という訳でただいま。日記の気分だから、頑張って完結まで持っていきたい。
私は自分の作品を褒めたことがなくて、基本最後は貶してます。
そういう後ろ向きな作品が評価されてるのって、貴重だと思うわけです。
有難う。この経験が何時か私を活かすでしょう。
20xx/F/H てんき:晴れ
寝不足過ぎる、サイアク。でも良いことも有ったから、そっちから話をするね。
どうやらとうとう彼が416の訓練風景を目撃したそうだ。割と感心していたらしい、意味は分からないけど「心意気自体に意義があるってやつじゃないの」とのこと。そうは思うけどさ。
416が息を巻いてあたしに報告してくるのは何、一人でやってて欲しいなあって正直。
彼は何やら作戦を変えたようで、45がいつもどおりに横に座ってくるとぐいっと腰を引き寄せた。珍しく慌てていた45はやはり脅しのためにショットを保存するべきだったよね。9と後で「わかる…………」って一緒に頷き合う程度には共通した結論だった。
45がとにかく面白くって、明らかに遊びに来てる彼に対して顔を逸らしたり噛み噛みに返事したり何時になく弱かった。至近距離まで顔を近づけたのは「節操のない男」と正直思ったし、45も流石に駄目だったのか両手で顔を押し退けて逃げていってしまった。
この後はすごかった。416と彼は珍しく普通に楽しくお喋りしてたのもびっくりするけど、45の愚痴ったら長いこと長いこと。むしろあの朝食の五分ぐらいの出来事をよくそれだけ長々とあたし達に喋るよね。ええっとね、あそこだけ記録してたんだけど…………有ったから書き出してみようか。
「そもそも物事って順序が有ると思うの、例えば運動するなら準備運動をするべきだし勉強をするなら補助教材を用意するべき。なら男女のあれこれにも順序は有るはずなのよね、例えばまずお互いを知る所からだし、お互いの好意の確認も大事だよね、まあ何だかんだそういう事って絶対必要だと思うんだけど彼ってそういうのが全然足りてないみたい。いや別に強引なのは全部ダメなんて言わないよ? そういう形も有るし、相手が受け入れてくれるなら勿論問題ないかな。でも私は無理、まず早すぎるよね。順序が守られてない、例えばもうちょっとお互いのことを知るべきだと思うし、あ、あんまり顔を見られると誰だって恥ずかしいでしょ? それに彼って妙なフェロモンみたいなのが出てるっていうか、とにかく近いのは駄目。大体私は別に良いけどアレを416とかにしたら大変じゃない。まあ別に私は平気だから今後練習台にされるのぐらいはまあ気にしないけど、時間を掛けてでも治していってほしいよね。二人はどう思う?」
要するに大好きなんだってさ、ふーん――――――こわい…………たすけてヘリアン…………あたしの知ってる45は男をべた褒めしないし淡々とデレデレしないし、自分を練習台になんてさせてないよ………………たすけて……。
9はノリノリで45を煽ってるしかなり面倒なことになりそうだ、416にはR.I.Pの一言に尽きる。
結論から言うと昼食と夕食の45は確かに大人しかったので彼の戦略は効果的だった。ただ元々入ってた妙なスイッチがとうとうレバーハンドルを叩き折る勢いでフルスロットルになったことは、まあ分かってないんだろうね…………。
彼は妙に45と喋るようになった。多分だけど、最低限の恥じらいだとか距離感を取り戻した(ように見えるだけなんだけど)から彼も本調子なんだろう。精々あがくがいいさ、みたいな悪役っぽいセリフを言いたくなる。
9を巻き込んでやたらと寝る前に揉めていたというかじゃれ合っていたけど、知らない間に三人揃って寝てた。416がため息を付きながら毛布を掛けるのを見ながら、「ひょっとして、あたしもいつもこんな感じだと思われてるの」みたいな僅かな疑念が叩き台に上がったりしたけどまあそれは置いておこう。
20xx/G/I てんき:はれ
416五月蝿い。寝させて欲しいなあ。
45が本気を出してしまったので彼は性的な意味で終了したと思う。俗に言う牝の顔、というとあんまり45の品位が疑われるから女の子っぽい顔をしているとだけコメントしておく。
例え彼の毛布で簀巻きになりながら凄いニヤニヤしていても勝手にバラさないよ。あたしに見つかった時やばいって言わんばかりの顔だったけど、結局45は自覚有るの?
45は段々支離滅裂な行動が増えてきた。抱きつくのに触られるとしおらしくなるし、面倒は見るのにちょっと彼が手を貸しただけであたふたする。一般的なAIらしい恋愛感情を持っているようで他の隊員は正直涙ぐむレベルなんだけどまあそれは置いておいて。416ホントに目を潤ませてた、「あいつにもちゃんと春は来るのね…………」とかしんみりと呟いてたけど、それはかなり失礼では?
それを勘定に入れてもちょっと今日の45はヘンだった。いやもう既にヘンで済まない状態なのは分かってるんだけど、とりわけ違和感のある事柄があったっていう意味ね。
416を見ている時の空気がちょっと違うんだ。いや、嫉妬かと思ったんだけど何だかそれだけでもない。困ったような、何か苦しんでいるみたいな本当に複雑な表情をする。
一番分かりやすかったのは昼間のことだ、歩いている途中で急に泣き出したんだよ。
「45姉、ホントお兄さんのこと気に入ってるよね~」
9がニコニコとして彼女の周りをくるくると歩く。踊るような軽いステップは不快ではなくて、45は妹の上機嫌さに安心に近い感覚。
――気に入ってる、かもね。
わからないので適当に誤魔化す。彼女の笑顔は誤魔化しだ。煙に巻いて、目を曇らせて、結論を先延ばしさせるためのアピールの一種。
「そうかも。でも私にもよく分からないや」
困り笑いに9は元気よく返す。
「でも一緒に居たら楽しそうだから、多分気に入ってるよ!」
雪を踏む9のブーツを見ながら考える。
――楽しい。うん、楽しいな。
彼は何をさせても面白い人間だと彼女は捉える。ちょっとからかえばすぐに反応するし、表情豊かで他の人間よりずっと色鮮やか。
笑うと何となく自分も笑えてくる。
嫌そうな顔をされると小さな表情の違いを引き出したくなる。
辛そうだと何となく事情を知りたくなる。
涙を流すと止める方法がないのがちょっとつまらない。
「うん、気に入ってるね。一緒に居て飽きない」
「でしょー?」
上機嫌に笑うと9が彼に絡みに行った。雪を踏む彼の足音が乱れて、多分9が遊んでいるのだろうと分かる。
――そうね。416と居る時とか、また違う顔をするのが
脳裏で自然と矛盾が起きて、45の顔が僅かに顰められる。
「…………?」
立ち止まって顎に手を当てて考えたが、すぐに湧いてきた小さな違和感が消えた。取り敢えず保留できたことに喜びながらまた歩く。
理由はわからなかった筈だが、彼女は彼が他の人形と喋っている姿を想像して笑う。何処と無く歪な表情だ。
9が楽しそうにじゃれ合っているのは
G11と話題が合って声の弾むんでいると
416をからかっている時の得意げな柔らかい笑顔は見ていて
「――――――あれ? ヘンだなあ」
頭に真逆のベクトルの感情衝突。45の表情が崩れ始める。泣きそうな、笑いそうな、怒っているような、悲しんでいるような。
――違うよ。
――何で?
明らかに反発する意見が頭を過ってばかりで、45は変な顔をして立ち止まってしまう。
「違う違う、違う…………違うよね?」
返事はない、声は誰にも届いていない。
ふと雪に水滴が落ちた。雨が降ったのかと45が上を向いたが、恐ろしいほど快晴だ。霞む視界に映るのは確かに晴れ空で、落ちた水滴は彼女の黄金の瞳から。
――おかしいなあ、おかしいよ。駄目だよ。
急に45は笑ったまま泣いてしまっていた。悟られないように急いで涙をパーカーに吸わせるが止まらない。笑ってるのに泣いたままだ。涙が乾かない。
「おかしいなあ、違うのに…………」
――違わないのに。
誰かが答えると、もう彼女は涙が止まらなかった。
流石に心配だよね。それから数時間ぐらい彼とは会話もしなくて、その後はけろっと元通りとでも言わんばかりに喋りだした。
挙動不審にも程があるから9も416も心配してる、彼もこっそり「いつもあんな感じなのか?」ってあたし達に聞いてきたぐらいだ。いつもは違うよ、もっと飄々としてる。
彼はそれから45の行動を殆ど拒否しなくなった、それぐらいしか思いつかなかったんだろうね。
あたしが寝る直前に見た時はいつもどおり横で寝てた。本当に何だったんだろうね、アレ。
一回Kar98kの装弾数を間違えた回が有ったから吊ることを考えた。ファンとしてあるまじき失態だよなあ!?
あ、失踪してた理由は飽きてたからです。やる気が出ただけ。
45姉こわれる。そりゃアンタ、普通男を共有するなんて無理でしょ。どっちかが譲らなきゃ駄目になるわな。