ゾイド-ZOIDS- “シールドライガーZERO”   作:MONO猫

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相変わらず投稿が遅いMONO猫です。
それでも読んでくださる方々のおかげで続けられています。
ありがとうございます。

それでは後編です。


0章-3 元共和国軍大佐と鬼教官 後編

 模擬戦闘訓練プログラムが本格的に始動すると各兵士は連日各難易度の課題プログラムをこなしていく。その中で見つけた修正箇所を随時更新していく事の繰り返しであった。

 

 模擬戦闘訓練プログラムは大きく3段階あり、何度も繰り返して問題点や改善を加えていく。幸いなことにレベル1と2の仕様はすぐに決定することができた。

 

 ここまで話しながらズラッと並んだ棚に押し込まれるように詰められた中から古いファイルを一つ取り出し、中の資料を見直すクルーガーの姿を驚きの表情で見ているリンに気付き、クルーガーはバツが悪そうに微笑む。

 

「すまない。ずいぶん昔のことで細かい仕様は忘れてしまっていて。資料を見させてもらうよ。」

 

「いえ、むしろこれだけある中からよく、そこに資料が入っていると覚えていられますね。もう、各基地での出来事まで覚えていそうです。」

 

 驚きながらも茶化してくるリンの言葉をクルーガーは笑いながら答える。

 

「いやいや、全ては覚えられないな。もう歳で各基地での出来事も概略しか覚えていない。細かいところは、今のように当時の資料を見なければならないからな。…ん、あったな。」

 

 驚きを超え、呆れ気味のリンをよそにクルーガーはまた語り出す。まるでついこの間のことのように語るその姿は楽しんでいるようだった。

 

 レベル1は単機で、帝国軍のベースとも言えるイモムシ型のモルガとの戦闘とした。レベル1の中でも、敵機の数を複数段階、戦闘環境も荒野や森林、砂漠等を設ける事で、新兵から中堅近くまでの広い層をカバーした。

 

 レベル2では敵地攻略or防衛を目的とし、高火力と厚い装甲を有し、『動く要塞』とも呼ばれるレッドホーンを、複数機もしくは単機での討伐とした。通常での戦闘でレッドホーン等の大型ゾイドと戦う機会は少ないため、実戦経験の多い前線基地の兵士からはレベル2を重要視する声が多く挙がっていた。

 

 さらに上級の敵を求めるであろうエース達のためのレベル3には、仮想敵機とし帝国軍の高起動ゾイドであるセイバータイガーを想定していた。しかし情報不足によりシミュレーションに組み込むことができなかった。そこで、共和国の高起動ゾイドであるコマンドウルフ1個中隊の撃滅とした。

 

 また、コマンドウルフの火力ではセイバータイガーと比較して不足するだろうことから通常の10倍という極端な火力とされた。その為一撃でも直撃すれば撃墜されてしまう。しかもコマンドウルフの動きはマイスターの中でも傑出した技量をもつコマンドウルフ部隊を参考にされている。

 

「そんな馬鹿げた部隊に単機で挑むのですか。」

 

 背筋が凍りつくように感じ、身震いしながら問うリンに対してクルーガーは静かにうなずく。

 

「当時の技術力は帝国軍の方が進歩しており、同数で戦えば負けることが想定されていた。ゾイドは損傷しても修復すればすぐにでも戦場に戻れるが、兵士はそうはいかん。新兵を一人前とし戦場で戦えるようになるのに何年もかかってしまう。ましてや戦場では仲間の援護すら受けられない環境で戦い、生き延びなければならないのだ。厳しい条件程生き延びる確率が上がるから、それは必要な事となる。」

 

「たしかに・・・そうですね・・・。しかしそのような条件での戦闘訓練をクリアできるのですか。」

 

 戦闘条件の厳しさに納得しつつも、信じられないという顔をしているリンを見ながら、口元が綻ぶクルーガーは両肩を上げて見せ、再び語り始める。

 

 まったくその通りで、集められたゾイド乗りでもなかなかクリアできないため、課題はどうしたらクリアできるかという内容に切り替わってしまっていた。そんな中でロイは一人で何度も挑戦し続け、数回に1機ずつ多く撃墜していった。

 

 皆が何処かで頭打ちになるだろうと語る横で、私も同意しながらもいつかクリアできるのではないかという期待も抱いていた。

 

 最終的な結果からいえば彼はクリアして見せた。しかしその動きは最早、私、いや、その場にいた誰もが想像できないような機動で撃墜していた。その後彼はいつも通りの流れで、実戦に必要の無い機動等を省きレベル3を完成させていった。誰もがその姿に圧倒され、畏敬の念を抱くこととなった。

 

「ん、あった。これを見てくれたまえ。」

 

 クルーガーはお目当ての資料を見つけたらしく、その資料をリンに渡して見せる。

 

「・・・レベル4!?」

 

「そう、この計画の最中彼は隠れてレベル4も検討していたのだ。」

 

 リンが驚いたのはレベル4があったことではなく、敵機の設定である。帝国の情報が不足気味のためか自国内のゾイドのみで組まれていた。

 

「ゴジュラスが3機・・・シールドライガーが10機・・・コマンドウルフが20機・・・一体これは何の冗談ですか。」

 

 ここまで来ると大隊クラスの戦力となってくる。しかも各ゾイドが重武装又は高機動装備に換装されていた。小さな基地なら小一時間で消し炭にできてしまうほどの火力である。これに対して単機で挑むというあまりにも無謀で驚嘆せざるを得ない設定であった。

 

「こんなもの訓練ですらないです。これでは一切抵抗できない集団リンチではないですか。」

 

「それが正常な反応だ。しかし世の中は無常でな、そういった環境に遭遇してしまうことが稀にあるのだ。それでも生き延びるためにこのような条件も想定するべきなのだ。しかしこんなもの誰もクリアできるわけがないとも考えていた。ところが世間は広いようでな、私の知る限りこの難易度をクリアして見せたゾイド乗りは4名いるのだ。」

 

 既にリンの筆は止まったまま、クルーガーの言葉を一字一句として聞き洩らす事の無いように椅子から落ちてしまうほど前のめりになっていた。そして、形式的なこの言葉を漏らす。

 

「それは、どなたなのですか。」

 

「もちろん英雄級の人物達だ。一人目は君が記事を書いているバン・フライハイトだ。あの決戦後このプログラムを知るとやってみたいと言い、一度でクリアして見せたよ。あまりにも楽しそうにやっているもんだから見ていた多くの兵士まで感化され挑戦していたよ。まぁ、ことごとく撃墜されていったが。」

 

 にやりと笑うクルーガーの顔はどこか誇らしげであった。

 

「バンの父親であるダン・フライハイトもゾイド乗りとして優れており、ゴジュラス重武装試作機で挑み全損状態だがなんとかクリアしている。知っているかもしれないが、その直後の戦闘で帝国の一個師団を相手に援軍の無い中一個中隊で挑み、残念ながら亡くなっている。だが、彼の決死の戦いにより敵へ壊滅的なダメージを与え撤退を余儀なくさせている。彼がいなければ今の共和国は無かっただろう。」

 

 そう言うと部屋の端に飾ってある額縁を指さす。そこには若かりし頃のクルーガーと肩を組んでいるダン・フライハイトであろう人物が写っていた。

 

「もう一人は知っているとは思うが、バンのライバルともいえるレイブンだ。彼もまた一度でクリアしている。」

 

 レイブンは先の戦争中何度もバンと戦っており、バン以上の実力者と聞いている。また多くの基地を単機で陥落させており、共和国への甚大な被害を齎した罪により、戦争後の軍法裁判にて無期懲役が言い渡されたはずだったが、何故かガーディアンフォースの一員として働いている。

 

 万年人手不足なガーディアンフォースにとってどんな問題児であろうと実力があるのであれば遊ばせておけなかったらしい。多くの反対意見もあったが、バンに同行させることと実力評価を条件とした。

 

 その実力評価としてこのレベル4が活用されたという。しかも愛機のジェノブレイカ―の主砲ともいえる荷電粒子砲を使用せずにクリアしたそうだ。過去の結果から荷電粒子砲により一撃で一個大隊を蒸発させているから、簡単過ぎるのではという声すら上がっていたからだ。その後彼はガーディアンフォースの一人としてバンと共に各地を廻っている。

 

「本来であれば投獄されているはずのレイブンが拘束されず、ましてや治安を守るガーディアンフォースとして働いているのにはそんな事があったのですね。」

 

「ああ、レイブンも見た目はあれだが、中身は素直で彼なりにずいぶん悩んだ末の行動であり、罪滅ぼしのようなものだろう。今は真面目にやっているようだし、今後問題も起こさないだろう。守るべきものもできたようだからな。」

 

 にやりと笑って見せるクルーガーにリンは納得した。確か彼の近くには一人の女性がいたはずであり、戦場で彼女を救ったとも聞いている。

 

「話は戻りますが、レベル4をクリアした最後の一人は誰なのですか。」

 

 分かっている答えを聞くことに対して抵抗はあるが、クルーガーの言いたくて仕方ない、少年のような顔を見ると聞かなくてはならないのだろうと納得する。

 

「すまない。言わせてしまったな。分かってはいても顔に出てしまった。余計な説明はいらないと思うが最後の一人がロイ・クラウドだ。彼はゴジュラス重武装試作機やブレードライガー、ジェノブレイカ―といった新型機ではなく、素体のシールドライガーでクリアして見せたのだ。全ての動きに意味があり、一切の無駄が削がれた完璧な戦い方に憧れたものだ。」

 

「そこまでの実力と功績を上げた人物が何故歴史や記録に名を残っていないのですか。今まで聞いてきたことからもっと有名となっていてもいいはずです。それなのに功績どころか名前すらほとんど残っていません。」

 

 ここまで溜めていたものが溢れるように言い放つリンの心を見透かすようにクルーガーは頷いて見せる。リンもなんとなく理解はしていた。しかし言わなくては納得できないのだ。

 

 クルーガーは模擬戦闘訓練プログラム作成完了後、ロイに本部への移籍と昇進を受け入れる事を打診していた。

 

 

………

 

 

「ロイ大尉。私たちにはあなたが必要です。是非本部に残って頂き、私たちの指揮官として指導して頂けないでしょうか。」

 

 詰め寄るクルーガーにロイは静かにやさしい目で言葉を返してくる。

 

「ありがとう。そう言ってもらえるのはとてもうれしく思うよ。しかし、私がここでやるべきことは全て終わった。模擬戦闘訓練プログラムを今後どのように活用していくかはクルーガー、君にかかっているのだ。」

 

「私…ですか。私では無理です。貴方のような方が共和国の未来には必要です。」

食い下がるクルーガーをなだめるように、ロイは静かに力強く語る。

 

「新しい時代を掴むには新しい指揮官が必要となるものだ。それは私のような古い者ではなく、君のような新しい時代を生きる者たちだ。辛い事もあるだろう、敗北してしまう事もあるかもしれない。だが、諦めず前に進んでみせろ、そうすれば結果は自ずとついてくる。必ずやり遂げろよクルーガー。」

 

 そう言い残し、ロイは元の地方基地へと戻っていった。後日、本部にいるロイの教え子達を調べてみると、過酷な任務でも確実にこなす強者揃いだった。

 

 当時レベル4の存在を知っていたのはクルーガーだけであり、受けるに相応しい人物が現れるまで公言しないよう言われていた。

 

 

………

 

 

 その数年後彼は退役しており、その時は諸事情によりシールドライガーと共に退役している。しばらくして停戦協定が破られた。その際にロイ・クラウドと思しき者から無線が入っているが、その後行方不明となっている。

「ロイさんにとって名誉など必要無かったのかもしれませんね。本日はありがとうございました。まだおぼろげではありますがなんとなく分かってきました。」

 

 深々とお辞儀をするリンを見て、クルーガーは満足そうに椅子に座りコーヒーを啜り始める。

 

「ところで、戦争時にハーマン大佐におっしゃられた言葉はロイさんからの言葉だったのですね。」

 

「ブッッ!な…!何故それを!?」

 

 飲みかけのコーヒーを吹き出すクルーガーをよそに微笑みながら軽くウインクをするリンは最後にもう一度深々とお辞儀をすると退室していった。

 

 後日ハーマン大佐が呼び出され説教されたのは言うまでもない。

 

 

0章完

 




ようやく0章が終わりました。

時間軸を遡ったり等四苦八苦しながらでしたが、なんとか0章を乗り越えられました。
読んでくださった方々ありがとうございます!!

これからもよろしくお願いします。



次回からついに1章の始まりです。
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