ソシャゲ異世界配信系女主人公ちゃんはヒロインをお迎えしたい 作:薄いの
リィンのマイルーム/(略)女主人公ちゃんはキャラソンが歌える
ふと、真夜中に目が覚めました。
そして、眠り直そうとして、どこか身の内からつつかれるような違和感を感じました。
旅人にとって、夜は必ずしも安らぎの時間であるとは限りません。
少し身の寄せ方を間違えれば、身体の熱を奪われ、獣や魔物に肉を貪られてしまいます。
とはいえ、実際の私たちの旅、特に野営の類に関しては、とある事情により、その過酷さからは遠いところにありました。
リィンちゃんと旅に出てかれこれ、一週間ほどになります。
年上として、身勝手ながらも姉代わりとして、彼女を守ると自らに定めて一週間なのです。
私が先ほどまで眠りに就いていた、少し大きめのふかふかのベッド。
周りを見渡せば金属の板で出来た棚に、木製の本棚、赤、青、緑と色彩豊かな椅子と、全体的に見て、どこか統一性のない家具たち。
あとは、全くもって着た覚えのない服を着た私が薄い紙に描かれ、壁に貼り付けられた非常に精工な絵画なども最初はありました(*1)。リィンちゃんはなぜか慌てて片付けていましたが、ちょっと不思議な代物でした。いつ描かれたのでしょう。
あと……この部屋にあるのは――そうですね。
どこからか流れ出す音楽と共に狂ったように踊り続ける恐ろしい花の怪物(いつの日か突然歩き出したりしないことを密かに祈っています)。
定期的に「ましゅまろ」なる甘味を上空に勢いよく吐き出し続ける怪しげな魔法道具(こわくてちょっと口に含む勇気が出ませんでした……)。
なぜか中央の無人の机に向けて四方八方から大量の霧を浴びせかける機械群(リィンちゃん曰くそういう異国のお祈りらしいです)。
あとは、個人的にとても好きなのですが、部屋の片隅でかなりのスペースを占領している、とても巨大な鉄のお船の模型です。私は山育ちで、たまに町に降りる程度なため、潜在的に海への憧れがあって、このお船を見て、旅の最中でいつか広大な海を眺めることを密かな夢としています。田舎娘みたいに思われそうで、恥ずかしくて誰かに話すわけでもないのですけれど。
そんな事情もあり、ぼうっとこのお船を眺めていることがあるのですが、時折リィンちゃんもこのお船を眺めて、「これも都合よく『ギジンカ』しないかなぁ」などと言っているので、言葉の意味は分かりませんが、なんとなく親近感を抱いてしまいます。ちょっと……いいえ、結構嬉しいです。こういうところから少しずつでも仲良くなれればな、と思います。
お船。お船。いつか、この鉄のお船の本物も是非眺め―――。
……脱線しました。
いえ、そうではなく、リィンちゃんが『まいるぅむ』と呼んでいるこの場所では、天幕も焚火も、獣除けの香も必要ない快適な空間を保っています。
しかし、恐ろしいことにかつてはこの『まいるぅむ』という扉の形の魔法道具はもっと強い力を持っていたらしく、『えすでぃー』の姿でつまんだりくるくる回したり出来たらしいのですが、お恥ずかしい話、魔法使いなのに私ではお話が上手く飲み込めませんでした。
これも、私自身が、学び続けることから逃げたツケを払っているのかもしれません。
これからの行動で取り戻していかなくてはなりませんね。
今更になって、違和感の原因に気づきました。
―――隣で寝ていたはずのリィンちゃんが居ませんでした。
ずっと一人で旅をしていたリィンちゃんですから、当然ベッドをひとつしか持ち合わせていない訳で(*2)、いえ、まぁ、普通は旅をしていて、ベッドなんて持ち合わせている訳がないのですけれど。それは、それとして。私も最初は部屋の隅で持ち合わせていた毛布にくるまっていようと思っていたのですが、わざわざ気を効かせてベッドのスペースを分けてくれたリィンちゃん。
彼女の姿がどこにも見当たりませんでした。
部屋に灯りを灯すも、その姿はありません。
光に反応したのか、例の花の怪物が軽快な音楽を奏でながら踊り出し、怪しげな魔法道具が、また天井めがけてまたひとつぽん、と『ましゅまろ』を吐き出しています。つまりは平常運転です。
……となると、外に行ってしまったのでしょうか。
私は、立てかけてあった白銀の杖を手に取り、扉の外へと向かいました。
◇
人の営みから少し外れた小高い丘。
平時ならば、旅人や、狩人、採集に来た村人などの姿もちらほら見れるであろうこの場所も、日が落ちた後はどこかうすら寒いものを感じさせるものへと、姿へと変えます。
私が小さく杖を掲げ、灯りの魔法を唱えようとするのを先んじるように、杖から燃え上がるような陽炎を纏った光が迸り、周囲を明るく照らしました。……本当に、私には勿体ない、優しく、賢い杖です。
探索の基本として、夜のさざめきに耳を凝らすと、小さな歌声が聞こえてくるのが分かります。
人を惑わす類の魔物でなければ、まずリィンちゃんでしょう。
私は、そうあたりを付けて歩き出しました。
歩みを進めると、傍らにランタンを置いたまま、丘の先端に腰掛けているリィンちゃんの姿が見えました。
ここまで来ると、少しだけぎこちない様子の歌声もはっきりと聞こえます。
浮遊する水晶が光る窓を出し、リィンちゃんはそれに、時折ちらちらと視線をやりながらも歌を紡いでいます。
◇ グロウ・ツリーラインとかいうソシャゲの女主人公(リィンちゃん)になった私が真夜中に自分のキャラソンを熱唱する part174 ◇
◇
77,名無しの支援者
真夜中に出してて許される歌声じゃない
78,名無しの支援者
リィンちゃんェ……
79,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
……おかしい
なぜ私の激うまキャラソンが不評なのか
80,名無しの支援者
そもそも致命的に音ハズしてんだろ
81,名無しの支援者
出そうとしてたお布施ひっこめたわ
82,名無しの支援者
そもそもフィーちゃん居ない時にお前見てても心が満たされない
83,名無しの支援者
しれっとフィーちゃんと同じベッドで寝てんじゃねーぞクソレズ
84,名無しの支援者
むしろ延々とフィーちゃんの寝顔配信しろ
85,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
>>83
正直、時々辛抱たまらなくなる時あるよね
86,名無しの支援者
やめて……フィーちゃんを解放して……
84,名無しの支援者
生々しい話やめろ!
85,名無しの支援者
そもそもあのマイルームのセンス見た時から正直嫌な予感はしてた
86,名無しの支援者
三次元であのいかれた部屋見ると頭おかしくなるよね
87,名無しの支援者
とりあえずあの部屋の隅のくそでか戦艦模型は片付けろ
世界観こわれる
88,名無しの支援者
もしかして、歌とかじゃなくて芸術関連のスキルが軒並み死滅してるのでは
89,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
>>87
戦艦じゃないよ
軽巡洋艦だよ
90,名無しの支援者
あれを戦艦と思うとかほんまにわか(笑)
91,名無しの支援者
にわか(笑)
92,名無しの支援者
ああああ゛あぁぁ!
戦艦だろうと軽巡洋艦だろうと宇宙戦艦だろうとなんでもいいだろうが!!!
93,名無しの支援者
なんか激おこで笑う
94,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
>>92
もう真夜中なんだからもうちょっと落ち着こうよ
あんま興奮すると眠れなくなるよ
96,名無しの支援者
真夜中に熱唱してるやつがなんか言ってるwww
97,名無しの支援者
おい、後ろでフィーちゃん見てるぞ
居ないから心配になって探しに来てくれたんじゃね
98,名無しの支援者
おまえ、わかってて煽って遊んでるだろw
99,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
>>97
……ほんと?
ちょっと今から本気の本気で歌うからキミたち私の声優譲りの声帯(文字通り)の力に萌えていいぞ
力(日本円)・容姿(イラストレーター)・声帯(声優)の三種の神器を備えたミラクルヒロインだぞ
100,名無しの支援者
>力(日本円)
これはなんなのwwwww
101,名無しの支援者
人気声優から略奪した声帯を我が物顔で誇れる女
102,名無しの支援者
>>100
我らが誇る汚れすぎている系主人公やぞ
103,名無しの支援者
親が見てるから恰好付けたくて死ぬ気で走る運動会の子供みたいで笑う
104,名無しの支援者
根底に褒められたいって欲求があるからかもしれんな
105,名無しの支援者
もしかしてリィンってかわいいのでは?
106,名無しの支援者
>>105
ははっ(目逸らし)
107,名無しの支援者
>>105
ナイスジョーク
107,名無しの支援者
>>105
一晩寝れば正気に戻るから大丈夫だよ!
108,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
……みんな私のことなんだと思ってるの?
109,名無しの支援者
リィンちゃんはリィンちゃんだろ(すっとぼけ)
110,名無しの支援者
悪魔の子
111,名無しの支援者
たった一ヶ月ほどでグロインの薄い本市場をGLに塗り替えた女
112,名無しの支援者
人類が七つの大罪コンプガチャをコンプしたことによって異世界に排出された女
113,名無しの支援者
>>112
異世界ちゃん「あ、あのっ!わたし、特に関係ないのに意味もなく割りを食ってませんか?」
114,名無しの支援者
特に理由のない社会不適合者搬入が異世界ちゃんを襲う――!
115,名無しの支援者
異世界ちゃんの日常
◇
リィンちゃんの背後でその歌声に静かに耳を傾けること十分ほどでしょうか。
歌の終わりから少し経ってから、私はぱちぱち、と小さく手を叩きます。
たどたどしく、どこかズレた音色。
だけれども、銀の髪を夜風にたなびかせながら、彼女が真剣に歌う姿はどこか幻想的で、高貴な姿にすら見えました。
メロディーに至っては、私が今まで聞いたものや、歌ったことのあるものとは大きくかけ離れた異郷の音楽を彷彿とさせるものでした。そして、事実、そうなのかもしれません。遠い遠い故郷。もう、二度と届かない場所への望郷の想いの秘められた歌。
「……ふぃっ、フィー!? さっきの、聞いていたの……?」
◇
139,名無しの支援者
丁度今気づきました感出すな
140,名無しの支援者
声帯の持ち腐れ
141,名無しの支援者
心の内のドヤ顔が透けて見える
◇
「ふふ、ごめんなさい。でも、リィンちゃんもダメですよ? ……リィンちゃんが強いのは私も知っていますけど、それでも真夜中にお散歩なんて……私、心配になっちゃいます」
「……それは、ごめんなさい」
気まずそうに視線をリィンちゃん。
気恥ずかしさと、私が黙って覗いていたことに対する、未だ渦巻いてる不満の感情を混ぜ合わせたみたいな顔をしています。
リィンちゃんの隣に腰掛け、丘の上から眼下に広がる闇を見据えます。
目を凝らせば、遠くに微かに街の灯りが見えました。
明日は街の宿屋に泊まれるかもしれません。
気づけば夜風にすっかりと、眠気を吹き飛ばれていました。
……だからでしょうか。
「リィンちゃん。もしよろしければリィンちゃんの知っている歌を教えてくれませんか? せっかくですから、私の知っている歌と交換しましょう」
この旅の中でリィンちゃんと良かったことも、悪かったことも、沢山のことを経験して、共有して。
最後に楽しい旅だった。
そう笑えるように過ごせたらいい。
だから私は今、眼下に広がる暗闇を払うように、唄声を響かせました。
強く。強く。私の心に深く、刻みつけるように。
◇
435,名無しの支援者
入金しました
436,名無しの支援者
入金した
437,名無しの支援者
送った
438,名無しの支援者
今夜は悪夢かと思ったけど案外ぐっすり眠れそう
439,名無しの支援者
さすフィー
440,名無しの支援者
フィーちゃんが偽物と本物の違いを分からせてくれた
441,名無しの支援者
歌詞覚えてすぐとは思えん
442,名無しの支援者
>>441
というか設定資料集だと杖属性の魔法使いは来歴が
体系化して知性と知識で扱うようになったのが杖属性より近代寄りの魔本属性なんだと
441,名無しの支援者
自分のキャラソンだとやっぱクッソうめぇなフィーちゃん
442,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
なんでぇっ!
なんでさぁっ!!
私の時はむしろ聞いてやったからむしろ金寄越せとかみんな言ってたじゃんっ!
443,名無しの支援者
今回は相手が悪い
444,名無しの支援者
お前だって目の前でフィーが自分の好きな曲歌ってくれたら貢ぐだろ
445,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
>>444
貢ぐわ
446,名無しの支援者
無駄に潔い
447,名無しの支援者
自分の欲望に正直
まぁ、俺も貢ぐんですけど
448,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
なんかもう、むらむらするから今日はもう帰ってフィーの胸元に顔うずめながら寝ます
449,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
あ、ごめんミス
450,リィン・アドライナ(23Lv) :イドル地方.-フィトスの丘-
×むらむら 〇もやもや
451,名無しの支援者
そこ訂正するならフィーの胸元うんぬんも訂正しろ
452,名無しの支援者
ふざけんな
453,名無しの支援者
はやくこいつなんとかしてくれ
◇
◇
(*1)キャラクタースキンが増えるとなぜかポスターがおまけで貰える伝統
(*2)むしろ、家具ガチャダブりのベッドその他諸々で溢れてニトリのカタログみたいになってる
◇