ゾイド-ZOIDS- “シールドライガーZERO”   作:MONO猫

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更新が大幅に遅れてしまいました。

一度書いて内容を見直すと変えたい事が次から次へと・・・
小説は難しいですね。

こんな感じですが、これからもどうぞよろしくお願いします。


0章-3 元共和国軍大佐と鬼教官 前編

「クルーガー様。ロイ・クラウドという人物の事はご存知でしょうか。」

 

 懐かしい名前に目の前のまだ若手であろう記者が作成した書類から目を上げる。書類の内容はバン・フライハイトについての記事であり、軍の機密情報や非公開情報が無いかのチェックを行っていた。

 

「ロイ・クラウドか・・・知っている、知っているとも。だが、何故その名を君が知っているのだ。彼は私よりもかなり歳が上で、君が知っている世代の人ではないはずだが。」

 

 リン・ヘンリーの回答を一通り聞き、驚きとともに納得する。ロイ・クラウドが帝国の三銃士にすら勝っていたとは知らなかったが、その結果も彼の強さに魅せられた者の一人として腑に落ちるものだった。

 

「ロイ・クラウド様について知っていることを教えて頂けないでしょうか。」

 

 デスザウラー討伐後各地では戦闘の爪後や多くの犠牲により国民は疲弊しきっていた。たとえ巨大な脅威が消えたとしても盗賊等の脅威は未だ多く、戦後処理により兵士を各地へ派遣できない現状を鑑みて、国民には復興の象徴と脅威への抑止力が必要とされていた。また敵国とされていた共和国と帝国の関係回復のため、共和国大統領と帝国陛下の共同声明だけでなく、軍も共同関係にあることを伝える必要があった。

 

 そんな時に彼女が共和国と帝国の共同出資により運用されているガーディアンフォースとデスザウラーを討伐した英雄バン・フライハイトの記事を書きたいと申し出てきたのだ。しかし掲載予定は地方の小さな記事であり、各地へ広げるため両国の全国紙での掲載を条件とした。

 

 その効果は絶大で記事の出回った集落近郊での盗賊による被害が減少し、復興は想定以上に早く進んでいるという。

 

「よかろう、彼について私が知り得ていることを教えよう。ただし私も既に老いぼれの身。随分と昔の事だから記憶が曖昧な点も多いのだ。その点は許して欲しい。」

 

 ふざけて見せるクルーガーに、驚きつつもくすりと笑い、慌てて弁解する。

 

「っ…。いえ、すみません。冗談もおっしゃられるのですね。ありがとうございます。よろしくお願いします。」

 

 彼女の緊張が少しほぐれたのを確認し一息つけると、思い出しながら語る。当時は機密情報だったことも今となっては話しても何ら問題が無いためだ。むしろ、バンの名声を広める記事を依頼した側からの報酬としての方が大きいだろう。

 

 ロイ・クラウドと初めて会った当時は戦争も下火になり、共和国軍の兵士の戦闘経験不足によるゾイド乗りとしての戦闘技術の低下が問題視されていた頃だった。

 

 兵士のゾイド乗りとしての戦闘技術向上の為、各レベルに合わせた模擬戦闘訓練のプログラムを作成することが決定すると、私は開発メンバーの一員に選ばれた。プログラム作成に当たり、戦闘技術の参考のために各部隊から数人の兵士が集められ、選抜されたゾイド乗りの中にその姿を覚えている。

 

 お世辞にも強そうに見えない彼は、周囲の兵士の中で最も背が低く、体も小柄であり、表情も穏やかなためか選抜員の中で最年長でありながら威厳は皆無だった。第一印象は弱そうに見えるほど。しかし、そんな彼に何か魅かれるものを感じていた。いや、ただ定年間際の軍人が選抜されてきたことに違和感があっただけだろうか。

 

 私は各兵士の性格や所作の確認のため、監視という名目でついて回っていた。多くの兵士は自分や自身の部隊が如何に強いかのマウントの取り合いを行なっていたが、彼は歳のためか参加せず受け流し、誰に対しても丁寧でゆっくりと話し、困惑していれば手を差し伸べるような人柄だった。

 

 戦闘訓練プログラムの作成前に、まず各兵士の操縦技術力把握のため、各自の愛機であるゾイドで射撃、走行、回避等の項目で評価をした。

 

 ロイの愛機はシールドライガーであり、射撃の結果は平均的な結果となっていた。適切に撃ち抜いてはいるが、ゾイドコアからは逸れている弾が多いのだ。

 

 しかし、ゾイドの形をした的は、数発を脚部や機動性を奪うような箇所に撃ち込み、その後ゾイドコアもしくは戦闘不能となる所を撃ち抜いていた。この結果を見たとき、彼は間違いなくエリートだと確信した。

 

 走行の項目では出現する障害物を避けてタイムを測定したが、多くの兵士が体勢を崩しながらもタイムを削って見せた。その中でもロイのタイムは最下位のものだった。彼は速度こそ出していなかったが、出現する障害物が何処に出てくるか分かっているかのような無駄のない動きで、どのタイミングでも戦闘可能な体勢で走行していた。評価点を気にして無理をした兵士と軍人として常に戦える姿勢で挑むロイ。評価点では他の兵士が優勢だったが、軍人として正しいのは彼の方だろう。

 

 回避でも他の兵士と比較して評価が低くなっていた。もちろんそこにも理由があり、評価は完全に回避できた数だが、彼は殆どの弾が掠っていたためである。しかし致命的な箇所には一切直撃しておらず、あえて完全には避けず受け流しているかのようだった。

 

 その後行った模擬戦の総当たりでは、無敗の戦績を残したが時間切れによる引き分けの多さが目に付いていた。監査員の判定でロイは回避が得意だが、止めを刺す程の実力が無いのではとなっていた。当日は他の業務で見られなかったため、後日戦闘記録を見て愕然とした。彼は各模擬戦で一発しか撃っていなかったのだ。

 

 模擬戦にはペイント弾を使用しており、各ゾイドの装備可能な分の弾は搭載してある。しかし当時のペイント弾は通常弾と比較して弾道が安定しないため狙いにくくなっている。その為、他の兵士の射撃成功率は通常弾の訓練を大きく下回り、ほとんどの弾を撃ち尽くしている。そんな状態でもロイは模擬戦の半数は一撃による撃墜判定で勝利していた。外れた場合は距離を詰めて回避していることからロイは各模擬戦で自身に一発のみの制限を設けていたようだ。模擬戦での格闘戦は禁止していたため、外せば回避し引き分けに持ち込んでいた。

 

 普段大人しく優しいおじさんという印象のロイと戦った兵士は皆、口をそろえて彼の事を鬼教官と呼んでいたことを疑問に思い聞いてみたが、戦闘後自分が如何に無駄な動きをし、無駄弾を撃っていたかを徹底して指摘されていたらしい。

 

「ワグナーさまも同じようなことを言っておりました。」

 

「なるほど、彼との戦闘後の姿の想像は容易にできてしまうな。」

 

 クスクスと笑う彼女の顔を見て、当時のゾイド乗り達が彼との模擬戦を他の仲間と語り合う姿を思い返す。彼はいつも物事の本質を見極めてくる。こちらがこの程度で良いだろう、多分大丈夫だろうと甘い考えは当たり前のように見抜かれてしまう。言われたことに反論しようにも、正論ばかりでぐうの音も出ないのだ。

 

 ふと、クルーガー自身も口元が綻んでいるのを感じると軽く咳払いをする。

 

「さて、では彼と模擬戦闘訓練プログラムの内容について説明していこうか。」

 





0-2に続き0-3も前篇と後篇に分かれることになりました。

 表現の仕方をいろいろ試行錯誤しながらですので読みにくいと感じた場合は申し訳ありません。

 プテラスでフィーネに頭を叩かれて倒れ、ウルトラザウルスでは転んで頭を打ったクルーガーさん。彼にも若いころはあったんですよね。

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