ゾイド-ZOIDS- “シールドライガーZERO” 作:MONO猫
久しぶりすぎる更新です。
毎度短いですがたのしんでいただけたら幸いです。
こんな感じですがよろしくお願いします。
その日はいつにも増して暑かった。たまに吹く熱風は砂埃を運んできて、耳に届くのは朝からひたすらに数字を繰り返して叫ぶ声とコンクリートの上をブーツで走り回る音やゾイドの走行音。空を見上げればレーダーがクルクルと回り続ける。
ここ一月ほどで感知したのは物資を運んでくる業者を数回程度で、見晴らしの良いこんな所では無用の長物である。近くに街があるわけでもなく、帝国との戦線が近いわけではない。ここ最近のこの基地での戦闘記録はほぼ皆無と言って良いくらいだ。
「失礼します。ルイス中尉。各部隊とも準備完了しました。」
敬礼し入ってくる兵士は大声を上げながら報告に来る。
「了解した。今向かう。」
顎を触りながら剃り残しがないことを確認しつつ歩き始める。コンクリートの通路を抜けると20名の兵士が整列していた。皆が緊張の面持ちと期待からか目を輝かせている訓練兵だった。模擬戦は週に1度しか行わないため、皆楽しみで仕方ないのだ。待ちきれないという視線を浴びながら一通りのあいさつを済ませると模擬戦を開始させる。
「危険ですので指令室からの指導をお願いします。」
「いや、私はここでいい。より細かい指導をするのは近いほうがいいからな。お前たちはしっかり記録しておけよ。」
訓練兵同士の模擬戦は酷いもので、子供の取っ組み合いのほうがましに見えてくる程だった。戦闘では、ゾイドを手足のように動かすのはもちろんのこと、咄嗟の動作でも無駄なく操縦しなくてはならない。いくら操縦しやすいゾイドとはいえ、意思を持った機械と同調することはそう簡単ではない。
そんな中でも腕の良い者はいて、動きに雑さはあるが磨けば相当なものになると断言できるほどだった。それぞれの癖や悪いところはよく見えるが、良いところを見出して育てることはやはり難しい。つい強い言葉で言ってしまうたびに後悔する。
『こちら管制官。ルイス中尉!ルイス中尉!キィー・・・』
「落ち着け。どうした。何があった。敵襲ではないのだろう。ゆっくり話すんだ。」
慌てているためか無線の音量が大きすぎて音割れを起こす。耳が壊れたと感じるほどだった。敵襲ならサイレンを鳴らすが、そうではない。では何か事故でも発生したか。想像を巡らせながら説明を促す。
『すみません。はい、敵襲やトラブルではありません。ルイス中尉もご存じなお客人が来られました。元大尉のロイ・クラウド様です。』
「なんだって!なぜロイ大尉が!?・・・」
最後の名前を聞くと食い気味で大声を上げ、持っていた資料をぶちまけてハッとする。模擬戦を続けていた訓練兵も動きを止めてこちらを見ていた。耳まで熱くなるのを感じつつ、足元に広がる資料を拾う。
『砂漠を移動してきており、水が欲しいとのことですがいかがいたしましょうか。』
「必要な量の水をお渡ししておいてくれ。私もすぐに向かう。・・・」
「お前たちは訓練を継続していろ。」
未だに動きを止めている訓練兵にそれだけ言うと基地の入り口へ歩き、訓練兵から見えなくなるであろう所からは全速力で走りだした。基地の入り口には誰もいなかった。そういえばどこにいるかを確認せずに走り出していた。立ち止まるといつもより早く、強い心臓の鼓動が聞こえてくる。ガタイの良い男が年甲斐もなく慌てているのだ、自身の今の姿を想像すると全くもって指揮官らしくないだろう。とてもこの状態で恩師と会うことはできないと感じながら、深呼吸をする。
水の音が聞こえてくる。おそらく入り口ではなく基地の給水タンクのところまで案内したのだろう。速足で向かうとそこには空と同じ色のシールドライガーが背負っているタンクに給水中だった。その横には髪は大分白くなったが、良く知っている小柄の人物が立っていた。
「ロイ隊長!お久しぶりです。以前お世話になっておりましたルイスです。」
「・・・おお!久しぶりだなルイス君。私はもう軍人ではないぞ。」
振り返りつつこちらの姿を確認すると、いつもの優しい口調で返答する。久しぶりに目の前に立つととても軍人だったと思えないような小柄で優しい雰囲気を感じる。
「そうでした。つい、いつもの癖で言ってしまうのです。そこのところはご容赦ください。」
笑いながら、時が戻っていくような感覚を覚える。まだロイ隊長の部下で日々鍛えられながらも楽しかった記憶が思い起こされていく。こちらの姿を見てかロイ隊長も笑顔になっている。・・・いや、知っている、この笑顔は嫌な笑顔だ。
「元気でやっているようだな。しかし体格は立派だが、自分勝手に行動し命令無視をしてしまう事もある問題児がいまやこの基地を任されている部隊長になっているとは驚いたよ。」
近くで給水作業を行っていた兵士達が作業を完了させてこちらに戻ってくる。これは聞こえてしまったか・・・
「作業ご苦労!すぐ自身の仕事に戻ってくれ!後は私が案内する!」
「は!・・・今の聞いたか。」
「ルイス中尉にもそんな頃があったんだな。」
「噂によるとルイス中尉は昔・・・」
戻りながら話す兵士の言葉に心の中でやめてくれと叫びながら恩師のシールドライガーに近づく。以前は白く塗装され、共和国軍指揮官仕様の装備をまとっていたが、本来の青い色で基本装備しかない今のほうがすっきりして見える。
「ロイ隊長、からかわないでくださいよ。退役されてからは何をされているのですか?」
「ゆっくりと宛てのない旅をしているだけだよ。退役してもやっている事はそんなに変らん。結局こいつとは一緒にいるわけだからな。」
そう言いながらライガーをコツンと叩いて笑うロイ。バツ悪そうに唸るライガー。いつも通りのやり取りを見ているとまた嫌な予感がする。話を変えようと声を上げようとするが先に言われてしまう。
「そうだな、変わった事はルイス君の起こしたことへの始末書を書く機会が無くなったぐらいさ。暇になって寂しくなったぞ。」
「いや、参りましたね。ではお暇なロイ様にはまた始末書の山を書きに戻ってきて頂きましょうか。」
「まいった、勘弁してくれ。私を自由にさせてくれ。」
「軍人時代も定期的に休みを取っては旅に出られる等、散々自由にしていたではないですか。」
「あれは社会勉強のためであってだな・・・」
ひとしきり話し、笑い終えたタイミングで時計を見ると訓練時間の終わりに近づいていた。
「ところで、お急ぎでないようであれば新人たちの訓練でも見ていかれませんか?」
「いいぞ。定年後は時間がありすぎて困っているくらいだからな。部下を苛めてないだろうな。部下にはやさしく接するものだぞ。」
「もちろんですよ、どこかの元大尉とは違って優しく教育しておりますとも。こちらです、どうぞ」
そう言いながら訓練場へと案内する道中横から足をかけられて、何度か転びそうになった。全く元気すぎる老人である。きっと模擬戦をみたら一緒にやろうと言ってくるのだろう。どうせなら訓練兵への教育もお願いしたらやってくれるだろう。
最後まで読んで頂きありがとうございます。
次話は近日公開できる予定です。