今日のやる気:どんと来い!
今日の童貞力:100/100
今日の一言:彼女を作るぞ!
夜行バスで成田空港に来て、なんとか飛行機のゲートまで来た。思い返せば、ここまでの準備が大変だったなぁと感じつつ、ちょっとした安心感にひたっている。そして飛行機のゲートが開いて乗り込む。私は窓側の席で隣に誰が座るのかちょっとした楽しみだった。以前中国へ行ったときは右側にガタイのいい日本人が好きな色黒の外国人。左側には露出の多い若いお姉さんギャル系の少し色黒の外国人だった。もしかしたら日本人で俺と同じ留学生かもしれない。しばらく待つと大学生くらいの女の子が隣に座った。普段の俺なら話しかけているところだが、この日はあえて消極的にいく。向こうから話しかけられるのを待った。今思えばこれが俺の飛行機内での最大の過ちだった。女の子には友達がいたらしく、その友達は女の子を挟んだ一つ隣にいた。その子とばかり話していて俺には微塵も興味がない様子だった。いや、むしろ隣にある邪魔な置き物と思われていたに違いない。なぜなら俺がガバッと足を開いて座っていたからだ。そのおかげで飛行機が揺れたりするたびに女の子と足が触れ合う。また、肩も触れ合う。こんなに気色悪いことを一々気にしている俺だが、ここで一つはっきりとさせておきたいことがある。それは、俺が童貞ということだ。要するに女の子と関わることは俺にとっては重要なことなのだ。少なくとも三度の飯よりはよく記憶している。
色々と敏感になっている俺にここでチャンスが訪れる。機内食が運ばれてきた。俺は機内食を頼んだ覚えはないが、どうやら事前に登録されていたらしい。機内食のメニューはビーフシチューで、飲み物は水。コーラもあったが、女の子にスマートに見られたいがために水にした。「水を頼んで無駄な糖質を摂取しない俺ってスマートだろ?」という脳内言語もすぐにその意味を成さなくなった。機体が霧の影響で揺れてさっき開けたばかりのビーフシチューがズドドドドドッとなっている。これはまずい。スマートどころかただのKYなバカだ。状況説明を一応しておくが、機内食を頼んでいない人もいる。むしろそっちの方が多い。食わない人からしたら香りや、食べるために動かれることがストレスになりかねないのだ。機内食をこぼして迷惑をかける最悪の事態にならないように、とりあえず俺はビーフシチューから食べることにした。そのビーフシチューの熱いこと熱いこと。それも当然、配膳されてから一分も経っていない。しかし、機内は乗務員が席についてシートベルトをしているほどの揺れが起きている。その中でなんとか口に放り込み熱さを水で緩和していく。しかし、揺れは止まらない。これはペースを上げるしかないと思い、急いでビーフシチューを頬張った。その直後、事件は起こる。ビーフシチューがテイクオフ。そこまで多くは飛び散っていない。よく凝視しないとわからないレベルだ。問題は着地点。ギリギリ俺が使う机の上で止まっていたが、隣の女の子はそれを見ると、気持ち向こう側へ離れてしまった。ちょっと悲しいような、ホッとしたような微妙な空気に耐え切れず、バタービスケットに手を出す。これはチョコレート中にビスケットが入っているものだと思ってくれていい。これを食おうと思い口に入れかみ砕こうとしたが、あまりにも硬かった。そこで力を入れてかみ砕くわけだが、かみ砕いたときにそれらのカスがあたりに散乱してしまった。女の子が気持ち離れてくれていたことが不幸中の幸いで、あまり周りには被害がなかった。
食事を終えると、手元にはゴミが残る。ビーフシチューの箱、ビスケットの袋。これらを片付けてもらおうと一回目販売員に言ったが、よくわからん英語で話されて拒否されてしまう。よくわからなかったが、スマートさを見せつけたい俺は「OK!」と言ってその場を凌いだ。しかし、ここでアクシデントは起こる。ビーフシチューの香りがきつい。俺はこのままでも眠ることができるが、問題は後ろの客だった。出来事の始まりは
「なんか食べ物臭い」
この発言だった。たぶん俺のことだなと思いながらも俺は寝たふりをしていたが、後ろの客は口を止めない。
「なんか食べ物くさいと最悪」
申し訳なさと、恥ずかしさで俺の心はいっぱいだ。
「私はお腹空いてるのになんでこういう臭いさせてくるの!」
じゃあオーダーして何か食えよ!
そうこうしているうちに台湾についてしまった。飛行機は離陸と着陸までが一番長く感じるが皆さんはどうだろうか。着陸のコールを受けてから長い長い時間がたち飛行機は無事に着陸することができた。機内から一歩出るとそこは蒸し風呂。とにかく熱い。気温33℃だったらしいが、一人で外国にきた不安と期待でそこまで熱く感じることはなかった。よくわからないまま日本人観光客についていく。すると入国審査するゲートについた。ゲートは思ったほど早く抜けることができた。そんなこんなで次は税関。まあ、高額な品物や資金を持ち込んでないかどうか確認する場所だ。ここも簡単に抜けられると思っていたが、そうはいかなかった。一人の職員に呼び止められる。なぜよりによってこのタイミングなのか。まさか俺が被っているこのアディダスの紅い帽子が目立つからか?
職員の口から出た言葉は
「where are you from?」
「japan」
「ok」
どうやら俺自身が台湾人かどっかの国の人に勘違いされて、何か法に触れるものを持ち込もうとしていると思われたらしい。まったく人騒がせな野郎だ。
税関を無事に抜けてすぐに両替所へ行く。ここで豆知識だが、日本で両替するよりも台湾で両替したほうがいい。いくら両替したかは忘れたが、同じ現金で日本に比べて6000台湾ドル多くもらえたことは覚えている。両替の次はSIMカードの購入。台湾だと日本のケータイはローミングという接続になり、高額の通信料を請求される。忘れずにやろうと思っていたので、すぐに販売所へ向かった。販売所につけばお姉さんが慣れた手つきでやってくれる。ネットのこの情報を信じていたがそれは理想であり現実ではなかった。その販売所では英語が話されている。もちろん俺も英語で話さなければならなかった。とりあえず半年分必要だった俺は「半年(中国語)」と言ってみる。向こうは色々なプランを用意してくれてとても分かりやすかった。そして無事に購入。ここで一つの疑問が頭をよぎった。(このSIMカードって返すのか?)俺は店員さんに聞いてみた。
「这个卡要回这儿店吗?」
店員さんは理解できない。次は英語だこれならどうだ。
「return card?」
これもだめか。
「come back?」
あと一押しか?
「back store?」
「No,」
「トラッシュOK?」
「OK」
どうやら伝わったようだ。この程度で疲れている俺の英語力はこんなもんだ。
そうしてなんとか向こうの大学の学生に会ってバスに乗る手配ができた。このバスは俺を空港から大学まで送迎してくれるもので、俺にとってはなければならないものである。どうやら俺より早く来ていた韓国の留学生がいるらしい。挨拶しようと思ったらいきなり英語だった。おいおいまじかよ。対して台湾人も英語。嘘だろ。二人は当然のごとく俺に英語で話しかけてくる。高校の英語の偏差値30の俺が理解できるのは断片的な単語のみ。話の内容は無視してその単語からなんとなく連想した。返答は全て「OK」、それ以外は首をかしげてごまかした。OKって本当に万能な言葉だと身をもって実感したことはこれまでなかっただろう。
そして最後の一人が来てからバスに乗った。バスに乗ってから3時間ほどで俺の新しい住まいについた。バスの中では台湾人の女の子が窓の網を外してくれたり、エアコンのファンを調整してくれたりと優しかった。決しておせっかいではないよ、俺にとってはね。
そうして無事に寮に到着する。寮につくと手続きをしなければならない。ここで使われるのは英語。もう勘弁してくれよ。まあ、言われるがまま、いろいろな書類に必要事項を記入してサインをした。これでようやく眠れるぞ!思っていたのも束の間。部屋熱すぎねぇか。クーラーも金ないと使えないじゃないか。風呂はシャワーだけ?まあこれはいいや。部屋に冷蔵庫ないじゃん。熱中症になるぞ、これ。問題点が多すぎて、俺の頭は考えることをやめた。ほかのルームメイトを部屋で待とう。すると二人のルームメイトが現れた。一人は太っちょであたりのいい奴。二人目は細くて身長の大きい大人しそうな人。まるで対局な二人で驚く。太っちょの方はお祝いにコーラをくれた。素直にうれしい。ノッポの方は部屋でクーラーを使えるようにしてくれた。ありがたい。だが、彼らは部屋でネットゲームしかしていない。朝起きてPCでゲーム。お昼に何か食ってまたゲーム。そして夕飯食ってゲーム。風呂入ってゲーム。俺も日本ではかなりゲームをしているが、客観的にみるとこんな感じなのかと、なんとも言えない気持ちになった。
そんなこんなでベッドに入ったら風呂にも入らず眠ってしまった留学初日なのであった。
寝る前に一言:ふぅ、行けるか?