天華百剣 ー禍ー   作:HK416

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必撃裏を取りたいのだが、素材がなかなか集まらない!
レア以上の素材は殆んどでないなぁ。完凸するのは何時になることやら。

そして、月末に向けて石を貯める日々。欲望を、願いを貯めるんじゃ~!

という訳で修行と日常回です。では、どぞー。




みやこ屋での修行と日常

 

 

 

 

 

 父さん、母さん、美貴、睦郎。

 オレは今、帝都は富士見町にあるみやこ屋というお店でお世話になり初めてから二週間が立ちました。

 一週間で帝都の環境にはようやく慣れてきて、音や匂いでくらくらすることもなくなった。

 御華見衆お抱えのお医者さんにも傷の状態を見て貰ったけれど、三日月さん達の応急処置が良かったのか、町の皆が呼んできてくれたお医者さんの腕が良かったのか、すっかり快復していた。

 その時、帝都のお医者さんはビビり散らしていた。骨折や刀傷がこんなに早く治ることはないってドン引きしてた。健康な身体に生んでくれてありがとう。

 

 みやこ屋は女将・巴さん、店主は夫である武蔵さんが務める大人気の湯屋です。

 全国の有名な温泉地から湯の花を取り寄せて、それを七つの大浴場で再現する温浴施設。

 女性専用であるにも関わらず大評判で大人気。人が少ないのは開店したばかりの1時間くらいで、その後はもうずっと人足が絶えない。

 

 しかし、みやこ屋は表向きの施設。裏の顔は御華見衆の拠点だ。

 御華見衆の伝令役を務める小烏丸さんが居を構え、最強の巫剣使いである巴さんと共に守る。それだけでどれほど重要な拠点か分かろうというもの。

 禍憑対峙のため全国に散る巫剣達が報告に立ち寄り、時々店の手伝いもしているし、湯にも浸かっているようだ。

 何でも温泉というものは地脈によって噴き出すものらしく、入った人の健康に繋がるのは地脈の力を受けるからだそうだ。勿論、巫剣の皆さんにも効果はあって、戦いで溜まった穢れを洗い清め、巫魂を活性化させて傷の治りを早くする。

 みやこ屋は御華見衆の連絡拠点であると同時に、禍憑が多く発生する帝都における巫剣達の養生施設でもある。凄い。

 

 かくいうオレはみやこ屋さんで、来る日も来る日も巫剣使い見習いとして修行の日々を送っています。

 

 まずは早朝から走り込み。但し、ゆるゆると走るのではなくもうホントに走る。完全無欠の全力疾走だ。

 朝から走り込みなんていい気分かなと思ったかな。甘い、巴さんはほんとに甘くない。距離は家から町までの距離だけど、2里半を全力疾走ってほんと辛い。

 もう走り込みが終わってみやこ屋に戻ってきたら、確実に倒れる。足がガクガクして、肺が凄く痛くて、まともにものを考えられない。初めて数回はその場でゲロを吐いてしまった。不甲斐なしっ!

 

 

「あ、そーれっ♪」

 

「ぎゃあぁああああぁ――――っ!!」

 

「もいっちょ、はーい♪」

 

「ひえぇええぇええぇ――――っ!!」

 

 

 その後は転がし祭り。

 巴さんは無手、素手。オレは真剣を握って襲い掛かるのだが、其処は最強の巫剣使い。あっさり手首や胸ぐらを掴まれて、凄い宙を舞う。

 戦いにおいて地面に倒れ込むというのは致命的な隙だ。追撃されたら一溜まりもない。

 そんな訳で、どんな態勢からでも確実に受け身を取って、追撃の暇を与えずに即座に起き上がる訓練だ。

 

 もうお昼までずっとそれ。ただひたすらに投げ飛ばされて受け身。

 天地が逆転して飛び込んでくる風景がぐるぐる廻る。ついでに頭の中もぐるぐるだ。ゲロ塗れになったのは一度や二度じゃない。不甲斐なしっ! 

 巴さんはぴんしゃんしてる。というか常にニコニコ笑っている。これで一線を退いているのだから凄い。でも怖い。

 

 

「七千三百四十一ッ! 七千三百四十二ッ! 七千三百四十三ッ! 七千三百四十四ッ!」

 

 

 お昼を食べたら刀の素振り。

 この間、巴さんも小烏丸さんも女将としての仕事や御華見衆の仕事をしていて手が空かないので一人だ。少し寂しい。

 もう腕がもげるんじゃないかってくらい振る。めちゃくちゃ振る。

 薪割りとかの仕事でオレの手の皮は厚くなっていたけど、そんなんじゃ全然足りない。血豆の上に血豆が出来て両手とか見る影もない。たったの一週間で自分の手が見たことない状態になってる。

 

 

「ほら、其処っ! 隙だらけよーっ♪」

 

「あががぁっ、ひ、ぎぃっ……!」

 

「脇が甘いっ! 視線は何処か一所に集中するんじゃなくて、全体をぼんやりと見て一挙一投足に注意を払うのがコツねっ♪」

 

「は、はいっ! ぐっ、っとおっ! こ、のっ――――いってぇぇえぇぇええぇぇぇっ!!!」

 

 

 毎日ではないけど、巴さんの時間が空いたら実戦形式での訓練。それも竹刀じゃない、木剣でだ。

 もうボコボコにされる。ボコボコもボッコボコだ。初めてやった時は鏡で見て自分の顔なのに驚いた。自分の知ってる顔じゃないくらいに腫れ上がってたから。

 巴さんは達人だけあって力加減も絶妙で、肉が腫れ上がっても骨は折れないくらいで打ってくる。それでも十分痛い。と言うか木剣であっても人は普通に死ねる。あと巴さんは笑顔。しかも笑顔で最終的には真剣でこれをやると言ってた。怖い。

 全身青痣だらけで見れたものじゃない。小烏丸さんもオレの惨状を見た時には絶叫して巴さんに詰め寄っていた。優しい。でも巴さんは笑顔で躱してた。怖い。

 

 い、いや、きっと巴さんにも考えがあるんだ。きっとそうだ。心は折れそうだけど、挫けそうだけど頑張るんだ! オレは昔から頑張ることしか出来ないん――――

 

 

「いや、普通に楽しんどるだけじゃぞ、アレ。巴はそういう所あるのじゃ。小太郎や小次郎はもっと甘やかしとった所に、活きが良く頑丈な若いのが入ってきたからな。こんなもの、お主が初め――――」

 

「………………」

 

「わぁあぁぁっ! 膝から崩れ落ちたっ! ひ、人吉、頑張れっ! こんなのお主以外には耐えられんっ、凄い子じゃっ! お主は日々成長しておるっ! 負けるな、挫けるなっ! ふぁいと、じゃっ!」

 

 

 ――――生まれて初めて、心が挫ける音を聞いたかもしれない。

 

 巴さんにボコボコにされる度に、心も一緒にポキポキ折れてる。けれど慣れというものはこういったことにも訪れて、心が折れていても人は立ち上がれるし、前に進めることを学んだ。

 

 それに辛い事、悔しい事、悲しい事ばかりじゃない。 

 

 

「人吉さん、牛王さんの塗り薬を持ってきましたよ! あぁっ! 今日は何時も以上に酷い事に! このわたくしが塗って上げましょう!」

 

「あふぃがほう、ごしゃいましゅぅ……」

 

「にーちゃん、今日も差し入れ持ってき――――ぎゃああああっ! 禍憑やぁっ!!」

 

「つーちゃん、その人は人吉くんですからねっ!?」

 

 

 嬉しい事だって沢山ある。

 

 抜丸さんは小烏丸さんからの仕事で色々と忙しいのに、牛王という人の調合した薬を色々持ってきてくれる。

 この塗り薬だけど凄い効く。塗った翌日には腫れも内出血が引いてる――――のだが、抜丸さん経由の牛王さん情報では、この薬に其処までの効果はないとドン引きしていたらしい。どういうことだってばよ。

 

 つーちゃんはよく差し入れを持ってきてくれる。つーちゃん特製の手料理だ。

 これが美味しい、凄く美味しい。家で世話をして貰っていた時から知っていたけど、毎回ほっぺが落ちそうになる。

 

 ソボロさん、いやソボロ先生は寺子屋にも学校にも通った事のないオレに勉強を教えてくれる。

 つーちゃんと並んで勉強をするのは楽しい。きっと教え方がいいのだろう。つーちゃん曰く、おかーちゃんもこういうの久し振りやから気合入ってる、らしい。

 

 それ以外にも、みやこ屋で出会った巫剣の方々も素振りの最中に助言をくれたり、三日月さんも小烏丸さんを通じて手紙をくれたりする。

 一番驚いたのは七星剣さんと丙子椒林剣さんも、この間、顔を見に来たとやってきてくれたりもした。二人も忙しいだろうに気にかけて貰えて有り難い。

 

 一人ではないという事は、本当に、心の底から幸せだと思う。

 

 そういうことだから皆は心配せずに休んでいて欲しい。オレは頑張って生きていけるから。

 

 

 

 

 

―――――

――――

―――

――

 

 

 

 

 

「――――ふぅ」

 

 

 素振りを一時中断し、上半身は裸、下半身は袴の状態でみやこ屋の裏手にある縁側で休憩する。

 みやこ屋は兎に角広い。大浴場を七つも有するのだが当然だが、こんなに大きい建物は故郷にはなかった。帝都にだって珍しい。

 

 庭も立派だ。

 塀の近くには枝だけの桜と桃の木、紫陽花などが植えられている。

 池には錦鯉が泳いでいて、鹿威(ししおど)しもあれば、側には灯籠なんかも立っている。

 此処まで立派な庭も珍しいだろう。月に数度、庭師さんが手入れに来るようだ。

 

 冬の寒さも今は気にならない。全身から汗が吹き出し、昼間だというのに湯気が立っていた。

 巴さんも小烏丸さんも休息は重要だと言っていた。呼吸を整え、筋肉が冷め、汗が完全に引き切る前に体力を回復させて、再び稽古に戻った方が効率がいいらしい。

 

 

「……あ、あの……これ、どうぞ」

 

 

 鈴が鳴るような可愛らしくもか細い声に、反射的に両手で両胸を隠す…………オレは何をやっているんだ。

 声のした方を見れば、真っ白な新雪のような髪を二つ結びにした幼い女の子が、おどおどしながら手拭いを差し出しながら立っていた。

 その後ろには、彼女に似た見た目に似た格好の少女二人が見守っている。全員、見た目は睦郎と変わらない年といった感じ。

 

 白い髪に気弱そうな女の子は五虎退吉光。あだ名はこごちゃん。

 短い髪に藤の花の髪飾りをしたポヤっとした女の子は乱藤四郎。あだ名はみーちゃん。

 灰色の髪に育ちが良さそうな女の子は鯰尾藤四郎。あだ名はなまっちか、なっちゃん。

 

 この三人は同じ父親――栗田口吉光氏の手による巫剣にして姉妹なのだとか。

 

 

「ありがとう、ごこちゃん。優しいねぇ」

 

「それよりも人吉さん、早く汗を吹いて上を着て下さいな。妹達の目に毒ですわ」

 

「ごめんごめん。これなら風邪を引く心配もないかな。ありがとう」

 

「…………じーっ」

 

「こ、こら、みーちゃんっ?! はしたないですわっ!」

 

 

 この子達はみやこ屋を拠点としている巫剣達だ。

 ごこちゃんは戦いに赴くのを見た事はないけど、みーちゃんとなっちゃんは度々禍憑討伐の任務に向かっては殆んど無傷で返ってくる。オレよりも小さい子達なのに強いのだ。ごくり。

 

 おませさんななっちゃんは目を反らしながら早く服を着るように促してくるが、チラチラと此方の様子を伺っている。

 対して妹のみーちゃんは青痣だらけのオレの身体をじっと観察していた。流石にこれはオレもちょっと恥ずかしい。

 

 ぐいぐいとみーちゃんの袖を引いてオレから視線を外すようになっちゃんが奮闘している間にそそくさと汗を拭いて道着を着てしまう。

 

 

「やっぱりおかしい」

 

「おかしいのはみーちゃんですわ! 殿方の裸をじろじろ舐めるように見るなんてっ!」

 

「人吉のきず、ふつーは一日で治らない」

 

「あぁ、牛王さんの塗り薬を貰っているからじゃないのかな?」

 

「それでも異常。すごい回復力」

 

「人の話を聞きなさーいっ!」

 

 

 みーちゃんは幼い見掛けに反して学がある。建築に料理、和歌に絵画に、更には医術の知識までも豊富ときている。

 以前の主さんの影響なんだとか。それはいいのだけど、お姉さんであるなっちゃんの発言を無視するのは如何なものか。

 

 みーちゃんや牛王さんをして異常を言わざるを得ない回復力なのだそうだが、自分にとっては当たり前で人と比べた事がないのでよく分からない。

 禍祓いとはそういうものかと実に尋ねてみたのだが、関係ないそうだ。まあ、異常な回復力にせよ、禍祓いの力にせよ、自覚が難しいので余り気にならない。

 

 

「それよりも、ごこ」

 

「そ、そうでしたわ。ほら、ごこちゃん」

 

「は、い……人吉さんに、お願いが……」

 

 

 ごこちゃんは恥ずかしがり屋で怖がりの人見知りさんだ。

 初めてあった時も自己紹介だけでそそくさと居なくなってしまったし、その後も挨拶をしても会釈するだけで何処かへ行ってしまう。

 彼女と接する時、何時も恐怖の匂いと音がする。怖がりな彼女の事、よく知らない他人が怖いのだろうが決して人を嫌っている訳ではない。

 ごこちゃんを怖がらせないように仲良くなれないかと考えていたので、こうして彼女の方から話しかけてくれた上に頼ってくれるのは正直嬉しい。

 

 彼女のお願いを聴く前に、二つ返事で引き受ける。

 ごこちゃんどころか、他の二人も驚いていた。何故だ、困って頼ってきた人のお願いを、余裕のあるオレが無下に断る理由なんてないのに。

 

 

「実は……虎さんが……」

 

 

 ごこちゃんには友達の白い子虎が五匹いるが、よくよく見ると今は足元に四匹しかいない。

 周囲の人は虎と認識しているが、誰も危険だとか思っていない。まあ、子猫くらいの大きさだし、帝都だからなぁ。多分、珍しくもないんじゃないのかぁ。田舎者のオレにはよく分からない。

 兎も角、虎はごこちゃんには大切な友達なのだ。人は怖くても、虎と戯れている時の彼女は可愛らしい笑顔を見せる。

 

 そんな虎の一匹が朝から行方不明なのだという。

 朝食を終わらせ、散歩に出ようとした時にはもう居なくなってしまったようだ。

 みやこ屋の従業員――勿論、全て御華見衆の縁の下の力持ち達だ――に勇気を振り絞って話を聞いたのだが、少なくとも外へ行った姿を見た者はいない。玄関で掃き掃除をしていた者に聞いたので、間違いない。

 となればみやこ屋の何処かにいるのだろうが、影も形もなく困り果てていた。其処で白羽の矢が立ったのがオレだ。

 

 

「任せて、すぐに見つけてあげるからね」

 

 

 今にも泣き出してしまいそうなごこちゃんの頭を撫でて、安心させるために笑みを刻む。

 良かったですわね、となっちゃんが、ごこちゃんの後ろから顔を覗き込むと、こくりと首を縦に振った。本当に姉妹の仲が良くてほっこりしてしまう。

 

 そうして、音と匂いに集中する。

 五感は帝都に慣れはしたが、決して衰えた訳じゃない。自分の見たいもの、聞きたいもの、嗅ぎたいものに集中する事を無意識に行えるように学んだだけだ。 

 虎の匂いと音は独特だ。猫に似ているが、決定的に違う。多分、最終的に成長しきった時の形が異なるからだと思う。

 

 

『此処の按摩、効くわねぇ……』

 

『あー、アレどこやったっけかな……?』

 

『クソッ、あの野郎っ、次に会ったら只じゃおかねぇ!』

 

『おかーさん、あれ買ってー』

 

『さぁさぁ、よってらっしゃい見てらっしゃい!』

 

 

 群衆やみやこ屋の従業員と客の歩行や話し声。遠くの路面電車の駆動音。鴉や鳶の鳴き声に羽切り音。 

 みやこ屋の湯の花や風呂釜を焚く炎の匂い。女性用の石鹸や香水などの甘ったるい匂い。工場から漂ってくる鼻を突く薬品の匂い。

 

 それらの中から今必要なものだけを選ぶ。

 

 

『……くぅ……くぅ……』

 

「見つけた」

 

 

 子虎の音と匂いを発見して呟くとごこちゃんとなっちゃんの顔がぱっと輝いた。

 縁側から腰を上げて立ち上がり、子虎の匂いと音を感じた方向へと向かう。

 

 庭からみやこ屋の要と言える風呂を焚く湯沸かし器にある部屋へと回る。

 瓦屋根には煙突が突き出しており、薪を焼く煙を逃している。その直ぐ側に子虎は煙突の熱と日差しを浴びてすやすやと眠っていた。

 この位置では背の低いごこちゃん達では見つけられないし、そもそも子虎ではそんなところに登れる筈もないので、探す発想が生まれないだろう。

 

 見れば、浴場部分の真上に位置する小烏丸さんの書斎の窓が開け放たれたままになっていた。彼女はいま上野のめいじ館に出向いているので、出掛けに締め忘れたに違いない。

 普段、あの窓には伝令役の鴉が次なる命を待つ場所でもある。状況的に小烏丸さんの書斎に忍び込んだ子虎が鴉に襲い掛かり、仕留め損なって屋根の上に出たまま日向ぼっこを開始してしまったのだろう。

 

 

「これは小烏丸さんの書斎に回った方が良さそうですわね」

 

「ああ、大丈夫だよ。これくらいならオレでも届くから、よっとぉ」

 

 

 地を蹴って瓦屋根の縁に捕まり、そのまま腕の力だけで飛び乗る。

 こういうのは得意だ。家は古かったから大雨の日はよく雨漏りをしたので、こうやって何度も屋根に登って補強した。

 

 よほど日向ぼっこが気持ちよかったのか、それとも人間に慣れすぎて野生を忘れたのか。

 抱き上げても起きる様子はなく、気持ちよさそうに眠ったままだ。

 子虎はごこちゃんと違って良く懐いてくれていた。可愛い。赤ん坊だった頃の睦郎を思い出す。睦郎はよく眠って、あんまり泣かなかったなぁ。

 

 

「よっ、と。はい、大切な友達をお届けに上がりましたぁ~」

 

「……もう、心配させてぇ……」

 

「ごこちゃん、良かったですわね」

 

「よかった」

 

「うん…………あの、ありがとう、ございます……」

 

「ごこちゃんはちゃんとお礼が言えて偉いね。みーちゃんもなっちゃんもちゃんとお姉ちゃんだね」

 

「んもぅ! 私達は人吉さんよりずっとずーっと年上ですのよ、子供扱いしないで下さいましっ!」

 

「もっと撫でてもいい」

 

「みーちゃんっ!?」

 

 

 屋根から飛び降りて、眠ったままの子虎を渡すとごこちゃんはギュッと両手で抱き締める。

 がうがう、と足元の虎達が鳴くと、ようやく目を覚ました子虎は大きく欠伸をして、自分の状況に目を丸くしていた。

 

 礼儀正しく頭を下げて礼をするごこちゃんや、安心した様子のみーちゃんとなっちゃんの姉妹仲の良さに、オレは膝を折り曲げて目線を合わせて頭を撫でた。

 こんな見た目なので、オレよりもずっと長い時間を生きているのは理解しているのだが、どうしても美貴の幼い頃と重なってしまう。

 

 言葉では失礼と言っていても、まんざらでもないのかなっちゃんは手を払い除ける真似はしない。

 みーちゃんに至っては、気持ちよさそうに目を細めて許可までくれた。なので、遠慮なく三人の頭を撫でくり回す。

 

 

「………………あ、ちょうちょ」

 

「ちょ、ちょっとみーちゃん、急にふらふらと行かないで~っ!」

 

「…………ま、待って」

 

 

 空を飛んでいた蝶の姿を見つけると、みーちゃんは後を追っていく。何時もながら、自由気侭な性格だ。

 彼女を心配してなっちゃんが後に続き、更にごこちゃんと子虎たちも追従する。

 

 その時、ごこちゃんは立ち止まり、はにかんだ笑みを浮かべながらもう一度だけ頭を下げて去っていった。

 

 一日一善ではないけれど、こうして巫剣の人達と仲良くなっていくのは嬉しいし、楽しい。

 戦いの道具、なんて揶揄する人や卑下する巫剣もいるけれど、やっぱり人と変わらない。喜びを分かち合えるし、悲しみは共に背負える。

 皆の一助になってオレは繋がっていく。例え、どんな終わり方をしても失われるものは何もない。そのために、今は鍛錬を頑張ろう。

 

 

「よーし、頑張るぞーっ!」

 

 

 思いを新たに、オレは鍛錬へと戻るのであった。 

 

 

 

 

 

 この日、またしても巴さんに手も足も出ずボコボコにされ、心がポッキリと折れた後に小烏丸さんに慰められる事になるが、それはまた別の話だ。巴さん怖い。

 

 

 

 

 





はい、というわけで、巴さんドS&主人公の苦難と日常&藤四郎姉妹の登場でした。

主人公が人に好かれやすい性格なので、仲良くさせやすくて助かる。別作品で書いてた主人公は人の好き嫌いが激しい奴だったからなぁ。

こういう感じでガンガン巫剣を出していく所存。
つーか、早くメインヒロイン兼相棒である三日月さんを出したいのだが、主人公が未熟なので簡単にはいかないなぁ。まあいいや、お色気シーンで出そ。

では、次回もお楽しみにー!
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