ゾイド-ZOIDS- “シールドライガーZERO”   作:MONO猫

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ほぼ一年間も更新していませんでした。
申し訳もございません。

そんな作者の作品ですがここまで読んで頂きありがとうございます。

さてさてようやく始まる第1章ですがこの作品は長編ではない予定なので気楽に読んで頂けると幸いです。



1章-1 わがままなライガー

 初対面の誰もが私のことを希望の目で見上げ、乗り込んでくる。そして私の事など何も考えず指示を出してくる。時には自傷行為ともとれるような戦いを求められることがあり、気に食わなかった。

 

 合わないタイミングや気乗りしない指示は無視することもあった。私にだって意思はある。そのためか最終評価はいつも決まっていた。

 

「こいつ俺の言うことを何も聞かない。故障しているじゃないか。」

 

 しかし、目の前にいる者は初対面の私に声をかけてきたのだ。

 

「初めまして。私はロイ・クラウドだ。君とともに走りたいのだが乗らせてもらっても良いかな。」

 

 おかしいやつだと思いながらも、搭乗を許可するようにコックピットのある頭を下げる。最後にはどうせいつもと同じ言葉を発するのだから早く終わってしまいたかった。

 

 自身がどんなものとしてあるかを理解しているつもりだった。私は共和国軍で運用される兵器であり、与えられた任務をこなす。

 

 そのために必要以上に武装されたこの体は本来の青いボディ色から目立たないよう他の個体同様白い塗装が施されていた。共和国軍の中で私はRZ-007(シールドライガー)と呼ばれ、各基地の階級が高い者が乗るゾイドとされていた。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 あれから数十年が経っただろうか。彼は突然私から離れようとした。

 

「ライガー、今まで共に戦ってくれてありがとう。お陰で無事ここまで生き残れたよ。これからは新しいパートナーと共に生きて行ってくれ。」

 

 何を言っているのだ。私があなた以外を乗せるわけが無い。

 

 その後しばらくは多くの新しいパートナーと言う奴が乗り込んでくる。しかし誰が乗り込んでも動きがギクシャクし、呼吸が合わない。仕舞には気に入らない者を放り出し踏み潰す直前まで行ったことすらあった。候補者は誰も新しいパートナーとして適合しなかった。

 

「お前我がままばかり言っていては整備すらして貰えなくなるぞ。たまには相手に合わせろよ。」

 

 呆れてため息をつきながら声をかけてくるが、そんなことは楽しくないと地団駄を踏むかのように前足で土煙を上げる。

 

「この基地どころかこれ以上の乗り手はわが軍にはいません。ロイ大尉、この際シールドライガーと共に退役されるというのはいかがでしょうか。」

 

 ロイの横にいる新しいパートナーとやらを押し付けてきた奴が渋々口にする。

 

「残念ながらこのままではこのシールドライガーを遊ばせていることになります。それならばいっそロイ大尉と共にひとまず退役し、予備役としていてもらうのも良いのではないでしょうか。」

 

 ロイは軽くため息を吐くと近寄って見上げてくる。

 

「全く、わがままな奴だな。一体いつまで私を働かせるつもりだよ。今までのように毎日整備はして貰えないのだ。お前はそれでも良いのか。」

 

 それができるのなら早くそう言えよ。私は気分が高揚し吠えていた。

 

「では、正式に処理を行ってきます。」

 

 そう言うと作業着の男は足早に立ち去った。思っていたよりも良い奴なのかも知れないな。そんなことを考えているとロイが歩き出す。

 

「最後のフルメンテナンス整備だろうからお前の好きなようにしてやろう。ひとまず軍の規則からは脱するのだからな。ちなみに武装の強化はできないと思うぞ。」

 

 すぐさま要求項目をまとめ整備用データを作成する。要求したのは初期装備以外の搭載した武装解除、ボディを本来の青色へ戻すことだった。余計な武装は動きにくく、白いボディは軍での運用機として仕方ないが気に入らなかったからだ。

 

 確認したロイのため息と笑顔は今でも忘れていない。お前はそういうやつだよなとでも言いたげな表情だった。

 

 

・・・・・・

 

「ライガーお願いだからもうしばらくそのままでいてくれ。老人にこの日差しは堪える…」

 

 立ち上がったことで腹の下の日陰から少しずれた所にいるロイは荷物に塗れて見上げてくる。周囲は一面砂に覆われた世界でまだ朝日にもかかわらず、気温をぐんぐんと上昇させる。自身にとっては問題のない気温や日差しであり、脚部から放熱すればすぐにでも冷却は可能だが、ロイにとっては耐え難い暑さなのだろう。

 

 再び横にしゃがみ日陰を作り出すと礼を言いつつ、朝食を取っていた。バーナーで焼いたベーコンをパンで挟んで頬張り、淹れたての珈琲を啜る。特に食事の必要のない身体だが、相方が美味しそうに食べる姿には惹かれるものがある。しばらくして荷物を片付けたロイが乗り込んできて歩き始める。

 

「ライガー、この旅に出る時走ることを禁止してゆっくりここまで来たが、水がもうすぐなくなりそうなのだ。すまないが今日は水が手に入るまで走ってもらうぞ。足は鈍ってないだろうな。」

 

 ようやく許しが出た。どれだけ待ったことか。既に1ヵ月近くもゆっくり歩かされるこっちの身にもなれよ。と態度で示そうという気持ちもあるが、走れることへの喜びですぐに吠えた自分に呆れてしまう。

 

「ここからしばらく南下したところに小さな基地があるはずだ。そこまで走るぞ。」

 

 こっちの思いを知ってか、笑いつつも行先に向けてスロットルレバーを開けるロイと同時に全速力で加速を始める。今までいたところは砂煙と共に一瞬で遠ざかっていく。

 

 やはり全速力で走るのは楽しいと思いつつも多少はコックピットへの揺れを抑えている自分が誇らしいライガーだった。

 

 





本話はシールドライガー目線での話でした。
ゾイドだって生き物であるならばそれなりの意思表示だってあって良いはずですよね。

次話はもう少し早く更新できるように頑張ります。

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