた顔をしていた。

 

「一発も当たらずですか。先ほど勇者の谷を見てきましたが弾を避けられる程広くはなさそうでしたが。」

 

 ワグナーにとって相手の狙いを読み射撃を避けるのは可能だが、それは数秒の話。敵の注意を逸らし距離を詰めるまでの時間でしかない。とても勇者の谷の狭い空間で全弾避け続けるなんてことは出来ようもない。

 

「そうだ。彼は一発も当たらなかったんだ。そんな姿を見てグロスコフが戦ってみたが結果は散々なものだった。ようやく出てきた三銃士に彼も、シールドライガーもやる気になったのか戦闘前に雷鳴のような咆哮を上げたんだ。その一声で周囲の小型ゾイドはゾイドの戦意をコントロールするコンバットシステムがフリーズしたという噂すら流れるほどにな。

 谷の上にいた私も全身に鳥肌が立ったよ。一体どんな化け物を相手にしていたのかと。上から見ているとグロスコフがワザと弾を外しているように見え、近づけば翻弄され見失っていた。」

 

「近いのに見失うんですか。」

 

 リンには何を言っているか分からないようだった。もちろん戦闘経験のないリンにとって近づくほど見失わないように感じられるのだろう。一定距離まではその通りであるが、近づき過ぎれば視界外に入られる可能性が増してしまうのだ。しかも敵はそれを理解しているグロスコフに対し裏を読み切り、巧みに利用してくるのである。

 

「障害物の無い環境では、離れていれば敵を射撃の照準内でとらえ続けられるが、近づき過ぎれば照準外に行かれやすくなるのだよ。」

 

 少し考え、なるほどと納得したリンを確認する。通常距離を詰めた側が主導権を握る事が多く、グロスコフがそう簡単に主導権を奪われるようなミスはしなかった。しかし彼相手ではまるで子供のように弄ばれているのは明白だった。たとえ私でも戦いにすらならなかっただろうとワグナーは思い返す。

 

「彼とシールドライガーの正式な試合はそれが最後だった。その日の夜、彼は練習と称して我々三銃士に1対3を申し出てきた。自分の練習だと言っていたが、ギャラリーのいない時間を狙ったのは彼なりの配慮だろう。

 我々は持てる全ての武器と技術を駆使して戦ったが、結果は弾が何発か掠っただけ、直撃は無く装甲の角度を調節して受け流しているかのようだった。あれは彼の意思で避けるより受け流すと判断しての事だろう。装備も我々はフルアーマー、全弾撃ち尽くす勢いだったのに対して彼は一発も撃たず、シールドすら張らずにライガーの爪と牙のみで戦っていた。

 あれはもはや人ではない、化け物の領域だろう。」

 

 そう話しながら自身のカップを持つ手が震えている事に気がつく。

 

「そんなにも強い方だったんですね。」

 

「ああ、とても強かった。しかも彼は戦闘後、我々3人に数多くの改善課題を教えてくれた。その時初めて自分が如何に井の中の蛙となっていたかを痛感したよ。彼はもともと休暇で無理やりここまで来たようで、すぐに共和国に戻ってしまった。

 私が知っているのはそこまでだ。その後何処かの戦場で相見えるかと期待していたが、一度たりとして会うことも、彼の話を聞くことすらなかったな。あれほどのゾイド乗りであれば歴史に名を残していてもおかしくはないと思うのだがな。」

 

 そこまで言い終えると残りの珈琲を飲みきり、椅子から立ち上がり窓際から外の景色を見渡す。勇者の谷からほど近い丘の上からの風景は金色の草が広がり、空は鮮やかな紅く染め上げられていた。もうすぐ日没である。

 

「彼についてはこんなところかな。今日の宿はとってはあるのかな。少し下ると小さな村だがそこになら宿があるぞ。」

 

「ありがとうございます。そちらに伺ってみますね。ところで、最後に一つだけご存知であれば教えて頂きたいのですが、その方のお名前はなんと言うのでしょうか。」

 

 礼を言い、カップを片づけようとする彼女を制止し、まだ彼の名前を言っていなかったことを理解する。やはり心のどこかで避けてしまっていたのだろう。まったくもって良いトラウマだなと内心笑いつつ彼の名を口にする。

 

「そのシールドライガー乗りの名前は、ロイ・クラウドだ。」





ようやく主人公の名前が出てきました。名前だけですけど・・・

補足ですが。ゾイド・ゼロの主人公であるビット・クラウドとの関係は語るつもりはありません。

ビットの祖先とイメージして頂いても良いですし、赤の他人ととらえて頂いても結構です。

次回はそんなに遅くならないようにしたいと思いますが、温かい目で読んで頂けると幸いです。

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