淡-Awai- あっちが変   作:おこそとのほもよろを

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流れ十四本場:淡、多治比真祐子と出会う

 続いてハンニャ達は、アンドロメダ銀河から数光年離れた位置に瞬間移動した。そこから見るアンドロメダ星雲は壮大で、何とも言えない美しさがあった。

 華麗なる渦巻き型星雲。

 地球からは、こんな大アップでアンドロメダ星雲を見ることはできない。

 ハンニャ達は、そこから、さらに瞬間移動してアンドロメダ星雲の伴銀河であるカシオペア座矮小銀河やペガサス座矮小銀河を麗香達に見せた。

 続いて、天の川銀河から数万光年離れたところに瞬間移動した。

 そこから見る天の川銀河の全貌を、菫は一生忘れないであろう。地球に…いや、天の川銀河内にいる限り、どのような望遠鏡を用いても、天の川銀河の全貌だけは決して直接見ることはできないのだから…。

 さらに、麗香、照、菫の三人は、いっかくじゅう座バラ星雲、ペルセウス座カリフォルニア星雲、オリオン座大星雲、キャッツアイ星雲など、美しい散光星雲やリング星雲を見せてもらった。

 再び、宇宙船が瞬間移動した。

 すると、今度は目の前に馬の頭のような形の暗黒星雲が見えた。オリオン座馬頭星雲だ。

 まだ、数光年離れているが、相手がとてつもなく大きいため、目と鼻の先にあるように感じる。

 まさか、望遠鏡を使わずに肉眼で見られる日が来るとは…。

 そこからさらに移動して、麗香達は、天の川銀河の伴銀河である大マゼラン星雲、うしかい座矮小銀河、おおいぬ座矮小銀河なども見せてもらった。いずれも、数千光年離れた位置から全貌を見た後に、星雲内にも入ってみた。

 そして、そこからさらに、さんかく座銀河へと飛んだ。

 さんかく座銀河は、局部銀河群の中で三番目に大きな銀河である。その全貌を見た後、再び瞬間移動して、さんかく座銀河内のある惑星に近づいた。

 その惑星は、海と緑の星で、四つの大陸があった。

「ねえ、ハンニャ。もしかして、ここって人が住めそうな感じ?」

 ここに来るのは、淡も初めてだった。そもそも、さんかく座銀河自体、淡は今まで一度も来たことがない。

「はい。居住可能です。我々は、この星を風の星と呼んでいます。この四大陸は、それぞれ東の大陸、南の大陸、西の大陸、北の大陸と名付けられ、喜びの四大陸とも呼ばれています。」

 白の星、緑の星、赤の星で{白發中}かと思っていたが、さらにこれは、風牌か?

 しかも喜びの四大陸って、大四喜か?

 そんなことを淡は一瞬思った。

「ここに生物はいるの?」

「まだ植物しか存在しません。」

「へっ? まだって?」

「実は、この星は、最近我々の手でテラフォーミングした星なんです。」

「じゃあ、ハンニャ達で住める星にしたってこと?」

「そうです。それと、先週議会で決まったことなんですが、この星全てをテーマパークやリゾート地とした娯楽・遊園施設惑星にすることになりました。温泉も作りますよ。」

 なんと星全体を遊び場にする?

 それはそれで、とんでもない発想だ。

「来週、工事用ロボットを大量に送り込みます。二年後には、皆様をこの星に招待させていただけるようになると思います。」

 ハンニャには、そう言われたが、菫は、

「(恐らく、一生かかっても全てを回りきれないだろうな。)」

 と思った。

 一方の淡は、

「うん。楽しみにしてるよ!」

 と楽観的に捉えていた。

「では、次は局部銀河群から離れます。では、サンムーン。」

「了解。」

 サンムーンが手元のボタンを押すと、宇宙船は数千万光年単位で瞬間移動した。

 まず、ソンブレロ銀河(おとめ座)や黒眼銀河(かみのけ座)、子持ち銀河(りょうけん座)などを比較的近くで見ることができた。

 近くといっても、数万光年離れたところではあるが…。

 例えば、ソンブレロ銀河は直径五万光年だ。数万光年離れたところから見たほうが、全体が見えて美しい。数メートル前で見ても、全貌は見えない。アンドロメダ星雲の全貌を見た時と同じだ。

 その後、各星雲内にも入ったが、アンドロメダ星雲内で見た光景と大差は無かった。まあ、それは仕方がないだろう。

 さらに宇宙船は、そこから一気にしし座銀河団へと瞬間移動した。地球から三億光年も離れた場所だ。

 そこで、麗香、照、菫の三人は、散光星雲やリング星雲など、美しい光景を目の当たりにした。まあ、銀河系で見てきたものと大きな違いはない気がするが…。

 ハンニャ達は、惑星とか衛星には着陸せず、今日は、三人に宇宙空間に煌く神秘的な美の光景だけを楽しんでもらった。

 

 最後に緑の星付近に瞬間移動した。

「ここは、地球とは銀河系の中心を挟んで丁度反対側の位置になります。地球の方向は、あっちですかね。」

 ハンニャが指差す方向に見えたもの。それは、地球とは反対側から見た天の川だった。

「今日は、色々なところを見て回りましたが、いかがでしたでしょうか?」

 すると、麗香がハンニャに、

「感動しました。私達には、どれもが普通なら一生に一度すらも見られないものばかりでした。それをこの目で見ることができ、非常に感激しております。」

 と答えた。勿論、嘘偽りはない素直な言葉だ。

 もっとも、嘘をついたところで超能力者のハンニャにはバレバレであるが…。

「皆様も結構疲れたことと思います。今日は、この後、どうされますか? よろしければ、我々が天の川銀河の拠点とする緑の星でお食事でもいかがですか?」

「いえ、これ以上は申し訳ないと感じております。これで、私達はおいとまさせてもらおうかと…。」

「分かりました。では…。」

 ハンニャが操縦室後部のドアを開くと、そこは見慣れた光景…白糸台高校麻雀部監督室と繋がっていた。

 白の星に入った時と同じパターンだが、やはり目を疑う。

「空間を繋ぎましたので。それでは、またの機会に。」

「は…はい。」

 麗香、照、菫、淡の四人がドアを通り抜けて監督室へと戻った。

 ドアを通過すると、何故か淡のドレスが白糸台高校の制服に変わっていた。ハンニャ達の仕業なのだろうけど、どのような仕掛けになっているのかは分からない。

 まあ、もっともハンニャの超能力でやりましたと言われてしまえば、それまでだが…。

「じゃあ、ハンニャ。今日はありがとう。」

「ノープロブレムです。それでは、また。」

 ドアが閉まった。そして、菫が再びドアを開けると、その先は宇宙船内ではなく、普通に通路になっていた。

「不思議なもんだな。余りにも現実離れしていて、夢でも見ていたみたいだ。」

「でも、夢じゃないよ。これが、証拠の品。」

 淡が、ハンニャ達にもらったブローチを見せた。例の大きなピンクダイヤモンドがついたやつだ。

「(絶対に価値が分かってないな、こいつ。)」

 とは言え、これだけ高価なモノを惜しげもなく与えられていることを知り、菫は淡が羨ましくもあった。

 

 

 それから、さらに時が過ぎ、西東京大会に突入した。

 参加校は160に達する。

 一回戦を戦うのは50校弱で、一位のみの高校が二回戦に進出するルール。そこで30校以上が敗退する。

 二回戦は128校が戦い、32校に減る。

 三回戦で8校に、準決勝で4校に絞られる。ここまでは、先鋒から大将まで、各半荘一回での勝負だ。それでも、ここまで終わるのに丸二日かかる。

 決勝戦のみが半荘二回での戦いになる。

 白糸台高校から参加するのはチーム虎姫。先鋒が宮永照、次鋒が弘世菫、中堅が渋谷尭深、副将が亦野誠子、そして大将が大星淡。

 第一シードの白糸台高校は二回戦からの参戦だった。

 二回戦は、照が半荘一回で10万点以上を獲得、菫が最も点数が低いチームを狙い打ち、尭深のハーベストタイムを決め、中堅戦でトビ終了させた。

 三回戦は、照がラス親で怒涛の和了りを見せ、トビ終了させた。

 淡が初めて戦ったのは準決勝戦。

 しかし、既に大量リードしている。ここに絶対安全圏が発動し、他校の大将達は酷い配牌を見て毎回焦るばかり。

 そこに早い巡目で淡は仕掛け、絶対安全圏内で多くの和了りを決めた。勿論、余裕の一位抜け。

 そして、決勝戦。

 淡が対局室に入ると、どこかで見た感じの女性がいた。

 彼女の名は多治比真祐子。松庵女学院の二年生。

「(多治比って? もしかして!)」

 顔も麻里香に似ている。

 淡は、

「あのう、もしかして麻里香のお姉さんですか?」

 と聞いてみた。すると、

「はい。麻里香がいつもお世話になっています。」

 と真祐子が答えた。

「(ビンゴ!)」

 麻里香の姉なら、きっと楽しい麻雀が打てるだろう。淡は、そう期待した。

 

 場決めがされた。

 淡は西家、真祐子が南家だった。

 東一局。

「(絶対安全圏発動!)」

 淡のみ一向聴、他家は六向聴だった。これは、真祐子も例外ではない。

 白糸台高校は、先鋒戦で照が作った大量リードを次鋒から副将まで差を縮められるどころか、むしろ広げてきた。

 二位の松庵女学院との差は10万点以上。

 真祐子にとって、この厳しい状況の中、3巡目に、

「ポン!」

 淡が対面の捨てた{白}を鳴き、5巡目で、

「ロン! 白ドラ2。5200!」

 下家の捨てた牌で和了った。早和了りだ。{①}の暗刻があって40符3翻の手。

 

 東二局、真祐子の親。

 ここでも絶対安全圏は発動している。淡のみ軽い手で、他三人は非常に重い手だ。

 この局も、

「ポン!」

 淡は下家が捨てた{發}を鳴き、

「ロン! 發チャンタドラ1。5200!」

 対面が捨てた牌で和了った。これも{9}が暗刻の40符3翻の手だた。

 ただ、真祐子は淡に鳴かせないし、振り込まない。この辺りは、麻里香と同じだ。

 

 東三局、淡の親。

 ここで淡は、連荘で稼ごうとした。

 しかし、真祐子は相変わらず鳴かせてくれない。そうこうしているうちに7巡目に突入した。

「(これって、ヤバイんじゃ?)」

 淡がそう思った次巡、

「ツモ! タンヤオドラ3。2000、4000!」

 真祐子に和了られた。

 淡としては、親かぶりで痛い。

「(結構やるジャン!)」

 しかし、ある程度以上の打ち手がいないと面白くない。

 照達のお陰で点差は十分あるし、無理にダブルリーチを使って勝ちに行く麻雀をしなくても優勝は間違いないだろう。

 ならば、ここは真祐子を相手に楽しく打ちたい。淡は、そんな風に思っていた。

 

 東四局。

 ここでも淡は、

「ポン!」

 {中}を対面から鳴き、

「ツモ! 中混一ドラ3。2000、4000!」

 6巡目にツモ和了りした。

 

 南入した。

 南一局は、

「ロン! タンヤオ一盃口ドラ1。5200!」

 面前で淡が下家から和了ったが、続く南二局では、

「ツモ! タンピンツモドラ1。2600オール!」

 真祐子に和了られた。連荘だ。

 

 南二局一本場も、

「ロン! 一盃口ドラ2。7700の一本場は8000!」

 淡の対面から真祐子が和了った。

 

 南二局二本場、

 これ以上は真祐子に連荘させたくない。淡は、

「ポン!」

 南を鳴き、次巡で、

「ツモ! 2200、4200!」

 ダブ南ドラ2で真祐子の親を流した。

 

 南三局、淡の親。

 当然、淡は連荘を目指したが、

「ツモ! 1300、2600!」

 真祐子に和了られた。とにかく、真祐子は淡が鳴きたい牌を出さない。つまりヌルイ牌を打たないのだ。それで、淡のスピードが殺されている。

 しかも、ここまでの収支は、真祐子が+22800点、淡が+23000点と僅差だ。

 もし、オーラスで真祐子に和了られたら、淡は収支で真祐子に負けることになる。

「(ちょっとマズイかな。でも、面白い!)」

 淡と真祐子以外の二人はヤキトリ状態。平静ではいられない。

 しかも、それでいて毎回最低な配牌。正直、心が折れかかっていた。

 

 オーラス。

 この局も絶対安全圏は健在。

 最悪な配牌が続く中、真祐子だけは目が死んでいなかった。

 この局、真祐子が、

「チー!」

 早々に仕掛けた。

 収支では淡を負かしたい。それすらできなければ逆転優勝など絶対に有り得ない。そんな気持ちが感じられた。

 しかし、

「ツモ! タンヤオドラ1。500、1000!」

 淡が和了って収支トップを守った。

 

 10分間の休憩に入った。

 淡は、対局室を出るとスマホで麻里香に連絡を入れた。

「もしもし、麻里香?」

「前半戦は、マズマズだね。」

「一応、トップなんだけど。」

「でも、本気は出していないでしょ?」

「まあ…ね。でね、連絡したのは、松庵女学院の多治比真祐子って、麻里香のお姉さんなんだって? 本人が言ってたよ!」

 これを聞いて、麻里香は、

『やっぱりバレたか』

 と思った。

 決勝戦の相手に松庵女学院の名を見た時に覚悟はしていたが…。

「まあ…そうなんだけどね。」

「なんで、麻里香は松庵女学院に行かなかったのかなぁとか考えちゃって。詳しいことは、後で聞かせてね。」

「分かったわよ。で、バレたついでにお願いがあるんだけど。」

「麻里香が? 珍しい。」

「せめて一局だけでもイイから本気で戦ってあげて。力の差を見せ付けるとかじゃなくて、姉に対する礼儀として。」

「分かった。善処するよ。」

 この時、淡は、予言者プルプルから言われていたことを、すっかり忘れていた。

 

 淡が対局室に戻ってきた。

 後半戦は、真祐子が起家、淡がラス親になった。

 東一局、真祐子の親。

 絶対安全圏が続く中、真祐子は何とか7巡目で聴牌し、

「ツモ! 2000オール!」

 ツモ和了りした。

 

 東一局一本場、真祐子の連荘。

 しかし、淡も負けてはいない。しかも、この半荘は上家が真祐子ではない。よって、捨て牌は真祐子ほど厳しくない。

「チー!」

 淡は、早速鳴いて聴牌し、

「ツモ! 1100、2100!」

 ツモ和了りで真祐子の親を流した。

 

 東二局。

「ツモ! 1300、2600!」

 この局は、真祐子がツモ和了りした。

 大将戦で全てが決まる。ならば、真祐子も当然食い下がる。

 10万点以上の差を大将戦だけでひっくり返すには、淡から親の役満を直取りするのが一番手っ取り早い。しかし、役満など狙って易々と出来るものではない。

 それに毎局、絶対安全圏が発動する。このクズ配牌を見る限り、役満狙いは現実的ではない。

 国士無双に走ることも考えられるが、意外とツモ牌は普通の手として手が伸びる方向に来る。そのため、国士無双を目指しても中々聴牌できないし、それ以前にチュンチャン牌を狙われて淡の餌食になるがオチだ。

 とにかく、普通に打って淡よりも先に少しでも高い手を和了る。今のところ、それしかないようだ。




おまけ

「白の星では麻雀はやらないのですか?」
 この菫の問いにハンニャが答えた。
「ルールは分かってますが、打ったことはありません。雀卓を囲んでも、我々の身体では対面の山からツモることができませんから…。」
 たしかに、体長三十センチくらいで腕も十センチ弱の身体だ。これで雀卓を囲めと言う方が酷だろう。
 しかし、ここには発明家サンムーンがいる。
 そう言うことならと、機械の腕を装着して対面の山からでもツモることができるようにしてもらった。
 話の流れから、菫とハンニャで卓を囲むことになった。面子はあと二人。
 しかし、
「私は、彼とは打ちたくない。」
 照が打つのを拒み出した。
 ここまで卓を囲むのを拒否するのは、菫としても初めて見た。しかし、菫の心情としては、地球の高校生チャンピオンに逃げてほしくはない。
「まあ、麻雀を通して交流を深めるもの良いだろう?」
「わ…分かった。」
 照は渋々打つことになった。
「あと一人は…淡。お前が入れ。」
「私はパス!」
「どうしてだ?」
「ハンニャとは戦いたくないだけ。監督に入ってもらえば?」
「まあ、それも有りか。では監督。よろしいですか?」
「イイわよ。」
 麗香は、何も考えずにOKした。
 場決めがされた。
 この時、ハンニャの毛先の球がうっすらと輝いた。
 起家はハンニャ、南家が照、西家が麗香、北家が菫になった。
 ルールは赤ドラ四枚入りで、大明槓からの嶺上開花は責任払い。ダブル役満以上もありだが、単一役満によるダブル役満は無し。
 各自が順に配牌を取り、ハンニャが13枚目、14枚目の牌を山から取った時、菫の背中に何か冷たいものが走った気がした。
 既に照は手牌を伏せている。まったくやる気がない。
 しかし、その直後、何故、照がやる気を見せないのか、何故、照と淡が打つのを拒んだのかを知ることになる。
 ハンニャが手牌を倒した。
「済みません。ツモです。天和大四喜字一色四暗刻。64000オールです。」
 なんのことはない。超能力を使ったのだ。
 全員トビで終了。恐らく、何回打ってもハンニャに勝つことはできないだろう。
 多分、これが能力麻雀の究極形。
 こんな化物が地球では現れないことを願う菫だった。
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