淡-Awai- あっちが変   作:おこそとのほもよろを

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流れ十一本場:淡、超勘違いをする

 入部初日に、いきなり新入部員同士の対局が行われることになった。

 この入学式の日に、そうそうに麻雀部に顔を出した新一年生は十数人。この対局で、彼女達新入部員のランク付けがされる。

 しかし、一番の目的は、照が各対局を見ながら誰がどのような特性を持ち、どのチームに所属するのが適しているのかを判断することだった。

 一先ず、淡達は学食で、急いで昼食を済ませた。

 早食いの人達の中は、

『カレーは飲み物!』

 と言う輩もいるが、淡にも何となく分かる気がした。たしかに、熱くさえなければ詰め込みやすい。

 部室に戻ると淡達は、菫から、

「全力でやるように。大星。お前も例外ではない。」

 と言われた。つまり、能力をフルに発揮しろと言うことだ。

 早速、対局開始だ。

 ルールは25000点持ち30000点返しでオカは無し。

 赤牌4枚入りでダブル役満は無し。

 大明槓からの嶺上開花は責任払い。

 基本的にインターハイ西東京予選個人戦と基本的に同じルールだ。

 淡は、初っ端からクラスメートである佐々野いちご妹のみかんと多治比真祐子妹の麻里香を相手にすることになった。

 二人とも、普通の高校なら新一年生の中では美貌だけではなく麻雀の腕もトップレベルだろう。エース級の器だ。

 もう一人の面子は、多分、本話限りの登場人物になるであろう只野絵美。淡達の隣のクラスの生徒だ。

 半荘一回勝負。

 場決めがされ、起家が淡、南家が麻里香、西家がみかん、北家が絵美になった。

 

 東一局、淡の親。

 サイの目は5。最後の角が割りと浅い位置にあるパターン。

「(絶対安全圏プラスダブリー発動!)」

 淡の能力によって、淡以外は全員五~六向聴。

 この最悪な状態の中、

「リーチ!」

 淡がダブルリーチをかけてきた。

 唖然とするみかん、麻里香、絵美の三人。

 しかし、三人ともツモは悪くない。きちんと手が進んでゆくし、最後の角が来る少し手前で聴牌した。すると、

「カン!」

 淡が暗槓した。リーチ者の暗槓は余り嬉しくない。

 嶺上牌はツモ切り。

 そして、最後の角を超えた直後に、

「(満貫聴牌だもん。仕方ないよね。)」

 絵美がツモ切りした牌で、

「ロン。」

 淡が和了った。

 何故か逆回転で牌を倒した。

 ハンニャからは深い意味は無いと言われているが、みかんや麻里香から見れば、これに何か意味があるように感じられた。

 淡の手はダブルリーチのみ。これを見て絵美はホッと胸をなでおろした。

 しかし、裏ドラをめくった直後、絵美の表情が固まった。

「ダブリー槓裏4。18000。」

 まさかの親ハネ振り込みだ。これで、絵美の点棒が一気に7000点まで減った。

 そして、東一局一本場、淡の連荘。

 サイの目は7で、最後の角の後が最も長いパターンだ。

 ここでも、

「リーチ!」

 淡がダブルリーチをかけてきた。

 前局と同様に、みかん、麻里香、絵美の三人は五~六向聴。しかし、配牌とツモが割りと巧く噛み合って手は進んで行く。

 それが結果的に、後半になって危険牌を勝負させる罠になっているのだが…。

 8順目で三人とも聴牌した。

 次巡、最後の角の直前で、

「カン!」

 前局同様に淡が暗槓した。

 全てが前局と似通い過ぎている。

 みかんと麻里香は、淡のダブルリーチが偶然ではなく能力によって意図的に繰り出されている可能性を考えた。二人とも麻雀強豪校に通う姉から、能力麻雀のことを聞かされていたためだ。

 もし、そうだとすると、当然、前局と同じ槓裏4の可能性も視野に入れておかなければならない。つまり、親ハネ。

 みかんと麻里香は、聴牌を崩して完全な安牌を切って様子を見た。

 一方、絵美は能力麻雀など知らなかった。普通、そんなものは考えない。

 彼女は、角を超えた直後、聴牌維持のためにツモ切りした。自分の手もタンピンドラ2と勝負したい手だ。

 しかし、この牌を淡は見逃さなかった。

「ロン。18000。」

 またもや逆回転。しかも、裏ドラを見ずに点数申告した。

 手牌はダブルリーチのみ。しかし、裏ドラをめくると、前局と同様に槓裏4だった。

 これで絵美のトビで終了した。

 同時に、

「「(確定ね。)」」

 みかんと麻里香は、淡が絶対安全圏、ダブルリーチ、槓裏4の恐るべき能力を持つ者であることを確信した。

 そして、同時に二人は、チャンピオン宮永照の卒業後も大星淡と言う絶対的な柱となる人物がいてくれる心強さを感じていた。

 普通、こんなチートな力を持つ者が負けるとは思えない。

 全中王者の原村和だって、淡には到底敵わないだろう。

 この時点では、淡をも打ち破る化物が全国に二人もいるなどとは、さすがにみかんも麻里香も想像すらできなかった。

 ただ、逆回転に関してだけは、二人とも能力発動条件の一部と誤認識した。

「淡ちゃん、すごい!」

 これが、みかんの純粋な感想。

「次期エース間違い無しだね!」

 これが麻里香の対局後の第一声だった。

 一方の絵美には、この段階では、淡が単にツイていた程度にしか思えなかった。

『みかんと麻里香の反応こそおかしい。淡を過大評価し過ぎている。』

 としか思えなかった。

 まあ、それが普通の反応だろう。

 

 その後、面子を入れ替えて新入部員同士の対局が進められた。

 当然、毎回、絶対安全圏プラスダブルリーチ槓裏4を繰り出した淡が、トータルでダントツトップ。

 もはや、これは偶然ではなく必然。

 さすがに、絵美もそう考えざるを得なくなった。

 そして、その攻撃力から、淡が攻撃特化のチーム虎姫に入ることに誰も異論を唱えることはなかった。

 部活の最後に、

「部内の対局のことは、絶対に他言しないように!」

 と菫が全員に命じた。

 白糸台高校は、夏春夏の団体戦三連覇を目指している。だからこそ、能力のことが大会前にバレては意味がない。

 特に淡の能力は三連覇に向けて貴重な戦力だ。

 だからこその箝口令でもあった。

 

 今日は、三時くらいには部活が終わった。

 そもそも入学式のあった日だ。いきなり夜遅くまで拘束はできないだろう。それに、初日から帰りが遅かったら親も心配する。

 この日、淡と麻里香は、みかんに連れられて寮を訪れた。広島県から入学したみかんは、寮生だった。

 自宅が通学圏内にあっても、麻雀部員の場合は、寮生になっているケースが多々ある。夜遅くまで部活ができるようにとの配慮だ。

 ただ、建物自体は古く、互いの生活音が隣の部屋に聞こえてくる。

 みかんの部屋の隣は亦野誠子の部屋だった。

 誠子の部屋には、エキスパンダーやら腹筋台やら、色々なトレーニング機材が置かれていた。身体を鍛えているらしい。

 別に傭兵になるつもりは無いと思うが…。

 この時、誠子の部屋には、誠子の同級生の渋谷尭深が遊びに来ていた。

「あれ? 誠子ちゃん、こう言うのって持ってたっけ?」

 尭深は、誠子の部屋のトレーニング機材を、この日はじめて見た様子だった。

「この間、通販で買ったんだ。山に釣りに行くと結構体力を使うし、身体を鍛えたいって思っね。」

 誠子の麻雀は河から牌を釣り上げる鳴き麻雀。

 実生活でも釣りは趣味らしい。

 一方の尭深は、南三局までの第一打牌が、オーラス時の配牌になって戻ってくると言う能力。これを白糸台高校ではハーベストタイムと呼んでいる。

「ふーん。ねえ、ちょっとこれ、やっても良い?」

「いいけど。」

「有難う。一度、テレビで見たことがあって、やってみたかったんだ、これ。」

 尭深は、腹筋台の上に乗ると大きく息を吸い込み、

「ふん!」

 腹筋にチャレンジした。

「ギー…、ギー…。」

 みかんの隣の部屋から、何やらきしむ音が聞こえてきた。

 腹筋台の音なのだが、淡達には、これがベッドのきしむ音のようにも聞こえた。

「ねえ、これって、もしかして?」

 淡、みかん、麻里香の三人は、誠子が中で一体何をしているのかと、恐る恐る壁に耳を当てた。そして、息を飲みこんで耳に神経を集中した。

 すると、

「い…痛い!」

 中から尭深の声が聞こえてきた。

 何のことは無い。尭深の腹筋がつっただけであった。

 しかし、音と声だけを聞いている淡達には、十分誤解するだけの材料が揃っていた。

「「「(まさか?)」」」

 三人が顔を見合わせた。そして、再び壁に耳を当てた。

 すると、今度は誠子の声が聞こえてきた。

「そんなに無理しなくても…。痛いなら止めても…。」

「でも、もうちょっと頑張ってみる。うう…。ああぁ…。」

 しかも、良く聞いてみると尭深の息があがっているような感じである。

「「「(あの二人って、そう言う仲だったの? 別に、女同士に走ったって、それは個人の自由だけど…。)」」」

 淡達は、誠子と尭深が一線を越えたと勝手に勘違いした。

「「「(興味はあるけど、これ以上聞いちゃマズイかも…。)」」」

 一先ず三人は、誠子と尭深に気を使って、みかんの部屋を出た。

 

 今日は、最後に衝撃的な(誤解をする)ことがあったが、淡は夕方には帰宅した。

 

 翌日、麻雀部には、さらに多くの新入生が押し寄せた。団体戦夏春二連覇の看板はダテではない。

 それに、高校生一万人の頂点宮永照やクールな弘世菫への単なる憧れから、ろくに麻雀を知らずに麻雀部への入部を希望する者も多かった。

 今日も淡は、新入生と対局をさせられた。淡からすれば、みんな激弱で、今日の対局には正直面白さが感じられなかった。

 昨日とは違い、今日はダブルリーチを封印した。それでも淡に敵う新入生は一人もいなかった。

 絶対安全圏のみでの戦いなら、みかんと麻里香だけは善戦してくれる。最終的に勝つのは淡だが…。

 これが、西東京大会で一回戦負けする弱小校なら、別に激弱でも構わない。しかし、全国優勝を目指す白糸台高校で麻雀部に入部するなら、せめて、みかんや麻里香くらいの実力はあって欲しい。

 淡は、そう思うようになっていた。

 そのせいか、淡は、入部二日目にして既に、みかんと麻里香以外の一年生とは距離を置くようになった。

 

 翌日、HRでの担任の第一声は、

「今日は、新入生の校内一斉テストを行います。」

 だった。

 範囲は中学三年生までの全て。つまり、入試と同じだ。

「(だったら楽勝かな。)」

 淡は、楽観的にそう考えていた。

 まずは国語。

 しかし、いざテスト問題を見ると、

「(あれ?)」

 今まで受けてきたテストよりも難しい。入試を終えて、勉強をサボっていた部分はあるが、半分も解けない。

 中学二年の一学期末テストの時ほど酷くはないが、これだけ答えられなかったのは久し振りである。

 国語のテストが終了した。

「(うわぁ。撃沈…。)」

 淡が机に突っ伏した。

「淡ちゃん、どうだった?」

 みかんが話しかけてきた。

「半分もできなかった。最悪。」

「私も…。なんか、とても難しかったよね。」

 周りの反応も大半は似たようなものだった。

 しかし、中には済ました顔で平然としている輩もいた。このクソ難しいテストが、きちんと解けているとでも言うのか?

 

 次のテストは数学。これも撃沈。

 次は英語。撃沈。

 理科。宇宙に関する問題だけ完璧。他は撃沈。

 社会は大敗。

『赤信号。みんなで渡れば怖くない。』

 久々に頭の中を横切るフレーズだ。

 この日の部活で淡は荒れた。

 今日と明日は、一年生と二年生の対局になる。

 絶対安全圏は常に発動。ダブルリーチは親の時だけに限定。それでいて、淡は全局全員トバしの偉業を達成した。

 

 翌日、テストが返された。

 各科目の平均点と校内偏差値、全教科合計点の平均点と校内偏差値が記載された紙も同時に渡された。

「(全教科合計点の偏差値が47。順位は300人中155位。なにこれ?)」

 今までの偏差値よりも15以上低い。

 まあ、真ん中くらいだから別に悪いわけではないのだが、淡としてはショックだった。

 同じテストでも、受験者のレベルが上がれば平均点は上がるし、偏差値は下がる。逆に受験者のレベルが低ければ平均点は下がるし、偏差値は上がる。

 偏差値は、母集団が異なれば当然変わる。

 白糸台高校入学者だけに限定されたテストなのだから、高校受験時の偏差値が淡と同程度以上の人間だけで平均点も偏差値も算出することになる。

 つまり、母集団が高校受験の頃よりも優秀なほうに偏ったのだから、こうなってもおかしくはない。

 ただ、それを瞬時に理解できるほど、淡は頭が回っていなかった。

「(どうして? 私、馬鹿になっちゃったの?)」

 この日も淡は、部活で荒れた。

 

 入部から一週間後、チーム分けが発表された。

 淡は、照、菫、尭深、誠子とともにチーム虎姫に選ばれた。攻撃特化型のチームだ。

 みかんと麻里香は、一先ず攻守のバランスが取れたチームのメンバーとなった。

 

 この週末、淡は夕食を取り終えると、さっさと入浴を済ませ、ベッドに寝転んだ。

「(なんか、今週は変に疲れた。今日は、もう寝る。)」

 テストの点は悪いは、部活はレベルの低い奴が多いは、色々と淡なりにフラストレーションが溜まっていた。

 テスト返却の日、廊下に上位の成績が張り出されたが、あのクソ難しいテストで全教科満点近い点数を取っている奴もいた。

 たしか、名前は只野絵美。隣のクラスで麻雀部員の奴だ。麻雀は激弱だが、学生の本分である勉強の成績は良い。

 まあ、みかんも麻里香も淡と同程度の成績だったので、互いに共感が持てたことが救いだったが…。

 しかし、フラストレーションが溜まろうと、やるべきことは、やらなければならない。

「淡さん。白の星まで来てください。」

 このタイミングでハンニャからのテレパシーが届いた。仕事だ。

 ただ、いつもは緑の星なのに、今日は何故白の星なのだろう?

 白の星に直接行くのは、カンブリア星での戦いの直後、志望校を白糸台高校に決めたすぐ後以来だ。

 淡は身支度をすると、部屋のドアを開けた。

 ドアは、白の星の高層ビルに一室に通じていた。

「ハンニャ。何があったの?」

「実は、ここアンドロメダ星雲内でのことですが、タイショ星の軍隊がタイカン星に攻め込もうとしています。」

「じゃあ、それを止めに。」

「そうです。ただ、今日は、その前にプルプルから直接、淡さんに話をしたいことがあるようです。」

「プルプルが?」

 予言者プルプルは、滅多に人前には出てこない。

 会えるのは、ハンニャ達の種族でも、ハンニャ、サンムーン、王家の者達など、ごく一部の者達だけに限られている。これは、全宇宙の黙示録に書かれた内容が下手に流出しないようにするためらしい。

 プルプルに言われたことは100%当たる。ゆえに怖い。

 何か変なことを言われたらどうしよう。

 例えば、

『あなたは明日死にます』

 とか、

『既に不治の病に侵されています』

 なんて言われたら最悪だ。

 当然、淡も今まで一度も会ったことはない。それが急に話したいことがあるなんて…。

 淡は、急に緊張してきた。

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