ソシャゲ異世界配信系女主人公ちゃんはヒロインをお迎えしたい   作:薄いの

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エピローグ

「私ね、明後日には村を出てまた、旅に戻ろうと思うの」

 

 これは錯覚なのか、もしかしたら私の情けない願望も入っていたのかもしれません。

 リィンちゃんの表情は、少しだけぎこちない微笑みに見えました。

 

 ◇

 

981,名無しの支援者

はよ出てけ

 

982,名無しの支援者

自首しにいくのか

 

983,名無しの支援者

二度と戻ってくんな

 

984,リィン・アドライナ(16Lv) :カル地方.-フィーミリアの家-

なんか私に対するあたりが強くない?

 

985,名無しの支援者

そんなことないゾ

 

986,名無しの支援者

気のせい

 

987,名無しの支援者

気になる女の子にちょっかいかけちゃうあれだぞ

 

988,リィン・アドライナ(16Lv) :カル地方.-フィーミリアの家-

なんだ、そっかぁ

よし、サインあげよっか?

 

990,名無しの支援者

いらねぇwwwww

 

991,名無しの支援者

マジでいらないwwwwww

 

992,名無しの支援者

電子署名かな?

 

993,名無しの支援者

なんか一周回ってクセになってきた

 

994,名無しの支援者

お前のそういうところさぁwww

 

 ◇

 

「……行き、先は、……行き先は、決まっているんですか?」

 

 喉にへばりつくような、なにかの重みを感じて、言葉に詰まりそうになりながら、ようやく私は言葉を絞り出しました。

 

「大丈夫。……行き先はいつだってこの子が教えてくれるもの」

 

 リィンちゃんは水晶玉を一瞥し、小さく笑いました。

 

 ◇

 

3,名無しの支援者

まぁ、地獄行きだろ

 

4,名無しの支援者

唐突な地獄行きで草生える

 

5,リィン・アドライナ(16Lv) :カル地方.-フィーミリアの家-

私を裁く神がこの世界のどこにいるというのかね

 

6,名無しの支援者

裏ボスみたいなこと言い始めたぞこいつwww

 

7,名無しの支援者

異世界という庭園に投げ込まれた一粒のミントの種みたいな女

 

 ◇

 

「そ、それでね、フィー!」

 

 食事を終え、食器を片付けたリィンちゃんは、どこか気色ばんだ様子で、やや食い気味に声をあげました。

 

「もしも、……良かったらこれから私と、……私と一緒に……」

 

 そこまで言いかけて、言葉を止めました。

 

「……ううん。……ごめんなさい、フィー。……なんでもない、なんでもないの。―――また……繰り返すわけには……いかないものね」

 

 顔を俯かせてリィンちゃんは小さな呟きを漏らしました。

 

「リィンちゃん……」

 

 表情こそ窺えません。

 ですけど、僅かに届いた言葉の残滓。

 それが、彼女の心に深々と突き刺さったままの過去の棘が、未だにその心から血を流させ続けているのだということを確かに知らせてくれました。

 

 一体この歳でどれほどのものを背負えばこれほどまでに……。

 

 気づけば私は両の拳を強く握りしめていました。

 

 ◇

 

36,名無しの支援者

おいふざけんなwwwww

 

37,名無しの支援者

これ以上ないくらい全力で気を惹こうとしてるw

 

38,名無しの支援者

渾身のかまってちゃんムーヴ

 

39,名無しの支援者

過去に仲間を喪ったトラウマ(大嘘)

 

40,名無しの支援者

匂わせてるだけだからセーフ

 

41,名無しの支援者

孤独な戦士リィンちゃん

そのうちもう誰も傷つけたくないのとか言い出しそう

 

42,名無しの支援者

フィーちゃんがめっちゃ痛ましいものを見る目でリィンを見てるwww

 

43,名無しの支援者

騙されないでくれ

 

44,名無しの支援者

というかフィー仲間にするのって本当にこんなイベント経由すんの?

 

45,名無しの支援者

おまえが繰り返してるのは悪行だけだろ

 

46,名無しの支援者

カルマ値マイナスに振り切ってる

 

47,名無しの支援者

>>44

ゲームだと

フィーVSトレント戦、リィン(又は男主人公)乱入

   ↓

フィーと共にラダ村へ

   ↓

おつかいクエスト消化(魔物を統率する強力な魔物の情報入手)

   ↓

フィーと共に残りのトレントの討滅に林道奥地へ

   ↓

トレントを統率する強力な魔物のエルダートレント(林道奥地エリアボス)を見つけて討伐

   ↓

リィン(又は男主人公)が勧誘してフィーがパーティー入り

 

48,名無しの支援者

あれ、あの討伐ってエルダートレントなんてモンスター居たっけ?

 

49,名無しの支援者

>>48

適正レベルの二倍のレベルに課金装備とステアップ課金バフ掛けたリィンの範囲攻撃で取り巻きと一緒に一撃で溶けた

 

50,名無しの支援者

>>49

 

51,名無しの支援者

>>49

ひでぇ

 

52,名無しの支援者

それじゃ分かんねーよwww

 

52,名無しの支援者

レベルと現金の暴力

 

53,名無しの支援者

札束で斬り殺す

 

 ◇

 

「……フィー。いきなり変なことを言ってごめんなさい。私、今日は先に休ませてもらうわね」

 

 明らかに無理をしていると分かるようなぎこちのない笑みを浮かべたリィンちゃんはゆっくりと椅子から立ち上がり、寝室に行くために歩き出しました。

 

 ――彼女が一体なにを言おうとしたのか。

 それが分からないほど、私も鈍いわけではないのでした。

 

 ◇

 

68,リィン・アドライナ(16Lv) :カル地方.-フィーミリアの家-

おねがいだ、フィー。わたしをひきとめてくれ

 

69,名無しの支援者

変な笑い方しちゃってなんか内臓が痛い

 

70,名無しの支援者

なんでフィー相手に少女漫画みたいな展開期待してんのwww

 

71,名無しの支援者

ヒロイン面するな

 

72,名無しの支援者

敗因:なにやってんだ!追いかけてやれよ!役のサブキャラが居ない

 

73,名無しの支援者

というかこいつ追いかけろとか絶対言いたくないwwww

 

74,名無しの支援者

こいつを追いかけろと諭すとか半分犯罪教唆だろ

 

 

 ◇

 

 

 

 私に背を向けて、遠ざかっていく小さな背中。

 その背中に私は声を掛けようとして―――、結局、私は言葉を掛けることが出来ませんでした。

 

 窓越しに、夜空を見あげる。

 

 ――夜。

 それは暗闇と魔物の支配する時間。

 

 同時に、最も魔性の高まる時間帯でもあります。

 

 狂暴性を増した夜の魔物は、通常の魔物よりもより品質が高く、珍しい素材が手に入りやすくなり、凄腕の戦士や魔法使いとなると、この時間帯も、また冒険の時間となるらしいのですが。今の私では、とてもではありませんが、想像も出来ません。

 

 ――結局のところ、恐ろしくてたまらないのです。

 他でもない、自分のことです。分かっていました。

 魔物が、悪意が、魔性の蔓延る暗闇が。恐くてたまらない。

 

 結局のところ、私は臆病者で、声をあげることが出来なかったんです。

 

 だけれど、きっと今なんだ。

 私は変わらなくちゃいけない。

 

 ――強くなりたい。

 

 戦士が、狩人が、斥候が、魔法使いが。

 戦いに携わるあらゆる者が抱く当たり前の欲求。

 それは、果てのない向上心。

 

 私に足りなかったもの、今の私の胸の中を渦巻いているもの。

 

 気が遠くなるほど昔の故事と無数の冒険譚の中で飽きるほどに見て、聞いた言葉。

 過ちだと分かっていても、それでも手を伸ばしてしまう、力という名の禁断の果実。

 

 ――過ぎた力はきっとこの身を焼き、滅ぼすのでしょう。

 

 机の上に横たわる荘厳な銀の杖。

 

「それでも、私は――」

 

 掌を伸ばし、それを掴み取り、輝きを放ちだしたそれを胸に抱く。

 

「きっといつか、あなたに見合う使い手になってみせるから。だから、お願い。今だけは力を貸して」

 

 きっとそう思いたい私の思い込みなのでしょう。

 だけれど、少しだけ、ほんの少しだけ。

 

「……ありがとう」

 

 銀杖がその煌々とした焔のような輝きを増して、応えてくれたような、そんな気がするのです。

 

 

 

 ◇

 

 

 

 リィンちゃんの旅立ちの日。

 

 幸いにもこの日の空は快晴で、柔らかな風の吹く日になりました。

 収納の魔法道具らしきものを持つリィンちゃんは目立った荷を持つ必要もなく、背中に一本の剣を吊っているだけの軽装……とはいえ、背丈の小さな彼女では剣一本だけでもいっぱいいっぱいに見えます。

 

「リィンちゃん。この杖はお返しします」

 

 私が銀杖を差し出すと、リィンちゃんは目を丸くしました。

 

 ◇

 

699,名無しの支援者

リィンちゃんフラれたwwwww

 

700,名無しの支援者

ざまぁwwwざまぁwwwwww

 

701,リィン・アドライナ(16Lv) :カル地方.-フィーミリアの家-

ああああああああああああああああああああ

 

702,名無しの支援者

じきにここも大草原に呑まれる

 

703,名無しの支援者

ごはんおいしい

 

 ◇

 

「……必要ない。元々あなたが持つべきものよ」

 

 困ったように、眉尻を顰めてそう言うリィンちゃん。

 彼女がそう言うことまで、私はどこかで分かっていました。

 なにせ私は、ズルい大人なのですから。

 

「そうですか。でも、困りましたね。私、お友達相手に一方的な大きな貰いものはしたくないんです。ですから、……そうですね。この杖の価値の分だけ、何年掛かるか分かりませんけど、私のことを旅に連れていって、使って貰えませんか?」

 

 ◇

 

783,リィン・アドライナ(16Lv) :カル地方.-フィーミリアの家-

わたしのえっちなよめ

 

784,名無しの支援者

これはえっち

 

785,名無しの支援者

エロい

 

786,名無しの支援者

公式淫ピ

 

787,名無しの支援者

これもしかしておまえがかつての仲間を喪った孤独な戦士ムーヴしたせいで仲間加入展開が別の派生してね?

 

788,名無しの支援者

リィンと同じ感想に至ってしまったことが無性に悲しい

 

789,名無しの支援者

>>787

あぁ、これリィンが気負わないように仲間じゃなくて同行者の位置から始めようとしてんのか

 

790,名無しの支援者

めっちゃいい人やん

 

791,名無しの支援者

善人すぎて胸が痛い

 

792,リィン・アドライナ(16Lv) :カル地方.-フィーミリアの家-

>>789

どうしよう

ちょっと胸がちくちくする

 

793,名無しの支援者

 

794,名無しの支援者

リィンのかつて人間だった頃の良心の残滓が反応してる

 

795,名無しの支援者

本能で光を求めてた悪魔の子がちょっと浄化された

 

796,名無しの支援者

これもしかしてリィンの悪性を浄化させるための旅なのでは

 

797,名無しの支援者

リィンの良心とかキウイとかダチョウにとっての翼みたいなものではないのか

 

 ◇

 

 リィンちゃんは、ぽかん、と少しだけ呆けたような可愛らしい顔をしています。

 あまり見ない表情で、微笑ましい気分になります。

 

「……本当に、いいの?」

 

 動揺に揺れる、綺麗な蒼い瞳。

 

「私、きっとリィンちゃんを守れるくらいに強くなってみせますから」

 

 私は少しだけかがんで、リィンちゃんをぎゅっと抱きしめます。

 その体は私が思っていたよりも、ずっと華奢で、硝子細工のような繊細さすら感じるものでした。

 

「フィー……、ありがとう」

 

 胸元から、どこか照れ臭そうな調子のリィンちゃんの声が聞こえる。

 

 ――そう。私はこの旅の中でリィンちゃんを守れるくらい強くなってみせる。

 

 私の、いえ、私たちの物語が、今始まろうとしていました。

 

 ◇

 

981,リィン・アドライナ(16Lv) :カル地方.-フィーミリアの家-

おっぱい

 

982,名無しの支援者

おっぱい

 

983,名無しの支援者

おっぱい

 

984,名無しの支援者

おっぱい

 

985,名無しの支援者

一瞬で色欲に呑まれた良心

 

986,名無しの支援者

儚かった善性の欠片

 

987,名無しの支援者

しってた

 

988,リィン・アドライナ(16Lv) :カル地方.-フィーミリアの家-

そうだ

フィーミリアに着て欲しいアバターか装備案募集します

ちなみにイベント産以外のアバターやガチャ産装備はコンプリートしてます

私に貢いでからご提案どうぞ

 

989,名無しの支援者

うおおおおおおおおお!!

 

990,名無しの支援者

さすリィン

 

991,名無しの支援者

お前ならやってくれると思ってた

 

992,名無しの支援者

紛うことなき美少女

 

993,名無しの支援者

クソレズ愛してる

 

994,名無しの支援者

大 正 義 主 人 公

 

995,名無しの支援者

これは主人公の器

 

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 information ルームの設定が変更されました

 以降、ルーム自動作成機能によって作成されるルーム名は以下に変更されます

 

グロウ・ツリーラインとかいうソシャゲの女主人公(リィンちゃん)になった私が魔本のレテちゃんをお迎えしにいくまで partXXX

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996,名無しの支援者

あっ(察し)

 

997,名無しの支援者

えっ

 

998,名無しの支援者

犯 行 予 告

 

999,名無しの支援者

たのむレテちゃんはたすけて

 

1000,名無しの支援者

もうゆるして

 

 

 

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1001:このルームは書き込み上限を超えました

 

…………新規ルームが作成されました

20秒後に新規ルームに自動で移動します

――――――――――――――――――――――――――――――




 ◇





 ◇

 あとがき

ここまで笑いながら書いた小説は初めてでした。
本当に楽しかったです。ここまでご覧頂いて、本当にありがとうございました。

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